「ったく、いきなり2人分チケット余ってないかって言ってきやがって」
「ちょっと命を狙われてるものでしょうがないじゃないですか」
「しらねーし!」
ライブ衣装に着替えている有咲に俺は必殺アルティメット土下座を決め込んでいた。そりゃ有咲も怒るだろう。だってチケットちょうだいって言ったの昨日なんだから。
「まぁまぁ、蒼太も大変なんだしさ。この前の噂なんか特にね……」
「本当に花咲川まで行ってたのかよ」
「うん、結構凄かったよ。警察沙汰だとか退学だとかの話も出てたし」
「あの噂が全部本当だったらそうなってるわ」
どういうルートを伝って行ったったのか知りませんけど、話を広げたやつは許しません。問答無用で裁判所に連行します。
「あれ? ロックは一緒じゃないの?」
「さっき髪直してくるってどっか行ったっきり」
「お前な、あの妹を野放しにしとくなよ。どうなるか分からないだろ?」
「なら有咲が妹になってくれてもいいんだぜ?」
「うるせー!」
痛いです。とっても痛いです。地味にゴスっていい音したし、結構深く入ったよ。なんか有咲と蘭ってどっか似てる気がする。でもそれを二人に行ったら俺の体は打撲痕だらけになることでしょう。
「こんにちわぁぁぁ!?!?」
「ロックー!」
「か、香澄さん!?」
「今日はメガネじゃないの?」
「ちょ、ちょっとイメチェンでコンタクトにしてみたんです」
おいおい六花、それを最初に言うの香澄かよ。妹のイメチェンが一番最初に聞けなくてお兄ちゃん悲しいぞ。
「あからさまにそんな顔しないの。妹ってそういうものだから」
「知ってはいたけどやっと俺から離れてくれて歓喜喝采雨霰」
「大丈夫、離れてもすぐに戻ってくるから。純と紗南もいつもそうだからね」
「助けて沙綾ママ、僕もう無理」
「あはは〜、私にそんな事言われてもね……?」
マジで沙綾ママに甘えたいんですわ。もう俺の体も心もボロボロです。誰のせいかはご明白。もちろん我が妹六花のせいなんですね。
「もうそろそろ時間だから行くかんな。香澄! いつまでもくっついてないで行くぞ!」
「えー、分かったよ〜」
「うし、なら俺らも観客席に行くか」
「うん、そうしよっか」
珍しく物分りがいい六花でちょっと驚き。だが俺は気づいたぞ、さりげなく手を繋ぎやがったなコノヤロウ。どうせはぐれるからとかが理由だろ? そんなことならお兄ちゃん大歓迎です。
「見て見て! 香澄先輩が来たよ!」
「そりゃポピパのライブなn『きゃ──!!! 香澄先輩!!!』ダメだこりゃ」
いや、これはむしろいい方か? なんかあって妹六花が闇六花になったんならポピパに頼ればいいってことがわかっただけでもありがたい。いつまで効くかは知らんけど。
「また楽屋に行けばポピパさんに会えるかな〜」
「そのために俺がどっかのチビな金髪ツインテボインに土下座してまで頼み込んだんだろ」
「もしかしてお兄ちゃんってそういう趣味?」
「な、なわけねぇだろ!」
一瞬闇六花が見えたけど何とか抑え込めた。これ以上闇六花に俺の弱点を知られてみろ。考えただけでもマイナス思考にしかならん。でもこの1000倍はやばい事になるんだよな。
「香澄、お前またアドリブ入れてただろ!」
「でも有咲も着いてこれたじゃん」
「お前もだおたえ!」
「なんだこの修羅場。あ、あとこれしかないけど飲み物買ってきたぜ」
「ありがとう。いつも通りで私も慣れちゃったよ」
沙綾がそう言うならよく分かる。香澄とおたえがバカやってそれに有咲が鋭いツッコミを入れる。見てると夫婦漫才なんだよな。よし、もっと続けたまえ。
「おい蒼太、さっきっからそこにいるけどなんか失礼なこと考えてないよな?」
「なんでもないでございますが」
「蒼太君助けて〜。有咲がいじめるよ〜」
「おわっ!? 有咲ヘルプ!」
「私は助けないからな。あ、後ろ気をつけろよ」
タックル並のスピードで抱きついてきた香澄を受け止めた俺は有咲にそう言われてゆっくりと後ろを向いた。するとそこにはドス黒いオーラを発する六花がいた。そう、闇六花の降臨だ。
「お兄ちゃん、香澄先輩から離れて」
「お前も見てたよな? これは不可抗力ってやつだぜ?」
「それでもいいから離れてよ」
「お、おう」
やばい、これは久々にやばい。どのぐらいやばいかって言うと夏なのにアイス〇ックスをサイダー無しで食べてるぐらいやばい。
「香澄、離れてくれ。六花がいない時ならどれだけ抱きついてもいいから」
「うぅ……じゃあロックに慰めてもらう」
「私なんかでよければ!」
なんやねんこの手のひら返し。まぁポピパ、特に香澄は闇六花を浄化するのに有効な手段っていうのがよく分かりましたわ。
「分かったか有咲、これが俺の妹だ」
「そんじゃさっさと付き合ってくっつけば」
「俺ってば結構有咲のこと好きなんですけど?」
「う、うるせー!」
──────────────────
「お腹痛いから動けない」
「わ、悪い。流石に強く殴りすぎた」
香澄達がファミレスで打ち上げするって言ってなぜか六花も一緒にすることになって俺も連行されてます。尚、俺は有咲に本日二度目の溝落ち正拳突きを食らったためほぼダウン状態です。
「沙綾ママ、有咲がいじめるの」
「よしよし、怖かったね」
「沙綾、お前どっちの味方だよ」
「お兄ちゃん……?」
「あー元気だなー。このまま店までダッシュしたい気分だー」
沙綾に甘えようとすると妹六花が闇六花になる。闇六花から逃げようとすると香澄に手伝ってもらうしかない。ということはポピパがいないと俺はもうダメみたい。
「君じゃなきゃダメみたい」
「私はお兄ちゃんじゃなきゃダ〜メ♡」
「本当に蒼太君と六花ちゃんって仲良いんだね」
「りみ、勘違いするな『勘違い?』仲がとてもいいです」
ポピパがいなきゃダメなのにポピパといると闇六花が更に病む。なんなんすかね、このジレンマ。どうにかしてぇな。
「蒼太君、ファミレスに来たってことは……」
「ああ、もちろん分かってるぜ……」
「「白米とポテトのセットで! 」」
同時に言ってハモったので俺と香澄はハイタッチ。これぞ白米&ポテト同盟の掟その1、「一緒にファミレス来たら白米とポテトのセットを頼むべし」だ。
「いいな〜。私も香澄先輩みたいにそういうのお兄ちゃんとやりたいな〜」
「それなら蒼太もロックも好きな物探してみたら? 案外見つかるかもよ」
「お兄ちゃんの好きなものか〜」
「そう言えば蒼太ってファミレスに来ると絶対にあんこ入ってるパフェ頼むよな。しかもメガサイズだから絶対に残すし、それを通りがかったあたし達によく食べさせるからいい加減迷惑してんだよ」
「いいか有咲、パフェのメガサイズって言うのは味よりその見た目が命なんだ。目指せ万バズ、映え写真!」
どんなに美味しくないものだって見た目が良ければ美味しく見えるやん? 俺はそういうのが好きなんだよな。あ、メガサイズに関してはそろそろ反省しようと思います。
「それじゃ私とお兄ちゃんで餡子同盟!」
「いやそこ?」
「それじゃ何がいい? 餡子じゃないなら焼き芋、ギター、あとは〜」
「悩むなら餡子でいいです」
悩まれて変なの出されてもこっちが反応に困る。香澄は白米とポテトって聞いて秒で出てきたし、紗夜先輩と日菜先輩に至ってもおなじ。シンパシーっていうかなんて言うか、ビビってきたんだよ。
「それじゃ一緒に餡子のメガサイズ食べよ!」
「え、俺もうおなかいっぱいなんですけど」
「私も一緒に食べる!」
「香澄が食べるなら私も」
おいおい、お前ら悪ノリしてくんなよ。
「頑張れよ蒼太。お前ら餡子同盟だろ」
「今度あんぱん新メニューで出しておくからうちに来てね 」
「お前らも悪ノリしてくんのかよ。りみ、ヘルプ」
「わ、私!? 私は無理だよ……」
「じゃ、お兄ちゃん。一緒に食べようね♡」
どうやら今日は妹だけじゃなくポピパ(りみ以外)も敵らしい。
「お腹いっぱいだから食べたくないってんの!」
次回
ダンス部強襲バイト先逃亡