パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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前回が「出来がどうにも納得いかない」&「内容的にも実はそこまで重要じゃないから飛ばしても問題ない」ので、ちょっとこれに関して最後にアンケート置いてます


青雲の渇望

「えっ、タイキとスペで模擬レースを!?」

「ああ。いけるか?」

「出来らぁ!……おハナさんに頼むまでなら」

「いや、それは俺がやるよ。君は日程の方の擦り合わせを頼む」

「OKですけど、両者の距離適性が違い過ぎてですね…マイルを走らせるおつもりで?」

「短距離だ」

「おぅふ」

「何も無理に勝ちに行くわけじゃない。格上の走りを直に見せて、多くの物を盗ませるのが目的」

「とすると、おハナさんに借りができますな。恩返しするなら、療養中のグラスの復帰に向けて……勝負勘を取り戻させる為に先行ウマ娘、例えばスカーレットと模擬レース……ってのが落とし所になりそうです」

「そうそう、そういう先見眼を頼むわ。俺の得意分野はその場凌ぎだからな」

「グラスとスカーレットの調子にも依りますがね」

 

 

〜Side:セイ〜

 

 

「これまた盛況だぁ」

 

 スペちゃんとタイキシャトル先輩の模擬レースが開かれると聞いて、来てみれば客席には野次ウマの皆さんがわんさか。まぁ私も人の事言えないし、戦力視察としては上手い具合に紛れて好都合だけどね。

 下には準備運動をする話題の2人。今回は短距離レースらしいけど、どうやって中距離の中でも長めの日本ダービー2400mに繋げるつもりなのやら。お手並み拝見ですな。

 

「…セイウンスカイか」

 

 呑気に考えていた折、後ろから掛けられた声。おかしいな、そこそこ隠れてたつもりなのに。

 

「えっと……牧路さんだっけ。エルちゃんにグラスちゃん、今はスペちゃんがお世話になってます」

「こっちは皐月賞でスペが世話になったな。見事な走りだったよ」

「それはどーも」

 

 元リギルの、そして今はスピカのサブトレーナーさん。名前は友達越しにそこそこ聞いてたけど、面と向かって話すのは初めてかも。

 

「ここに来たのは明石さんの指示?」

「いや、ふと立ち寄ってみただけ。トレーナーさんはそういうのをする人じゃないでしょ」

「それもそうだな」

 

 私のトレーナーさんは、大らかで優しい人だ。私の自由気ままなペースに合わせてくれるし、その上でしっかり踏んでおくべきステップを用意してくれる。昔から敏腕らしいけど、彼と出会えて良かった。

 あの人が担当しているのは、私とキングちゃんと新入生。この3人が大成したら引退するつもりらしい。

 だから、彼が満足出来るよう、悔いを残さないような走りをしたい。その為に、私は三冠を目指している。

 

「で、キングヘイローは?別の所にいるのか」

「彼女なら今頃トレーニング中だよ」

「スタミナか」

「!」

 

 驚いた。何で分かったんだろう?

 

「…そう考えた理由は?」

「いや……キングヘイローってのは()()()()()()()だろう」

「ははぁ、教えるつもりは無いって事ね」

「…そういう事で良いや。お前だって、本当にスタミナかどうかを答え合わせしちゃくれないだろ」

「そりゃライバルチームだし」

『只今より、タイキシャトル対スペシャルウィークの模擬レースを始める!』

 

 エアグルーヴ先輩の号令が聞こえて、私たちは視線を再び前へ向ける。見れば、スタート地点にスペちゃんとタイキ先輩が既にスタンバイしていた。

 

「…ヘイローにとって得なレースだと思うんだがなぁ」

 

 そんな彼の呟きが聞こえた瞬間、レースがスタート。2人ともに良いスタート……いや、経験の差でタイキ先輩の方が好スタートを切った。

 タイキ先輩が先行して、その後ろをスペちゃんがついて行く感じ。見たところ、スペちゃんはやっぱりついて行くので精一杯って感じ。私もタイキ先輩の短距離ペース相手じゃ分が悪いだろうなー、先頭には立たせてもらえないだろうし…などと考えながら、なおもレースを注視する。

 

「はてさて。スペちゃんに何か秘策があるのかね?」

「さぁ?この話を持ち出したのは俺じゃなくて西崎さんだし」

「あれま」

 

 という事は無策の可能性大。学び全振りでこのレースを設けたらしいスピカトレーナーさんに、私は幾らかの猜疑心を抱く。

 学ぶのは良いけど、それで負け癖がついたらどうするつもりなのだろうか?スペちゃんが凹む姿はあんまり見たくないなぁ。

 

(…皐月賞でスペちゃんを負かした私が言っても説得力無いけど)

 

「……ん?」

「おっ」

 

 と、ここで気付く。スペちゃんが、想定してたより楽そうに走っている事に。

 

「スリップストリーム…だったっけ」

「知ってるのか」

「昔聞いた事がある程度にね」

 

 本当は夜に1人で勉強して知ったんだけど。ま、これは他人に見せびらかすような話ではない。

 タイキ先輩が掻き分けた風の合間を、その背後で縫うように走るスペちゃん。成る程、これを学ばせたかったのかな?スペちゃんが短距離苦手な以上、ほぼ確実に相手の背を追う形になる訳だし。

 ……でも。その教訓は結果に見合う物だろうか。

 

「っ…!」

 

 坂路に入ったその瞬間、スペちゃんの喘ぎがこっちまで聞こえてきたように感じた。

 ペースを落としたスペちゃんに対し、勾配なんて関係ないとばかりにスピードを緩めないタイキ先輩。その差で突き放され、スリップストリームの恩恵を受けられなくなる。ぶり返した風を受けて、フォームが一瞬乱れたのが見えた。

 

「坂路のペース保持はやっぱり課題だよなぁ。お前の方は解決してるか?」

「ボチボチかな、って言っときますよ」

「小癪なボカし方だぁ」

「褒め言葉として受け取るね〜」

「あぁ、そのつもりで言った」

 

 軽口を叩き合いながらも、しかし私の中に浮かんだのは懸念。ボチボチとは言ったけど、実は私も坂路のスピードダウンを解決出来てはいない。

 トレーナーさんとの話し合いで()()()()が良いんじゃないかって話はついてるんだけど、いまいち身につかないんだよね……。

 

「なんとかならんかねぇ」

 

 そう呟いた、その刹那だった。

 

 

 スペちゃんの走りが、()()()()

 

「「ッッ!?」」

 

 隣の牧路さんと、揃って柵から身を乗り出す。この瞬間を見逃してはならないと本能が告げている。

 相変わらずの坂路が続き、しかしスペちゃんのペースが上がっている。でも掛かってる訳じゃない。ならどうして?

 と、ここで気付いた。スペちゃんの足の回転率が高まっている事に。

 

「これは…」

 

 なんてこった。先を越された。

 “ピッチ走法”。歩幅を短く、その分足回しを早く。階段を駆け上がるように坂を蹴る、それによりペースを保つ。

 そういう理屈だとは分かっていた。でも体に思うように馴染まなかった。だというのに。

 

「スペちゃん…っ!」

 

 あのライバルは、ただの一回でそれを超えていった。今度は私が置いていかれたんだ!

 

「『一度の本番で学べる事はトレーニングの数倍』、か……」

 

 牧路さんが呟いたのは、スピカのトレーナーさんの言葉だろうか。完敗だ、さっきまでの猜疑心なんて吹き飛んでしまった。ここまで学び取られてしまっては認めるしか無い。

 スペちゃんのペースが上がる。スリップストリームの領域に再度入って、でもそこに収まらない。今度は並び始めた。

 タイキ先輩も、それに応じてテンポアップ。レースはいよいよ終盤を迎え、その熱気に触発された観客席から歓声が上がる。

 ……って、ゴール係の人寝てるじゃん!ヒシアマゾン先輩何やってるんですか!?

 

「ちょっ、これじゃレース終わっても結果が……」

「任せろ」

「えっ」

 

 私を制したのは牧路さん。そのまま息を吸ってーーー

 

 

「ア゛マ゛ゾ゛ン゛ッ゛ッ゛!!!」

「わっーー!?」

「ふぉおっ!!」

 

 凄い怒号。私を含む周囲の娘達までビックリしたけど、お陰でゴール係の人が飛び起きた。

 よし、これで心置きなくレースを見れる!

 

「ウマ娘は度胸だー!」

「「「「いけぇーっ!!!」」」」

 

 どこからか聞こえてきた声援を受けて、スペちゃんが更に加速。絶対に置いていかれない、タイキ先輩から離れない。

 そこで私は気付く。走ってるスペちゃんの顔が、とても明るい事に。

 

(楽しんでるんだ。この状況を、このレースを)

 

 好きこそものの上手なれとは言うが、もしかすると彼女の為の言葉なのかも知れない。

 私だってレースを求める気持ちでは負けてないつもりだけど、これに関しては一歩遅れていると言わざるを得ないだろう。

 そう、分かったんだ。

 

(彼女は、折れないんだ)

 

 楽しむ気持ち。負けてもへこたれない強さ。それが彼女の強さなんだと。

 きっと、スピカトレーナーもそれを信じてスペちゃんをこのレースに送り出したんだ。

 ……だからこそ。

 

(負けたくないなぁ)

 

 勝利への欲求が胸を満たす。あの娘に勝ちたい。私に無い物を持ってる彼女に、だからこそ勝ちたい。幸せそうにレースを走る彼女に対し、私は勝って幸せを手に入れたい。

 

 ゴールを2人が駆け抜ける。僅差だけど、勝ったのはタイキ先輩だった。流石はG1ウマ娘、といったところか。

 でも、私の相手は彼女じゃない。

 

「じゃね、スペちゃん」

 

 チーム仲間に群がられて笑みを零す彼女へ餞別の言葉を送る。さて、私も頑張らないと追いつけないや。

 私はああいう風に他のウマ娘を巻き込んで何かするのは性に合わないし、だからスペちゃんみたいに模擬レースで勘を掴むなんて器用な真似は難しい。それに私のメンタルの場合、負けたらそれで調子を落としそうなのが怖いし。

 ならば努力で上回るしか無いだろう。さぁ、お邪魔虫はとっとと帰って自主練だ。

 

「セイウンスカイ!」

 

 そうやって去ろうとする私に掛けられる声。その主である牧路さんに、私は何事かと向き直る。

 

「何だね?パクるの禁止、って感じの釘刺しかい?」

「いや、それは普通に自由だからオーケーだ。ただな……」

 

 一瞬の言い淀みを経て、彼はこちらへと瞳を向ける。その視線に並々ならぬ物を感じ、私は身構えた。

 なのに。

 

「…足、大事にしろよ」

「……えっ、うん」

 

 出て来たのはありきたりな言葉で、ちょっと拍子抜けした。まぁでも、善意はありがたく受け取っておきますか。

 

「スペちゃんによろしく言っといてね。負けないから、とも」

「あぁ。良いレースにしようぜ」

「どうも〜」

 

 さて、言うべき事は言い終わった。後は、私が私のやるべき事をやるだけだ。

 溢れ出さんばかりの熱意を胸に、私はチームの部室へと駆け戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………屈腱について、言っとくべきだったかな」




ヒシアマ姐さんを起こしたのは読モ特有のシャウト。あれをタイマンで受けてビビらない奴はいねぇ!俺だったら小便漏れ散らかして心停止する!!
さぁ、皆さんも一緒に!せーの、


\Σ/

前話「スピカの変遷」について

  • 無い方が良いよ
  • 書き直した方が良いんじゃね?
  • このままでおk
  • 二度とそのツラみせるなバカたれ
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