よって拙作の時空では辻褄合わせとして、天皇賞にはクラシック級から殴り込める設定になります。マックイーンほんとごめん、その余波でキミの菊花賞参加も消えるわ。天皇賞はしっかり抑えるから……
いやホント、マックイーンとそのファンの方々ごめんなさい。凱夏が溶鉱炉に親指立てながら沈んでホースオルフェノク化する事でお詫びします
ゴルシが麻袋を担いで部室にやってきた。
マックイーンは頭を抱えた。
「テイオーにまで何やってるんですの!?」
「おっ、テイオーだって見てもないのに分かんのか。マックちゃんお熱いね〜」
「茶化さないでくださいまし!」
自分が入部した時も同じように麻袋で拉致され、また前日にテイオーがスピカに入部する事をトレーナーから予め説明されていたマックイーンはゴルシを咎める。しかし、当の本人は完全にどこ吹く風なのがタチが悪い。
「テイオー、大丈夫ですか!?無事なら返事なさい!」
「……」
無理やり降ろさせた麻袋を揺さぶるも、中から応答が無い。もしや気を失ってしまっているのか、と思ったその時。
「じゃじゃーん!ボクはこっちだよー!!」
普通にドアから入ってきた。白い前髪を揺らして、それはそれはルンルンなテイオーステップで。
ポカンとするマックイーン。何故か唖然とするゴルシ。呆れ顔で目を逸らすダスカとウオッカ、そして苦笑いするスペとスズカ。最後に、目も当てられないとばかりに顔を掌で覆う西崎リョウ。
中々に混沌な状況の中、最初に動いたのはやはりというか、このウマ娘であった。
「テ、テイオーてめー!どうやってこのゴルシ様の完璧な捕縛術を欺きやがった!?」
「チッチッチッ。1人いるはずだよ、君の手の内をしっかり把握してる人がこの学園に。その人が、ボクのバックにいたとしたら?」
「ガッ…凱夏ッ」
「ガイアみたいに言うなよ」
ゴルシの視線の先、ドヤ顔ピースするテイオーの後ろで壁に隠れる成人男性。そんな彼に向けて、ゴルシは尚も敵意を飛ばす。
「うぉおおおお、許さねぇ!よくも一世一代の大勝負をオジャンにしてくれたなァーッ!?イトカワまで吹っ飛ばしてスイングバイしてやる!!!」
「テイオーの代わりに発泡スチロール人形を麻袋に仕込んだら騙せたわ」
「フンガー!!」
駆け出すゴルシ、逃げ出す凱夏。部室を飛び出し逃避行を繰り広げる彼らをさて置き、テイオーは部員の皆に向き直って笑い掛けた。
「これからよろしくね、先輩の皆!」
〜Side:テイオー〜
という訳で、今日からボクは晴れてスピカ部員!頑張っていくぞー!!
「全く、貴女の世話から離れられると思ったのに。これじゃ元の木阿弥ですわ」
「へへっ、ごめんねー。でもライバル同士なのは変わんないし、良いじゃん良いじゃん」
「全く…フフッ」
マックイーンは相変わらず片意地張ってるけど、なんだか嬉しそうで何より。まぁボクも嬉しいからこれはお相子かな。レースで馴れ合うつもりは無いけどね!
…ところでだけどウオッカ先輩。何をジロジロ見ているんだね?
「いや、テイオーってさ…前屈すげーよな」
「ふふん。そうでしょ、なんだって学園の前屈記録も持ってるんですからねー」
「まるで軟体動物ですわ。骨はございまして?」
「当たり前でしょー!?」
「へぇ、確かによく伸びるわね」
怒るボクを他所に、歩み寄ってくるツインテールの人影。同じスピカのダイワスカーレット先輩だ。
「…いや、だけど本当に凄いわ。アタシも負けてられない……ウオッカ、ちょっと付き合いなさい」
「前屈か?最初からあのレベルをするのは流石に無理じゃね?」
「何言ってんのよ、アタシは前屈でだって一番なのよ!譲る気なんて無いわ」
「……まぁ確かに、1発で出来たらカッコイイしな。よし、やってやるぜ!次俺な!!」
「ドンと来なさい!」
ウオッカ先輩とスカーレット先輩はライバル同士みたいで、でもあんな風に仲良く切磋琢磨している。ボクとマックイーンも、あんな関係になるのかな?
「どうなんだろうねマックイーン」
「まずは柔軟に集中してくださいな」
はいはーい。まぁ、集中しなくてももう伸びてるんだけど。
ふと視線を向けると、練習場のラテの向こうにスピカトレーナーと凱夏の姿。良かった、なんだかんだでサブトレーナーとしての出だしは好調みたいだね。
「スズカ先輩から話聞いた時とは印象違ったんだよなぁ」
ウオッカ先輩の呟きに意識が向く。先輩も凱夏の事をある程度意識してたらしい。
「いや、スズカ先輩の件が根も葉も無い噂だとは思わないんだけどさ、最初は『こっちの意見ガン無視で押し付けてくるとんでもないトレーナー』だと思ってたんだよ。でも前に話してみたら割と押し強くないし、引く時も結構素直に引いてこっちを尊重してくれるし」
「単純にスズカさんの件で反省して変わったんじゃないの?または隠してるだけか……手腕は認めるけど。私のデータを一通り見ただけで体調を把握して来たし、トレーナーを補助する分にはしっかりこなせるんじゃない?」
「スカーレットは捻くれてんなぁ」
「何よ。柔軟交代した時覚えてなさいよね」
好印象気味なウオッカ先輩とは対照的に、スカーレット先輩はまだちょっと懐疑的みたい。でも感触事態は悪くないみたいだから、これから打ち解けてくれると嬉しいな。
「グギギ…もっと伸ばしなさい!」
「これ以上は流石に不味いって!!」
「やめといた方が良いと思うけどなぁ」
「いいや、まだよ!アタシが1番なんだかrニャアアアン!」
「スカーレットせんぱぁぁぁい!?」
〜〜
早速やらかしたスカーレット先輩をウオッカ先輩と一緒にトレーナー達へ託して、ボク達は次にコースで待ってるゴールドシップ先輩の所に行った。
…ダートに芝を植えていた。
「何やってんの…?」
「何やってますの…?」
「おうマックちゃんにテイオー。見て分かんねぇか?」
「分かりませんわ」
「芝コースから芝抜いて植え替えてんだ」
「何やってんのさ」
信じられない物を見た。いやマジで何してんのこの人。
「日本全国のウララファンの皆が思ってんだよ…『有馬のコースがダートにならねぇかな』ってさ……だからソイツらの為に、こうやって手始めに練習場の芝を移し替えてんのさ」
「たづなさんに通報して来ますわ」
「ボクは会長に報告してくるね」
「わぁーっ!待て待て待て!戻すから戻すから!!」
そう言うと超高速で芝を元の場所に植え直していくゴールドシップ先輩。なんだあの手際の良さ、しかも一度抜いたのが分からないくらい完璧に戻されてるし。というか芝って抜いても戻せる物だっけ?
「私、全てにおいてこの人を理解出来ませんわ…」
「君に分からなかったらボクはどうすれば良いのさぁ……」
「考えるな、ハジケろ」
…そういえば、凱夏ってゴルシ先輩と割と仲良いんだっけ。どんな接点があったのかな?
〜〜
ゴルシ先輩に軽く併走して貰った。そこは真面目だったのが逆に不気味だった。一目でボクの長所である関節の柔らかさについても見抜いてくるし、マジでなんなのこの人。気に入られちゃったマックイーンに心底同情した。
で、次にボク達を出迎えたのは……
「ようこそテイオーさん!マックイーンさんも昨日ぶりです!」
「スペ先輩、よろしくね」
「今日もよろしくお願いしますわ」
会うのは2度目になるスペシャルウィーク先輩。そして……
「トウカイテイオーさんね。私はサイレンススズカ、よろしくね。マックイーンさんも、スピカとして活動するのは初めてだったかしら」
凱夏と因縁があるらしい、最速の機能美先輩だ。さっきの挨拶の時も凱夏の方へ強張った顔を向けてたし。そんなに噛み合わなかったのかなぁ?
まぁ、凱夏が移籍出来たって事はつまり、スズカ先輩が許可してくれたって事なんだろうけど。
「今回はレース形式でタイムを計りましょう。スペちゃん、あなたはマックイーンさんの方をお願い」
「はーい!でも距離はどうします?」
「長距離で!!」
「いえここは中距離で」
「「むぅ……!」」
“相手の得意な距離で叩き潰してやる”って魂胆が見え見えだよマックイーン。その手は食わないもんねー!え?ボクも同じ?何の事だか。
そんなボク達の睨み合いを見てスペ先輩はアワアワ、スズカ先輩は一つにこやかに微笑む。え、何。妙に怖いんだけど。
「決めたわ。距離は中距離、そして私も走る」
「「えっ」」
「スペちゃん、申し訳ないけど記録を2人ともお願い」
「アッハイ」
軽く準備運動を済ませていく先輩の意図を理解出来ず、ボクは唖然と佇む。そんなボクの注意は、隣のマックイーンが出した不機嫌オーラを受けて漸く機能を取り戻した。
「……」
「ど、どうしたの?マックイーン」
「分かりませんの、テイオー」
自分を律するように深く息を吐いた彼女は、それでも抑え切れない苛立ちを吐き捨てる。
「『私の走りの前では、貴女達の争いなんて無意味』…と。そう言われたのですよ、私達」
「!」
「スピカ移籍以降において猛威を振るった“最速の機能美”と、たかがデビュー前の小娘2人。その差は勿論分かっているつもりでしたが、面と向かって突き付けられるとメジロに来ますわね」
マックイーンに言われて初めて気付いた自分が恥ずかしく、そして腹が立った。そして、目の前の先輩に対して抱いていた微かな嫉妬が今、滾る執念に変わる。
何だよ。先に凱夏と一緒にいといて、別れといて、そんな態度でボク達を舐め腐ってるのか。
「ぐぬぬ…後悔させてやるぅ……」
「一時停戦ですわ、テイオー。一先ずお互いよりも、目の前の壁を超える事を意識しましょう」
「うん!壁超えだ!!」
目に物見せてやるぞ、サイレンススズカ!
「私のどこが壁って?」
「ぴぇっ」
「ひゃあっ」
「ニンジン美味しい」
クソガキテイオーの敬語は中途半端
あと最速の機能美は機能美ゆえに削ぎ落とされている。どことは言わないが