パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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 チェンゲの「Heats(1999)」のメロディーを口遊(くちずさ)んでたんすよね
 そしたら音楽に通じてる兄貴が「お前がアニソン以外の曲を歌うの珍しいな」って言って来たんすよ。バチバチのアニソンを歌ってた俺からすればチンプンカンプンですよ
 で、兄貴が挙げたのは氷室京介なるレジェンド歌手の「マリオネット(1987)」って曲。なんとルドルフとほぼ同期。
 だがしかし、こちとら天下の影山ヒロノブぞ。道を開けい!と思いながら聞いてみたんすよ


 あまりにもクリソツなメロディーで、ガチ目にショックで寝込みました


不屈である為に

 時を遡って、テイオーとマックイーンがスズカとの簡易模擬レースを終えた後の事。

 

「必要なのはスピードとパワーだよ!スズカ先輩の先行でやっとなのに、逃げに対抗するにはまず初手で追い越せる速度、そして相手を押さえ込むだけのパワーを上げなきゃいけないんだ。今のままじゃブロックしても弾かれるし、そもそもそれ以前に追い越せないまま千切られて終わっちゃうよ」

「いえ、飽くまで同じように逃げを阻止する作戦で行くなら根性と賢さを伸ばすべきですわ。今回、貴女は得意距離、私は長距離より短い中距離であるにも関わらず疲弊しました。これは牽制に気を割き過ぎたが故の消耗であり、それを抑えられるだけの精神と知識が必要となるでしょう」

 

 激論を交わすテイオーとマックイーンの衝突は終わりを見せない。双方ともに、先刻の屈辱に真剣に向き合っているからこそである。

 

「でも、スピードもパワーも根性も賢さも、それを支えるスタミナが無いといけませんよね?」

「「………」」

 

 ここでスペシャルウィークの助言により、話は完全に煮詰まってしまった。結局の所、どれだけ話しても「根幹となる全てが足りてない」に帰結してしまうのである。

 テイオーもマックイーンもドン詰まりで頭を捻る中、スペはニンジンで栄養補給。マイペースであった。

 と、そこに。

 

「その様子だと、突き詰める部分はもう詰め切ったか?」

「凱夏!」

「よし、2人とも足見せろ。中々消耗する走り方したろ」

 

 待ってましたとばかりに足を投げ出すテイオー。そうやって目の前に並べられた二本を、凱夏は他意の無い真剣な表情で触診していく。マッサージも兼ねてるのか、絶妙にくすぐったい気持ち良さに少女の瞳が細められた。

 

「テ、テイオーさん!そんなはしたない…」

「大丈夫大丈夫、凱夏は変な事しないから」

「しかしですね…」

「まぁマックイーンの言う事も最もだろ、なんせ麗若い乙女の柔肌を成人男性がこねくり回りしてんだし。だから、この後ゴルシを呼んでくる」

「貴方でお願いします」

 

 変わり身の早さはメジロ家の極意なのか、と凱夏は失礼な事を考えた。

 そんな彼の横で、ソワソワし出したテイオーが嘯く。

 

「じゃ、マックイーンのマッサージが終わったら早く練習させてね。早くやりたいんだ」

「は?今日はまずは顔合わせがてらの軽い奴だけだぞ。もう終わりだから休みな」

「え〜!」

 

 幼子のように、というか実際幼子なのだが、口を尖らせて分かり易く不満を露わにするテイオー。内に有り余るエネルギーを持て余しているようだった。

 

「ヤダヤダ!ボクはもっと練習するもん!」

「つってもお前、割と後先考えず走ったから自分で思ってるよりも消耗してるしなぁ。野良とはいえ一回レース走ったようなモンだし、ちゃんとしたトレーニングは明日以降…」

「“ちゃんとした”程度じゃダメなんだよ!」

 

 テイオーの叫びに、周囲の目が見開かれる。

 

「…分かってるでしょ。会長がどういう存在なのか、そしてサイレンススズカがどういう存在なのか」

「……ああ」

 

 問いかけに答えた凱夏の答えには、深い実感が伴っていた。それも当然だろう、彼は2人をある意味最も近い所から見て来たのだから。

 

「会長の菊花賞、覚えてるでしょ。無敗の三冠」

「当たり前だ。彼女の走りが、おハナさんの知略が完成したレースだった」

 

 全てを制し、全てを御す皇帝の走り。それがシンボリルドルフ、それがこの学園の頂点。テイオーが憧れ、目指す玉座。

 

「スズカ先輩の、スピカ移籍直後のレースだって、知ってる筈だよ」

「…アイツの走りが、本来あるべき姿を取り戻した瞬間だった」

 

 支配を思わせるルドルフとは対極を成す自由な走り、それがサイレンススズカ。たった今テイオーが差を見せつけられ、超えたいと願う背中。

 

「並のトレーニングじゃ追いつけないんだよ。“超”、ううん“究極”ぐらいのつもりでやらなきゃ、“絶対”にも“異次元”にも届かない」

 

 だから、ボクはまだ走りたいんだ。今日できる事を突き詰めたいんだ。

 そう語って、テイオーはその口を閉じた。その瞳は、目の前の人物をじっと見据えて返答を待つ。

 それを真正面から受けて、凱夏はーー

 

「…そう言われても、すぐに対応出来るわけじゃない。でもな」

 

 テイオーの頭が撫でられる。乱暴に、しかしテイオーの鬱屈に応えるように。

 

「スピカはウマ娘本人の意向に沿うチーム。前にそう説明したように、お前のそのやる気に絶対に答えてやる。だから、まずその時間を俺にくれな」

「……うん!約束だよ!!」

 

 

 

 その日から数日間、凱夏の自室から光が消える事は無かった。

 

 

 

 

 

 そして時は今に戻る。

 

 

〜Side:テイオー〜

 

 

「あぁ〜!大変だった!!」

「お疲れ様だ、よく頑張ったぜホント」

「お互いにね」

 

 ボクのダンステクニックが認められた翌日、チームスピカはカラオケに行ってダンスレッスンをした。凱夏がスペ先輩達に教える基本部屋と、ボクがマックイーン達に教える応用部屋に分かれて。

 それがもう中々に難航して…主にゴルシ先輩が言う事を聞かなくて、マジでしっちゃかめっちゃかになった。ウッーウッーウマウマって何だよ。ウマ娘だけどワケ分かんないよー。

 で、僕たちの応用部屋だけじゃなくて、基本部屋の方でも主にスペ先輩がやらかしたらしくて、「あげません!」って怒声と同時に頭にニンジンが刺さった凱夏とトレーナーがドアごと吹っ飛ばされてた。どうやら疲れ果てたスペ先輩がニンジンフライの最後の一本を食べようとしたのを事故的に邪魔しちゃって、その結果、突発的に鬱憤が爆発しちゃったらしい。滅茶苦茶謝ってて本人も許したから良いんだけど、ドアの弁償はどうしたんだろ?

 

「ウマ娘の蹴りヤベーよ。西崎さんはよく複数回直撃しても鼻血で済むなぁ」

「キミも大概でしょ」

「昔、爺ちゃんちで洒落にならないイタズラやらかした時に半端ないゲンコツを喰らってな。それ以来ああいう衝撃には耐性出来たんだ」

「お爺ちゃんにお礼参りする?」

「サラッと怖い事言うなよ。普通の俺が悪い案件だったし、愛ある拳って奴だ」

 

 そうボヤく凱夏の頭には、今も刺さったニンジンが付いたまま。指摘した方が良いんだろうけど、面白いので放置してる。

 ちなみにだけど、今は解散後の帰路。レッスンが終わってから皆はそれぞれの道につき、ボクは途中まで凱夏に付き添う事を選んでみた。ちょっと聞いてみたい事があったから。

 

「ねぇ凱夏。何か考えついたの?」

「どうした急に」

「昨日からなんか雰囲気違うもん。ボクの方をチラチラ見てくるし、何か思いついたんだよね?」

 

 そう言われると、凱夏は眉間に手を当てて空を仰いだ。ふふーん、その反応は図星だね?

 

「聡いなぁ無駄に」

「無駄には余計でしょー!」

「照れまじりに褒めてんだよ」

 

 それでも「無駄に」は余計だよ!と脛を蹴ったら回避された。こ、この…!

 

「お前の今後のトレーニングの方針を決めた」

 

 そんな怒りも、次の一言で一気に引っ込んだ。

 ボクのトレーニングが…!?

 

「やったー!わーい!!」

「上機嫌の化身」

「そりゃそーでしょ?今までお試し期間みたいな感じでツイスターゲームとかやってきたけど、今度こそ本格的なのが始まるって事だし!」

「いやアレも西崎さんの方針としては本格的なトレーニングの一つなんだけどな」

 

 言われなくても分かってるよ、アレが大事な事なんだって。でも走り込みとか筋トレとか、そういうのをこれからしていくって思ったらやっぱりテンション上がるでしょ!

 そんな風にルンルンな気分を全身で表すボクに、凱夏は頭のニンジンを取りながら一つため息を吐いた。まるで何かを決心するように。

 

「テイオー」

「なになにー?」

「あのステップ、禁止な」

 

 …え。

 

「えぇ〜〜〜〜〜!?!!?」

「初手で自分の長所を封じられてビビり散らす気持ちは分かるけど、ここ公道だから少し抑えなさい」

「あっはい…じゃないよちょっと待ってよ!」

 

 あの足捌き、自分でも気に入ってたしレース前後やなんならレース中も似たような動作してたのに。全部禁止なの!?

 

「嫌なのは分かるさ。だが、まず俺なりの理由を聞いてくれるか」

「聞くよ。じゃなきゃ納得できないもん」

 

 凱夏が言うんだもん、ちゃんとした理由がある筈。でも、ちゃんとしてなかったら怒るからね!

 

「サンキュ……んで理由だが、前にも言った通り、お前の足は脆い。それは覚えてるな?」

「うん。その所為で骨折し易くて、リギルだとそれで三冠を回避させられちゃうんだっけ?」

「あぁ。そしてその脆さは、他ならない関節の可動域の広さに起因してるんだ。お前のとんでもない前傾姿勢を支えている、な」

 

 言われてみれば、ボクの走る時の体の角度って、他の娘よりもかなり前倒しだった気がしなくもない。そっか、アレってボクの関節が柔らかいからなのか。納得がいったよ。

 そんな内心を頷きで表すと、凱夏もそれに同じリアクションで応じてくれる。

 

「股や足首を大きく曲げれるのは大いに結構。だが、曲げれば曲げた分だけ骨に負担が掛かる。大きく足を動かす分、その速度によって受ける衝撃負荷も大きくなる。その結果」

「骨折……」

「そういう事だ」

 

 前に軽く説明された事が、今になって本当の理由で理解出来た。ボクの走りって諸刃の剣なんだね…。

 

「日常で使うのをやめろとは言わん、寧ろ日常では普通に継続して使ってて欲しいまである。柔軟さは間違いなくお前の利点で、覚えていて欲しい物でもあるからな」

「でも、練習やレースでは厳禁って事だね?」

「ああ。だからまず、関節と骨を酷使しない走法を定着させるぞ。骨折を防ぐ為に、そしてもし骨折したとしてもすぐ回復出来るようにな」

 

 つまり、長く走る為に持ち味を捨てろという事。ボクはきっと、この前の選抜レースみたいな走りは出来なくなる。

 凱夏も中々残酷だねぇ。ボクにそんな事を要求するなんて。

 ………でも。

 

「……っ」

 

 他ならない凱夏自身が、そう自分に思ってるんだろうね。無表情の奥から溢れ出る苦渋が、もう全然隠し切れてなかった。

 凱夏がスズカ先輩に先行策を強要した事も、そしてその事を後悔しているのも知ってる。なら、似たような状況である今、彼の心は自責の念でいっぱいの筈だ。

 なのに、同じ行為をするという事は……

 

 (この方策に、それだけの価値を確信しているんだ)

 

 そしてその事で、自分が傷付く事よりボクの夢を優先してくれたという事。

 

(卑怯だなぁ)

 

 そう思った。そんな覚悟を見せられたら、惚れ直すしかないじゃないか。どれだけ乙女の純情を弄べば気が済むの?

 

「もちろん、お前が嫌ならステップ続行で構わん。その為の行程をまた考え直す…で、どうする?」

 

 今更逃げ道を提示されたって変わんないよ。

 それに、前に言ったでしょ?“ちゃんとした”程度じゃダメだ、って。

 

 

「縛りプレイ、だね」

「は?」

 

 ボクの言葉に、凱夏が呆けた声を上げた。

 

「だってそうでしょ?ボクの最大の技であるステップ無しで、無敗の三冠を取る。うん、良いじゃん良いじゃん!」

「ポジティブだなオイ」

「難しいのは分かってるけど、そうじゃないと会長は超えられないよ。大歓迎さ!!」

 

 夕陽を浴びて、ボクの自慢のテイオーステップを舞う。これも、ターフの上じゃ暫くお別れ。またね。

 

「だから、責任とって普通の走りでボクに夢を見せてね?凱夏!」

「…本当に生意気なクソガキだなぁ」

「なにぃ〜?」

 

 もう!まぁたそうやって誤魔化すんだから〜!!

 

「…いや。これでこそ不屈の帝王、か」

「え?」

「なんでもねぇよ」

 

 聞き返すボクの背を叩き、寮への帰路を促す凱夏。夕陽を背に、彼はボクに語りかけた。

 

「そうと決まれば、明日から早速フォーム修正だ。気合入れろよ、未来の三冠ウマ娘!」

「……!うん!!」

 

 ホップスキップですぐに追いつき、その腕に纏わり付く。大丈夫、凱夏の考えなら信頼出来る。どこまでも一緒に行ける、行ってみせる。

 

「頑張るぞー、テイテイオー!」

「なんだそりゃ」

「バクシンオー先輩の真似だよ、知らない?」

「アレかぁ。あのノリはどうにも合わんくてな…」

「良いじゃん乗ろうよ〜。せーの、テイオー!テイオー?テイテイオー!!」

「……テイテイ、オー」

 

 

 夕焼けの空の下。僕たち2人の声は溶け合い、どこまでも響いていった。

 前途は多難。でも、何も怖くない。




 視点がコロコロ変わって分かりにくいのが自分でも難点だと思う。いやホント読みにくくてサーセン
 今後直していきたい所存です


 ちなみに前書きの件ですが、兄貴曰く「こういうメロディー被りは別にパクリでもなんでもなく、影響を与え合って進んでいくもの」だそうな。要は慣例らしいっすわ
 そんな中、時を経て更にリメイクされたHeatsがPVに用いられて発表されたゲッターロボアーク。楽しみです(ステマ)
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