へいへいへい、今日は東京だぜおい。なんか特攻服着て髪もオールバックだぜおい。夢に見たこの髪型。これはあれか、あの台詞を言うべきか。
「これからは私が天に立つ」
「お兄ちゃんは元から天に立ってるよ?」
「なんかありがとう」
「なんかどういたしまして」
前髪を掻き上げてた六花はやっぱ可愛いですね。それに加えて特攻服とか反則ですよね。もうお兄ちゃん無理、吐血案件ですよ。
「またシスコンやってんじゃないわよ。あんたなんか呼ぶ気なかったって言うのに」
「俺だって来たくなかったわ。六花の頼みだから来たんだよ。あとこの特攻服気になった」
「流石日本のシスコンね」
「チュチュも蒼太も落ち着きなって」
こちらも特攻服着たRASのまとも枠レイヤです。いくらがきんちょと言い合いしてても我慢できるんです。だって怒ったら怖そうだから。なんならますきよりも怖そう。
「おーい、そろそろ受付するぞ」
「六花、誘拐犯には気をつけろよ。なんかあったらレイヤに助けてもらうんだぞ」
「だから悪かったって。もう二度としねぇからさ」
「本当だろうなぁ?」
「マジだよ」
左側頭部から額にかけて龍の入れ墨を模したシールを貼ったスケバンますき改めスケバン誘拐犯。誘拐したことを六花が許しても俺は許さないで。ちゃんとRASで六花の面倒見てくれてるっぽいから許すけども。
「てか、お前も特攻服似合ってんな」
「パレっちゃんの腕前のおかげでしょ」
「そう言ってもらえて光栄です♪」
「衣装も衣装だけど、お兄ちゃんだからだよ。久々にヤンキーなお兄ちゃんを見れてうちもう眼福やぁ♡」
おいこら六花、俺がヤンキーだったのは内緒って言ったはずだぞ。
「やっぱり二人は仲いいんだね。ちょっと羨ましいな」
「妹がいればレイヤも分かるぞ。一人っ子の方が幾分かマシだ」
「お兄ちゃん……?」
「妹最高! マジ女神!」
やっぱり俺は六花に勝てないらしい。
人数が多いとあれだから、誘拐犯とレイヤと六花が受付しに行った。そした俺とパレっちゃんとがきんちょがベンチでお留守番。これはもうバトルバチバチですかね。
「ほんっとに、なんでシスコンがいるのよ」
「だから俺だって来たくねぇって言っただろ。俺の目当てはこの特攻服と六花のギター。あと六花の護衛と六花の写真撮るのと六花の荷物持ち」
「もう哀れを超えて尊敬ね」
こいつ、妹を持つ兄がなんたるかを理解していないな。まぁがきんちょだし、姉になっても妹の世話せずに自分のことをやってそうだしな。パレっちゃんに世話されてるあたり、そういうことを物語ってるんですよね。
受付終わって3人が戻ってきた。出番は昼休憩挟んでからの午後の部で、その中でも最後の方になっているらしい。さて、どうするかって訳ですね。
「蒼太は予定までどうするの?」
「何も予定はないので荷物持ちですね」
「そっか」
「と、言いたいところなんですが、なんか食べに行こうぜ。あ、六花は別な」
「え~、なんで~」
可愛い可愛い妹と離れるのは少々寂しいところなんですが、ここは少し我慢です。血反吐を吐いてでも、骨が粉砕してでも確かめなきゃならないことがあるんです。
それほどまでにやばいことって言うのは、夢で見たことなんだ。特攻服着てオールバックしてる今の状況は昨日の夢で見た。なんならここ最近の夢で見たことがほとんど現実なんです。予知夢見る能力に目覚めちゃったお兄ちゃんは妹のためにちょっと頑張ろうかなってさ。
「それで、どこまで行くの?」
「ノープラン。それよりさ、からげんきしてると思うのは気のせい?」
「きっと気のせいだよ」
「それだったらちょっとばかしおかしい気がするんよ。だって、最近六花の様子がおかしいから」
泊まりに来ると毎回一緒に寝るって言うのに言わないし、香澄からの電話も出ないし、完璧におかしいよな。しかも、今日見た夢の中で六花が泣いてたんだ。今から起きることが夢の通りになる確証なんてない。だけど、最近見た夢はほとんどが現実でも起きたっていうのもある。まぁ、どうなるかは分からんけど、夢と少し違う行動を取ってみようかなってね。
「からげんきって言うかなんていえばいいのかわからないけどさ、ちょっと苦しいんだよね」
なんか、この間の予選会でがきんちょがやらかしたらしい。それのせいでRASへのバッシングがやばいらしい。からげんきでなんとか持ちこたえてるみたいだけど、そろそろ限界かなって。
「だから、苦しいんだ」
「聞いてる限りがきんちょの言い方も言い方だけど、そこら辺のモブが口出しすることでもねぇよな」
「まあ、そうだね」
このままじゃ六花が泣く未来になるかもしれない。それだけは避けなきゃならないよな。さて、俺ができることは何なんでしょう。考えてみようか。
「なぁレイヤ、甘いもの食べて楽にやろうぜ」
「う、うん」
やれることって言っても限られてるんです。なんなら時間も全くない。だったら行動しながら考えていこう作戦。これ案外悪くないんじゃね。
六花達から連絡が来たからそっちに行きました。行く途中に出店があったからワッフルを買いました。行動しながら考えていこう考えていこう作戦を遂行した結果、甘い物を食べるという考えに至りました。えー、何というかそういいますか、馬鹿です。これ考えたやつは正真正銘の馬鹿です。一回輪廻転生して悔い改めてから生まれ直した方がいいレベルの馬鹿です。それが俺です。
「お兄ちゃん、流石にアホすぎやろ」
「俺がアホじゃないときがあったか」
「ない」
出番が近づくにつれてテンションが下がって行っている。からげんきなんてどっかに飛んでいって跡形もない。ここで俺が変なこと言ってもあれだから、ちょっと居づらいです。
「出番、そろそろみたいだぜ」
「頑張って来いよ、六花」
「うん……」
なんかじれったいですね。いつもなら今日も一緒に寝ようねーとか、頑張ったご褒美はキスがいいなーとか言うのにこの暗さよ。六花はいつもの妹六花じゃないと六花じゃないんです。だから励ましましょう。
「六花、周りがなんと言おうと六花は六花だし、RASはRASだ。なんかあったら俺がなんとかするから、気張ってこい」
「うん。頑張って来るからご褒美はちゅーがいいです」
「それは考えておきます。何はともあれ、頑張って来いよ!」
「うん! 頑張ってくるね、お兄ちゃん!」
少しは元気が出たみたいだから、とりあえずはよしとしよう。
RASの出番ギリギリになったけど、なんとか観客席にたどり着くことができました。想像してたよりも人多いし、かなり密集して動きづらいです。そんなとき、アナウンスがなってRASが入ってきた。
レイヤが名乗る思ったとおりと、罵声が響いた。RASなんか見たくないだの帰れだのなんかで止まる思ってたけど、そんなことはなかった。俺の近くにいたやつが解散しろって言い出して、周りにもそれが伝播していった。
会場はすぐさま解散コール。最初に言い始めたやつの足でも思い切り踏んでやろうかとした瞬間、六花の声が聞こえた。
「かっ……解散なんて、そんなこと気軽に言わんといてっ!」
解散コールが一瞬で止まり、会場は静まりかえった。がきんちょとパレっちゃんが六花に何か言っているようだったが、それを振り切ってまた話し始めた。
「トロフィーなんていらん。失格になったっていい。練習して練習して、RASの音を聞かせに来たんや。うちらRASのこと知らん人らが外からごちゃごちゃと……四の五の言わんと、とにかくうちらの音を聴け!」
久久に聞いた六花の音楽に対する言葉。それを皮切りにがきんちょ達の雰囲気も変わった。
RASの圧巻の演奏が終わり、それと同時に俺は六花の元へ向かった。あんなことやったんだ、多分またフリーズしてるかぶっ倒れてるぞ。
「六花っ! 大丈夫か……って、は?」
そこには夢で見たとおり、泣いている六花がいた。ただ、夢とは少し違った。泣いてるのは泣いてるんだけど、うれし泣きみたいだった。
「お、お兄ちゃ~ん。頑張ったよ~」
「お。おう。よしよし、頑張った頑張った」
「頑張ったからご褒美ちょうだい?」
「やっぱその切り替えの早さは異常だよな」
「だってお兄ちゃんの妹だもん♡」
なんか大成功で収まったらしい。六花が吠えたから正気に戻ったとか、しゃんとしたとか口々に言い合いながら笑っていた。何これ、一件落着一本締めですか?
「ソウタ・アサヒ、あんたのおかげでもあるわ。ありがとう」
「やっと名前覚えたか。六花のこと頼むぜ、チュチュ」
「お兄ちゃ~ん、頑張ったんだからご褒美のちゅーはやく~」
「絶対にしねぇ。だからその代わりのなんか」
「やっぱりシスコンだったわ」
どうやらがきんちょとの喧嘩はいつまで経ってもなくならないらしい。これだけははっきりさせとくけどな、俺が六花のことを好きなんじゃなくて、六花が俺のことを好きすぎるの。だからシスコンというのは間違いであって、正しくはブラコンになります。お間違えにないように。
「へぇ~、お兄ちゃんは私のことが好きじゃないんだ~」
「そ、そんなこと、ないよ?」
やばい、助けて。六花が怖いよ。
「これで夢通りに一緒に寝られるね♡」
「全力で逃げさせていただきます。と言いたいところだけどそれがご褒美で!」
怖いとか言っておきながらこうやって手のひら返す癖、そろそろ治した方がいい気がするんですよ。でもね、絶対にぜぇぇったいに無理! だってどんな六花も可愛すぎるから!