詰め込み過ぎて進まない
そんなに重要な話でもないのに
地獄ゾ
あとごめんなさい、やっぱ全然執筆再開出来てません
就活きっつい
『3枠、ナイスネイチャ』
『まずまずの仕上がりですが気合は充分。好走を期待したい所です』
パドックでウマ娘がジャージを脱ぎ捨て、その肢体を曝け出す……というと多大な語弊がある出走者紹介。その場に凱夏はいた。
「ナイスネイチャ、今日が出走日かぁ。って事はどこかに南坂もいんのか?」
付近を見回すが、それらしい姿は見えない。それに桐生院のウマ娘も出るレースだというのにこのバッティング、2人は把握しているのだろうか。
(…いや、してない訳が無ぇわ。なんか考えがあるんだろ)
そう思いながら見つめた先で、ナイスネイチャは脱ぎ捨てたジャージを拾いって奥に引っ込んでいった。そそくさ、という言葉がかなり似合いそうな所作だった。
「…やっぱ本人に拾い直させるのシュール過ぎるだろ。ジャージ回収係でも設けた方が良いってコレ」
「もうウマ娘達自身で拾うのが慣例よ。わざわざ人件費を消費してまでやる事は無いわ」
「ふぉおっ!?…あ、おハナさん」
「久しぶり。あなたの所のじゃじゃウマ娘を回収したから、しっかり面倒見なさい」
「えっ」
そう言って両脇に渡されたのは、鹿毛と芦毛の少女達。それを見て、凱夏は目を丸くする。
「テイオーにマックイーン…?なんでお前らがここに」
「桐生院さんとハッピーミークの作戦会議を盗み聞きしてたわよ」
「おぅふ……」
「えへへ、つい」
「すみません…」
2人を下ろし、自分の両隣に立たせる凱夏。ちなみにテイオーのハーネスはしっかり手に持った。
「でもなんでそんな事してたんだ?葵の奴とお前らに縁なんてあったか?」
「とぼけないでよー!凱夏が桐生院さんと仲良さそうだったから監視してただけだもん!!」
「えぇ…おハナさん、俺がアイツと仲良かったら何か問題ありましたっけ」
「……今度グラスワンダーの相談に乗ってやるとするか」
「なんで俺の方見て溜息つきながら言うんですかね???」
「これはテイオーも難儀しますわね……」
「???????」
女性全員からのジト目を喰らい、凱夏はタジタジ。西崎がいれば彼の側についてくれたかも知れないが、今ここにいない以上は孤立無縁である。
「まぁそれはそれとして、私達は桐生院さんではなくミークさんの方と縁がありましてよ。URAファイナルズ開催が発表されたあの日、3人で優勝宣言を競いましたもの」
「ほう、そんな事が。ミークは私の前では中々内心を見せてくれないが、そんな熱さも秘めていたんだな」
「知らん間に交友が広がってるぅ」
「え、凱夏はミーク知らないの?ミークは知ってたみたいだけど」
「知らんなぁ」
記憶をあらかた探ってはみるが、それらしい名前のウマ娘とかつて会った記憶は皆無。凱夏にとってハッピーミークとは、入学生一覧名簿の中の文字だけの存在である。
なのに向こうは此方を知っている、というのは彼にとってどうにもむず痒い状況で。
「胸騒ぎがするなぁ」
「あっそうだ、今何番まで登場終わった?ミークは12番だった筈だけど」
「3番のネイチャまで終わったぞ?」
「えーっ、ネイチャも出てるの!?知ってる娘がいっぱいだぁ」
「そっちとも知り合ってんのか」
「クラスメートだし」
そうやって客席で見守っている間にも、パドック紹介は進んでいく。
そして今、11番の登場が終わった。
「いよいよ次だね」
「楽しみですわ!どんな仕上がりにしてきたのか」
「リギルの秘蔵っ娘、拝見させていただきますよ」
「ふっ。期待を裏切る事は無いだろう、とだけ言っておくわね」
『これが最後の出走ウマ娘です。12枠!』
各々の待ちわびる声を受けて、いよいよ幕が開く。はためく布の向こうに、白毛が閃いた。
『ハッピーミーク!!』
ジャージを脱ぎ、少女はその姿を大衆の前に見せた。
その動作に荒々しさも勢いも無い。ただ脱ぐだけで、捨てると言うより置くといった方が近いジャージの放り方。顔も無表情で、覇気を感じ取れなかった他の出走ウマ娘は彼女を意識から外す。
だが、テイオーとマックイーンには分かった。
「凄い……」
呟いたのはテイオーである。
「何だろう、姿勢?それとも体幹?凄くしっかりしてる」
「それだけではありませんわ」
次いで口を開いたのはマックイーン。
「足の筋肉、付き方のバランスが理想と言って良いレベルです。アレから放たれる加速を思うと身震いしますわ」
天下の桐生院家と謳われるだけある、と彼女はミークに施された育成を褒め称えた。
「熱意の隠し方もここまで来ると天性の才だな。第一印象で、ほぼ完全に他のウマ娘は愚か観客のマークからすら外れてみせるとは」
冷めた周囲の反応にほくそ笑むのは東条ハナ。そんな彼女が次に視線を向けたのは、隣の元愛弟子。
「で、あなたは彼女をどう見るかしら?凱夏君」
「凱夏!」
「凱夏さん」
三者三様に呼びかけられた彼は、未だ口を閉じたままだった。
その目は、壇上に立つウマ娘に向けられ見開かれている。
「……凱夏?」
最初に異常に気づいたのはテイオーだった。
凱夏の様子がおかしい。
「……しろ」
一筋の汗。震える喉。
それでも、刮目した視線を外せない。
「
震える声で紡がれたその名前、その真意を図れる者はこの場にはいなかった。
やがて、ジャージを拾ったミークが振り向く。視線が合う。
「「!!」」
お互いを再認識した2人。
凱夏は尻餅をついた。
ミークは初めて感情を見せた。
笑ったのだ。口角を上げて、その瞳に炎を垣間見せて。
しかしそれも一瞬、すぐさま無表情に戻り天幕の奥へと戻ってしまう。
「ど、どうしたのですか…?」
腰の抜けた凱夏を見下ろす姿勢で、マックイーンが心配の声をかける。それに対し凱夏は、口に手を当て思案する様子。
「…いや。こう見えてお前達が思ってるような深刻なダメージは受けてない。ただ本当に予想外でビビった」
「あなた、まさかグラスワンダーだけでなくハッピーミークにまで粉かけてたの?いつの間に?」
「だから何でそこでグラスが出て来るんすかハナさん!?」
「凱夏はボクの物でしょーっ!!」
「お前は何と張り合ってんだテイオー!」
仮専属同士で揉み合いになりながら、少しずつ衝撃から立ち直っていく凱夏。抵抗するテイオーをお米様抱っこし、2人でスタスタと歩き出してしまった。
「どこ行くのよ」
「観覧席です。4人分取っとくんで、ゆっくり来て下さい」
「そ、ありがと。気分悪くなったら言いなさいね、あとこっちも4人分の飲み物買っておくわ」
「あざます」
「あっお待ちなさい、私も一緒にテイオーの面倒を見ますわ!おハナさん失礼します」
3人と1人に分かれ、凱夏はコース前へと続く道を行く。既に多くの人が流れ込んでいる観客席、しかしトレーナー業のサガで人混みを掻き分ける技術を身につけていた彼にとっては既に些事。
(…しかし、なぁ)
そんな余裕の中で、彼は物思いに耽けた。
(あれから7年か。そりゃアイツもそういう歳になるわな、そういや)
その時、湧き上がる歓声。どうやらウマ娘達が本バ場入場し始めたらしい。テイオーとマックイーン達と共に手頃な席を確保し、その様子を眺める。
出て来た。曇り空の下でなお、明るく煌めく白毛。
『凱にぃ。私ね』
帰り道、振り返って来た小さい背中を思い出した。それが、彼女の後ろ姿と重なった。
『私ね、凱にぃと一緒にーーー』
ーーーポツ、ポツ。
顔に付いた水滴。天蓋の横から吹き込んだ空からの水滴が、凱夏を現実に引き戻す。一度通り過ぎた雨雲が、未練がましく戻ってきたようだった。
自らが後に“白”に塗り潰される事も知らぬまま、のうのうと。
この話は早めに終わらせたいので明日も投稿します