パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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短いし雑だけど許して(何度目)


初日の佃煮くれーの仕上がり

 始業の日、私は幾分艶々した肌を自覚しながら教室に入った。

 

「おはようございます。隣、失礼しますね」

「えっ、あっはi…ってえぇ!?」

 

 うぇっ!?私何かやっちゃいましたか?

 

「あ、いや、ごめんなさい。桐生院さん、なんか変わった…?」

 

 驚愕から立ち直った同級生さんからの質問に、私は思わず首を捻る。私は私のままで、特に何かを意識して変えたつもりは無かった。

 

「うーん、全然違いますよやっぱり。夏休み前の桐生院さんってそんな肌を日焼けさせるようなイメージの無い“深窓の令嬢”って感じだったし、言っちゃなんですけど結構コミュニケーション苦手でそんなハキハキと喋れなさそうだったし」

「……あー、それは仰る通りですね」

 

 言われてみれば確かにその通りだ。そしてそこが変わった要因には心当たりがある。

 この夏、私は先輩に色んな所に連れて行ってもらった。気が付いたら1人で勉強机に向かって閉じこもってしまい、そしてその事に何の疑問も持たなかった私をその度に部屋から引き摺り出して外に連れてくれたのだ。

 最初はカラオケ、次はハイキング、ゲームセンター、海…その度に疲れ果てるまで遊んで、そして心地いい気分で泥のように眠った。

 その際に先輩達からの荒波に揉まれ、時に人の波に揉まれ…を繰り返している内に、いつの間にか対人耐性がついていたのかも知れない。何より“ハメを外す”という事がどういう事かを身をもって知ったので、その分身の振り方が軽くなったというのもあるのでしょうか?

 

「男子三日会わざれば刮目して見よ、という言葉があります。なら女子も同じという事でしょう」

「お、おお…なんか凄いっすね……」

「ところでですけど、なんで敬語なんですか?口調軽くても全く気にしませんよ」

「マジ?じゃあよろしく桐生院さん」

 

 さっそく隣の人と打ち解けながら、それに惹かれたのか他の人達も集まって私の机の周りが賑やかになる。その喧騒に酔いそうになりながらも、私は私を鍛えてくれた先輩に感謝した。

 

 

〜〜

 

 

「死ゾ」

「1日目ですよ」

「蓄積疲労だ」

 

 食堂のテーブルで、本当に顔色を悪そうにしながら凱夏はプリンを口に含む。話を聞いている南坂はただただ溜息。

 

「桐生院さんの体力を舐めてたんですって?最初こそ自分がリードして連れ出してたけど、途中から興味津々になった彼女に引き摺り回されたとか」

「アイツお淑やか令嬢なんかじゃねぇ…とんでもねぇスタミナお化けだ……メジロよりも先に自分で春盾獲れるぞ………」

 

 南坂は時折参加しなかったりもしたが、凱夏は割と頻繁に桐生院を誘って外に繰り出していた。勿論度が過ぎていれば友人の立場として止めていただろうが、根を詰め過ぎる桐生院の様子から止めずにいたのだ。

 そして海ではっちゃけたのを境に、桐生院が変わった。具体的にいうと軽くハジケた。そこまでは凱夏の想定通りであり、南坂もまた好ましく思った。

 だがそこから、今度は桐生院の方が凱夏を巻き込んで爆走し始めたのである。今までのお返しとばかりにレース場、合宿所、ジム、その他諸々のウマ娘のトレーニングに関わる場所へ凱夏を誘いまくり引き摺り回した。それまでの大人しさが嘘のようなアクティブっぷりに、何度かついて行った南坂も割と引いたものだ。

 で、その結果が今目の前の白髪の腐れ縁である。心なしか、その髪色はまるで夏の日差しに燃え尽きた灰のよう。

 

「くそぅ…トレーナーになるにはフィジカルもあのレベルにならんといかんのか…くそぅ……」

 

 愚痴りながら最後の一口。毎度毎度、彼は「それで足りる訳ないだろいい加減にしろ」と言いたくなるような量しか食べないが、深く踏み込むタチではない南坂は敢えてスルーを決め込んだ。

 

(しかし、そんなに疲れ果てるぐらいなら一度くらい断れば良かったのに)

 

 把握している限りでは、凱夏は桐生院からの誘いを一度も断っていない。まるで最初に連れ回した分の借りを返すかのように。

 

(この人の事です。どうせ時間いっぱいに詰め込んだバイトの僅かな隙間時間、そのほぼ全てを桐生院さんからの誘いに費やしたんでしょうね)

 

 南坂の認識に()れば、目の前の青年は「苦学生」の部類に入る。ただでさえ多忙なのに、休みを返上して駆けずり回るその姿は当初の桐生院を笑えない。オーバーワークを自覚してやっている分、寧ろ一層酷いまである。

 だがそんな彼の律儀さが、南坂は嫌いになれなかったのである。

 

「全く…さっきの講義の復習しますよ、ノートは辛うじて取ってたようですが意識朦朧で殆ど覚えてないでしょう」

「助かるぜカイきゅん。俺らズッ友」

「卒業するまではそうですね」

「ひっでぇ!」

 

「あ、先輩方!こんにちわー!!」

 

 そこに飛んできた溌剌な声。オカッパとテールの黒髪を揺らして、小柄な影がこちらに飛び込んできた。

 

「どうしたんですか牧路先輩元気無いですね。カツ丼食べます奢りますよ?あっ南坂先輩もお久し振りです元気にしてましたか!?」

「落ち着けぇ…頼むからうるさくしないでくれぇ」

「はい」

「うわぁ!いきなり落ち着くな!!」

「ところで桐生院さん、何か良い事でもあったんですか?」

「あっ、そうなんです!先輩方のお陰で私、今日なんと友達10人増えたんですよ。ほらUMINEの友達欄見て下さい」

「逆に心配になる増加ペースで草」

 

 …なんともまぁ、混沌・凸凹とした3人組である。そこに自然と馴染んでいる自分も、また。

 そう自嘲しながら、南坂は自分の食事を咀嚼したのだった。

 

 

 

 

「あっ、先輩。ちょっと相談なんですけど」

「おうどうした」

「その、あまり大きな声では言えませんが…ちょっと先生の方針が……」

「梁暮先生の事?」

「なんで分かったんです!?」

「最近悪い意味で学生間で有名なんですよ。トレーナー時代の功績は素晴らしい方なんですけど、どうにも全時代の風習に囚われ過ぎな点が…」

「そう、そこなんです。ウマ娘に負担を掛けるだけだと最新研究で証明されているトレーニング論を推しに推してて、どうすれば良いのかなって」

「もう50代なんだ、他人の生き方なんて変えられねぇよ。それより他の良い所探して盗んでこうぜ」

「…そう、ですよね」




凱夏「桐生院は…行ったか。南坂、二日くらい遠出するからその間のノートとか頼むわ」
南坂「許可は取ってるんでしょうけど、なんか変な事する気じゃないでしょうね?」
凱夏「大それた事はしねぇよ、大それた事は」
南坂「…今回限りですよ」
凱夏「サンキュー!」
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