パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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 アンケート把握。皆スズカ先輩好きね。俺もそーなの♡

 ちな皆さんが気にしてるであろう確執の全貌が明かされるのは結構後になります。ご容赦を
 深掘りし始めるのは宝塚記念回(8月中旬に投稿予定)だけど、本格的に掘り返すのはその更に後に
●夏合宿(確定。3話ぐらい?)
●テイオーの芙蓉ステークス(無くなるor飛ばすかも)
●秋の感謝祭(短いけど確定)
●毎日王冠(確定。3〜5話?)
●菊花賞(確定。3話?)
●山合宿(確定。2話?)
 を経た後になるからね。仕方ないね。

 今は宝塚編の途中まで執筆してます


私がダービーを獲るまで
スペ、大一番へ!


「フッ…フッ……」

「フンガー!!!」

「くぉおおお!」

「うぇええ〜!!」

 

 ターフをスズカさんが駆ける。その後に私が続く。更にその後ろにウオッカちゃんとテイオーちゃん。

 今、私は皐月賞に向けて絶賛トレーニング中だった。現在やってるのは、逃げウマであるセイちゃん対策の模擬走。

 セイちゃん役はもちろんスズカさんが、そして先行策で行く私を追ってくるであろう大勢の差しウマ役をウオッカちゃんとテイオーちゃんが請け負った。シニア級のスズカさんやクラシック級の私達に比べて、デビュー前のテイオーちゃんは苦しそう。だけど遅れながらもしっかりついて来てるし、何より彼女がこの練習に参加したのには別の意味もあるみたい。

 …って、他の娘の走りを気にしてる場合じゃないよね!今こそ腹にため込んだニンジンを消化して回復です!!目指せURAファイナルズ!

 

「ぬうううう!まだいけますよぉぉぉ!!」

「スペの胃袋はマジで何なんだよ!」

「どういう回復方法ですアレ?」

「アイツのスタミナ維持はおかしい」

 

 隣やラテの外から色々聞こえてるけど気にしません!目指すは目の前の背中、スズカさんの背中!!

 …って!?

 

「ーーーフッ!」

 

 速い!スズカさんが加速した、まだ全然力を使ってなかったんだ!

 でも負けません!!回復した分をスパートに注ぎます、フンガーー!

 

「うわっ、すげぇ」

「無理〜!!」

 

 ウオッカちゃんとテイオーちゃんの嘆きが遠くなる。このまま行きます!たとえ今は届かなくても、絶対にその背中に追いつきますから!

 だから待ってて下さい、スズカさん!!

 

「ーーースペちゃん、おいで」

「…っ、はい!うおおお!!」

 

 2人で走る、風になる。

 今この瞬間がとても楽しくて、熱くなって。だからこそ、同じレースで走れる日を私たちは夢見ました。

 

 

 

〜〜

 

 

「よーし休憩だ!足痛めた奴は自分から名乗り出ろよー!」

 

 ゴール後、皆さんが減速し終えたトレーナーさんの声が聞こえました。私もかなり疲れてるし、良いタイミングですね。

 

「スペちゃん、水よ」

「ありがとうございます!」

 

 スズカさんから手渡された水筒で喉を潤し、同じように喉がカラカラなウオッカちゃん達に手渡していく。そうしている内に、トレーナーさん達も私たちの所に辿り着いたみたいです。

 

「スペはスタミナに関しちゃもう良い具合だな。後はパワーとスピードか」

「えへへ。負ける気がしませんっ」

「その割にはスズカに結局追いつけなかったけどな。あの栄養補給は何度見てもおかしいし」

「ぐっ…し、仕方ないじゃないですか!実家のニンジン美味しいんですもん!」

 

 お母ちゃんのニンジンは本当に美味しいんです!食べたら止まりません!パクパクなんです!!

 …って旨を伝えたら、トレーナーさんも、納得したのか後退りながら引き下がってくれました。理解して頂けたようで何よりです。今度ニンジン差し入れしますね!

 

「テイオー、掴めたか」

「……なんとなくは」

 

 そんな私達のやりとりを眺めてた凱夏さんが声を掛けたのはテイオーちゃん。芝の上に寝っ転がった彼女は、息を荒げながらちゃんと返事してました。

 

「スズカ先輩とスペ先輩、ウオッカ先輩の走り。大体分かったよ」

「えっ!もう把握されちまったのか」

 

 驚くウオッカちゃんと私達。でも、それがテイオーちゃんにとっての目的だからまず何よりも喜ばしいですね。

 えーと、確かテイオーちゃんの走るフォームを制限するんでしたっけ?今までの凄い前傾姿勢を、常識的な範疇に止めるとかなんとか。で、その良い例として私達の走る後ろ姿を見させたのが今回のテイオーちゃんの練習目的だとか。

 

「なら何よりだ。今回も走り方に気を付けてるのが外から見てても分かったし、頑張ったな」

「ニシシ。ボクは天才テイオー様だからね、これぐらいすぐにマスターしてみせるさ」

「その意気だ」

 

 そう言って笑い合い、頭を撫でる2人がちょっと眩しく見えて目を細めた。でも、私とトレーナーさんだって負けてませんよ!

 

「でだ、スペ。さっき言ったようにスタミナは充分と言って良いレベルだろう。それを踏まえた上で、今お前が一番伸ばすべき部分はどこだと思う?」

 

 ふと投げかけられたトレーナーさんの問いかけに、私は少しの間黙り込んだ。伸ばすべき部分って事は、つまり足りない部分って事。次の皐月賞は弥生賞とほぼ同じ条件だから…

 

「パワー、だと思います」

「えっ」

「ふむ。その心は?」

 

 聞き返してくるトレーナーさんに、私はちょっとした確信を持って答えた。

 

「私、まだ先頭集団にブロックされた事が無いんです。前を塞がれた時の立ち回りに自信がありません…なので、パワーで壁を打ち抜こうかと」

「強硬策か。悪くはないと思うぞ」

「もっと言うと、スピードは弥生賞で充分な感触を得てるので、これと言って伸ばす事も無いかなって」

 

 前のレースで、スピードはちゃんと通用した。なら、ここから無理に鍛える必要は無いと思っています。

 それに、なんだか最近速さがあんまり伸びないですし…なら、この際パワーとかの別方面に努力した方が効率的かなって。

 

「…スペがそう思うんなら俺は協力するまでだ。ウオッカ、差しが基本のお前なら前塞がれた時の動き方とか分かってるだろ?一緒に練習して教えてやってくれ」

「んな大雑把な…でもりょーかい」

「テイオーも2人の走りの観察を継続。スズカはゴルシ達と合流して根性トレーニングだ」

「うん!凱夏、行ってくるね」

「おう、気張れよ」

「分かりました。じゃあスペちゃん、また後で」

「はい!スズカさんも頑張って下さい!!」

 

 トレーナーさんからの指示を経て、皆さんがそれぞれの場所に分かれていく。よーし、これからも頑張っぺ!

 

(見ててねお母ちゃん。私、きっと優勝してみせるから…!)

 

 

 

ーSide:Thirdー

 

 

「…で。本気ですか?」

「何がだ」

「スピード、伸ばさないんでしょう」

 

 凱夏からの質問に、西崎は苦悶するように頭を掻く。彼にとっても芳しくない選択だったのは、その様子を見るに明らかだった。

 

「スペシャルウィークの弥生賞ですが、セイウンスカイに坂の後の最終直線で勝ってますね」

「……ああ」

「その反省を生かして、向こうは最後で差されないよう十全に策を練ってくるでしょう。序盤から中盤にかけて飛ばす事で差せない距離まで突き放してくるか、または足を溜めてスパート精度を練り上げてくるか…は分かりませんが、いずれにせよスペは弥生賞時のスピードで満足して良い段階じゃない」

「………ああ」

「このままだと差せませんよ。一冠」

「その通りだ、凱夏君」

 

 口を開く西崎。しかしその口調は、反論というより諭しに近い。

 

「だが、スペの言うパワーの重要性も無視するべきじゃない。この段階で万が一囲まれる危険を考えるのは先見性があるし、今後にも充分活きる。スピカの方針としても、スペのこの意見は尊重されるべきだ」

「それで負けても、ですか?」

「勝ちだけが全てじゃない」

 

 その言葉に、メモを取っていた凱夏の手が止まる。記述をやめ、西崎の言う事をしっかりと脳に刻み込む為であった。

 

「スペはまだ負け無しだ。勿論喜ばしい事ではあるが、だが同時に挫折を知らないと言う事でもある。挫折を知らない競技者は脆い」

「皐月賞で得るであろう挫折は、西崎さんの判断では三冠の夢と引き換えにする価値があるんですね」

「もしテイオーで同じ状況になったら、一旦止めて話し合うさ。でもアイツはテイオーじゃなくてスペだぜ」

 

 2人揃って視線を向けた先には、トレーニング合間に励まし合う2人の姿。彼女達は同じターフの上で励まし合い、しかし見据える未来は別方向だ。

 

「スペは三冠にそこまで強いこだわりを抱いてはいない……」

「飽くまでテイオーと比べたら、の話だけどな。“日本一のウマ娘”ってのは随分と抽象的な夢だが、その分自由度が高くて融通が効く。あとは、その夢を叶えるのに必須なレースに、その時のスペを最高の状態に仕上げる……というのが俺の仕事なんでね」

「………」

 

 手の動作を再開し、記述が終わると同時にメモを閉じる凱夏。その後、西崎に対して一礼。

 

「勉強になりました。なるほど、リギルにいたらついぞ知らなかったであろう見解っすわ」

「いやいやどうも。でも、実は『ウマ娘を勝たせる気無いのか』って怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだよねぇ。ほら、ウチはおハナさんとこのリギルとはまるで方針逆だしさ」

「現状の師に対してそんな大それた事するタチじゃないですし、寧ろそういう新しい環境を求めて来たんだから心配しないでくださいよ。何より“郷に入れば郷に従え”よろしく、ちゃんと今いる場に合わせていく主義なんで」

 

 そりゃ何よりだ、と成人男性同士で笑い合う。それが終わると、次に言葉を発したのは西崎。

 

「でも勘違いしないで欲しいのは、スペに皐月賞を獲らせるという気持ちは今も変わらないって事だ。スタミナはさっき言ったように充分だし、パワーが上手い事作用するのを願うばかりだな」

「そこまで導くのがスピカのトレーナー、って事ですよね?」

「そういうこと!」

「でもアドリブじゃ対応しきれない局面もやっぱりありますよね」

「ぐぐっ……」

 

 言葉に詰まった西崎に対し、凱夏は呆れたように、しかし親しげに苦笑。メモ中の数ページを千切り、目の前の相手に手渡した。

 

「どうぞ」

「これは?」

「スペに関してもそうですが、この一週間でチーム体制に関して思う所を列挙・ひとまずの改善案を草案として作りました。時間が空いたらで良いので、目を通して頂ければと」

「早っ!君よく有能って言われない?」

「凡才が足掻いただけで褒めないで下さいよ。注意すればガキでも見えてくるポイントです」

「子供でも分かる欠点を看過してたのか俺ェ……」

「ちょっ、誇張を含む比喩表現です!真に受けないで!!」

 

 凸凹ながら、スピカのトレーナーはその在り方を歩み寄せていく。凱夏が本当の意味でスピカのサブトレーナーとなったのは、この瞬間が皮切りなのかも知れない。

 

 

 

 そして、皐月賞が開幕する。




 「栄養補給」「食いしん坊」スキルは、本作ではこんな風に「腹に溜め込んだ物を消化してスタミナに回す」イメージ
 にしても、北海道の方言は「けっぱる」「っぺ」ぐらいしか分からねぇ…ウマ娘1期見直すか……
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