名前を挿げ替えただけですが、キャラが違ったらすみません
Regret
秋の感謝祭が終わった夕方、私は自主練に励んでいた。出し物の片付けも終わり、日が沈んだ直後の頃合いの事だった。
おハナさんにはもう伝えて、許可を貰った上でやっている。その際、無理をさせない為の監視役と練習相手を兼ねて、桐生院サブトレーナーとミークさんが私へと割り当てられた。
「ふっーーー!」
「あっ…!」
前を走る白い背中を外から差して、3回目の併走を終える。調子自体は良いが、果たしてどれ程の勝負勘を取り戻したと言えるか…。
「ミークさん、そっちはどうですか?」
「先輩のお陰で、仕掛け所とかはある程度分かりました」
「…そうですか」
なら何より、と言いたい所だがそれ以上に自分の状況がもどかしい。全力で走りたい、練習したい、ジュニア級の時のような活躍を今すぐにしたい。
でもその度に、何よりも先んじて頭が恐怖を訴える。視線を、私の右足へと誘導する。
もう治ったと分かっていても、この恐れは如何ともし難かった。これではスカイさんに何かを言える立場ではない。
「2人とも、時間ですよ〜!」
桐生院さんの声に我を取り戻すと、予め約束していた切り上げの時間だとやっと気付いた。駄目だ、無意識の内に頭に血がのぼせてしまうクセがついてしまったみたいだ。
ミークさんを促してクールダウンに入るが、どうにか体だけでなく頭も冷やせないだろうか……と常々思う。そうしている内にコースを回り終え、集合場所に戻ってきた。
「お疲れ様でした。ストレッチと水分補給をしてからマッサージしましょうか」
「や、トレーナーさんのマッサージはまだ下手だから良いです」
「酷いッ!?」
マッサージ。ああ、これもまた思い出だった。あの人がこのチームにいた時、練習が終わる度に皆にやっていた。
エルもよく受けて、その度にフニャフニャになっていた。
「ミークちゃん、素直に受けましょう。疲労は取らなきゃいけませんし、何より桐生院さんも経験を積めなければ上達出来ませんから」
「むぐっ…それはその通りですね」
「下手である事は否定してくれないんですね…えぇい、上手くなって見返してやります!!」
そう言ってむんっ!と気合を込める桐生院さんはどことなく愛らしい。なるほど、おハナさんが彼女を可愛がってしまう理由がなんとなく分かってきた。
「…上手くなるのはいつ頃ですかね」
「大丈夫ですよミーク!凱夏先輩から渡された“秘伝・揉み解しの書”がありますから!」
「酷いネーミングセンスはお揃いでしたか……」
「ミーク?今日なんか当たりキツくないですか???」
「冷蔵庫のプリン」
「はい。私が悪かったです」
うん。本当にあの人とは違う。
あの人とは違ってどこか抜けてて。
あの人とは違って素直に感情を出して。
あの人とは違って女性で。
だから、それを目の当たりにする度に嫌が応にも思い出してしまうのだろう。
その日の夜、夢に見てしまったのだろう。
凱夏さんに惹かれていった、あの頃の記憶を。