「蒼太、この土日で何あったの?」
「聞くな、なにも俺に聞かないでくれ……」
「お兄ちゃんお兄ちゃん♡」
俺と六花の秘密を知ってからの初めての登校日、今日は俺が六花を迎えに行くどころか六花が俺の事を迎えに来た。それどころか何故か俺の部屋にまで上がってきて朝飯まで作っていたんだよ。六花に合鍵渡したやつ誰だよ、いまなら許すから出てきなさい。
「あこにそうやられるのもいいけど流石に学校ではな〜」
「だろ? 巴もそう思うだろ? そう思うなら六花を引き剥がしてくれ」
「六花が満足そうならいいじゃん。蒼太だって妹成分足りてないでしょ、今のうちにそうやって補給しておきなよ」
「そうなの? いーっぱい補給しておいてね♪」
「余計なこと言うんじゃねぇ!!!」
学校に来ても六花は自分の教室には行かず、俺にベッタリくっついているのだ。もうすぐ授業時間だと言うのに、どうするんだかな。
「なぁ六花、そろそろ時間だぜ?」
「時間なんて知らん、お兄ちゃんと一緒にいるから」
「これはこれで重症みたいですな〜」
「そんなこというならモカも手伝ってくれたっていいんだぜ?」
「モカちゃんは六花の味方で〜す」
裏切りやがったなこのやろう。二度とパンなんて買ってきてやらねぇし、ダイエットに協力してやらないからな。
「六花、頼むから自分の教室に戻ってくれ。もうすぐ授業始まるから……な?」
「むぅ……それじゃ休み時間にまた来るからね♪」
「もう2度と来るんじゃねぇ」
教室から出ていく六花に聞こえないような声でつぶやく。せめてもの仕返しと言いたいところだが、まだ問題が残っている。
「そーくんやっちゃったね〜」
「蒼太、さいってい」
「お願いです、なんでもしますから弁明させてください。これには深海よりも深い理由がありまして……」
この間の明日香のような視線で俺の方を見る蘭。その隣でつぐみと巴は苦笑いしてるし、モカはニマニマとしている。ひまりに至っては何故か泣いている。俺なんかしましたっけ?
「蒼太が……蒼太が盗られた〜。私が先に唾つけといたのに〜」
「あーあ、そーくんがひーちゃんのこと泣かせた〜」
「ほんっとうにあんたって最低だね。1回と言わずに5万回ぐらい地獄に落ちた方がいいよ。いっそ今から落としてあげようか?」
「武力行使反対。ていうかマジで泣かないでください」
蘭の蔑んだ目はさらに加速してまるで俺を汚物を見下すような眼差しになる。もう心だけじゃなくて周りの空気まで冷たくなってるんですけど。
「ひまりがずっとアピールしてたってのに気づかないし、目の前で盛大にフルし」
「いやまず告白すらされてないからフルもなにもないと思うのですが」
「蒼太のバカぁ〜」
「ほらまた泣かせた鈍感」
「鈍感ですいません」
たしかにひまりは可愛いと思うよ。ドジっても諦めずにめっちゃ頑張るし、お菓子食べてるのもなんかたまにハムスターに見えて可愛い。それで太ったりリバウンドしたりするのは別としてだけど。
「どうすれば泣き止んでくれますかね」
「自分で考えれば。どうせならこの際既成事実でもつくっちゃいなよ、そうでもしないと泣き止まないと思うよ」
「蘭がそっち方面のこと言うとかマジないわぁ……」
蘭の発言で結構引いたけど、その瞬間に溝に特大ストレートがお見舞された。はい、すいませんでした。とても痛いです、1発ノックアウトです。
「2度と蒼太の味方なんかしないから。六花とひまりの味方しかしない」
「そこをなんとか」
「何がなんでも譲らない。ひまりと六花の手伝いする」
「そう言って横から蘭がそーくんのこと盗ってみたり〜」
「は、はぁ!? そんなことあるわけないし!///」
どうやら俺は妹だけじゃなくてクラスの中でも警戒しなきゃ行けない面々がいるらしい。
「なぁつぐみ、俺ってなんかの大会の優勝賞品なのかな」
「た、大変だね…… 」
なんだろう、悩みの種を増やすのやめて貰えませんか?
──────────────────ー
昼休み、俺は弁当の入った袋を持って1人自動販売機の前にいた。教室にはひまりがいるから居づらいし、ひとつの場所に留まり続けると六花に見つかる。やっぱり俺にとっての安全地帯は学校にはないみたいだな。
「あ、蒼太じゃ〜ん」
「げっ、リサ先輩だ。逃げろ逃げろ」
「先輩見るなりそれは酷くない?」
「これが平常運転ですが何か?」
俺のお気に入りのアセロラドリンクをラッパ飲みしているとダンス部の先輩のリサ先輩に見つかった。何かとボディータッチ多いし、話してるとペース持ってかれるから微妙に苦手なんだよな。
「こんなところで一人寂しくお弁当?」
「そうやってさりげなく頭撫でようとしないで貰えます?」
「アハハ〜、ごめんごめん」
元々リサ先輩は悩みの種だったけど、そこに六花とひまりが加わってあら大変。もうどうすればいいんですかね。
「そういえばモカに聞いたんだけどひまりのこと泣かせたんだって?」
「あれは不可抗力なんです。許してください」
「あこからは六花に手を出したってことも聞いたよ?」
「それに関しては誤解があるので弁明させていただきたいでございます」
「まぁ、あたしだけにしても無駄だし、もう手遅れかもね」
リサ先輩1人に説明しても無駄なのは分かりきってる。他にもアホみたいな勘違いしそうな人がチラホラと頭の中に浮かび上がる。そっちも回らないと俺が1年間かけて作り上げた学校内での社会的地位が終わりを告げる。
「今日は帰るの遅くなりそうだな、特売間に合わなそう」
「あれだけ噂広まっちゃったらね〜」
「は? 噂ってなんすかそれ」
「え、それわかんないで言ってたの?」
「まさか……」
俺の考えうる最悪のパターンだけは何としても避けたいが、無理だろう。
「蒼太が彼女持ちなのに妹にまで手を出して既成事実作ったから卒業したら結婚するっていう噂だよ」
「想像の1000倍酷かったんですけど!?」
「あとあと、蒼太が何股もしてたり薬盛ってあんなことやこんなことや無理やりしたりしたって聞いたよ」
「いや俺なんなんですかね、もう手遅れどころかそこまで言ったらサツ行きレベルじゃないですか!?」
想像の1000倍じゃない、10000倍酷い。薬盛ったってなんなん? 何股もしてるってなんなん? 俺生まれてこの方彼女の一人はおろか、告白なんてしたことも無いしされたこともないんですけど?
「ちなみに念の為に聞いておきますけど誰と付き合ってるって聞いたんですか?」
「えーとね、モカと蘭と巴でしょ? あとはひまりとつぐみ、日菜と紗夜に香澄。人によってはあことか明日香とかあたしとか言ってたな。1番面白かったのは薫だよ」
「もう一夫多妻制もくそもないじゃないですか」
「本当にあたしと付き合う?」
だからサラッとそういうこと言わないでくださいよ。
「そんな感じで口説いてきても俺が好きなのは純粋な時の六花であってあんなブラコンとかヤンデレとかいう黒六花じゃないです。しかも俺の射程範囲内にはリサ先輩も一応入るんですけども、今回の告白はスルーさせていただきます」
「結構丁寧にフラれちゃったよ。これはひまりも泣く理由がわかるわかる」
「そんじゃ、俺はちょっと行くところあるので」
「バイバ〜イ。今日は部室で待ってるね♡」
「そんなこと言うなら今日もサボります!」
語尾にハートがつきそうな勢いでウインクを飛ばしてきたリサ先輩を残して俺はある場所に向かう。目的の場所は1年Aのクラス。もちろんこの噂を流してるであろう六花を説得するためである。ま、ここまでなったらもう無理だろうけど。
「おい六花なに根も葉もない噂流してんだよ!」
「あ、お兄ちゃん! お昼ご飯一緒に食べよ♡」
「それどころじゃなくないんですかね、おまえ俺の学校での社会的地位消す気か!?」
「私だけ知ってればいいもん♡」
本当に手遅れだった。半分ぐらい冗談だって思って笑ってる子もいたけど、もう半分は俺の事を見るなり軽蔑していた。これから1年間これかよ、流石に堪えるわ。
「そう兄ってリサ姉と付き合ってたのにお姉ちゃんとも付き合ってたの? あこともうNFO一緒に出来ないの?」
「あこ、六花の言うことはあまり気にするな。俺は誰とも付き合ってないし、今後付き合う予定もない。ついでにNFOならいつでも大歓迎だから」
「あの〜、蒼太先輩? 言いづらいんですけど六花が……」
「え、どした?」
あこに軽く説明をしていると、明日香が六花の様子がおかしい事に気づいた。そして言われた方を見てみるとそこには真っ黒な六花が居た。
「お兄ちゃんは私のモノだよね、お兄ちゃんのお嫁さんは私だよね?」
「え、えーと……」
「なのになんであこちゃんと明日香ちゃんと話してるの? なんで他の人と話してるの? ワタシだけいればいいんじゃないの?」
「落ち着け六花、頼むから落ち着いてくれ」
「落ち着けるわけないじゃん! 昨日なんて私具合悪かったのに一緒に寝ようって言ってきて朝までずっとしてたのに! そのせいでお腹痛いんだからね!」
あ、言いやがったわこいつ。
「蒼太先輩、さすがにそれは擁護しきれないですよ」
「俺が何もしてないって言う証拠だそうか?」
「ここでそんなもの出してもお兄ちゃんの味方になってくれる人いると思う?」
「いませんよねー」
完璧に六花に嵌められた。もしかしたら今日の朝からこういう結末になるように仕向けてたのかもしれない。我が妹よ、恐るべき才能だ。
「だからお兄ちゃん、責任取って私と結婚してね♡」
「俺はそんなことしちゃいねぇ!」
いつになったらこの誤解は解けることやら。
ほかの更新サボってるわけじゃないです。今週末に千聖さんのやつ上げます、D4DJのやつも上げます