かぐや様はブラコンのようです   作:エクソダス

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第3話

 生徒会長、それはいろんな人間に頼られる存在であり、いろんな生徒の悩みを聞くのも生徒会としての一環だ。

 

 

「恋愛相談、だと?」

「はい……! 恋愛において百戦錬磨の呼び声も高い会長ならば、なにか良いアドバイスをいただけるのではないかと!」

 

 

 とある日の生徒会室に来客が訪れた。

 その来客は田沼翼。御幸やかぐやと同じ二年生である。

 来客理由は恋愛相談らしい。

 

 

「……わかった。生徒の悩みを解決するのも生徒会長たる俺の勤めだからな。どうにかしてやる」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 翼は生徒会室へと足を踏み入れる。

 生徒会長の恋愛話はかなり有名で、バレンタインの日は基本的にチョコレートが入っているのだとか。

 

 

「恋愛の事なら俺に任せろ! 何しろ俺は一度も振られた事がからな」

「い、一度もですか……流石会長!」

 

 

 そして、ソファに座って話はじめる二人。

 

 

「……こくった事あるのかな、あの人」

「? 駿、何?」

「いや何も」

 

 

 そんな二人を……生徒会室のドアからじっと観察するように見ている二人がいた。

 そう、駿とかぐやである。

 

 

「それにしても。恋愛相談ね……会長は信頼されてますね姉様」

「ええ、そうね。それにチャンスね。これは会長の恋愛観を知るいい機会だわ」

「姉様は恋愛なんてパッパラパーだもんね」

「おだまり」

 

 

 ぼそぼそと話しているかぐやと駿をよそに、相談者の相談が始まった。

 

 

「それで。相談というのは?」

「クラスメイトに柏木さんという方がいるのですが……、彼女に告白しようと思うんです!」

 

(ふむ)

 

 

 どうやら、今回の内容は『告白する勇気をください』といった所であろう。

 なかなか初心で、可愛らしい相談内容である。

 

 

「でも、断られたらって思うと……。もう少し関係を築いてからのほうが良いんじゃないかとか……」

「なるほどな。その子と接点はあるのか?」

 

 

 御幸はまず、その者と接点があるかを問いかけた。

 

 

「バレンタインにチョコを貰いました」

「お……どんなチョコだ?」

「チョコポール……三粒です」

 

((ええええ───……))

 

 駿とかぐやの心の声が見事なほどにシンクロした。

 駿は少し青ざめる。完全にその恋は成就しないと理解したからだ。

 

 

「ね、姉様……残念だけど」

「え、ええ……義理以外の何物でもないわね……」

「むしろ義理でもない哀れみなんじゃ……」

 

 

 どうやらその駿の考えはかぐやにも伝わっているようだ。

 かぐやはなんとも言えない表情をしていた。

 

 

「あ……うん。それはもう……」

 

 

 流石にこれには御幸も言葉を濁すしかないであろう。

 いくら百戦錬磨の恋愛経験があったとしても。これはあきらめてもらうほうが彼のためだ。

 

 

「間違いなく惚れてるな」

 

(っ!?!?!?!?)

 

 駿は全力で目を丸くした。

 ほとんど恋愛経験のない駿でも……明らかにおかしいとわかるのに。

 

 

「ど、どうして? チョコポールですよ?!」

「ち、血迷った?」

 

 

 かぐやと駿は、御幸の発想が理解できず、互いに顔を見合わせる。

 しかし、そんな陰で見ている二人など何のその、御幸は熱弁し始める。

 

 

「いいか! 女ってのは素直じゃない生き物なんだ! 常に真逆の行動をとるものと考えろ!」

 

(そこまで真逆な行動はとらねーよ! ツンデレの極か!)

 

 

 駿は心のそこからツッコんだ。

 

 

「つまり、一見義理に見えるチョコも────」

「……逆に本命っ!?」

 

 

 相談者はハッと気づいたように目を見開く。

 

 

「ね、姉様。逆に本命って何?」

「……さぁ」

 

 

 もう一度、駿とかぐやは互いに顔を見合わせる。

 

 

「……だけど。彼女にその気なんてないと思います」

 

 

 が、御幸の熱弁を聞いて理解してもなお、まだ勇気が出ない様子の相談者。

 

 

「このあいだも……」

 

 

 相談者は過去の話を話し出した。

 その内容は『彼女はいるか?』というありふれた会話の内容で、駿は多少小ばかにされている印象を受ける。

 

 

「っていうことがありまして……」

「……」

 

 

 ちらりと、駿がかぐやの方を見ると目が完全に死んでいる。

 あきれ果てている様子だ。

 

 

「……なんか。可哀想ね」

「……だね」

 

 

 これには駿は同情せざる負えない。

 明らかに異性として見られている以前の問題、いや人間として見られているか……そのレベルだ。

 

 

「……おまえ」

 

 

 しかし───

 

 

 

 

 

 

 

 

「モテ期。来てるな」

 

((ええええええええええええぇぇ!?))

 

 

 御幸はそう発言した。

 

 

「何故そんなに女を疑ってかかる! 女だってお前と同じ人間だ!」

 

 

 そして、御幸はまたもや熱弁し始めた。

 御幸の発言によると、そのからかってきた少女たちは取り合ってバチバチしてるんだとか……。

 もう何を言えばいいのか……。

 

 

「駿、見ないで」

「ぇ」

 

 

 これ以上は弟の教育にも関わると判断し、かぐやは駿の目をふさいだ。

 仕方がない事である。

 

 

「しかし、僕、告白なんて初めてで……どういう風にすればいいのか」

「良い考えがある」

 

 

 御幸はかぐや達がいる扉まで近づく。

 

 

「ここに、件の女がいるとするだろう。それをこうっ!!」

 

 

 その瞬間────

 御幸はその近くの壁を強く叩いた。

 

(びくっ!!)

 

 目をふさがれた駿はその大きな音に驚いてしまい、腰をぬかす。

 

 

「……俺と付き合え」

「っ!?」

 

 

 しかし、御幸の言葉にドキッとしているかぐやと、その場にしゃがみこんでいる駿を知る由もなく、御幸は言葉をつづけた。

 

 

「……と、突然壁に追い詰められた女は不安になるが、耳元で愛をささやいた途端トキメキへと変わり、告白の成功率が上がる」

 

(あ~……びっくりした)

 

「この技を、『壁ダァン』と名付けた」

 

(それもうすでにあるやつです!!!!)

 

 

 弟が腰をぬかしてしまった事への憤りと、耳元で愛を囁かれた事が同時に来て。かぐやは自分の感情を押さえつけるので精一杯だった。

 

 

「ありがとうございます! 会長のおかげで勇気が出ました!」

 

 

 何はともあれ、今回の件はこれで達成のようだ。

 御幸は内心安堵していた。

 

 

「流石。あの四宮さんを落としただけはあります!」

 

(((!?)))

 

 

 その突然の相談者の言葉に、三人は目を見開いた。

 

「いや、俺は四宮とは別に付き合ってないぞ」

「……え、うそ。姉様落とされたの?」

「なわけないでしょ! 落とされてなんかない!」

 

 

 現実はどうあれ。

 どうやら───もう校内ではこの二人は付き合っている。という説が濃厚らしい。

 

 

「そ、そうなんですか……? はたから見たらいい感じに見えますけど……」

「いやむしろ逆だ。最近、めっちゃ嫌われてるんじゃないかって思う」

 

 

 御幸のその自信なさげの発言に、かぐやは不安そうな目をむけた。

 

 

「え……私。会長になにかした?」

「多分、姉様は色々と怖いからそう感じられてるだけだと思う」

 

 

 駿は軽くフォローを入れるが、おそらく妙な心理戦をしているのが原因なのは何となく理解している。

 ある意味会長にも原因はあると思った。

 

 

「会長!大事なのは自分がどう思ってるかですよ!会長は四宮さんのことどう思ってるんですか?」

「俺が四宮のことをどう思ってる…?そうだな。まぁ、正直、金持ちで天才とか癪な部分はあるな……。それに、案外抜けてるし内面怖そうだし………あと胸も……」

 

 

 どんどんと、かぐやの機嫌が悪くなっていっているのがわかる。

 

 

「むむむ……」

「ね、姉様。どうどう」

 

 

 駿が怒りを我慢しているかぐやを宥めていると……。

 

 

「でもそこが良いっていうかな?! 可愛いよ実際! 美人だしな! お淑やかで気品もあるし! それでいて賢いとか完璧すぎるだろぉぉ! 四宮マジ最高の女!」

 

 

 

 直前で手のひらを返した様に褒め始めた。

 勿論、それには理由があり。

 

 

(あっぶね~~。本人めっちゃいるし! 気づいてよかった!)

 

 

 そう、その場にかぐやがいるのをようやく理解したのだ。

 それゆえに、御幸はまるでゴマをするかのようにほめちぎったのだ。

 

 

(よし、これならかぐやの機嫌も……)

 

 しかし……。

 

 

「へえ……会長……姉様をそういう目で見てたのかよ」

「しゅ、駿……どうどう」

 

 

 今度は駿が怒りを露わにし、かぐやがそれを宥め始めた。

 

(どうすりゃいいんだよ!?!?)

 

 その会長の心の叫びは、二人に届いているはずもなかった。

 

 

 

 

───

 

──

 

「早坂先輩、姉様」

「? なに」

「はい、駿様」

 

 

 駿は家に帰ると二人の信頼できる者たちに問いかける。

 

 

「恋愛って……色々あるんだね」

 

 

 駿は遠い目でそう呟いた。

 あの依頼者、何故か告白OKが出て付き合えたらしい。

 それが駿には不思議でならない。

 

 

「駿……今日のことは忘れなさい」

「……なにかあったのですか?」

 

 

 一部始終を知らない早坂は疑問に思い、そう問いかける。

 

 

「いや……恋愛ってむずかしいなって……」

「……ホントに何があったんですか」

「いや、別に……」

 

 

 そんな駿の顔を見て、早坂はクスッと笑った。

 

 

「ご心配なさらずとも、駿様はすぐに好きな人くらいできますよ」

「……そっか」

 

 

 生まれてこの方。

 駿は恋愛などしたことがなく、息苦しい人生を送ってきた。

 なので、少しくらい恋愛に恋焦がれてもいいかもしれない。

 

 

「そうね……必ず、駿ならできるわ」

「……ありがと姉様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ。それにはブラコンとシスコンを直すのが最重要になりそうですがね」

 

 

 誰に言うことなく、早坂は呆れた声で呟いた。

 

 

 

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