パレードを終わらせない   作:スターク(元:はぎほぎ)

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 約35分の遅刻!大変申し訳ない
 急造のため粗品ですが、お納め下せぇ

 しかし秋天、なんつーか“王道”なレース展開でしたね。三強カッコイイ


未来を見る

『GⅡとは思えませんね』

 

 そんな文字列が、パッと浮き上がった。

 

『グランプリホースにマル外の怪物達が挑む訳ですから』

 

 応じる文字列が、浮き上がった。

 

『これで日本最強が決まるのでは?』

『エルコンドルパサーが差し切るでしょう』

『サイレンススズカに追いつけるかどうか』

『他の娘が上がってきても美味しいですよ』

『グラスワンダーは休養明けが響きそう』

 

 ページ更新が加速する。急いで読まなければ追いつくのにも一苦労。

 それでも()は、1行1行を逃さず読み続けていく。それが彼の生命線であるが故に。

 だが次の瞬間、画面をスクロールしていた彼の指は止まった。

 

 

()()()ですねぇ、グラスワンダー』

 

 

 その一文が目に入った時の事だった。まるでウマ娘本人を欲するような、レース視聴者としては違和感のある言葉遣い。

 そんな文も即座に流れ、画面の上に消えていく。それを見届けて、彼はようやく指の動きを再開させる。

 

『御所様方はどう見ますかね』

『それもそうだけど、見所はもう一つあるでしょう』

『ああ、彼の記録がどこまで伸びるか』

『他の者達はもう出しておりますが、やはり目玉は彼ですな』

『自分の事じゃないのに背筋が冷えてしまいますよ』

 

 ここで時間を見る。期限は近い、潮時か。

 そう判断して、牧路凱夏は予め用意してあった文面を投じたのだった。

 

 

 

『1着はサイレンススズカ 、2着はエルコンドルパサー 。3着はサンライズフラッグで、それぞれ着差は2.55でタイムはーーー』

 

 

 

〜〜

 

 

 

「ぁ〜い、話題のスピカが通りますよっと」

 

 10月11日。ボク達は、スズカ先輩の毎日王冠を見る為に東京レース場に来ていた。

 距離1800m左回りの、まるで彼女のために用意されたようなレース。同チームの後輩としての色眼鏡もあるけど、正直負ける姿が思いつかない。

 

「ねぇねぇ凱夏。スズカ先輩は何バ身差つけて勝つと思う?」

「自分の事でも無いのに調子乗り過ぎだバカ」

「アイテッ」

 

 拳骨。痛みが無い程度に加減されてはいるものの、最低限の衝撃を保証されたそれがボクの頭頂に落とされた。

 

「浮かれているからそうなるんですのよ、全く」

「そういうマックイーンも、『先輩が勝ったらワンチャン祝勝会でスイーツを食せるのでは!?』って思ってたじゃねーか」

「んなっ!?ななな何故その事を」

「おっ、当たり?いやぁ、ソワソワしてたからそんな感じかなって山勘張ってみたんだぜ」

「 ゴ ー ル ド シ ッ プ さ ん ! ! 」

「またやってるわ…」

 

 最早恒例となったゴルシとマックイーンのワチャワチャを前に、スカーレット先輩と揃って溜息を吐く。はいはい、仲がよろしい事で。

 

「……まぁ、最終的にはいつも通りの所に収まるだろう。それよりテイオー、今日は」

「うん、スズカ先輩の走りをちゃんと見るよ」

 

 我らが今日の主役だもん、見逃す訳無いよ!彼女の大逃げとボクの先行で作戦は違うけど、宝塚記念で見せたあの走りをいつかボクも……

 

「いや。グラスワンダーを見ろ」

 

 ……あれー?

 

「なんで?作戦が違うから?」

「まぁそうだな」

「だったら同じ先行策のエル先輩の方が良いじゃん。なんで差しのグラス先輩なの?」

「お前のような勘の良いガキは好きだよ」

「もーまた誤魔化す!」

「いや、ちょっとマジでどう言えば良いか…」

 

 何やら口に出すのを憚るように、凱夏は言い淀む。え、何?そんなに不味い事なの?

 

「今日のグラスワンダーは、未来のお前の一つの形なんだよ」

 

 と思ってたら、ようやく口にしてくれた。でもどういう事かよく分かんなくて、続きを促すようにじっと見つめる。

 

「分かった分かった…グラスワンダーは今回が故障明け初の復帰戦だろ?そして前にも言ったように、お前の骨は…」

 

 …あー、そういう事ね完全に理解した!

 

「つまりボクの怪我の可能性を気にして、気を使ってくれちゃったんだ?繊細ですな牧路クンは」

「茶化してんじゃねぇ、普通にシャレになんねぇだろ」

「ダイジョーブダイジョーブ、故障なんか気にしてたら三冠なんて獲れないよ!そんな事で不安になったりもしないし調子崩したりもしないからさ」

 

 グラスワンダー先輩は朝日F(フューチュリティ)S(ステークス)後に故障して以来、長期休養でクラシック戦線をフイにしている。これをボクに照らし合わせるとすると、それはつまり『クラシック期中、下手しその前に骨折して三冠に挑めずに終わる』という事で。

 そんなネガティブな予想を告げて、不安にさせる事を厭うたんだろう凱夏は。でも残念、そんな事でボクが今更臆すと思う?

 全力でそれを避けようとしてくれてる人が近くにいる、このボクが?

 

「ボクは凱夏を信じてるよ」

「!!」

 

 最初に危険を提示したのはキミじゃんか。

 最初に対策(ステップ封印)を講じてくれたのはキミじゃんか。

 今も改良を求めて、ずっと考えてくれてるのはキミじゃんか。

 

「だからキミも、ボクが信じたキミを信じなよ」

 

 その結果なら、何だって受け入れられるから。例え努力叶わず怪我をしたって立ち上がれるし、そして怪我をギリギリまで回避してくれるって信じてるから。

 そんな思いを視線に込めて送ると、伝わったのか凱夏の瞳が揺れた。一拍置いて、観念したように一息。

 

「…とんでもねぇ胆力だ。図太さステークスならシニア級を押し退けて文句無しの一着だぜ」

「そういう所で話を逸らそうとするの、悪い癖だって自覚してよね」

「前世からしてるっての……あぁ、信じてみるさ。お前が信じた俺を、俺がお前に夢を見る限り」

「任せて!キミの予想なんてどこまでだって飛び越えてやるんだから!!」

 

 新たに交わした約束を胸に、ボク達は再び前を見る。その先に待つ激戦を目に焼き付けるべく。

 

 

「テイオー、故障が無かったとしてもトゥインクルシリーズは挫折という“落ち目”が付き物だ。そこから這い上がろうと足掻く姿を、しっかりと覚えておけよ」

「うん…!」

 

 

 甘くない現実を忘れずに、それでも僕らは夢を見る。




 この10分後に偉大な架空馬小説が最終回を迎えるので、お前ら全員読め(ステマ命令)
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