俺の(元)妹はギター以上に俺のことが好きらしい   作:鷲鷲鷲

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3日目頑張った
諸事情で情緒不安定


7話 妹は今日1日いないらしい

「久々の平和を噛み締めて今日を生きていこう」

 

「なに感慨深いこと言ってんの」

 

「だって今日は六花達は放課後までいないんだぜ?」

 

 そう、今日は1年生が1日課外授業で先生がいないからって午前中で授業が終わる特別日程なんだ。つまり六花がいない! これほど気分がいいのはいつぶりだろ。

 

「でもあんたは部活あるんでしょ」

 

「蒼太、流石にそろそろダンス部の方にも顔だせよ?」

 

「俺は今日はとても気分がいいからリサ先輩がいようとも顔出すだけじゃなく最後までいてしんぜよう」

 

 機嫌がいいと有頂天になってバカになります。これは定例行事です。

 

「へ〜、いいこと聞いちゃった☆」

 

「げっ、またでたオバケ」

 

「今度はオバケに進化した!?」

 

 なんで朝からあんたの顔見なきゃならんのですかね。一気にテンションバーが下がります。

 

「はぁぁぁぁ」

 

「そんなにあからさまに機嫌悪そうにしなくてもいいじゃん。あたしは巴に部活の紙わたしに来ただけなんだから」

 

「どうせそれ俺にも来るんでしょ」

 

「まぁね」

 

 渋々リサ先輩から書類を受け取って中身を見ないままファイルにしまう。俺偉いよね、くしゃくしゃにしないでちゃんと持ってるんだもん。

 

「それじゃまた放課後ね♡」

 

「ハートマークつけないでください」

 

「なに、今度はリサ先輩にまで手を出し始めたわけ?」

 

「おい蘭てめぇ、今ここでそんなこと言うと……」

 

「蒼太……?」

 

 ひまり、頼むから泣かないでくれ。そんなことで泣かないでくれ。結構というか半端ないレベルで罪悪感やばいから。

 

「あれ〜? そーくんまたひーちゃんのこと泣かせるの?」

 

「泣かせようとしてない」

 

「告白していい?」

 

「いやそれも結構困る」

 

 六花がいないとしても学校では気が抜けない。もう少し俺が安らげるところが欲しい今日この頃です。

 

「ていうか、今日って体育あるじゃん」

 

「俺サボるわ」

 

「そしたらあたしが先生にいいつける」

 

「あんた小学生?」

 

「今なんて言った?」

 

 あ、すいませんすいません。地雷踏みました。

 

「どうかこの土下座で許してください」

 

「今度のテスト勉強手伝うのとジュース奢り。あ、勉強は泊まり込みね」

 

「だっる」

 

 でもそれで殴られるのを回避できるなら儲けもんだ。ついでに泊まり込みなら六花が来れない理由にもなるし、蘭ならなにもないだろう。

 

 ────────────────ー

 

「さて、体育は長距離なのね」

 

「走りたくないからサボろうかな」

 

「さっきサボるなって言ったのどこのどいつだよ」

 

 蘭がサボりたいって言うのもわかる。うちの長距離は学校の外周なんだけど、坂の上り下りがある上に2周、3周の2種類で1周が大体1.3km。要するに最低2.6km走るんだ。

 

「下り坂は早いけど上り坂がな〜」

 

「何言ってんだよ巴、上り坂の方が楽だろ」

 

「そういいながらそーくんはいつも平らなところで歩いてるよね〜」

 

「平らなところが1番きついの知ってる?」

 

 上り坂は前に進まなきゃ行けないから足を動かす。下り坂は勝手に足が回るから力を入れなくてもいい。平面は……何も無いから無理。

 

「そーくんの目標タイムは?」

 

「去年を上回る。それがたった1秒だったとしても」

 

「私も今年は頑張って蒼太についていこうかな」

 

「最初から飛ばすか」

 

「蒼太ひどい!」

 

 そして走り始めたんだけど、最初からめっちゃ飛ばしたのにひまりと巴がセットでついてきた。このままだと2人共バテるぞ? 俺も人のこと言えないけど。

 

「お前ら2人早くね?」

 

「まぁあたしは元々体力あるからな」

 

「私だって部活頑張ってたんだもん!」

 

「はいはい、俺はもうちょっと上げてくんでさいなら」

 

 スピードは上がりました。めっちゃ上げました。上り坂はほとんど坂ダッシュ位のスピードだったし、下り坂も早かった。そして問題は今だ。

 

「あんたって本当にバカだよね」

 

「面目ないです。もう走れません」

 

「も、もうちょっとだから頑張ろうよ!」

 

「つぐみ、あたし達は周回遅れだからもう1周あるよ」

 

 3周目でバテたんだ。ひまりと巴はまだ見えてないから結構離したとは思うんだけど、やらかしたな。

 

「よっ、朝日。俺先行くわ」

 

「美竹達と話してっとこの前みたいに可愛い妹に襲われるぞ?」

 

「おうおう、そんな話してる暇あるならてめぇらさっさと先行きやがれ」

 

 もちろん蘭達とゆっくり走っていると男子がからかってくる。なぜだか俺達のクラスの男子は俺以外運動部に入ってるんだよな。俺だけ体力レベル違うからだるい。

 

「これ終わったらあと何残ってるんだっけ」

 

「これで終わり。あんたは部活でリサ先輩に可愛がってもらってきな」

 

「んじゃお前のとこに友希那先輩行くように仕向けるわ」

 

「できるものなら」

 

 蘭と地味に口喧嘩とも思えるぐらいの言い合いをしながら走り終わった。もちろん俺は終わったらぐったりしてました。この後ダンス部あるんだぜ? 体動かすのキツそう。

 

「じゃ、あたし帰るから」

 

「モカちゃんも〜」

 

「私は生徒会の仕事あるからもうちょっとしたらかな」

 

「私も部活だ〜」

 

「俺疲れたから屋上で寝てから部活行くわ」

 

 昼下がりの屋上はちょうどいい風が吹くし、今日は日差しもちょうどいい。適当な音楽聞きながら弁当食べて寝られれば最高だろう。

 

「最初っから来いよな」

 

「わかるか巴、先に寝てから行くことでリラックスして練習に望めるから短い時間でも練習効率は上がるんだよ。結局のところ経験値は同じってことだ」

 

「へ〜、いいこと聞いちゃった☆」

 

「さらっと盗み聞きやめてもらえますかね。そのセリフ聞くの今日二回目なんですけど」

 

 自論を用いて巴にも合法的に部活をサボる方法を伝授していると後ろから厄介先輩リサ先輩が話しかけてきた。この人って目立ちやすいんだけど近づかれてても何故か気づかないんだよな。

 

「リサ先輩って忍者かなんかですか? 影の濃さ薄さ調節できます?」

 

「できないよ。流石にそんなことできる人なんていないと思うけど」

 

「そうじゃなきゃあんたが後ろにいるのに気づかないのおかしいでしょうよ」

 

 これはもう羽丘高校七不思議のひとつに数えてもいいと思う。壱ノ怪、『後ろの先輩だあれ』

 

「あたしって蒼太の中でオバケなの?」

 

「なんでそう俺の思考が読めるのかな」

 

「だって顔に出てるもん」

 

「マジかいな」

 

「ま、そんなことより行こ行こ〜」

 

 リサ先輩に連行されたのは屋上。え、リサ先輩もサボる気なん? 俺一人じゃないん? 

 

「俺一人でサボろうとしてたんすけど」

 

「いいじゃんいいじゃん。たまにはあたしもサボりたいしさ〜」

 

 意味がわからんこの先輩。確かに今日は六花がいないから変に気を使わなくて済んでる。でもそれ以上にリサ先輩やらひまりやらに警戒しなきゃならないから逆にキツイぐらいかもしれん。

 

「弁当食べたら俺寝ますんで」

 

「あたしも一緒に寝るからね。タイマーセットしておく? 」

 

「別にいいんじゃないすか。学校でまでタイマーの音で起きたくないっすよ」

 

「それもそうだね」

 

 今日の弁当はだれの弁当かって? もちろん昨日の残り物弁当です。肉じゃがとかなんやかんやと入れてたけどめっちゃ美味いわ。

 

「あれ、おやっさんからやん」

 

「蒼太のバイト先?」

 

「そうっすよ。ちょっと電話でてきますね」

 

 少しリサ先輩から離れた場所で電話に出る。すると第一声が大きすぎて耳がつんざけそうになった。

 

てめぇ今どこにいるんだこら! 

 

「いきなりなんすかね。今日シフト入ってないっすよ?」

 

『それがよ、うちの嫁が具合悪くなって出れないんだわ。お嬢もいるけどさすがに足りないからでてくんねぇか? あ、もちろん報酬はいつものな』

 

「うっす。今から行きますわ」

 

 おやっさんの嫁さん具合悪くなったんならしょうがない。報酬いつものよりもそっち言ってくれればすぐさま飛んでくわ。

 

「じゃ、そういうことなんでバイト行ってきます」

 

「え〜、今日こそ蒼太と踊れると思ったのに〜」

 

「今度にお預けっすよ。ほんじゃバイナラ」

 

 俺のバイト先は「ラーメン銀河」ってとこでめっちゃ美味いラーメン屋。俺が今まで食べてきたラーメンでいちばん美味いし、おやっさんがめっちゃ面白い。

 

「こんちゃ〜」

 

「おう、いきなり悪いな。いつもの時間までで大丈夫だぜ」

 

「今日は暇なんで最後までいますよ。ますきだけじゃ不安でしょうに」

 

「あたしがなんだって?」

 

「ガラ悪いヤンキー怖いやん」

 

 このガラと目付きが悪いヤンキーは俺のバイト仲間のお嬢こと佐藤ますき。結構見た目はあれだけど、話してみるとこいつ良い奴だぜ。

 

「ったく、冗談きついぜ。あたしだって傷つく時は傷つくんだかんな」

 

「ますきってそういうところ乙女だよな」

 

「本当に殴ってやろうか?」

 

「おいおい2人共、夫婦漫才はいいから仕事してくれよ」

 

「「夫婦漫才なんかしてないっすから! 」」

 

 こんな感じの流れが当たり前になってるので、常連さんからは俺らが揃うと夫婦漫才始まるってんで食べながら俺らの方を見てくる。さらにレベルアップすると俺たちのシフトが重なる時間をおやっさんに聞いて合わせてくるぐらいだ。

 

 ────────────────

 

「つっかれた〜」

 

「お前体力無くなったか?」

 

「長距離走ったからしょうがない」

 

「今日もお疲れさん。2人の夫婦漫才は面白かったぜ」

 

「だからしてないっすから」

 

 閉店時間になって片付けをしながら俺たちは喋っていた。いつもならここに嫁さんもいるから賑やかなんだよな。

 

「暗いんであたし帰りますね。お疲れ様でした」

 

「俺も帰りますわ。今度ますきみたいに原付の免許取ろっかな」

 

「真似すんなよ」

 

「ほらほら、夫婦漫才するなら帰った帰った。またよろしくな」

 

 店を出てますきとも別れて家に向かう。おやっさんから報酬として貰ったアブラはなにかと料理に使えるからありがたいんだよな。

 

「星も綺麗だし、今日一日も平和に過ごせたわ」

 

 そんなことを言いながらスマホの画面を見た。するとあら大変。六花、六花、六花、六花。またもや画面を埋め尽くさん限りの六花からの通知があった。そしてそのひとつにこう書いてあった。

 

『今日あったこと全部説明してもらうからね』

 

 まさかとは思うが、今日一日いなかったんだ。俺の行動全部把握出来るわけないから適当な嘘をついてればいいだろ。

 

「帰ったら風呂はいって寝て明日に備えるか」

 

 今日は比較的平和に一日を過ごせたらしい。




ちょっと長めになりました。

次回
闇六花強硬手段
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