パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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ベターマン最近見たんだけど面白過ぎひん???
気持ち悪りッ、やだオメェ…な恐怖がワンサカで良い具合に鳥肌が立つ。謎の配分と解決もカタルシスがあって実に好み

あとセーメと《R-18》してチャンディーに《R-18G》されたい


光あらば影あり、影より出ずる光あり

「たはは。少しは意識して貰えましたかな?」

 

 レース直後に強さを増した雨。その中で、バ道に戻ろうとした私は後ろから声を掛けられた。

 振り返るとそこには、私が唯一()()()()()赤毛のウマ娘の姿。泥だらけの汗だらけ、雨に顔を濡らして息も荒い。

 きっと、最後に存在感を放ってきたのもこの娘だと思う。

 

「あなただけだよ。私を躱したの」

「躱した?冗談はやめてくださいな、それは君の方でしょ。凄い差し足だったじゃん」

 

 そういう意味じゃない、とは言えなかった。気付いてしまったから。

 彼女は泣いていた。きっと彼女自身も、雨で気付いていない。

 

「キラキラウマ娘ってのは、良いですなぁ」

 

 笑いながら言うのは何故か。きっと隠せているつもりなんだ。こちらを気遣わせないよう、無意識に強がっている。

 

「お互いに影響与え合って、もっと輝いてさ。それで光が強くなる程、私たちも追いかけ甲斐がある…的な?」

「……その」

「って、何ポエムってんのアタシ!恥っず!!」

 

 ああ、そうか。この娘も勝ちたかったんだ。

 私にとってのトレーナー(桐生院さん)と同じように、きっと勝利を捧げたい人がこの娘にもいたんだ。

 それを、私が阻んだ。

 

「と、とにかく!アタシもいつか、キラキラの仲間入りするから!」

 

 そうなんだ。これが勝つって事なんだ。

 勝者になるって事は、誰かを敗者にする事なんだ。

 なら、私に出来るのはーー

 

「うん。待ってる」

 

 その願いを背負う事。

 私だって負けたくない。だから負けてあげるなんてしない。

 でもその分、その想いに応えてみせる。

 その言葉を最後に、私は踵を返した。「ごめんね、トレーナーさん」という赤毛さんの呟きが背中越しに聞こえて、私の決意を一層強めた。

 

 バ道に向かう僅かな時間、少し見回すと見える。私が下した他の出走ウマ娘達。

 トボトボと顔を下げて歩く娘、地面に手を突き唖然とする娘。私をキッと睨み付ける娘までいる。

 今後、私達はこういう光景を何度も作りだすんだろう。そして時には、この光景の()()()()する事だってあるんだろう。

 

 でも私は臆さない。トレーナーに栄光をあげたい。テイオーに勝ちたい、マックイーンに勝ちたい、凱にぃを驚かせてやりたい。私は傲慢だから、他の娘達より自分の願いの方が大事。

 それでも、キラキラウマ娘という光が産み出すこの影の事を、忘れちゃいけないと思った。

 

 

 

 

「ミーク?ミーク!」

「え。あ、何?」

「もー、急に空見上げて動かなくなるからビックリしたよ」

 

 そうだった、今日はテイオーの友達と一緒に外で昼ご飯を食べてたんだった。

 

「なになに?ミークちゃん、もしかして好きな人の事でも考えてたのー?」

「分かるのマヤノ!?」

「もっちろーん!名探偵マヤノにお任せ⭐︎」

「えっ違うけど」

「「」」

 

 そうそう、マヤノトップガン。テイオーのルームメイトで私のクラスメイトなウマ娘。今日は彼女に「あなたテイオーのライバルなんだよねっ?マヤにもデビュー戦の感想聞かせてよ!」って誘われたんだった。

 きっとマヤノに連れられてテイオーと合流した時、そそくさと立ち去る赤毛のあの娘を見かけて思い出してしまったんだ。

 

「まぁ迷探偵マヤノは置いといて」

「テイオーだって乗ってきたクセにー!で、どうだったのミークちゃんデビュー戦は!テイオーは自慢ばっかりで聞き飽きちゃった!!」

「自慢ばかりって何さー!?」

 

 詰め寄る2人に対し、私の頭はどこか冷めている。さっきまで思い出していた記憶の所為だろうか。

 まだ未デビューらしいマヤノも、既にデビューを経験したテイオーも、レースを輝かしい物として見てる。それは間違ってないし、私だって今もそう思ってる。

 でも、それだけじゃない。

 

「楽しいだけじゃないよ」

 

 あの日、地に塗れた娘達を思い出しながら言えたのはそれだけだった。

 

 

 

 

 

〜Side:カノープス〜

 

 

 

 

 凱夏がそこを訪れたのは、昼過ぎの事だった。

 スピカと同じように建てられたプレハブ部室。そのドアをコンコンと叩き、返事を待つ。出てきたのは癖っ毛の優男。

 

「よお。繁盛してるか」

「はっ倒しますよ」

「ごめん」

 

 素直に謝罪すると、青年はその表情を緩めて応じた。往年の気安さがそこにあった。

 

「で、何の用です?サブの座にしがみつくトウカイテイオーの仮専属さん」

「辛辣ぅ!いやなに、先代からの引き継ぎに苦労してる同輩をいっちょ労おうかと思ってな」

 

 そう言って凱夏が掲げたのは土産袋。ビニール越しに見ると、それはそれは青年の好きな物ばかりだ。

 敵わないなぁ、と苦笑する青年ーーーチームカノープスのトレーナー、南坂カイ。それに釣られてかそれとも揶揄う為か、凱夏もまた満面の笑みで応じるのだった。

 

 

 

「お前も大変だよなぁ」

 

 学園内で酒類は飲めないので、代わりにジュースをお酌する凱夏は同情するように呟く。それを受けた南坂は深くため息。

 

「全くですよ。まさかサブ歴1年目で強制独立だなんて」

 

 チームカノープスは、元はと言えばベテラントレーナーの率いる上位チームだった。しかし同じくベテラントレーナーである赤石トレーナーが引退を検討しているように、彼と同年代だったカノープス前トレーナーも引退……

 ではなくまさかの急病を発症。サブトレーナーとして迎え入れた南坂にノウハウを伝えてから引退する筈が、療養の為に即辞めざるを得なくなったのだ。

 結果、半人前のままチームを引き継ぐ事となってしまった南坂。彼なりに頑張りはしたものの、その指導内容に不満を抱いた所属ウマ娘が1人また1人と離脱していき……

 

「誰もいなくなった時の気持ち分かります?」

「分かってるから他んとこに行けって言ったんじゃねぇか」

 

 カノープス、所属ウマ娘0。解散寸前の憂き目に。

 あの頃の南坂カイはヤバかった、と凱夏は記憶を思い起こす。愛するウマ娘達に見限られ、捨てられていく彼は日に日に窶れ、最後の1人が去った日には暗い部室に閉じこもって出て来なくなる始末。

 「悪い事は言わないから他のチームのサブで出直せ。おハナさんは俺がいるから無理だが、西崎さん(とこ)と黒沼さん所なら紹介出来るぞ」と必死で呼びかけたものだ。

 

「先輩から託されたチームですよ。捨てる訳無いでしょう」

 

 だが南坂は梃子でも動かなかった。彼が他のチームに行けば今度こそカノープスの名は消滅する、その事を厭うたのである。

 そんな事態になったのが先代の療養から半年後、つまり今から1年前の事だった。

 

「今思ったんですけど、理事長さんは10ヶ月も所属者0のチームをよく容認してくれましたね。彼女にはもう頭が上がりません」

「先代さんの事は俺はよくは知らんが、何か恩でもあったんじゃねぇの?知らんけど」

「相変わらず君ってヤツは……」

 

 だらけながら芋けんぴを齧る同輩に、南坂は思わず呆れるように笑みを漏らした。最も、本人には全く届いていない。

 そう、チーム解散寸前の憂き目から10カ月後、つまり今から2ヶ月前に事態は好転した。カノープスに新入生が入って来たのだ。

 照れ屋で恥ずかしがり屋な、でも勝利への執念をその内に燃やす少女。自分を信じてついて来てくれた彼女を、南坂は勝たせようと頑張っていた。

 

 …のだが。

 

「デビュー戦は、その…残念だったな」

「気を使わなくても良いですよ。勝負の世界ではよくある事ですし、なにより葵ちゃんの育てたミークが凄かった」

「いやまぁそれはそうなんだが、他ならともかくデビュー戦で潰し合いは避けたかったなって」

 

 ミークが圧勝したデビュー戦は、南坂を助けた娘のデビュー戦でもあった。南坂は、恩人に勝利を捧げられなかった。

 あの日彼と合流出来なかった凱夏は、その事で凹んでないか心配で今日訪ねたと言って良い。

 

「その様子だと、やっぱ葵から連絡来てなかったみたいだな。あんの桐生院家の箱入り世間知らずめ、俺には突撃して来といてなんで……」

「そりゃ葵ちゃんは君の事大好きウーマンだし。何なら僕が中央トレセンにいる事知らないと思いますよ?」

「意図的に連絡絶った俺はともかくお前もかよ!なんで!?」

「なんでってそりゃあ…」

 

 「そもそも君経由が前提の繋がりだったし、そりゃ君がいなくなったら疎遠になるよ」と南坂は言った。

 凱夏と南坂がトレーナー養成校を卒業した際、凱夏は葵・南坂との連絡手段を捨てた。携帯も変え住所も変えて行方を晦ました。

 葵と南坂は当初こそ自分たちの伝手を使って探したが、葵は学業、南坂は自分の就職活動もあって断念。そうして時を経る内に2人の連絡は途絶えてしまったのである。

 その後、カノープスのサブトレーナーとなった南坂が、リギルの同じくサブトレーナーとなっていた凱夏と再会したのは中央トレセン就職から半年後の事。メイントレーナー同士ならともかく、新人サブトレーナー同士が交流を交わす機会など滅多に無いのが片や幸運に、片や不幸に作用した形だった。

 その頃には葵の方も電話を変えていたのか、南坂からはコンタクトが取れなくなっており、凱夏の所在を伝える方法が無くなってしまっていたのである。

 

 それを今更聞いた凱夏は、動揺を隠さずに机に突っ伏した。

 

「なんかおかしいとは思ったんだ……凸して来た時、葵は俺の所在を今の今まで把握してなかった感じで……お前から伝わってしまってるモンだとてっきり………」

「良かったじゃないですか、感謝して下さいよ?再会したあの日に、桐生院家の邸宅の門を叩いて知らせる事だって出来たんですから」

「結局接触された時点で同じ事なんだよなぁ…いや感謝はするけど実際問題」

「まぁ、葵ちゃん抜きで君と過ごす時間を堪能出来たから良いんですけどね」

「俺にそっちの趣味は無ぇぞ?」

「安心して下さい、僕も男色の傾向は無いです」

 

 食む物が芋けんぴから炙ったジャーキーに変わり、しかし談笑は続く。まるで男子学生の同窓会のような、そして実際その通りな空気で2人だけの昼酌だった。

 やがてチャイムが鳴る。いい加減、仕事に戻らなければならない。

 

「葵にはまた伝えとくけどさ、めげるなよカイ」

 

立ち上がって、凱夏は言った。

 

「お前のウマ娘が見せた末脚は凄かったし、あのミークに呑まれなかった胆力は大したモンだった。次のステップ(1勝ウマ娘)に必ず進めるだろうさ」

「やっぱり励ましに来てくれたんですね」

「このぐらいの気遣いは出来るっての。人間だもの」

 

 南坂は笑う。沈んでいた闘志を再び迸らせて。

 

「勿論ですよ。彼女を未勝利で燻らせはしない、いつの日か君のトウカイテイオーだって地に塗れさせてみせます」

「…楽しみにしてるぜ」

 

 

 

「おいっすー!ナイスネイチャでーす!!」

 

 その日の放課後、練習の時間。部室に入って来た赤毛のウマ娘は、にこやかに声を大にしてそう言った。

 虚勢だ。初戦の敗退に傷付いた心を誤魔化し、自らのトレーナーに心配を掛けさせまいとしている。

 だから、カイは。

 

「…ふぇっ」

 

 強く抱き締めた。その不安をかき消すように、絞り出して流し去れるように。

 下心は無かった。ただ自分の気持ちに素直な、ネイチャを想う心からの行動だった。

 

「ト、トト、トレーナー-サン…?」

「ネイチャさん」

「はひっ」

「次こそ勝てます。あなたにはそれだけの力がある。努力がある」

 

 自分を選んでくれた才能を、影で終わらせて堪るものかと。カイは強く念じ、そして語り掛けた。

 

「キラキラウマ娘に、なりますよ」

 

 カノープス、夜天で2番目に眩い星。

 一度影に落ちた星は今、“1番”を目指して駆け上がる。

 

 

 

 

「は…はひ……」

 

 最も、茹で蛸になっているネイチャはそれどころでは無かったが。

 

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

 

 

 さぁて。カイは持ち直したようだし、次は俺のやる事やっちゃわなきゃな。今日はスピカの練習は休みだし。

 確か、メジロ家の送迎リムジンが止まるのはだいたいこの辺の筈。俺の予想が正しければもう来ている筈だ。

 ……ビンゴ。黒塗りの高級車を無事発見、後は近付くだけで向こうが反応してくれるだろう。

 

「お待ちしておりました。スピカのサブトレーナー様」

 

 っと、これは予想以上に想定外だな。警戒どころか敵意混じりとは。

 

「じいやさん、マックイーンが実家に戻る日は今日じゃない筈ですが?」

「しらばっくれないで頂きたい。貴方にこそ用があるのです」

 

 冗句も通じない。まぁこれは、俺自身の緊張を解く為の物でしかないから残当もいい所だろう。

 

「アサマ女史に話は?」

「未だ。まず貴方が如何程の人物を見極めさせて頂きましょう」

「……そりゃ、此方としても好都合です」

 

 俺もアンタ達の在り方を識りたい頃合いだったからな。

 

 

 

 促されるままリムジンに乗って、俺達は学園から離れた。ああそうだ、これからの話を行うのは学園内じゃない方が良い。

 例え言葉だけだとしても、アイツらの青春の場所を汚したくない。




 南坂君と凱夏は飽くまでブロマンス止まりゾ┌(┌ ^o^)┐彡彡

 凱夏とテイオーが主人公のつもりで書いてるけど、前者はともかく最近後者の主人公味薄いな……
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