今回の時系列はテイオー視点で1期3話前半
スペはクラシック級に入ったところ
あと報告ですが、第3話「輝く未来を、君と」における凱夏のサブトレーナー経歴に言及している部分を修正しました
「「「「「ダンスレッスン?」」」」」
ボクにマックイーン、スペ・ウオッカ・スカーレット先輩方の声が重なる。それに対して、スピカトレーナーは大仰に首を縦に振ってみせた。
「そうだ。というかスペ、ウオッカ、スカーレット。お前らよくとぼけてられるな?」
「「「ぅぐっ!」」」
そう言って広げられたのは3枚の新聞1面。そこに書いてあった見出しは、こう。
『スペシャルウィーク、伝説の棒立ちライブ
『ウオッカのダンスは千鳥足』
『ダイワ製のステージ、朱の足踏みでまたも悲鳴!!』
「「「はぐぁああッ!!!」」」
「まぁ、リギルサブトレーナー時代から見てたけどホント酷かったよ」
「「「ゴハアアァッ!!?」」」
凱夏のトドメの一言で、先輩方は見事に血の海に沈んだ。新聞の日時はどれも新しく、そして『三度』『またも』という文面からも…もう、分かるよね?
「このスピカには!この一年で“新進気鋭のダンスド下手チーム”という二つ名が付いている!トレーナーである俺に責任が無いとは絶対に言わんが、正直これ以上どうしたら良いかサッパリだ!!」
「ところでですけど、ゴールドシップさんには何か言わないんですの?この前も木魚ライブとかやってましたが」
「アイツに何言っても響かんからなぁ」
「確かに……」
トレーナーが見遣った先には、ルービックキューブで遊ぶゴルシ先輩の姿。なんか“1面の9ブロックを全部違う色にする”のにチャレンジしてるみたいで、今までの会話も頭に入ってなさそうだ。
スズカ先輩はスズカ先輩で、このチームで唯一ダンスが出来るって事でなんとか間に合わせの指導をしてきたらしいけど…そりゃ無理があるよね。ちなみに今は落ち込んだスペ先輩を慰めてる。
「だが、ここに来て凱夏君が入って来た事で話が変わった。彼はダンスについて心得がある」
……ほほう?
「意外だねぇ、そんな事まで出来るんだ」
「出来るだけだぞ。そこから学べるかどうかはお前ら次第だが…まぁ、基本だけは押さえているし伝えられるさ」
それなりの自負を持ってるみたいで、ボクもなんだか燃えて来た。こう見えても、ダンスには心得があるからね。
「じゃあ、ボクとダンス対決しようよ」
「お?出来るのかテイオー」
「昔から会長のライブをテレビに穴が開くほど見てたんだ、余裕余裕!」
自信満々の旨を伝えると、凱夏はトレーナーに目配せ。トレーナーの方もボクの実力を見たいのか、頷きで返した。
へへん、ボクの妙技をとうとう見せつける時が来たね!テイオーステップに目を剥くが良いさ!!
「じゃ、先に凱夏の方からどーぞ!先行は譲ってあげる」
「おk。西崎さん、良いですね?」
「皆に一度見せておくという意味でも丁度いい。頼むぜ」
「了解っす」
「これが俺のMake Debut!だ」
「……」
…いや、確かにMake Debut!だったけどさぁ……。
「ト、トレーナー。アレで良いんですの?」
「ああ。これでこそだ」
トレーナーはトレーナーで納得してるけど、他の娘達は皆微妙な顔してるよ?ホントにこれで良いの?
「先に言っただろ、『出来る“だけ”』って。これでも基本はしっかり抑えてる筈だが」
「いや、基本なのは間違い無いんだ、そうなんだけどさ……」
ウオッカの苦笑いまじりの弁明に、ゴルシ以外のウマ娘全員が同意した。彼女の言う通り、凱夏のダンスはしっかり基本を抑えてたんだ。
ただ、その……基本極振りというか……。
「華が無いのよね…」
そう、素人が初見で踊ったとしても出る華やかさが皆無というか、もっと言うと人間の踊りというよりロボットダンスの延長線みたいな感じ。要するに“決められたタイミングで決められた位置に決められたように体を位置させる”って感じの作業感が半端じゃない。
いや、なんだかんだでしっかりその位置に納めるからメリハリも含めてビシッと決めれてるんだけど、なんというか、こう……ウイニングライブで求められてるのはそういうのじゃない感がヤバイ。
どれくらいヤバイかっていうと蜂蜜抜きのハチミーぐらいヤバイ。なのにちゃんとハチミーだからやっぱりヤバイ。
「お前らの言いたい事は分かった、それは俺も凱夏君自身も把握してる事だ…で。スペ以下3人、踊れないお前らはダンスに関してどうこう言える立場か?」
「「「ガフッッッ」」」
「せめて基本が出来てから言え」
と、ここでトレーナーからまた厳しい一言。ああそうだった、彼女達はそもそも基本的な部分からアレだった。
だって、途中で転んだりするウオッカやスカーレットはともかく、スペ先輩の方は振り付けの時点からもう覚えてない感じだからなぁ…うん、そんな彼女達に基本を教える見本としてはこれ以上無いかも。
「西崎さん、今はその辺で。実際問題、俺単体じゃダンス出来るようには指導出来ても人様に見せられる物にまでは仕上げられないですし」
「とは言ってもなぁ凱夏君、俺おハナさんとこの生徒会組に怒られてるんだよ。見栄えしなくともせめてまず踊らせない事にはどうにもならんし、頼むよ」
「ええ。ですからそこまでまず俺が引き上げますので、その後を彼女に任せましょう」
そう言って凱夏が目線を寄越したのはボク。あっ、そういう流れね?
「おうおう、ようやくこのテイオー様の出番とな?」
「お前の踊りっぷりが、既に人様に教えられるレベルなら即採用。違ったらお前も大人しく練習。至極簡単なテストだろ?」
「当然!」
Vサインで応じると、凱夏はさっきMake Debut!を流していたステレオに手を掛ける。指定したのはボクの十八番、いっつも歌ってるあの曲。
「皆刮目しろー!これがテイオー様のテイオーステップだぁ!!」
「あらあら、調子乗って恥を晒しても知りませんわよ?」
言ったねマックイーン?吠え面かいても知ーらないっと!
ーーーーーーーーー
軽快なステップだった。
鮮やかな足踏みがリズムを刻み、見ている側の目を楽しませる。生まれ持った関節の柔らかさが、鍛えられた体幹を基に伸びを見せて、彼女の体に躍動感をもたらした。
華だ、と凱夏は思った。今、飾りっ気も何も無いスピカ部室に華が咲いている。ホワイトボードの前は今、テイオーの独壇場になっていた。
西崎トレーナーを始めとする他の面々も同じ感想を抱いたようで、皆一様にテイオーの虜だった。
「テイオーステップ、か」
華が歌う。可憐な声が耳膜を叩く。
「変化♪気付けマイダーリ〜ン!!」
パカラッパカラッ、と。そんな擬音が付きそうな、お手本通りみたいな足運び。
これがテイオーの強さの秘訣。彼女の才能、咲くべき
だからこそーー
凱夏は、覚悟を決めた。
ずっとスピカのダンス問題に頭を悩まされて来たルドルフ達の心労に思いを馳せよう
指南役のテイオーの入学が遅れた分、最低でも半年以上ずっと苦労してる…