「六花、忘れ物ないか?」
「大丈夫! お兄ちゃんは?」
「俺も大丈夫。さ、学校行くか」
「うん!」
花の高校生活が始まって、妹の六花も俺と同じ羽丘に通っている。六花は上京したてで寝泊まりしている旭湯から学校までの道を完璧に覚えきれてないから俺が毎朝迎えに来るのが最近の日課だ。
「こうして
「そうですか。そろそろ道を覚えて欲しいんですけどね」
「そしたらお兄ちゃんと一緒に学校行けなくなっちゃうもん! 絶対に覚えたくない!」
「知ってる? 俺は2年だから一緒に行けたとしても長くて2年ぐらいだぜ?」
「ならなおさら!」
流石の俺も妹のブラコンぶりには頭が下がる。六花の兄貴、
「あ、六花〜!」
「あこちゃん、おはよう」
「んじゃ俺自分の教室行くからな。今日は来るなよ? 絶対に来るなよ?」
「それはお兄ちゃん次第だからね〜」
「はぁ……」
兄離れをしようとしない妹に頭を悩ませながら自分の教室に入る。自分の机に向かうのだが、俺の机にはパンとお菓子が山のように積まれていた。これをやったとなると犯人は決まっている。
「ねぇ蘭〜、少しぐらい食べてもいいでしょ〜」
「そうだよ〜、モカちゃんのパンを返してよ〜」
「自分たちで食べるの我慢するって言ったんでしょ。それに目の前で食べられるとこっちもこっちでキツイんだから」
「ひまりちゃんだけじゃなくてモカちゃんも体型気にしだしたんだもんね……」
「それにつられて蘭もか……」
同じクラスの幼馴染軍団、蘭、モカ、ひまり、巴、つぐみの5人組だ。
「あのさ、朝っぱらから俺の机で何してる訳?」
「あ、ちょうどいいところに来た。蒼太、これ全部食べてよ」
「無理」
「ほら〜蒼太も食べれないならもったいないよ〜」
「蘭のケチ〜」
5人の中でも蘭は1年の時からクラスが一緒だったから一番仲がいい。そのせいなのか、冗談なのか本気なのか分からないことを唐突に言ってくるからかなり困る。
「これでモカとひまりのダイエット成功しなかったら蒼太のせいだからね」
「ちょま、それ理不尽すぎない?」
「た、確かに! 食べてくれなかった蒼太のせいじゃん!」
「そーくんのせいになるね〜」
「なにそれひっど」
俺に全責任を擦り付けようとする蘭に悪ノリして来るひまりとモカ。いや、モカはともかくひまりは馬鹿だから本当にそう思ってるんだろうな。
「ま、今日も一日頑張ろうぜ」
「そんなこというなら巴もこれ消費するの手伝ってくれるんだよな?」
「あたしは〜遠慮しておくよ」
「つぐみ……?」
「ご、ごめんなさい!」
そうして途方も無い量のパンとお菓子を机に乗せたまま今日も一日始まっていくのだった。
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午前中の授業が終わる金が鳴り、お昼のゴールデンタイムとなる。今日は自分の弁当に加えてモカのパンとひまりのお菓子を食べるのだが、さすがに多いよな。
「んでさ、本気で全部俺一人で食べるの?」
「そうだけど?」
「きっつ」
改めて見てみるとパンだけでも数えて10個以上ある。しかもカレーパンとか油っこいものとフランスパンとか歯ごたえがあるやつばっかり。お菓子に至っては多種多様だけど苦いものはなくて甘いやつだけ。いままでこれを食べてきて太らなかった2人が羨ましいよ。
「おねーちゃんおねーちゃん! 一緒にお昼ご飯食べよ!」
「いいぜ、一緒に食べるか!」
「あこが来たってことは……」
「お兄ちゃん♡」
「ですよねー」
あこが巴に会いに来た。あこと六花はアホほど仲がいい。それ即ち六花召喚の準備が整っていたらしい。
「一人で食べていいですかね?」
「それよりお弁当あるの? 」
「あるだろって……な、ない! 俺の弁当がない!」
「うちが持ってるよ。お兄ちゃんが体育の時にこっそり教室に入って盗っちゃった♪ 返すから一緒に食べよ?」
どうやら俺は妹から逃げることは不可能に近いらしい。
「べ、弁当がなくても俺には大量のパンとお菓子が……」
「やっぱり美味しいですな〜」
「お菓子最高〜♪」
「パンとお菓子はもうないよ」
「嘘だろおい、あの量一瞬で食べたのか!?」
お前たちまで六花の味方をするのか。そうかそうか、君達はそういうやつらだったんだな。全てを悟ったよ。
「かくなる上は昼飯抜きでも……」
「今日は軽音部あるよ?」
「あ、そうそう、蒼太のことリサ先輩が放課後呼んでたぞ?」
「明日もバイトって昨日から騒いでたじゃん」
「食わなきゃやってられないんですねぇ!」
昼飯を食わなきゃ放課後の部活もやってられない。バイトは通り道にあるコンビニでなにか買えばいいんだけど今月は金を節約したい。え、なにこれ、背水の陣ですか?
「ね? 一緒食べよ♡」
「はぁ……食べますよ」
「やった〜♪」
諦めて降参すると六花は俺の目の前に座った。こうして見てみるとやっぱり六花は可愛い。澄み切った目の色をして、艶が出ている髪によく似合う黒縁メガネと赤いシュシュ。六花が俺の妹でよかった。妹じゃなかったら今頃告白して玉砕していたことであろう。
「あーん♡」
「自分で食べちゃダメ?」
「休み時間に私に逢いに来てくれなかった罰だよ。私すっごく寂しかったんだからね?」
「そんな約束したっけ?」
「そんなこというならお兄ちゃんの分残さないで全部食べちゃおっかな〜」
昼飯を食わない事にはいかないので渋々六花が差し出す卵焼きを食べる。ちょうどいい甘さでほんのりと出汁が香ってくる。料理もできるし、俺にはもったいないぐらいの妹だ。
「お兄ちゃんも食べさせてね♪」
「嫌です」
「あこちゃん達はしてるよ? 私たちはしないの?」
目をうるつかせ、目尻にはこれでもかと涙を貯めている。そしてその状態で上目遣いときた。これを断るには度胸がいる。だがそれでも俺はあえて言おう。
「だが断る」
「お昼ご飯なし」
「しますしますなんでもします」
3秒で手のひら返しをしました。お兄ちゃんは妹には勝てません。
「お兄ちゃんの卵焼きもおいひいわ〜♪」
「口に入れながら喋んない。じいちゃんとばあちゃんからも言われてたろ」
「そうやった! ついついお兄ちゃんにあーんしてもらったから浮かれてもうた〜」
ダメ、好きです。そんなアホっぽいところが大好きです。六花、一生のお願いだ。これ以上俺をお前に惚れさせないでくれ。兄としてのプライドに関わる。
「あ、もう時間だ! 教室帰るね」
「早くそうしてくれ。俺の心臓が持たない 」
「それじゃまた放課後ね!」
「おう」
お昼ご飯を食べて六花は自分の教室に戻って行った。あの笑顔を見たあとだ、これで午後の授業も頑張れる。
「六花の笑顔だけで白米3杯はいける」
「六花も六花だけど蒼太もかなりのシスコンだよね」
「え、どこら辺が?」
「全部」
午後の授業も六花の笑顔で補充したパワーで何とか乗りきった。世界史と数学とか眠くなる教科順位トップ5に入るけど寝なかった。六花のパワーで頑張ったよ。
「さぁて、部活部活」
「今日はダンス部にも来るんだよな?」
「あ〜……リサ先輩にごめんなさいって言っておいて?」
「しょうがないな、蒼太のシスコンぶりに免じて今回だけな」
「だから俺はシスコンじゃねぇ! 六花がブラコンなだけだ!」
次回
六花と蒼太の重大な秘密発表
頑張って明日投稿できるようにモンハン控えます