「俺に乙女心というものを教えてください」
「ふむふむ。それをモカちゃんに頼むとなるとお高くつきますぞ〜?」
「こ、この際はしょうがない」
「契約成立〜」
教室でモカに土下座して頼み込んだら教えてくれるということでした。え、プライドはどこに行ったかって? そんなもの家に捨ててきたよ。だって分かってないと蘭にも猫先輩にもボコされるし、六花には縛られるからもう嫌。
しかも、今日は六花直々に「乙女心を勉強してきてね」って言われてるから尚更なんだよ。
「さてさて、代金は後でいただくとして〜、まずはゲストに来てもらいましょ〜」
「ゲストって誰だよ」
「じゃじゃ〜ん、リサさんで〜す」
「ごめん、腹痛くなってきたから保健室行ってそのまま早退するわ」
「ちょっ、あたしが来たらすぐそれ!?」
頭痛くなって寒気もしてます。もうあれだ、リサ先輩への耐性がマイナス行ってるんだわ。なんならもっと低い自信あるぞ。
「まぁまぁ、落ち着いて座って座って〜」
「本当に大丈夫なんだろうな。不安しかないぞ」
「もち〜。今からそー君にはリサさんをナンパしてもらいま〜す」
「あ、また次回お会いしましょう」
「流石にあたしも傷つくんだけどな……」
ナンパなんてしたことないです。1回でもしてみろ。今も六花に付けられた盗聴器が生きてるなら即飛んでくるからな。手錠と猿轡とロープでぐるぐる巻きにされて監禁されるぞ。いや冗談抜きでまじよ。
「ナンパぐらいできなきゃ乙女心はわからないよ〜。まぁ〜、リサさんちょろいし〜?」
「いや、リサ先輩よりひまりの方がちょろいぞ。なんなら蘭もちょろい」
「二人ともあたしの意見聞く気ある?」
「それじゃスタート〜」
「も、モカ〜!」
それじゃやってみよう。って言われてハイハイそうですかってできるもんじゃないだろ。基本的に少女漫画とか読まないし、ドラマなんかも見ないからナンパの仕方なんて想像がつかないです。
六花をナンパしようとした奴らは例のごとく全員ノしてきたからこの目で見たこともないんよ。
まぁ、適当に詰め寄って壁ドンでフィニッシュ……でいいか?
「おいリサ、放課後ツラ貸せ」
「待って待って、心の準備も何も出来てないし……」
「そんなのいらねぇだろ。全部俺に任せろ」
「わ、わかったから……近いって……」
「はいそこまで〜。そーくんの勝利〜」
俺の勝ち。なんでナンパした事がない非モテ男子に負けたのか考えてみてください。そうすればなにか見えてくるはずです。
「それじゃあそーくんに今のリサさんの心境を答えてもらいましょ〜」
「蒼太カッコよすぎ、そんなに言われたら断れるわけないじゃん」
「リサさん答えをどうぞ〜」
「いつもサボってる蒼太にそんなのと言われたら惚れちゃうじゃん」
「絶対変えたわ。俺が言ったのを聞いてから変えたから!」
モカはニヤつきながら「乙女心のなんたるかをわかってませんな〜」って言ってきた。そのニヤケ顔がいつにも増してムカつくんですね。
目の前の人が考えてることが読める能力なんて持ってません。そもそも俺は男なんだし、なおさら乙女心がわからなくて当然だろ。
「それじゃぁ次のゲストにいってみよ〜」
「次はまともなんだろうな。あれか、どっかのバカピンクとかどっかのバカ赤メッシュとかどっかのバカ猫とかじゃねぇだろうな」
「私なんかでよかったのかな」
「んー、天使!」
「て、天使!?」
つぐみは女神です。誰がなんと言おうと女神です。俺の周りで数少ないまともな部類に入る子だよ。
「顔赤いけどなんかあった?」
「な、なんでもないよ!?」
「んー、これはこれで重症ですな〜」
さてさて始まりました2回戦。今度はつぐみです。簡単簡単超簡単って言いたいところだけど、それじゃダメって言われるのが目に見えてるんですね。
「よし、つぐみ、俺と付き合って下さい」
「ふぇっ!? ええっと……ごめんなさい」
「あのさ〜そーくん、ナンパってわかる?」
モカに思わず「しらんがな」ってツッコミたくなる蒼太君でした。ナンパとはなんぞや。一目惚れしたから付き合ってくださいじゃダメなんですか?
「そーくんは乙女心どうこうの前に究極の鈍感みたいですな〜」
「具体的にどこら辺がですかねモカ先生」
「ん〜、全部〜?」
「蒼太君の心は瀕死のダメージを受けた!」
もうなんなんですかね、俺の存在全てが鈍感っていう解釈であってるんですかね。そりゃもう乙女心なんかわかるわけありませんよ。ことある事に六花に邪魔され、まともな恋愛どころか交友関係も持てなかった中学時代。全国中学生陰キャオブザイヤーを3年連続受賞した俺がたった1年そこらで女子と会話できるようになれたんだからそれだけは褒めて?
「つぐの次は最後のゲストで〜す」
「つぐの次はまぁまともでしょうね。明日香しか思い当たらないからさ、明日香だよな? 絶対明日香だよな?」
「そんなに明日香ちゃんが良かったの? 」
「六花かー。よかったなー。やっぱりこういう時の適任と言えば六花しかいないよなー」
「ちゃんとお兄ちゃんだね♪」
いきなり悪魔ノ六花の状態で出てこないで貰えますかね。しかもちゃんとお兄ちゃんってなんやねん。
「ちゃんとしたお兄ちゃんっていうのはヘタレなお兄ちゃんのことだよ」
「誰がヘタレだこら」
「じゃあお兄ちゃんからキスしてくれるよね? 私とお兄ちゃんは相思相愛なんだから」
「すいませんでした、僕はヘタレです」
「ほらね」
やめて、お兄ちゃんのライフはもうゼロよ! これ以上死体撃ちして何をしたいって言うんだよ!
「それじゃ、帰ろっか。モカ先輩、ありがとうございました」
「いや、帰りません。僕は今日はゲーセン寄って帰るんです」
「ダーメ♡」
「ちょっ……」
「あちゃ〜、そーくん、頑張ってね〜」
六花のバッグで思いっきり殴られて転んで頭打って気を失ってました。気づいたらロープでぐるぐる巻きにされた状態でベッドに寝かされてました。もうわかったから、今度は手荒な真似しないでくれ。
「よし、一緒に寝よっか!」
「その前にロープ外してください!」
「ダメだよ。やっぱりお兄ちゃんに乙女心教えようとした私が馬鹿だった。わかっちゃったら今よりもっとお兄ちゃんがモテモテになっちゃうじゃん」
「いいじゃんそれで」
「だってそしたらお兄ちゃんのこと独り占めできなくなっちゃうじゃん」
俺の妹があざとすぎて困ってます。ハムスターみたいにほっぺた膨らませながら怒るのは反則ですよそれ。他の男子にしたら絶対に勘違いするやつだよ。俺だから勘違いしなくて済むんですね。だってお兄ちゃんだから!
「だから監禁するね♡」
「文化祭は?」
「あー、そっか。文化祭だけ許してあげるね。盗聴器は増やすけど」
「増やさないでもろて?」
「じゃあ文化祭なしだよ?」
卑怯すぎてお兄ちゃん泣けてくる。お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありませんよ。やるならもっと正々堂々やりなさい。
「正々堂々やればいいの?」
「読心術使わないでくれよ。まぁ、正々堂々な? 物理的攻撃とか噂とかスタンガンとかなしな?」
「知ってるよ。それなら私にも考えがあるからね」
何とかなりそうで何とかならなそうな文化祭だな。うん、困ったらとりあえず明日香に相談してみよう!
「明日香ちゃんに相談させると思ってる?」
「だから読心術使わないで」
「お兄ちゃんが大声で叫んでるだけだけど」
「嘘だろおい!」
どうやら俺は無意識に口走る癖がついたらしい。
文化祭で六花のメイド服だと!?しかも俺専属のメイドだって!?そんなの六花の教室に行くしかないじゃない!ていうかサボってたらなんかまたソロギターやれって言われたんですけど。え〜、どうしよっかな〜。ん、六花も一緒にやるだってぇ!?
次回!妹と一緒にギターを弾くらしい。
デュエルスタンバイ!