「父さん、今なんて言った?」
「もう一度言うから落ち着いて聞いてなさい。六花と蒼太、2人は本当の兄妹ではないんだ」
「俺と……」
「私が……」
「「兄妹じゃない!?!? 」」
ある土曜日、俺と六花は岐阜からやってきた父さんに重大な事実を告げられていた。
事の発端は一昨日のことだ。
『蒼太、今週の土曜日はバイト入ってるか?』
「入ってないけど、どうかした?」
『ちょっと話があるんだ。土曜日は六花もバイトが入ってないらしいからちょうどいいか』
「いやだからなに?」
『それは顔を見て話す。土曜日の12時にお前の家に行く。六花も呼んでおいてくれ』
父さんはそう言って電話を一方的に切った。
そして土曜日になって俺と六花は俺が住んでいるマンションの一室で待っていた。六花が旭湯なのに俺だけなんでマンションに住んでるかって? 去年買った宝くじが当たったから父さんに頼んで引っ越したんだよ。
「今日はお父さん来るんやろ? どんな話なのかな〜」
「俺もわからん。父さんが来れば分かることだから来るまで待ってるわ」
「お父さんのおかげでお兄ちゃんの家に来れたからうちは満足だけどね♡」
「こうなるから入れたくなかったんだよ」
六花ベタつかれながら普段通りの会話をしながら父さんを待っていた。そして父さんが来て、コーヒーを飲んだと思ったらこの発言よ。いきなり過ぎない?
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ? 言ってることがよくよく分からないんだけど?」
「そ、そうだよ! お兄ちゃんと私は兄妹でしょ? お兄ちゃんは私のお兄ちゃんで私はお兄ちゃんの妹でしょ!?」
「2人とも落ち着くんだ。父さんも言うか言わないか悩んでたけど、2人とも高校生だからちゃんと言おうと思ってここに来たんだ」
「で、でも!」
「六花、ここはちゃんと聞いとこうぜ」
慌てふためく六花を静止して俺自身も落ち着こうとする。だけど落ち着けるわけがないんですね。俺が六花の兄貴じゃない? それじゃ俺が父さんと母さんの子供じゃないってことか六花が父さんと母さんの子供じゃないってことだろ? 情報量多すぎて頭痛くなってきたわ。
「簡単に言うと六花は父さんと母さんの子供だが……蒼太、お前は母さんの友達の子供だ」
「俺が母さんの友達の子供だったらなんで父さんと母さんが俺のこと育ててくれたの?」
「蒼太が生まれてからすぐ、お前の両親は事故にあって亡くなったんだ。それで母さんの友達の遺言で父さん達がお前を育てることになった。身寄りがいなかったらしいからな」
「な、なるほど……ね〜」
「お、お兄ちゃん……」
結構状況が深刻だったことはなんとなくだけど理解出来た。要するに俺は朝日家の中だと養子的な位置に立っていると。
「そ、それでもお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん! かっこよくて頼りになる私の大好きなお兄ちゃんだもん!」
「ここまでは蒼太に言うべき話なんだ。そして六花、ここからはお前にする話だ」
「わ、私?」
「六花の兄は蒼太だけだ。それは父さんも母さんもよく分かってる。それを踏まえて言うが、法律上の話だと六花と蒼太は結婚出来ることになる」
あ、やっべ、冷静に考えたらそうなるやん。血は繋がってないけど養子だから俺は六花の兄貴であると同時に結婚出来る相手になるってことだ。それを今の六花が聞くと……
「それほんと? 私がお兄ちゃんのお嫁さんになって結婚してずっと一緒にいられるの?」
「そうだ。話はそれだけだ。六花も引っ越すなら家に連絡をしてからだからな。蒼太は宝くじの分がまだ残ってるだろう」
「異議あり!
「父さんは……帰るぞ。また連絡する」
「いやちょっと待っ……本当に帰りやがった」
「六花、俺ちょっと買い物行ってくるわ」
「私も行く!」
「ひとりじゃダメですかね?」
「なんで?
不味い、これはどうしようも無いぐらい不味い。今までは六花を妹として認識していたから何とかなってきてたけど、六花を妹として認識できなくなったら俺は何をしでかすか分からない。ていうかその前にもう六花の目には俺は兄貴じゃなくて旦那として見えてるから何されるか分からない。
「夫婦じゃないんで当たり前では無いです」
「それじゃ付き合ってるから当たり前」
「付き合ってもないです」
「それじゃ兄妹だから当たり前」
俺が否定した瞬間にまた別の問題を持ってくる六花。このままじゃ埒が明かない。かくなる上は……
「我逃げるなり!」
「あ! お兄ちゃん!」
六花を家に残して俺は近場のスーパーに猛ダッシュした。ここからバイト先に逃げてもいいけど、おやっさんに迷惑かけらんないしバイト仲間にも迷惑をかけらんない。ていうか、かけたら怖いです。
「あ、蒼太君!そんなに息を荒くしてどうしたんの?」
「か、香澄か?」
「蒼太先輩じゃないですか。どうしたんですか?」
「明日香もいんのか。めっちゃ助かったわ」
スーパーでかごを持って何も入れずに奥の方に隠れるようにしているとと学校は別だけど同い年の戸山香澄と六花と同じクラスの戸山明日香の戸山姉妹が買い物に来ていた。これは好機、助けてもらうしかない。
「頼む、俺を匿ってくれ」
「ど、どうしたの!?」
「匿ってくれって言ったって……一体誰から匿うんだよ」
「六花から」
「蒼太君、ロックと喧嘩したの?」
香澄の単純な質問に答えようとするがなんていえばいいか分からない。喧嘩ではない。ただ俺が一方的に六花から逃げている。俺は自分で自分を自制できる自信はあるぜ? でもあの六花を見てみろよ。いつもの可愛いブラコン妹六花じゃなくて俺を狙う
「それはあとあと説明するから……な?」
「ならロックに聞いてみるね!」
「六花はここにはいないいない……よな?」
「おにーちゃんっ♡捕まえたよ♡」
「あ、詰みました」
いつの間にか背後にまで迫っていた六花の存在に気づかなかった俺は後ろから六花に思いっきり抱きしめられている。いつにも増して腕に込められている力は強いし、ある程度あるものも当たってるのでやめていただきたい。っていうか周りの視線も結構気になるのでやめてくれません?
「早く買い物して帰ろ?」
「俺は一人暮らしだぞ」
「蒼太先輩、いくら相手がいないからって妹の六花には手を出すのはさすがにないと思いますよ? 蒼太先輩の周りには可愛い先輩いるじゃないですか」
「明日香、誤解するな。俺は断じて六花に手を出そうとしていない。なんなら六花に手を出すやつを抹殺するぞ」
「だって私はお兄ちゃんのお嫁さんだもんね♪」
六花の爆弾発言に血の気が引いていくのがわかる。今頃俺の顔はブロンズ像並に真っ青なんだろう。香澄と明日香の方を見てみるとあら不思議。香澄はボケっとしているが明日香は年頃が年頃なのか顔を真っ赤にして目を逸らしている。その視線は俺に大ダメージ入るんですけど。
「蒼太先輩、結婚式は呼んでください。私達はどんな形でも祝福……しようと思います」
「だから誤解だってば! 俺は六花を娶ろうなんてしてねぇ!」
「あっちゃん、娶る?ってどういうこと?」
「あ〜……私もよくよく分からないな〜。あ、そうだ、お母さんに頼まれてるものあるんだった。お姉ちゃん、行こう」
「あ、忘れてた! バイバイ! ロック、蒼太君!」
空気を読んだ明日香は香澄を連れてどこかに行った。そして取り残された俺は呆然としながら六花に抱きつかれたままでいる。えーと……どうしたらいいんですか?
「お兄ちゃん、ずっと気になってたんだけどなんで香澄先輩と仲良いの?」
「ポテト&白米同盟。ポテト同盟は他にも紗夜先輩と日菜先輩がいる」
「そっか。それじゃぁお兄ちゃんのこと守ってあげるね」
「守ってあげるねって誰からだよ」
「私じゃない女の人からだよ。もちろん香澄先輩も含めてね♪」
この時、俺は六花の見てはいけない一面を見てしまった気がした。誰か助けてくれ。そして俺の最近の記憶を消してくれ。本当に黒歴史だろぉぉぉ!!!
次回
六花暴走