スタイルチェンジ   作:きゅーぴー(ないんぴーす)

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投稿自体が一年半振りなので緊張がすごいです…がくぶる


#1

 

 

 修羅場。痴情のもつれというニュアンスではないが、ここ最近の上杉風太郎の日常を表す言葉に最も適したものであろう。幾度となく訪れた家庭教師継続の危機。全国十位以内の成績という条件を、風太郎は家庭教師として生徒に授業をしながら達成しなければならなかった。

 しかし、その試練を風太郎は無事に乗り越えた。生徒である中野家の五つ子全員の努力の甲斐もあって、風太郎自身も全国三位の成績という快挙を成し遂げることができた。

 

(……眠てぇ……)

 

 だが、風太郎はおぼつかない足取りで寝ぼけ眼をこすっており、コンディションが万全でないことがうかがえる。疲労が蓄積しているのか、今日は少し家を出るのが遅くなってしまったようだ。

 もうすでに全国統一模試から一週間以上経過したこともあって慌ただしい日々はひと段落したのだが、風太郎が止まることはない。彼の日常は家庭教師としての仕事の放課後の勉強会だけではなく、成績を保つための毎日の自習に加え、家系を支えるケーキ屋でのアルバイトもある。娯楽や安らぎといった息抜きは、風太郎の辞書には存在しないのだ。普段より歩くペースは遅いが、遅刻が確定するほどではない。気怠くはあるが今日も一日頑張ろうと、気合を入れ直したところ───

 

「あはっ、今日はいつもよりちょっと遅いね。寝坊でもした?」

 

 旭高校への通学路の途中にある喫茶店。その前を通過する時に教え子の少女の声が耳に届くのは、もはや風太郎の日常の一部になりつつある。

 

「フータロー君、おっはー」

 

 風太郎に手を振りながら挨拶をしてくる、その声の主は中野一花。風太郎の仕事である家庭教師の教え子の一人である。ここ最近は、なぜかよくこの喫茶店の前のベンチで佇んでいるようだ。

 

「一花か。何度も何度も良く会うな。偶然にしても異常な頻度だろ」

「ううん、今日は偶然とかじゃないよ。フータロー君を待ってたんだ」

「……なんでだよ」

「ふふっ、なんでだと思う?」

 

 少女のどこか意味深な笑みに、風太郎は身構えそうになってしまう。表情こそいつもの穏やかなものだが、その瞳には強い感情を秘めているように見えるのだ。一体どんな理由があって、わざわざ待ち伏せなんて───

 

「今日はフータロー君と一緒に、二人っきりで登校したいなーって思ったから待ってたの。それだけっ♪」

「…………」

 

 一花の眩しい笑顔が風太郎の目の前に広がる。親愛のこもった優しい声色なこともあって、心からそうしたいと思って話しているのが伝わった。

 普通に友達としての関係なら一緒の登下校は当たり前なことなのかもしれないが、いかんせん風太郎は一花に対して少しばかりの懸念を感じている。二人きりで一緒に登校したいから待っていた。その言動、行動は何を意味しているのか。

 思い出すのは目の前の一花の妹、三女である三玖の言葉。

 

『一花、フータローのこと好きだよ』

 

 特に前振りなどもなく、なぜ放課後の勉強会に行く途中というなんとも言えないようなタイミングで伝えてきたのかはわからないが、内容が内容なだけに風太郎の頭からその言葉は離れてくれない。

 本人の言葉でない上に三玖の今までの風太郎への接し方を見ていると確証は持てないのだが、「好き」という言葉とはほとんど無縁の人生を過ごしてきた風太郎だ。いくら鈍感度合いとデリカシーの無さに定評のある風太郎でも、さすがに告白してきた異性を意識しないなんてことはできない。

 

(……まいったな。嫌ってわけじゃねーけど、これじゃ……)

 

 一花は知るよしもないが、風太郎はつい先日、五つ子との距離感について彼女たちの父親から釘を刺されたばかりなのだ。いくら自分から距離を置こうとしても、向こうから来てしまってはどうしようもない。

 だが、恋愛など学業から最も離れた愚かな行為だと考える風太郎ではあったが、二乃からの告白などさまざまな出来事を経験して以前より恋愛への考えを改めていた。真っ直ぐで強く、真剣な想い。それを理解できないからといって安易に否定することはしてはいけないと、風太郎は学んだのだ。

 もはや五つ子との関係は利害の一致しているパートナーというだけではなく、友達といえる存在でもあるのだから。家族旅行で五月にそう告げられた時、素直に嬉しいと思えた。頼りにされてる自分に近づけていることは、風太郎の心を昂らせる。気恥ずかしいので言葉にはしないが、きっと姉妹全員、友達だと思ってくれていると風太郎は信じている。

 

「そうかよ。とっとと行こうぜ」

「はーい」

 

 これはあくまでも友達として一緒に登校するだけであって他意はない。自分からアプローチをしなければ問題ないはずだ。少し距離を置こうとしただけで五月にはすぐ疑われたのだから、近すぎず遠すぎず適切な距離感を維持していくのが得策と結論付けて、風太郎は一花と一緒に歩き始めた。

 

「ん〜、すっごい快晴だね! あったかいし、いい気分だなー」

「天気がなんであれ、やることはいつもと変わらねぇよ。勉強にバイト、それが学生の本分だ。まぁ俺は今日はバイトは休みだが」

「あはは、それでこそフータロー君だね。私も今日はなんもないよー」

 

 他愛もない会話であるが、これもまた風太郎にとっては家庭教師を始める前とは明らかに違う日常だと感じている。今まで家族以外との人間関係をすべて断ち切ってきた風太郎だったが、五つ子との放課後の勉強会はもちろん、クラスでも学級長として五つ子窓口を担当したりと、今は周りに人がいることが多くなった。

 一人の方が楽なことが多いが、元は悪ガキで遊んでばかりであった風太郎である。戸惑いこそあれぞ抵抗を感じる程ではない。相手が相手なうえにマンツーマンということもあり若干の緊張を感じてはいるが、これくらいなら許容範囲内だ。

 

(まぁ学校に行くだけなんだし、何事もなく終わるだろ)

 

 風太郎がのんきに心の中で一息つこうとしたところ、急に隣を歩いていた一花の足が止まる。

 

「ねぇ、フータロー君。ちょっといい?」

「……今度はなんだよ」

 

 先程とは打って変わって、神妙な顔持ちで一花が話しかけてくる。それに対して若干声のトーンを落として返答する風太郎。コンディション不良だというのに早くも心が乱される展開になることが予想できてしまい、風太郎のテンションは下がる一方だ。

 友達に対して失礼だとは思うが、あまり話しかけてこないで欲しいのが風太郎の正直な気持ちである。二乃に告白された後もしばらく感じていたのだが、自分に好意を抱いていると思われる少女の口からどんな爆弾発言が飛び出すのか気になってしまい、非常に落ち着かないのだ。実際、先程も直球の好意がかなりの球威で飛んできたばかりである。こちらの心境なんぞ知るよしもないゆえに勝手なのはわかっているが、心の準備が欲しい。会話のキャッチボールで豪速球なんて不意打ち以外の何物でもない。ただただ心臓に悪影響だ。

 しかし、時間は待ってなどくれない。一花が投球動作に入る。しかしその表情はコロリと変わり、いたずらっぽい笑みを浮かべ───

 

「模試も終わってひと段落して、しかもこーんなにいい天気なんだしさ……一緒にサボっちゃおうよ♪」

「却下」

「そんな、即答っ!? ほら、1限体育だし!」

「またこのパターンかよ、馬鹿言うな! 体育は苦手だが、サボるとか論外だろ!」

「もー、相変わらず真面目すぎ! お姉さんとのんびりしようよー!」

 

 何を話すかと思えばくだらない内容である。挙句、ぎゃあぎゃあと子供のように駄々をこねる一花。これがクラスで話題沸騰の女優だなんてとても思えない。身構えていたというのに、呆れて思わずため息がでてしまう。

 

(まったく、こいつは……だけど)

 

 足を止めて、思考する。以前も同じようなやり取りがあって、その時は強引に一花を連れて登校したことは風太郎の記憶に新しい。しかし、今は少し心境が違う。

 

(俺と一緒に……俺と二人きりでいたいから、こいつはこんなことを言うのだろうか)

 

 本心かどうかはわからないが、三玖の口から「好き」という言葉を聞いた以上、風太郎はどうしても一花を意識してしまう。かつて、一花に扮した三玖に告白した前田は言っていた。好きな人は独り占めしたいものだと。

 五つ子の中でも、一花とは花火大会や林間学校で二人の時間を多く過ごしてきたと思いはするが、果たしてその中で一花に好かれるようなことをしただろうか。正直、風太郎にはまったく心当たりなどない。そこで風太郎は改めて、中野一花という少女について振り返る。

 

 決して勉強に前向きではなかったが、一花はお世辞にも愛想の良いとは言えない風太郎に対して、最初から友達だと思って接してくれていた。普段はマイペースで片付けが苦手だったりと雑な面も目立つ彼女だが、風太郎に妹たちとの接し方を教えてくれたり、友達としてさまざまなアドバイスをしてくれた。

 長女としても、部活と勉強の両立で悩む四葉を優しく包み込んだり、不器用な五月を気遣って自分に支えてあげるように頼んだりと、生まれた順番に大差はなくとも姉の自覚があることはよくわかっている。勉強は苦手でも器用で飲み込みは早く、学年末試験では女優の仕事もあるというのに姉妹の中で一番の成績を取ってみせた。

 このように努力家な一面もあるところを、風太郎は好ましく思っている。

 

(今はめちゃくちゃ言ってるが、五つ子の中でも一花はあいつらと比較すると、わりかし大人なんだよな。さすがは長女といったところか。それに……)

 

 考えてみれば、結果を残せなくて一度辞めた風太郎に家庭教師を続けるチャンスを作ってくれたのも一花なのだ。長い時を過ごした姉妹でのたくさんの思い出があるであろうあのマンションを手放してでも、風太郎に家庭教師を続けさせるために妹たちに今のアパートで暮らすことを提案してくれた。風太郎は、これについては本当に感謝の気持ちを抱いている。実際、三玖も一花のおかげと言っていた。妹たちも、この提案をありがたいと思ってくれているのだろう。

 しかし、だからといって住み慣れた居心地の良い家を出るなんて、相当な覚悟がなければ提案すら躊躇われるのではないだろうか。そこまで自分を信頼してくれている事実を風太郎は教師冥利に感じているが、信頼があるというだけであんな大胆な行動に出られるのかいささか疑問である。

 

(三玖の言葉は……だけど、一花は)

 

 らしくもない、ある予想が浮かんでしまう。違ったら、全教科満点を逃したのが判明した時以上の恥ずかしさを抱えることになるとわかっていても。

 

 

 

 もし、三玖の言うことが本当ならば。

 すでにあの時点では、一花は俺のことを───

 

 

 

「……フータロー君? どうしたの?」

 

 雑念を振り払い、風太郎は一花への評価をまとめる。

 この際好意を抱いているかどうかは関係ない。多少不真面目な面はあれど、妹達を思い、夢に向かって日々を戦い続け、その夢を他ならぬ自分の手で掴みかけている少女。それが風太郎の見てきた中野一花という生徒だ。同い年ではあるが、その在り方はとても立派なものである。

 

「あはは、やっぱ困らせちゃうよねー。ごめんごめん、冗談だよ! 今のは忘れてっ」

「…………」

 

 明るい口調で、何事もないかのように笑みを浮かべ提案を取り消す一花。だが、それを受けた風太郎の目は自然と細まる。

 一花のそれを見るのはこれで二度目だ。五つ子全員の見分けはできなくても、なぜか目の前の少女の笑顔には違いがあるとわかる。以前はそれを見て苛立ちを覚えたが今回は違う。理由はわからないが、風太郎の心には暗い感情がひしめいていた。

 

(こいつは、そこまで……思えば、一花のわがままなんてかなり珍しいよな。いや、でも……)

 

 しかし、だからといって甘やかしていいものなのか。あくまで風太郎は家庭教師なのだ。それは何があっても変わらない事実。今まで姉妹のお悩み相談も、家庭教師の仕事として割り切ってこなしてきた。今回は悩みなどではなく、一花のただのわがままでしかない。

 ゆえに風太郎が教師として切り捨てるのは当然で、そのことについて罪悪感など感じるはずもない。だというのに、心にモヤモヤは溜まる一方である。

 

(そもそもこいつ、大体のことは一人でこなしてるんだよな。五つ子なのに、一人だけすでに夢を見つけてて、働いていて。勉強ができるだけの俺とは違う)

 

 風太郎は教師として生徒たちにしてあげたいことがある。ただ卒業させるだけではなく、五つ子たちそれぞれの夢を見つけてあげたいと考えている。

 だが、一花は見つけるとか決まっているとかの段階ではなく、すでに自分の力で叶えつつあるのだ。ならば、風太郎が一花のためにできることは教師として勉強を教えることだけなのだろうか。

 

(……それは、なんだか悔しい)

 

 愛だの恋だの風太郎にはわからないし、そもそも風太郎にとって一花は生徒兼友達であってそれ以上でもそれ以下でもない。無論他の姉妹にも同じことが言えるはずだ。だけど。

今があるきっかけを作ってくれた一花に、感謝の気持ちを示したい。教師としての義務感ではなく、一花が長女としていてくれなければ、風太郎は今も家庭教師を続けることはできなかったのだから。

 

 

 

(ったく、しょうがねぇやつだな)

 

 覚悟は決まった。本日限定で上杉風太郎は、二度目の家庭教師退任を決意した。

 

 

 

「学校行こっ! 急がないと遅刻しちゃうよ」

「待てよ、一花」

「? どうしたの?」

 

 風太郎は疑問に思わずにはいられない。自分はこんな相手の気持ちを汲むようなことをする人間だっただろうか。そして、そのために簡単に一度決めたことを曲げるような人間だっただろうか。

 つい先ほど、適切な距離感を維持していこうと決意したばかりだというのに。彼女たちの父親に言われたことと相反することだと、わかっているのに。間違いなく教師としては最低の判断だと、風太郎は理解している。

 

 

 

 だけど、教師としてではなく一人の友達として、男として、求めてくれているのなら。

 

 そして、もうひとつ。そんな作り笑いは、一花には似合わない。一花の心からの笑みの温かさを、風太郎は知っている。どうか、いつまでも笑顔でいてほしい。だから───

 

 

 

「午前中……いや、いい! バイトもないし、今日一日お前にくれてやるさ」

「えっ……?」

「どうした、サボるんだろ。時間潰せる場所なんざ知らんから、全部お前任せになるぞ」

「!? ……う、嘘、でしょ?」

「なんだよその反応。やっぱ学校行くか? 俺は全然構わんぞ、むしろその方が勉強できていいくらいだ」

 

 よほど意外だったのだろうか、口元を抑えて一花が驚いている。少し早いが、誕生日プレゼントのお礼のようなものでもある。無論プレゼントをくれた五つ子全員に感謝の気持ちはあるが、一花のプレゼントのおかげで妹のらいはの笑顔が見られるのだ。風太郎にとって、これほど嬉しいことはない。最初は違和感を覚えたが、これは長女として常に周りをよく見ている一花ならではのチョイスなのだろうなと、今更ながら思う。

 一人だけ贔屓というのは良くないとは思うが、今まで五つ子の長女であり続けてきた一花なのだ。少しくらい、わがままを聞いてあげたい。

 

「いやっちょっ待って待って、ホント? ……ホントに、いいの? 無理してない?」

「そーゆうんじゃねぇよ、俺だって長男だし、お前が長女として人一倍努力しているのはよく知ってる。仕事もあったのに学年末試験だって一番の成績だったし、模試の結果もよかったもんな。ていうかべつに、それだけじゃなくて……俺はお前に、たくさん助けられた。教師としてだけじゃなく、その……友達として、本当に感謝している。だから今日だけ……特別だぞ」

「……!」

 

 大輪の笑顔の花が咲く。いつぞやのアルバイト先での映画の撮影で見たような、演技だとわかっていても本物だと思わせる、立派な嘘つきとしての笑顔とは違う。中野一花というひとりの少女の、心からの笑顔だと風太郎は確信した。その笑顔を見られただけで、恥辱に耐えながらも感謝の気持ちを伝えた甲斐があったと思えた。

 

「ありがとっ、フータロー君!」

「っと……!」

 

 一花のいきなりの抱擁に驚くも、風太郎はしっかりと受け止める。皆勤賞にこだわりはないし、一日くらい授業をサボったところで風太郎の成績に大きな影響などない。そもそも昨年林間学校後に入院した時点で三年間皆勤賞の称号はとっくにおじゃんである。

 所詮この判断はただの合理化だ。だが、これでリフレッシュして一花の仕事や勉強のモチベーションが上がるなら、決して悪くはないだろう。これもまた、卒業のためには必要なことだと、風太郎は自分を納得させた。

 しかし、彼女の豊満な胸が風太郎の身体に触れているこの状況は早急になんとかせねばならない。一花とのハグは初めてではないが、風太郎だって男なのだ。意識しないなんてことはできない。通行人の目もあるのだから、さすがにいたたまれない。

 

「一花、暑苦しい。離れてくれ」

「むー、相変わらずシャイなんだからー……でも……うん、すっごく嬉しいな。ホントに、ホントにありがとね」

 

 冷静に抱きついている一花を引き剥がそうとするも、風太郎は気づいてしまう。見上げてくる一花の瞳が、少し潤んでいることに。二人だけで一緒にいられることを、そこまで大切に、そして嬉しく思ってくれているのだろうか。

 身体の密着具合にプラスして一花の真っ直ぐな好意を受けて、風太郎はさらに顔が赤くなり、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。照れているのを悟られまいと、目をそらしながら一花に言う。

 

「……早く行こうぜ。こんなとこ、知り合いに見つかったら大変だ。とりあえず移動しようぜ」

「うんっ! 今日は一緒に、楽しい時間を過ごそう! フータロー君が一生忘れられないような、最高の一日にしてあげるからねっ♡」

 

 笑顔の花は満開だ。未だ咲いている桜にも負けていない。堅物な風太郎ですら何度でも見たいと思える、最高の笑顔である。

 

(やっぱお前には、笑顔が似合うぞ)

 

 教師でもある自分が教え子と学校をサボって遊ぶだなんて、もしこんなことを知られたら他の教え子たちや彼女たちの父親はどう思うだろうか、風太郎の中には少なからず不安もある。家庭教師失格の烙印を押されるだけならまだしも、二乃あたりは特攻してきてそのまま自分にも同じことをしろなどと、無茶を言い出すかもしれない。

 しかし、気分は高揚しているのも確かだ。それは今日という一日が良いものになるという予感がしているからである。

 

 

 

 少年と少女は歩き出す。

 少年は、悪ガキだった昔に戻ったような懐かしさとワクワクを胸に。

 少女は、愛しの彼を虜にする千載一遇のチャンスを逃すまいという強い決意を胸に。

 秘めた思いは違えど進む道は一緒。

 ふたりだけの時間が、幕を開ける。

 

 

 

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