生徒会長の桃喰綺羅莉には姉が存在する。僕はこの学校に編入してきてからまだ時間が経っていないから知らなかったが…桃喰綺羅莉が普通の生徒会長として活動していた時によく仮面をして桃喰綺羅莉の後ろにいる者がいたらしい。普段は仮面を取らないらしい。
「どうしたんですか?リリカさん」
「あの……何で話し掛けてくれるの?」
彼女は横に座っている僕の方を向きながら問うてきた。彼女と出会ったのは…綺羅莉が彼女のことを紹介してくれたから。紹介された日は瓜二つの顔が二つあるのだから、驚いてしまうのは仕方のないことだと思う。それからは一週間に一度ぐらいのペースでリリカさんと会っている。
「…リリカさんは違うからね」
「違う?」
「うん。最近はずっと綺羅莉の方と一緒に居たからね。彼女もとても優しんだけど……やっぱりどこか棘があると言うか…なんというか。それに比べてリリカさんは普通に優しいからね。そういう優しさを最近は味わっていなかったから。迷惑だったらごめんね」
「…私も話が出来るのは嬉しい。こんな風に気兼ねなく話せるのは限られているから」
僕としてもこんなに早いスピードで話せるようになるとは思ってもいなかった。もっと打ち解けるには時間が掛かると予想していた。
「それは良かった。だけどこの事は綺羅莉には言わないでね。まさか、彼女が何かするとは思わないけど…もしもの可能性がないわけじゃないからね」
僕はこれでもそれなりには綺羅莉のことを信用している……と言ってもいい。だが、それは完全に信用しているわけじゃない。人間を完全に信用できる事なんて出来るはずがないのだからね。
「…分かった」
「……そう言えば、リリカさんの素顔は…とても可愛いね。綺羅莉と似ているけど……やっぱり違う。ここ数週間の間、綺羅莉とはそれなりに長い時間一緒に居たから顔も嫌というほど見てきたから分かるのかもしれないけど……違うよね」
なんかこんな風に普通の会話を最近は全然してなかった気がするのは気のせいだろうか。
「……そうか?」
「うん。全然とは言わないけど…違うよ。目元とかも綺羅莉とは違うしね」
「…そうかな。でも、私や綺羅莉と会ってからまだ数週間しか経っていないのによくわかるな。両親であっても同じ格好をすれば見分けるのにとても苦労するのに……」
確かに二人を最初に見たときは瓜二つだと思った。だけど今、見ると明らかにとは言わないが微妙に違うんだよね。
「同じ人間は存在しないからね。どんなに顔が似ていても双子でも人間は違う。リリカさんと綺羅莉だって似ているけど違う。リリカさんはリリカさんだからね。いくら綺羅莉の影武者であったとしてもリリカさんはリリカさん。これを自分が忘れちゃいけないよ」
自分が自分であることを忘れたらそれはもう……取り返しのつかない。だからいくら他人の代わりと言われても自分が自分であることを自分は忘れちゃいけない。
「……変な人だな。お前は」
「そうかな……僕的には変わっていないと思うんだけどな」
「いや、お前は変わっているよ。こんな私の事を考えてくれるなんて」
「僕はリリカさんのことを大切に想っているからね」
折角、まともに話せる友人が見つかったんだからここで手放すわけにはいかない。綺羅莉とばっか話していると本当に少しおかしくなってしまう。
「……………」
白かった肌が少しずつ赤く染まってきている。
「大丈夫?」
リリカさんのおでこに当ててみるが熱があるようではないようだな。だけど顔を見ると、どう見ても赤く染まっている。
「な、なんでもない!!それじゃあ」
そう言って、リリカさんはベンチから立ち上がると早足で去って行った。
「一体どうしたんだろうか?」
リリカの口調が予想以上に難しかった。
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