パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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 えー、現在大学課題により執筆が滞っております。ストックがしっかり削れつつあります
 8/20に投稿予定の話までは完成しておりますが、それ以降は不透明です。ご容赦を


臨む勇姿

 地下バ道で、皆とスペ先輩を見送った。

 皆で作ったお守りを渡して、スズカ先輩からのエールを受けて、スペ先輩は駆けていった。その背中には、一欠片の不安も見当たらなくて。

 

「マックイーンの四葉のクローバー、効いたみたいで良かったね」

「そんな薬みたいな…所詮は(まじな)い、作用するとしても気分だけです」

「その気分について言ってるんだけど。マックイーンも強情だね」

 

 皆と観客席に向かう途上で、ライバルを揶揄うものすげなく跳ね除けられる。でもちょっぴり赤面してるのは隠せてなくて。

 

「カワイイなぁ」

「…!?か、カワッ……」

「えっ、口に出しちゃってた?!」

 

 えぇーっ!内心に留めたつもりだったのになんで!?

 

「そ、そういうのはお慕いする人にとっておいて下さいな!それにわわ私は、可愛いより“美しい・気高い・格好良い”の方を目指しておりますので」

「ご、ごめん…」

「いえ、謝って欲しい訳ではないのですが…」

 

 そっか、こういう言葉って好きな人にとっておくべきなのか。マックイーンには悪い事しちゃったなぁ。

 でも凱夏は可愛い系じゃないしなぁ…。

 

(……それに、マックイーンはもう既に充分綺麗だと思うけど。目指すまでもなく)

 

 思い出すのは、この前の学園集会の時に見た微笑み。あんなに綺麗なのは今まで見た事がないと、今になっても思う。

 その時の光景を目蓋に浮かべると、また心臓がトクンと震えた。

 …あれ?なんか顔が熱い。

 

「どうしました?もしや体調が…」

「ううん、なんでもない」

 

 嫌だ。なんだか分かんないけど、マックイーンにだけはこの顔を見られたくない。

 

「ヘイヘーイ!マックちゃん青春してるかー?」

「急に飛び込んで来ないでくださいまし!」

 

 いつも振り回されているゴルシ先輩の乱入に、今日ばかりは助けられた。先輩に気を取られたマックイーンからそれとなく距離を取り、1人深呼吸。

 うん、落ち着いた。戻ろう。

 

「うぇーん、マックイーンが釣れねぇよォ。今度すごいつりざお持ってこよっと」

「そういう話ではないでしょう…あらテイオー、もう大丈夫なのですか?」

「うん、心配かけてごめんね」

 

 ふう。何だったんだろ、今の。

 

 

 

 その後、ゴルシ先輩がどこからともなく取り出した釣竿でマックイーンを釣ろうとしたり、しかも先端にスイーツ無料券があった物だからマックイーンが本当に釣られそうになったりしてテンヤワンヤになりながら、ボク達は漸く観客席に辿り着いた。出迎えてくれたのは、勿論トレーナーの2人だ。

 

「おう、スペの邪魔とかはしなかったかー?」

「する訳ないでしょこんな時にィ!」

「大体、ああいう時は真っ先にアンタが励ますべきでしょうがトレーナー!」

 

 茶化したトレーナーに突っかかるウオッカ先輩にスカーレット先輩、それを遠巻きに眺めて囃し立てるゴルシ先輩に呆れるマックイーン。そんな彼女達の姿に、僕は思わず苦笑するしか無い。

 

「テイオー」

 

 そんな折に掛けられた声は、もちろん彼の物だった。

 

「何?凱夏」

「スペの見送りは無事に終わったっぽいから良いとして。次は観客としてやるべき事がある、ってのは分かってるな?」

 

 当たり前。僕を見縊らないでよ。

 スペ先輩の応援と、出走者の走りの観察。そして、僕が目指すクラシック三冠の“空気”を知っておく事。でしょ?

 

「あぁ。前の皐月賞では落日を味わった分、今回は栄光を見るぞ。気を引き締めろ」

 

 …栄光、かぁ。

 スペ先輩の皐月賞はとても残念な結果だった。あんなに頑張ったのに、彼女は1冠目を取れなかったんだ。

 努力は自分を裏切らないけど結果は裏切る。頭でそう分かっていても、目の前で、それも親しい人の身を以て見せられてしまえば話は別。レースで敗北するという事が、夢破れるというのがどういう事なのか、ボクは擬似的に味わった。

 所詮ボクは傍観者だから、実際に自分が同じ目に遭ったら比じゃないくらいの絶望に襲われると思う。でも、それに対する覚悟が出来たのは、自分でも大きいと感じるんだ。

 負けたくない。この喧騒を、他のウマ娘の物にして堪るか、と。

 

「…スペ先輩、勝てると思う?」

 

 その上で心配なのは、やはり今回もまた当事者である先輩の事。

 凱夏の言う通り、今回こそ彼女には栄光を掴んで欲しい。でも、前失敗したからって次の成功が約束されるだなんて、そんな理屈は通らない。

 相手は前負けたセイウンスカイ先輩だけでなく、あのエルコンドルパサーまでいるんだから。

 

「勝つさ」

 

 ボクの疑問に、凱夏の答えは飽くまで淡々としていた。

 

「俺の知るスペシャルウィークは、ダービーを獲る。絶対に」

 

 でも、続く言葉に滲んだ震え。それを聞いて、ボクは考えを改め直す。

 凱夏も不安なんだ。でもスペ先輩を信じているんだ。彼女の頑張りを、その夢への執念を。

 振り返れば、同じように真剣にコース上のウマ娘達へ視線を送るトレーナーや皆の姿。

 そうだよ、だからこそ信じてるんじゃないか。応援するんじゃないか。

 たかが応援する立場なのに、こんな所でへこたれてるんじゃないよ、トウカイテイオー…!

 

「スペせんぱーい!頑張れぇー!!」

 

 まだ始まってもないけど、準備運動をしてるスペ先輩への必死のエール。それが聞こえたのか、彼女は振り返ってピースサインを送ってくれたのだった。

 

 

 

〜Side:スペ〜

 

 

「気合入ってますねぇ」

 

 セイちゃんの言葉に、自分の事ながら私は苦笑した。その揶揄いに反論出来ないくらい、私の身体には気力が充実してる。それはもう、一つ間違えたらその瞬間に空回りしそうなぐらいに。

 胸ポケットが熱い。それはきっと幻覚なんかじゃなくて、心の熱が確かにそこに籠ってるから。

 ゴールドシップさんが提案して、マックイーンさんが見つけた四葉のクローバー。

 それを元にウオッカちゃんとスカーレットちゃんとテイオーちゃんが作った、押し葉のお守り。

 精一杯のエールと共にそのお守りを託してくれた、スズカさんの心。

 皆の想いが今、私の中で熱く燃えている。

 

「セイちゃん。私、負ける気がしないんだ」

「っ…へぇ、こりゃ恐ろしいや。かしこみこしこみ」

 

 

「私に対しても、デスか?」

 

 反対側から発せられた気迫は、その熱をも払ってしまいそうな重さ。でも、私だって一歩も引かない。引く訳にはいかない。

 

「うん。そうだよ、エルちゃん」

「……それは私も同じ事デス。スペちゃん、アナタに…スピカにだけは負けません」

 

 チャームポイントの不適な笑みも無く、真剣な表情で告げてゲートに入っていくエルちゃん。らしくもない彼女に戸惑いつつも、しかしその事情なんて私には関係無い。

 私は走ります。皆さんが待つゴールに向けて、全力で。

 

「スペせんぱーい!頑張れぇー!!」

 

 テイオーさんの声に振り向けば、手を振る皆の姿。来年の三冠を目指す彼女の為にも、先輩としてその背中を見せてあげましょう。

 そう思ってピースサインを返すと、その横で微笑むスズカ先輩の姿も見えました。

 憧れの先輩。私の遥か前を走るウマ娘(ひと)。ゴールのその先で待ってる光。

 

(スズカさん。私、けっぱるべ!!)

 

 取り繕いの無い素の感情で勝利を誓い、私は笑ってゲートに向かいました。

 見ててね、お母ちゃん。私が皆と走る姿を。




 ゲッターロボアークの主題歌「Bloodlines~運命の血統~」ですが、2番の歌詞好きなんすよ俺。特にサビに入った直後の部分
 ああいう風に「自分じゃない他者の心を託され、背負い、立ち上がる」っていうのにどうにも弱い。まぁゲッター線は星を泣かせる側なんですけどね

 後書きがストーリーと全く関係ない?すみませんが俺はフリースタイルなので…
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