パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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最近ガオガイガーの序盤だけ見た影響で、理事長に
「承認ッ!ファイナルフュージョンッ!!」
って言わせたい衝動に駆られつつある


尚そんな事をしている内にストックがとうとう残り3話、しかも中途半端な所で途切れてる。ヤバイ(ヤバイ)


私が“葵”を得てから
Holy shit Holidays


 終業式が終わった。明日から夏休み。

 そして、ボクらみたいな競走ウマ娘にとっては掻き入れ時の季節でもある。

 

「明々後日からとうとう夏合宿かぁ〜!」

 

 同級生が帰り始めてまばらになりつつある教室、そこの自分の席で伸びをした。宝塚記念が上半期最後の大一番で、ここからウマ娘達の一年は怒涛の後半を迎える事になる。秋シニア三冠を目指す娘達なんて、目を血走らせる事もザラだ。

 …って、この前生徒会室に遊びに行った時にカイチョーに聞いた。

 

「ボクもウカウカしてられない…でもなぁ」

 

 勿論夏合宿では本腰入れて真剣に取り組むつもりだけど、今日明日は合宿に向けて設けられた数少ない休日。ボクも、そういう日にはちょっとぐらい羽目を外してみたいお年頃でして。

 最初は勿論、凱夏をデートに誘おうとした。

 

 …したんだけどなぁ。

 

 

〜〜

 

 

「凱夏!今度一緒に遊園地行こうよー!」

「悪いがその日は予定があんだ、また今度な」

「えぇー!?こーんな可愛いボクがお願いしてるのにそんな事言っちゃう?」

「色気出してるつもりなんだろうが、食い気の方が強いから全く惹かれねぇぞ(嘲笑)」

「なんだとォー!?」

「痛ッ!脛蹴るな、お前これ分かってやってるだrーーああもう分かったよ!分かったから!!夏合宿の合間に祭り連れてってやっから!」

「ほぇ!?良いの?約束だよ!!」

「はいはい約束約束」

 

 

〜〜

 

 

「もーっ!絶対振り向かせてやるんだから…!!」

 

 約束を取り付けたは良いものの、なんか適当にいなされた気がして不満。それに、明日の予定は未だ空いたままだし。

 はてさて、どうしたものか…

 

「マックイーンとミークを誘って自主練しようかな…」

 

 凱夏が来ないなら遊ぶ理由は無い。だったら、と考えて最初に思い浮かんだのは芦毛のあの娘。続いて白毛のあの娘。

 マックイーンは同じチームだから勿論の事、リギルも同じタイミングで休みらしいからミークも明日は空いてる筈だ。

 

(2人とも別の予定とか入ってるかもだけど…まぁ、聞くだけ聞きに行こう)

 

 思ったが吉日、と立ち上がったその時。

 上げた視界に青毛が映る。ボクを見据えて不適にギザ歯を輝かせるウマ娘。

 えっと…?

 

「デュアルロケット…だっけ?」

「ツインターボだ!テイオー、ターボと勝負しろぉ!!」

 

 そうそう、ツインターボ。ボクの同級生で、授業中によく寝てる子だ。

 なんか最近視線を感じるなぁと思う事が増えたけど、その下手人は大体この子だったりする。ところで勝負って…?

 

「ちょいちょいターボさんや。テイオーが何がなんだか分からなくて困ってるじゃん、ちゃんと説明しないと」

「「あっ、ネイチャ」」

 

 助け舟を出してくれたのは、同じくクラスメイトの赤毛ウマ娘。そのなもナイスネイチャ、ボクのライバルの1人。

 

「この前のレース、1着おめでと!見事な走りだったよ」

「いやはや、やっと未勝利から脱出できたって感じだし、テイオー達からは一歩遅れてるんだから褒められたモンじゃないですって」

「えー?もっと誇っても良いと思うんだけどなー」

 

 このトレセン学園は言ってしまえば蠱毒だ。トップレベルの才能が日本全国から集まって、鬩ぎ合う訳だからそりゃレースも熾烈になる。そしてレース1回につき勝者は1人だけ、残り17人はあぶれる訳だ。つまり、1勝出来るってだけでもう確固たる功績な訳で。

 なのに、ネイチャはその事を自慢出来ない程度に卑屈。単に自信が無いのか、それとも高みを目指すストイックさ故なのか。

 

「もー!今話しかけてるのはターボだよ!こっち向けー!!」

 

 そんなボクを現実に引き戻したのは、青髪が目の前でプンスカ跳ねたのが発端だった。

 

「あぁ、ごめんねツヴァイターボ。で、何だっけ」

「ツインターボ!ライバルであるテイオーに宣戦布告しに来たって訳」

「へぇ…?」

 

 ライバルとしての宣戦布告、これを受けて黙っているボクじゃない。皇帝を目指す身として、売られた喧嘩は堂々と返す!

 

「面白いじゃん。どのレースで?それとも模擬レースで今すぐ?」

「そうこなくっちゃ!ターボはね…」

「ストーップ!!ターボはまだトレーナーも見つかってないし、何より追試課題を提出するまで走るの禁止されてるでしょーが!」

「そうだったー!!」

 

 えぇー!こんな所で!?

 今更思い出したように頭を抱えて絶望するターボと、呆れ果てたように眉間へ指を当てるネイチャを、ボクは当てもなく交互に見比べた。あぁ、ネイチャは世話役として苦労してるんだなぁと思った。

 同時に、なんだか放って置けなくなった。

 

「じゃ、居残り勉強会しよっか。ボクこの後空いてるし」

「…!手伝ってくれるの!?」

「帝王たる者、民に恵みを分け与えてナンボだからね。崇め奉れぃ!」

「やったー!ありがとテイオー!!」

 

 感極まって抱きついてくるターボ。舞い上がった髪に顔を巻かれながら、でもなんだかんだで心地よく思ったボクは気を良くして一層笑う。

 この後、元から手伝うつもりだったネイチャも同席にして3人で勉強した。

 

 

 …正直に言うと、ボクは何の役にも立てなかった。感覚派である事は自覚してたけど、まさか他人に教えるのがこんなにも難しい事だなんて思わなかったよ……。

 

 

「ところでだけど、ネイチャも今日は練習無いの?」

「アタシの所も合宿あるからね〜。聞いて驚け、なんとハワイ行きだ!」

「えぇ〜!ズルイー!!」

「ターボも行きたい行きたい!!」

「カノープスは部員絶賛募集中だけど、もう時期が時期だし参加したければ来年以降に期待する事ですな。今回は私が独り占め〜♪」

 

 

ーー

 

 

(…あれ?よく考えたらトレーナーとハワイの海で2人きりって事??ヤバいんじゃないですかね???)

 

ネイチャが気付いたのは、本当に今更なタイミングでの事。

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

 一方、その夜の事。件の南坂は、3人でバーの酒を嗜んでいた。

 どんな3人かというと…

 

「あの…」

 

 困惑する南坂本人は勿論のこと。

 

「これもうどうしたら良いか分かんねぇな」

 

 現状に匙を投げる凱夏と。

 

 

「ご゛べ゛ん゛な゛ざ゛い゛〜゛!゛」

 

 

 南坂に向かって床に這いつくばる桐生院葵だ。

 なんとかしてくれ、という視線をバーテンダーが凱夏と南坂へ向ける。2人は頭を下げた。

 

「オラッいい加減に立てや箱入り娘。巌のオッサンがこのザマ見たら、即ストレス性脳出血で墓に入っちまうぞ」

「で゛も゛私゛ば゛〜!゛南゛坂゛先゛輩゛に゛挨゛拶゛も゛行゛が゛ず゛、゛挙゛げ゛句゛の゛果゛で゛に゛デ゛ビ゛ュ゛ー゛戦゛ま゛で゛被゛ら゛ぜ゛で゛邪゛魔゛じ゛ぢ゛ゃ゛っ゛で゛〜゛!」

 

 申し訳なさを顔の穴という穴から垂れ流して土下座する葵。前に凱夏が東条トレーナーと西崎トレーナーに向けた不格好な物とは違い、所作と姿勢が(表情以外)完璧に構成されたそれは、

 

((そういえば腐っても名家の跡取り娘だったねこの娘))

 

 と男2人に思わせた。ちなみに(腐っても)と思ったのは凱夏だけである。人の出来た南方君はそんな事思わない。

 何にせよ、葵に南方の現状を伝えた上で今後の相談をする為に設けられたこの飲み会。彼女が持ち直さない事には話が進まなかった。

 

「とにかく、落ち着いてください葵ちゃん。私達はウマ娘を競い合わせるトレーナー、こんな競合なんてよくある話でしょう」

「デ゛ビ゛ュ゛ー゛戦゛だ゛げ゛ば゛話゛が゛違゛い゛ま゛ず゛よ゛ぉ゛!゛」

 

 どんなに高いポテンシャルを持ったウマ娘だろうと、まず一勝を上げないと次のレースに進めない。運悪くずっと未勝利で燻り続け、夢を叶えられずに中央から、延いてはレースの世界その物から去っていくウマ娘の何と多い事か。というか、そういうウマ娘が大半なのだ。

 だから、親交のあるトレーナー同士だとデビュー戦だけは競合しないよう避け合う事が暗黙の了解としてあったり無かったりする。無い場合?仲良く在りながらもバチバチのライバル関係を築いているリギル-スピカ間の関係が良い例だろう。

 今回の場合、葵の不注意によってミークとネイチャが競合した。結果、ネイチャが負けた。そして、葵と南坂の間で不文律を無視し合える程の対抗心はまだ無かった。

 この事が、ミークの勝利を喜ぶ心とは別枠での後悔を葵に齎している。

 

「ご゛べ゛ん゛な゛ざ゛い゛〜゛!゛私゛ば゛桐゛生゛院゛家゛の゛恥゛晒゛じ゛で゛ず゛ぅ゛〜゛!゛」

 

 いよいよ更に塞ぎ込みを極めていく葵に、南坂が掛けられる言葉は無い。彼も当事者で、そして人の弱みに寄り添ってあげてしまうタイプの人間だから強く出られない。

 だからここは、割と蚊帳の外な凱夏の出番だった。

 

「葵、恥晒しってんならこれ以上上塗りすんな。現在進行形で南坂を侮辱してんぞ」

「…へ?」

「1回躓かせた程度で、コイツが自分のウマ娘を未勝利のまま()()()()()()()だと思ってんのか?」

 

 舐めんじゃねぇ、と。

 この3人で付き合ってきて、そうじゃない事をお前も分かってる筈だろうと、そう凱夏は促す。その目論見通り、聡い葵はやっと本当の意味で南坂を仰ぎ見た。

 この状況でも困ったような優しい笑みを浮かべる彼は、決して怒らない。けれど細目の奥に隠された瞳が、リベンジを掲げて見上げていた葵の双眸を貫いた。

 背筋に薄寒い物と、同時に熱い(うね)りが走る。

 

「…えぇ。次は負けませんよ、ネイチャの手であの白無垢に泥を塗りたくってあげましょう」

「むっ……!」

「お、良い顔になりましたね。良かった良かった、あの時のいつもの葵ちゃんだ」

「あーもう、そこで緩めるからお前は舐められるんだよ」

「無闇矢鱈にイキリ倒し続ける方が消耗キツイし、慣れられて効果薄まりますよ。貴方がそうだったように」

「耳が痛ぇや」

 

 雑談に洒落込む男2人を他所に、葵は己を省みながら一呼吸。落ち着いてから、2人に並ぶように席へ座り直す。

 

「お陰で目が覚めました。それぞれが学校を出た以上、全員が等しくライバルでしたね」

「だな。全員社会人として独り立ちしてんだから、あの頃の仲良しこよしじゃ逆にやってやんねぇよ」

「卒業したての葵ちゃんはともかく、就職からそこそこ経ってるのに未だサブ残留で独り立ち出来てない凱夏がそれ言っちゃいますか?w」

「茶化すなやい!お前酒が入るとホント……」

「…フフッ」

 

 あの頃の、3人で学び舎にいた頃の空気。まるでそれが蘇ったみたいな会話に、葵の口から笑みが漏れた。

 その時、入口の鈴がなる。入って来たのは男女2人。

 

「あら、葵ちゃんに南坂君じゃない」

「凱夏君も一緒か。この際だし俺達も同席して良いかい?」

「「「東条さんに西崎さん!?」」」

 

 先輩×2の思わぬ乱入に動揺しながら、しかし特に断る理由も無いので招き入れた後輩×3。静かに座る東条とは対照的にドッカと腰を下ろした西崎は、遠慮もそこそこに凱夏へと肩を組む。

 

「しっかし、南坂君とも交友があったとは。凱夏君ってば俺の知らない所でいっぱい人を誑かしてるねぇ、お?」

「西崎さんも大概でしょうに。酒飲む前から酔っ払いテンションやめて下さいな」

「まぁ、意外な事は事実だししょうがないわよ。南坂君も、彼とは養成学校からの付き合いかしら?」

「えぇ。葵ちゃんと一緒に振り回されました」

 

 その言葉を聞いた瞬間、「ほう」と西崎が良い笑顔を浮かべる。

 

「こりゃ絶好の機会だ!凱夏君の恥ずかしい話とかを是非掘り出してみたいもんだね!!」

「ちょっ」

「賛成でぇす!先輩いっつも勝手なんですから仕返しでふ!!」

「葵おまっ、1杯目でもう酔って…」

「アハハハハ」

「笑上戸の南坂だって使い物にならねぇし…」

「まぁ良いじゃないか、えぇじゃないか!俺も昔の地獄の訓練の話とかすっからさ、それでおあいこって事で!」

 

 再び無理やり肩を組まれた事で、凱夏はようやく気付く。西崎から漂うアセトアルデヒド臭に。

 

「おハナさん、もしや…」

「当たり。さっき付き合いでどうしても外せない会食があって、ここには飲み直しに来たのよ」

「おぅふ」

 

 こりゃ止まらねぇな、と察した凱夏は諦める事にした。見切りは大事と古事記にも書いてある。多分。

 

「じゃあ私、桐生院葵が一番槍いきまーす!私の入学時の話からでーす!!」

「いよっ、天下の桐生院!」

「イェーイ!!」

 

 どこまでほじくり返され揶揄われるやら。覚悟を決めて、彼は実にクソ面倒(Holy shit)な休日深夜に臨むのだった。




もう1回ランキングに載って閲覧数爆上がりして感想ドバドバ来れば執筆の調子が戻るかも知れない…!(欲望丸出し)
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