パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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 ウマ娘の歌のフレーズからサブタイ探してくるのキッッッツ!(自業自得)
という訳で諦めた。ごめん。

 あと本作のスペはアニメと違い、トレセン学園には編入ではなく最初から入学してます。
 そして拙作、BNWの誓いには繋がりません。時系列整理が無理。ブライアンの三冠や諸々と辻褄合わせようとすると時空が壊れる


ウマ娘とトレーナー

「おはようございま…エアグルーヴか」

「む、貴様か」

 

 凱夏がリギル部室に入ると、出迎えたのはジャージ姿の女帝。朝から何やらストレスが溜まっていたらしく、ただでさえ整頓されている部室を更に細かく掃除している。

 

「何かあったのか?」

「会長の調子が良過ぎて洒落が止まらんのだ。拾い切れない自分に腹が立つ」

「あちゃー…テイオーの影響かなぁ」

「それについてだが貴様、ちゃんと昨日のレースは見に行ったのか?」

「ああうん、なんだかんだでちゃんと見たよ」

 

 あの日、凱夏は行くかどうかを渋っていた。しかし一度告げられた約束である以上無碍にするわけにもいかず、進まぬ足を無理に動かして現場に赴いた。

 そして、あの走りを見た。

 

「…凄かったよ」

「ふん。あまりハナさんと会長の手を煩わせるな、お前はチームリギルのサブトレーナーなんだぞ」

「イエス・マーム」

 

 2人して、部室の埃を一片残らず駆逐していく。数分後には、部室のありとあらゆる物が金属光沢を放っていた。眩しさにエアグルーヴの目が眩んだ。凱夏はサングラスを差し出した。

 

「貴様は本当に変な所で気が利く…」

「お褒めに預かり光栄っす」

「…で、なんでこんな早くに部室に来た?」

「あんなの見せられちゃ、流石に腐ってる訳にもいかんからね」

「なら何よりだ」

 

 

「…仮とはいえ元専属がこのザマじゃ、アイツから奪った青春に申し訳が立たないし」

「……たわけ」

 

 

〜Side:スペ〜

 

 

 はい!スペシャルウィークです!トレセン学園中等部の2年生です!!

 今日は訳あって、1年生の教室の前でウロウロしてます!正直恥ずかしいです…。

 

「えーっと、テイオーさんとマックイーンさんは…あっいましたいました」

 

 それとなく、怪しまれないように各教室を覗いて漸く見つけた偵察対象。トレーナーさんとゴールドシップさん曰く、テイオーさんは選抜レースで物凄い記録を出したみたいですが、その力はどこから来るのか……などの謎を探るべく、ウオッカちゃんとスカーレットちゃんと相談して、独自に捜査する事にしました。

 マックイーンさんは仮入部を約束してくれたらしいのですが、その直後にゴールドシップさんが無茶振りしたせいで怒ってしまい有耶無耶になってしまったとか。なんとかして仲を取りもたないと…!

 

「はちみーはちみーはっちっみー♪はっちみーを舐めーるとぉー♫」

「いい加減、その変な歌をなんとかしてくれませんこと?脳がバグりそうですわ」

「えぇー、良いじゃんハチミー美味しいもん。一緒に歌わない?」

「ハチミーは美味しいですが、それはそれ。これはこれで別問題ですのよ」

「歌いながら飲むと一層美味しいよ?今度やろうよー」

 

 ふむ、ハチミーですか。いつ出発します?私も同行しましょう。

 …すみません。本来の目的を一瞬忘れてました。

 

「ねぇねぇ、そこの人も一緒にどう?」

「ハチミーですか?良いんですか?是非!!」

 

 おお!ご本人から誘われてしまえば、もう仕方ないですよね!?

 ……ハッ!

 

「い、いつから気付いてました…?」

「最初からかなー。ほらボク、これから無敗の予定だし観客からの視線には敏感でいようと思ってるから」

「理由になってませんわ……」

 

 ニシシと笑うテイオーさんとは対照的に、私はトホホ。ごめんねウォッカちゃんにスカーレットちゃん、お勤め果たせませんでした……。

 

「ところでですけど、スペシャルウィーク先輩ですよね?今後チームメイトとしてお世話になります、メジロマックイーンですわ。以後お見知り置きを」

「あっ、うん、私スペシャルウィーク。よろしくね、マックイーンさん」

 

 あれ、思ったよりスピカに対して悪感情は抱いてないのかな。それなら嬉しいけど……

 

「でもゴールドシップ先輩だけはなんとかして頂けません?正直、今後うまくやっていく自信がございませんの」

 

 ゴールドシップさん、あなた何やらかしたんですかぁ……!

 

「ふーん、マックイーンはスピカに入るんだ。ボクはリギルの入部試験を受けるつもりだし、これからはライバルだねっ」

「これから“は”ではなく、これから“も”でしょう。貴女にだけは負けませんわよ」

「当然っ!今日の先発レースも見てるから、勝って貰わなきゃ困るよ」

「なら指を咥えて見てて下さいまし」

 

 リギルという単語に耳が立つ。そうそう、テイオーさんがリギルに入りたいと思う理由を探るのもこの偵察の目的の一つでしたね。

 

「テイオーさんはリギルですか。失礼しますが、どうしてリギルを選んだんです?」

「気になってるトレーナーがいるんだよ。その人になら、ボクの才能を預けてみても良いかなーって」

「ふむふむ。やはりハナさんは人気ですね」

「ううん、凱夏って人の方」

 

「…凱夏さん?」

 

 その名前に、メモに走らせていたペンが止まった。

 

「あの…大丈夫なんですか?その人で……」

「どういう意味?」

「スズカさんを昔指導してた人ですよね?その…かなり強く方針を押してくる人だって聞いてるので、不安になって」

 

 スズカさんは先輩であり、チームの仲間であり、同室であり、憧れの偉大なウマ娘です。大逃げで最初から最後までレースを引っ張り、逃げてなお差す最速のウマ娘。あの走りに憧れて、私はこの道を進んでいる。

 でも、彼女にとってリギル時代、逃げをさせてもらえなかった頃はあまり語りたくないらしくて……特に、当時自分を担当していた凱夏という人に関しては殆ど口を噤んでしまう程だった。話題が出る度に複雑そうな、そしてどこか辛そうな表情を浮かべる彼女に、私も詮索する気にはとてもなれなかった。トレーナーもあんまり語らなくて、だから彼についてはグラスちゃんやエルちゃんから間接的に聞いた話でしか知らない。

 2人曰く、彼はサブトレーナーとしては優秀らしい。テキパキと仕事をこなし、メイントレーナーであるハナさんとウマ娘達の間を取り持ち、彼女たちの補助をしっかりとこなしてくれて助かるそうだ。でも、彼女たちもまた彼の仮専属時代、スズカさんを担当してた頃については口を閉じてしまう。

 彼本人に話を聞こうにも、どうやらスピカを徹底的に避けてるらしくて会えずじまい。

 だから、彼個人に専属トレーナーとしての期待を寄せるテイオーさんに、一抹の懸念を抱いてしまったんです。

 

「テイオーさんの走り、録画で見ました。凄く強くて、一緒に走りたいと思いました。だから……」

 

 リギル時代のスズカさんの走りを見た事があった。先行策を強いられ、とてもつまらなそうで、辛そうで、正直見てられなかった。

 スズカさんはそこから抜け出せたけど…テイオーさんが同じ道を歩むのは、やめて欲しかったんです。

 

 でも、ここで気付きました。

 今の言葉があまりに失礼で、不躾な言葉だった事に。

 

「あっ…!その、すみませっ……」

 

 流石に酷過ぎた。心配とかそんなの言い訳にならない。凱夏さんにも、彼に期待を寄せるテイオーさんにもあまりに無遠慮が過ぎる言い草だ。

 頭を下げようとしてーーーテイオーさんの言葉に遮られる。

 

「でも、ボクは彼を信じてるから」

 

 力強い眼で射抜かれる。予想を超えた反応に、体が一瞬硬直する。

 

「凱夏は、ウマ娘(ボク達)の為になる行動をするって、信じてるから。だって、トレーナーだもの」

「…そう、ですね。その通りです」

「じゃ、ボクはそろそろ席取りに行こうかな。マックイーン、応援してるからね〜!」

 

 そう言って走っていくテイオーさんの後ろ姿は本当に快活で、今の会話の何も気にしてないように見えた。だからこそ一層申し訳なくて、そして。

 

「…負けたくない」

 

 そう思えた。

 彼女と走る時こそ、悔いの無いよう、彼女の全力に応えられるよう頑張ろう。それが、同じウマ娘である私に出来る精一杯の償いだ。

 

「あの、スペシャルウィーク先輩」

「どうしました?マックイーンさん」

「凱夏さんの噂を聞いてて不安になったのですが…大丈夫でしょうか、テイオーは」

 

 どうやら、今の会話で不安を煽ってしまったらしい。ここは、その元凶である私が払拭しなければ。

 よーし、先輩としての腕の見せ所です!

 

「大丈夫ですよ。だって、トレーナーを信じているウマ娘は本当に手強いんでひゅから」

「噛みましたよ」

 

 ……うぐぐぐ。

 

 

 

 

(トレーナーを信じるウマ娘、ですか……)




 スペにヘイトが集まりそうなので先に言っておきますと、過去に凱夏はススズへ割と洒落にならないストレスを掛けてしまっています。普通に残当な結果です

 あと序盤のエアグルーヴとの絡みについては、今後勝手に改訂するかも知れません。もしそうなったら申し訳ないです
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