中編は明日
あと、やっと執筆再開できそうです
ストックがもうヤバイ
「来てくれたんですね、先輩」
「こんな代物使う間抜けさんの顔を一目見たいと思ってな。果たし状って何だよマルゼンでもやらんぞ」
「えー!格好良いじゃないですか!!グラスさんならワンチャンやりますよ!」
「…地味にあり得そうなポイント突いてくるのやめーや」
(え…誰あの
今日はミークのデビューレースで、本人から誘われたから、凱夏を誘って一緒に見に行こうとしてたボク。でも、学園の中で運良く彼とすれ違って。
どこへ行くのかなぁと、コッソリ後を尾けてみれば。
(え?え??本当に誰なのあの人。知り合い?親しいの???)
「じゃ、行きましょうか」
「ん。お手並み拝見といきますかね」
(ちょっ!)
慌てて追いかけようとしたその時、誰かに肩を掴まれて隠れていた茂みに引き戻された。その犯人は、薄紫の葦毛を束ねてボクを見下ろしている。
「何をしているかと思えば、探偵の真似事ですか?テイオー」
「ちょっ、マックイーン!あれ!あれ!!」
「あれ?一体何の事…あらまぁ」
並んで歩く男女に今気付いたのか、マックイーンは口に手を当てて感嘆。って、それどころじゃないよォ!
「早く追いかけないと!」
「追いかけるって、それこそ思い留まりなさいな!人の恋路を邪魔する不埒者は、ウマ娘に蹴られて死んでしまうという逸話が古事記にも記載されておりましてよ」
「知るもんか!凱夏はボクだけの物だもん!!」
「貴女ってウマ娘は……ミークさんからのレース招待はどうするのですか!?」
「間に合うように打ち切るからそれまでは許してよォ!」
「あぁもう、これは仕方ありませんわね…」
呆れたように呟く彼女に、ボクは懇願するように上目遣い。これで言う事を聞いてくれなかった人はいない!いけるーっ!!
「なんでこうなるのぉ……」
「じゃあどうなるのがお望みでしたの…」
ハーネスを付けられた。どうして…どうして……。
ボク聞き分けの利く良い子なのに。
「こうして着いて行って差し上げてるのですから、文句を言わないでくださいな。ほら、目標のタクシーが曲がりますわよ」
「うぅ……運転手さんそこ右ぃ」
という訳で、ボク達は今一緒に凱夏達の乗ったタクシーを、同じくタクシーに乗って追跡してる訳なんだけど。
「ねぇマックイーン。これって…」
「ええ。ミークさんのデビュー戦の会場へのルートですわ」
という事は、ボクに誘われずとも凱夏は見に行くつもりだったのかな。あの女の人も、ミークや同じレースに出る娘のトレーナーさんだったりして?
「何にせよ好都合ですわね。私としてもサブトレーナーさんが色恋に腑抜けられてしまっては困りますし、邪魔しない程度に監視を続けましょう」
「なんだかんだでマックイーンもノリノリじゃん。えーと、人の恋路を…何だっけ?」
「だから!邪魔しないようにと!!言ってるでしょう!!!」
「…まぁ、それはそれとして。ミーク、勝てるかな」
「私達は校舎でのミークさんは知っておりますが、練習やレースでの姿は見た事がありません。今回で真価を測る、という形になるでしょう」
「うぅむ……」
「何を弱気になってるんですの?ライバルとして堂々となさい」
「そう言われてもさぁ」
あの集会以来、時折ミークと会話を交わして、彼女のレースに対する意欲は生半可な物ではないと分かってきていた。でもレースは単なる走りじゃなくて勝負だ。
あの大人しそうなミークが、他人に対してそこまでバチバチに火花を滾らせるイメージがどうしても湧かない。集会直後に向けられたあの視線を、あと何回か見れてれば実感も違ってたんだろうけど……あれ以来見れてなくて印象が薄れてしまっていた。
「っと、凱夏さん達が案の定レース場前で降りましたわ。私たちも行きましょう」
「う、うん」
ミークの未来と凱夏達の行方。その二つに気を揉みながら、ボクはマックイーンと共に地に足をつけた。
〜Side:桐生院〜
「そう言えば先輩。果たし状の中身は読みました?」
「あぁ、読んだが…なんつーか」
あれ?何か変な内容だったんでしょうか。
ミークがそんな事を書くとは思えませんが……。
「どっかで見た覚えがある文調なんだよ。誰が書いたんだ?」
…おお!そういえばミークは凱夏先輩と昔会っていたと言ってましたが、先輩の方も覚えてらっしゃったという事ですか!
いやはや、世界は狭いですねぇ。感動の再会に、部外者の私も思わず涙しそうです。
「おわぁ!急に泣くな!」
「あっ涙腺から漏れ出てました?すみません」
「お前って奴は……初めて会った時はこんなに感情暴走させる奴だと思わなかったぜ」
「先輩達の前だけですよ」
他の人相手にこんな事するもんですか。そう思った頃合いで、タクシーが競技場前に到着しました。
ここから私はミークの待つ控え室に。先輩は観客席にそれぞれ向かいます。
「そういや、お前の所のウマ娘……ハッピーミークだったか。勝てると良いな」
「あれ、知ってましたか」
「そりゃお前みたいな期待の新星が育てるライバルだからな、警戒すんなって方が無理だ。顔はまだ知らんが」
「ふふっ、嬉しい限りです……でも、勝ちますよ。貴方のテイオーが勝ったように、そしてそれ以上の圧倒で」
「そりゃ楽しみだ」
そう言って正面入口に消える背中を見送り、私もまた自分の道を歩き出す。さて、レース前のトレーナー最後の一仕事です!
「よし、女の人の方を尾行だ!」
「普通逆では?」
「凱夏とはいつでも合流できるもん。それよりあっちの素性を確かめないと!!」
「いよいよストーカー地味てきましたわね……」
〜Side:ミーク〜
「自分のトレーナーに対して高飛車に振る舞うウマ娘は数見てきたが、小間使いのように扱う奴は初めてだ」
「えへへ」
「褒めてないが」
おハナさんの言葉に、私は首を傾げた。何が悪かったのかな?
「桐生院さんが私に同じような事を頼んできたら、喜んでしますが」
「そういう話ではないだろう…全く、お互いへの信頼が昂じ過ぎるのも考え物だな」
そう言って眉間に皺を寄せる彼女に、私は掛ける言葉も無い。えーと、この人がこういう表情になった時はどうすれば良いんだっけ。
助けてトレーナーさん!
「呼ばれて飛び出てお待たせしました!桐生院葵です!!」
「トレーナーさん!おハナさんを慰めて」
「桐生院さん、この娘の手綱をちゃんと握りなさい」
「えーと、この場合どっちの指示に従えば良いんですかね?」
待っていた人の到来に、表情がパァッと明るくなるのが自分でも分かった。
桐生院さん。トレーナーさん。ボーッと生きてるだけだった私を導いてくれた人。これからを導いてくれる人。
「桐生院さん。デビュー戦は重要だけど全てじゃないわ。疎かにせず、だが囚われないように」
「勿論です。通過点としてしっかり踏み締めて参ります」
「それで良い……そしてミーク。お前の走り、楽しみにしているからな。出し切って来い」
「うん…!」
そんなエールをくれて、おハナさんが控え室から出て行く。後に残されたのは私とトレーナーさん。
「ミーク、作戦は覚えてますね?」
「分かってる」
リギルに入って得てきた経験。それを最大限効率的に、最大限効果的に発揮出来るように、トレーナーさんが入念に組んでくれた作戦だった。
これで、勝つ。トレーナーさんが信じてくれた私自身の為に。
「では伝達・確認事項です。距離2200の右回りコースで本日の天気は曇り、バ場は雨上がりで不良。そして出走者の内訳予想は」
「逃げ3、先行6、差し2、追い込みは無し」
「上出来です。そして最後にですけど、凱夏さんはミークの名前を知ってましたよ」
「問題無いです」
「よし」
全てが終わると同時に、私は立って顔を上げた。雲母色の瞳と視線が重なった。
「行きましょう、ミーク。私達の勝利街道を!」
「おー…!!」
「…で。控え室前で耳立ててまでライバルチームの偵察とは、粋な真似をするじゃないかスピカ新入生」
「申し訳のしようもございません……」
「何さー!凱夏が悪い人に騙されてないか見張ってただけなのにー!!」
「ルドルフに言うぞ」
「ゴメンナサイ」
「……しかし、ミークさんと彼女の間には、この時期にしてもう既に確固たる信頼関係を築いているのですね。素直に感心し、そして尊敬しますわ」
「流石はメジロ家の御令嬢、話が分かる。桐生院は本当に面白い新米でな、この写真を見てみろ」
「まぁ…!なんと可愛らしい。これを間近で拝めるミークさんが羨ましいですわ」
「ちょっ、おハナさん!マックイーン!ボクにも見せてよー!!」
「だろう!?凱夏君は頼りになるビジネスパートナーといった感じだったが、彼女はなんというか愛くるしい妹って感じなんだ。私自身も、こんな感情を抱く事になるなんて思わなかった」
「
「マックイーン?????」
「やらんぞ。あとトウカイテイオー、お前のような反省の色が見えん悪餓鬼には絶対に見せんからな」
「ワケワカンナイヨー‼︎」