「お兄ちゃんお兄ちゃん、髪やって!」
「自分でやればいいだろ」
「お兄ちゃ〜ん」
「……わかったよ」
「やった〜♪」
朝から六花の教室に呼ばれてめんどくさかったけど、笑顔を見れてご満悦の俺です。
「あこもお姉ちゃんにやってもらおっかな〜」
「明日香も香澄にやってもらえよ」
「お姉ちゃんの髪は毎朝私がやってるって話します?」
「シッテタ」
マジで戸山姉妹って姉と妹が逆転してるよな。香澄がいつも変なことをしでかすのを間近で見てきた明日香だからこんなにしっかりしてるんだろう。うん、六花の友達になってくれてありがとう。
「六花、終わったぞ」
「ありがと。お兄ちゃんだーい好きっ♡」
「じゃ、教室戻るからな。昼休みになっても来るなよ。絶対来るなよ!」
「先輩、それはフリですよ」
ここ最近、俺の教室の俺の席で喧嘩が起きるんですよ。しかも毎日同じ時間に、同じことで喧嘩になるんです。ちなみにそのせいでお弁当を作る手間が省けてます。
「あ、蒼太」
「なんですかね。六花の笑顔を見ていい気分だから何言われても動じないぞ」
「そ。じゃあ今日の分もちゃんと食べてね」
「あんなゲテ……げふんげふん、あんなに美味しいお弁当をですか」
そう、俺はお弁当戦争にまきこまれているのだ。
「だって湊さんとの決着ついてないし」
「まず俺を審判にすんなよ」
理由は知らないけど、蘭と猫先輩が喧嘩してるらしい。そんでなんでか知らないけど、忍術会得したギャルと銀髪パン魔人がお弁当で決着つければって言い出したんだと。
「しょうがないでしょ。あたしも湊さんも納得できるのがあんただけなんだって」
勝敗決めるのに誰かに手伝ってもらわなきゃって話になって、それが俺に来たと言うことです。あ、これは現場にいたエンジェルスマイルが取り柄のThe普通女子からの情報です。花咲川のスケバン風紀委員の皮を被ったポテトに裏を取ったので確かな情報です。
「お前の交友関係が狭いのが悪い」
「……フンっ!」
「ゴフッ……て、てめぇ」
「今度はちゃんと弱点潰してあげる」
何度喰らっても慣れない蘭のストレート。喰らう度に威力増してるし、避けようにも避けられないんです。やっぱりこの人もゴ……この言葉を口にしたら危ないからやめておこう。
「時間だから、はい」
「猫先輩待たないんですかね」
「蒼太、今日の分よ!」
「呼ばなくても来るでしょ。あ、猫って帰巣本能強いらしいよ」
「ここって猫先輩の巣かなんかなんですかね」
こうやってお弁当を食べさせられるんですよ。かれこれ一週間ぐらいかな、毎日お昼二人分はさすがの俺でもキツいぜよ。
「ほら、食べてよ。今日はあんたが好きな焼き魚入れてるんだから」
「蒼太、あなたの好きなネギ入り卵焼きよ。早く食べなさい」
「どうやったらこんな見た目になんだよ」
蘭自慢の焼き魚は真っ黒で、マヨネーズをかけると黒と白の2色にしかならない。猫先輩自慢のネギ入り卵焼きは焦げてはないが、グチャグチャだからスクランブルエッグって言った方が正しいと思う。
「おっにいちゃ〜ん……お兄ちゃん?」
「あ、六花 」
「来るなって言ったよなぁ!?」
「そのお弁当、全部説明して」
「仰せのままに」
久々に降臨した堕天使六花に事細かに説明しています。まぁ俺もわかってること少ないんですけどね!
「ふ〜ん、だから最近お弁当箱使ってなかったんだ」
「なんでそれを知ってるんですかね」
「だって今私が使ってるお弁当箱がお兄ちゃんのだもん」
「へぇ〜……は?」
「だから最近のお弁当は一段と美味しいんだよ♪」
俺の弁当箱を使われてるのは言われるまで気づきませんでした。六花、お前まで忍術覚えたのかよ。
「でもさぁ〜、なんで私以外の人が作ったお弁当食べてるのか分からないんだよね〜」
「な、なんて言いますか、その場のノリ的な?」
「そっかそっか、それじゃぁはい」
「意味がわからん」
「意味がわからんじゃないよ。私が作ったお弁当、食べて」
ここでお弁当戦争やるのやめてもらいたいです。いやさ、六花のお弁当がいちばん美味しそうなんだよ。見た目はね、見た目は。でも味付けに問題有りなんだよ。だって砂糖と塩間違えて卵焼きをしょっぱくするし、胡椒かけすぎて辛くしたこともある。
「流石の俺でも3人分はきついと思うのですが如何程にお考えでしょうか」
「可愛い可愛い妹が作ってきたお弁当を食べられないって言うの?」
「なに、同級生が作ってきたのに食べないって言うわけ?」
「せっかく作ってきてくれたものを食べないって言いたいの? いい度胸してるわね」
「全ておいしく食べさせていただきます!」
結局、お昼に3人前を食べることになりました。今日さ、珍しく軽音部にもダンス部にも顔出そうと思ってんだよ。ほら、文化祭も近いし。ついでにその後バイト入ってるんですよ。食いすぎて腹痛くなりそう。
「これはもう腹を括って……っ!」
「それで、どうなの?」
「見た目によらず美味しいこと」
「つ、次はあたしの!」
「蘭先輩ずるい! 次は私の!」
猫先輩のも普通に美味かったし、蘭のも普通に美味かったし、六花のも上手かったですよ。もちろん1番は……知りませんが。
「ねぇお兄ちゃん、1番は知らないってどういうこと?」
「なんで俺の考えてること分かんだよ」
「だってお兄ちゃんの妹だもん♡」
この謎理論ほんとにやめて欲しいんですよね。驚きと六花の可愛さが相まって心臓に悪い。
「この調子だとまた決着つかずみたいね」
「そうみたいですね、明日も作ってきますから」
「何度でも作ってくるわ。回数食べればなんとでもなるはずよ」
やっぱりこの2人って似たもの同士でアホっぽいよな。だって身長ちっさいし、負けず嫌いだし、単純にバカだし。
「よくもそんな口が聞けるわね。聞こえないとでも思ってるの?」
「あだだだ! アイアンクローしないで!」
「なら殴るのはいいんでしょ?」
「物理的攻撃並びに精神的攻撃をやめて頂きたい所存です」
なんなんだろう、人の考えてること読むのやめてもらえませんかね。絶対元凶はリサ先輩でしょ。あの人しか考えられんもん。あ、ついでにモカか。
「つーか、なんで猫先輩と蘭は喧嘩してるわけ?」
「どっちが料理が上手いかって話になったから」
「そんなんリサ先輩とかつぐに決まってんじゃん。2人がやったって無理無r『うっさい!』ぐふっ……」
「ほ、本当のことを言って何がわr『少し黙りなさい』無理無理無理たんまたんま!」
真面目に本当のこと言って何が悪いんでしょうか。不服ですが、リサ先輩の料理の腕には勝てないと思います。つぐちゃんなんか普通に殿堂入りしてもいいと思います。だって猫先輩も蘭も下手じゃん!
「お兄ちゃんお兄ちゃん、わたしは?」
「え、えーと……」
「わ・た・し・は・?」
「とてもおいしゅうございました」
「やった〜♡」
一瞬だけど、堕天使六花よりやばい六花を見たかもしれない。闇六花、暗闇六花、堕天使六花って来たら悪魔ノ六花とでも名付けようか。悪魔的に怖いけど、悪魔的に可愛い。我ながらネーミングセンス良くね?
「そろそろお兄ちゃんも乙女心っていうものを学ばなきゃね」
「学ばなくても六花の考えてる事は分かる」
「それじゃ、私が今考えてることわかる?」
「お兄ちゃん大好き〜って考えてんだろ」
「ぶっぶー。答えは乙女心知らなくてもいいって言ってるけど、内心ちょっと気にして落ち込んでるお兄ちゃんがいつもよりかっこよくて今すぐ抱きついてキスしたいけどお兄ちゃんからしてくれるまで待たなきゃ、でした」
答えはよくよくわかったよ。だからとりあえず叫んでいい? ダメって言われても叫ぶから。
「そんなの分かるわけねぇだろこのヤロー!!!」
これを機に乙女心なるものを学ぼうと思います。
妹六花が間違った進化して闇六花
闇六花が進化して暗闇六花
暗闇六花がさらに進化して堕天使六花
堕天使六花がまたまた進化して悪魔ノ六花
悪魔ノ六花の進化先募集