パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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ところでですけど
 「馬」の魂と運命が「娘」の形となって受け継がれたのが「ウマ娘」な訳ですが

 我々ホモ・サピエンスが、本来のラテン語の意味とは別に
“「ホモ」という異世界生物の魂が「サピエンス」の形となったモノ”
である説
微レ存であり得るんじゃないんすかね?


残されてきた想い

「実の事を言うと、こんなに早く会えるとは思ってなかったんですよ」

 

 凱夏を中心に、3人で並ぶように土手に座る3人。その右端で、桐生院が思いの内を語り始める。

 

「凱夏先輩、急に音信不通になっちゃったじゃないですか。だからどこに行ったかも教えてもらえないままで、消息も知れなくて」

「そんなに逐一伝え合うほど深い仲でもなかったと思ったからなぁ」

「結構深い仲でしょう!一緒にカラオケ行ったり遊園地にも行ったりした日々、忘れたとは言わせませんからね!?」

「ぐっ…流石にそこまで行くと、やはり言い訳は出来なんだか」

 

 たじろく凱夏。しかしそれとは別に、左端の西崎は一層状況を掴めない。

 

「えっ、凱夏君って桐生院さんの何なの?まさか“コレ”?」

「「違います」」

 

 そう言って示したのは、小指を伸ばした握り拳。要するに「デキてるの?」という質問だった。それに対して2人が示したのは即答での否。

 

「私達は見習いとはいえトレーナーですので、恋愛にうつつを抜かしている暇などありません。日々精進、その成果の全てを担当のウマ娘へ注ぎ込む。それが責務ですから」

「いやまぁ、俺はそんな崇高な理由じゃなくてそもそも恋愛にあんま興味が無いタチというか」

 

 何にせよ、今西崎が把握したのは「今のは恋愛とか関係なく素で行われた痴話喧嘩」であるという事だった。その事が分かって納得するやら安心するやら呆れるやら、彼は眉間に手を当てて瞑目するしか無い。

 

「それは勿論です…っと、最後にもう一つだけ言っておくべき事がありました」

 

 そこで桐生院は立ち上がり、凱夏の方へ向き直る。その目には、中々に熱く燃える炎。

 

「先輩。私、寂しかったんですよ」

「お、おう」

「家族以外で初めて一緒の道を進んでくれた人が急にいなくなって、残りの年月がどれほど心細かったか。分かります?」

「それは割と分かる」

「だから、しっぺ返しを受けてもらおうかと思いまして」

「…おう?」

 

 ビシッ!と人差し指を突きつける桐生院ドヤい、もとい葵。その目には、並々ならぬ熱意の炎が燃えていた。

 

「貴方の育てるトウカイテイオーさんは、私と私の育てるウマ娘で絶対に倒しますから!女の怒り、どうぞ心ゆく迄ご堪能して下さい!!」

「マジか」

「マジです!覚悟の準備をしておいてください!!」

 

 では西崎さん、突然失礼しましたー!と最後に行って立ち去る桐生院。そんな彼女に会釈を返し、西崎はトレーニングを続ける担当の子達の方向へ向き直った。

 そして、横の凱夏へ再度質問。

 

「デキてないんだよな?」

「(デキて)ないです」

 

 返ってきたのは同じ答え。しかし、先ほどとは違いそこにはある種の決意が滲み出ていた。どうやら今の会話で、彼の中にも火が着いたらしかった。

 

「桐生院は強いですよ」

「やっぱりそうなのか」

「学年違いの俺と接点があるのは、アイツの勉学が進み過ぎて実質飛び級だったからです。その才覚を敵意として向けられる俺の身にもなって下さい」

「…勝てるか?」

「勝てる勝てないじゃない、“勝たせる”んですよ」

 

 凱夏が眺めるのは、先ほどのレースの反省会として、スペシャルウィークを巻き込んでマックイーンと激論を交わすテイオーの姿。ひたむきに勝利を求める彼女の汗に、彼の目がまた一層熱を帯びる。

 

「二度と、弱音はほざきません。テイオーを勝たせます、勝てるウマ娘に育ててみせます。絶対に」

「ああ。そうこなくっちゃ、スピカのサブリーダーの名折れだぜ」

「迷惑かけましたね」

「良いって事よ」

 

 それを境に、凱夏はテイオーの元へと駆け出す。それを見送って、西崎もまた己の仕事に精を出すのだった。

 

 

〜Side:葵〜

 

 

 さて、バレずに済みましたかね。

 すみません先輩。私、嘘つきました。

 好きです。凱夏先輩の事が、1人の異性として。

 本当に忘れられないんですよ。初めての生活に溶け込めない私を、桐生院家の狭い世界観に篭っていた私を、外の景色に導いてくれた貴方が。

 先輩としてずっと憧れて、バカみたいな事で笑い合って、そして切磋琢磨してきた日々が忘れられないんですよ。

 だから、音信が途絶えて傷付いたのも嘘じゃない。怒りも嘘じゃない。得た教訓を、専属のウマ娘に全力で注ぐのも本気だ。

 

「ミーク!」

 

 見つけた。私が探した才能、私を求めてくれた才能。この娘を、貴方に恥じないよう育て上げて、貴方のトウカイテイオーと競わせて、そして共に未来を掴んで見せます。

 同僚として。ライバルとして。ウマ娘が胸を張れるよう、彼女達へ共に栄光を届けましょう。

 それが叶ったらーーー叶ったら、その時こそ。

………なんて、ね。

 

「トレーナー。どうしたの?」

「ううん、何でもないです。今日のトレーニングも頑張っていきましょう!」

「うん…。おー」

 

 

 

 

〜Side:ウオダス〜

 

 

 

 

「そういえばだけどさ、ウオッカ」

「あ?何だよスカーレット」

「さっきはマッサージに気を取られて言えなかったんだけど、実はスズカ先輩ってあの走り方を時々やってるのよ。半月くらいに1度だけ、夜にスピカとは関係無い所で」

「えっ!?初耳だぜそんなの」

「私も偶然見かけたから知ってる程度よ。スペ先輩なら何か知ってるかもだけど」

「でも妙だな。スピカに入ってきた頃は、寧ろあの走り方を忘れる為の練習してたぐらいだろ?その甲斐あって今の逃げを取り戻せてるし、なんでわざわざそんな事……」

「そこが私も不思議なのよねぇ。実際レース本番では先行策なんて影も形も無い大逃げするから何か影響及ぼしてるとも思えないし、頻度からしても“ただ覚えておくだけ”ぐらいの効果しか無いと思うのよ」

「変だなぁ…」

「今からでもトレーナーに伝えた方が良いかしら?」

「…いや、やめとこうぜ。本筋の練習には特に問題無いみたいだし、本人の黙ってる意向を尊重しよう」

「それもそうね」




 ホモはせっかち
 ノンケな桐生院の詳細な過去話はまた別の機会で
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