学園の用務員さん   作:薩摩一兵卒

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問題講師着任!?お手伝いさせていただきます!!

「納得できません‼なぜ、こんな平々凡々な者を偉大なる我が校の講師にしたのですか‼」

 

ハーレイ=アストレイの大きな声が三人の男しかいない学長室に響き渡る。その中の初老の男性が大声を上げた教師に諭そうとした。

 

「まぁまぁ、教授からの推薦状があれば問題なしじゃろ」

 

「いやだからといってッ‼」

 

「落ち着いてください、ハーレイ教授。生徒に聞こえますよ。」

 

なおも食い下がろうとするハーレイをなだめるべく最後の一人が口を開いた。

 

「失礼、取り乱しました。デュイ=ロスタ事務員、ですが…」

「分かっています。しかしながら学長の決定にとやかく言うのは野暮でしょ。」

「魔力の適性も量もすべて普通、魔術師としては第三階梯てところかな」

 

デュイがハーレイを宥めようとしたところに学長が新たなる火種を投下した。

 

「はぁ⁉第三階梯⁉我が校の講師はすべて第四や第五、第六までの階梯ですぞ‼三流の魔術師が優秀な生徒たちに授業できるのでしょうか⁉よもや自習でお茶を濁したりは⁉」

 

案の定、ハーレイの怒りは再燃した。そして学長にまたもや詰め寄ろうとする。

 

「ですから、ハーレイ教授、落ち着いて…」

 

「貴殿は悔しくないのかね⁉たかだか第三階梯魔術師が栄えある我が校の講師を務めるなど私なら怒りでどうにかなりそうだ!ましてやあの魔女の弟子などと‼」

 

デュイがもう一度説得を試みるもハーレイの怒りは一向に修まる気配がない。それどころか飛び火がデュイにまでかかるほどだ。すると後方から声が聞こえてきた。

 

「魔女、か…」

「ッ!」

「言ってくれるじゃないか」

「おお、セリカ君!」

「貴様、いつの間にッ!」

 

その声の主は威圧感を滲み出しながらゆっくりと三人が集まっている学長机へと近づいてきた。

 

「私のことを悪く言うのはいいが、私の前であいつを悪く言うのは許せん。取り消せ」

「…クッ!失礼します!」

 

セリカの言動に怖気づいたハーレイは素早く出入り口へ移動し、勢いよく学長室の扉を閉めて退出した。学長室に残っているのは学長とデュイ、そしてたった今入室してきたセリカだけだった。重苦しい空気の中でセリカが言葉を漏らす。

 

「漸く、あいつを授業に出すことが出来た。」

「第三階梯の魔術師を講師の枠にねじ込むなんて、さっきのハーレイ君の反応が普通じゃよ。」

「責任はとるさ、あいつのやることなすことすべてな。」

「君にそこまで言わせるとは…、君にとって彼とは何かな?」

「別に大した因縁もなければ恋慕の感情も持ち合わせていないさ。ただ、あいつにはまっすぐ前を向いてほしい、それだけさ。」

 

そう言ってセリカは窓の外を儚いように笑った。

 

「あの、学長…僕、もう退出していいですか…?」

「おお、デュイ君。すまないね、もう行ってくれて構わんよ。」

「すいません、じゃあ次の授業の備品準備してきます。」

「うん、お願いするね。」

 

何とも言えない空気に耐えれなくなったデュイは備品の準備という理由をつけて学長室を去ろうとドアノブに手をかけた。

 

「デュイ、グレンの補助を頼んだぞ。」

「…任せてください。グレン君はきっちりとサポートしますよ。」

 

デュイは振り返り、セリカへ笑顔で言い切って学長室か出ていった。デュイが出ていったことにより、再び静寂に包まれる学長室でセリカと学長はしばらく無言で過ごした。

 


 

「えーと、次は二組が錬金術の授業だから水銀とチョークを人数分用意しないと。…どこにあったっけ?」

 

学長室から出てきたデュイは準備する備品の数を確認をしながら廊下を歩いていた。ふと前を見ると人が血を流して倒れているのを発見した。

 

「…ッ!大丈夫ですか⁉」

 

唐突のことで唖然としていたデュイであったが、すぐさま意識を切り替え、怪我人へと駆け寄った。

 

 

「.....う、う~ん... 」

 

怪我人は男性であった。周辺には備品らしきものが散乱しており、男性の倒れていた場所は女子更衣室のすぐ近くであった。備品の散乱に女子更衣室、この状況下で何が起こったのか分からない者なんて居ない。日常では脳内お花畑のデュイですらもこの事件の経緯を予想することができた。

 

(ああ、この人...女子更衣室を覗いたんだな...。)

 

切実に思いながらも、男性を手当てするべく担いで事務室に向かった。事務室へ運んだデュイは怪我の手当てしながら、目の前の男性について考えていた。とはいっても、黒髪でデュイの見たことの無い講師と言う条件からして、セリカの推薦したグレン・レーダスなのはほぼ確定なのだが。一通りの応急手当てを済ますと二組の錬金術は休講だということを伝えるべく、学園内にある取り付け式の通信魔道具へと足を運んだ。

 

「......知らない天井だな.....?」

 

アニメ特有の常套句を口にしながら目が覚めたグレンは状況を確認すべく、周囲を見回したが誰も見当たらない。ふと手元に目を移すと恐らくは自身の強打した部分を冷やすために使ったであろう保冷剤が落ちていた。

 

「....あっ、起きた?」

 

声のかけられた方へと首を向けると作業服を着た男が居た。年は二十代半ばだろうか。

 

「...あんたが俺をここまで運んできてくれたのか....わりぃな。」

 

デュイの姿を確認したグレンはこの部屋まで運んできてくれたことと手当ての感謝の意を込めて謝罪した。

 

「そんなに大層なことはしてないよ。」

「そうか?何はともあれ、ありがとうな!」

 

デュイの謙遜とも取れる言動をグレンは受け流し、礼を言いながらソファーから起き上がろうとした。その時、デュイが不意に声をかけた。

 

「ところで、君が件のグレン=レーダス先生だろ?」

「うげ、もう広まってんのかよ。」

「それはもう、先生たちのなかでは君の話題で持ちきりだよ。」

 

よほど、自身のことが広まっているのが嬉しくないのか嫌な顔をしたグレンを笑いながら、デュイは答えた。

 

「んで、お前は誰だよ?」

「え?」

「え、じゃないだろ。これから付き合いが長くなるかもしれないんだから名前を聞くのは当然だろ?まぁ、そうでもなくとも自分の手当てをしてくれた相手の名前ぐらいは知っておきたいんだが。」

「ああ、そういうことね。うん、わかった。僕はデュイ、デュイ=ロスタだ。」

「よろしくな、デュイ。」

「こちらこそ」

 

グレンの突然の話題の切り替えに一瞬戸惑うも真意を理解し、デュイは自身の本名をグレンへ告げた。

 

「にしても、ここはどこだ?なんか、色んなもんがあるが」

「事務室だよ。僕はこの学園の事務員なんだ」

「へー、事務員か。にしては俺の思っている事務員とはすごく違う印象を受ける部屋だが。」

「事務員と言ってもやることは学園の清掃や花壇の整理とか、まぁ雑用みたいなものだね。事務員ていうより用務員だね」

「そんなもん、警備員の仕事じゃないのか?」

「あの人たちは学園の警備が主だからね。こういう裏方には事務員が回されるんだよ。」

 

グレンに自身の身の上話をしたところで、デュイは授業の報告をしようと口を開いた。

 

「そうそう、君が担任してる二組の錬金術の講義だけど、休講にさせて貰ったよ。理由はまぁ、分かるよね。」

「マジか!?そいつはありがてぇ!恩に着るぜ、デュイ!」

 

デュイからの報告を受けとると満面の笑みを浮かべながら勢い良く事務室から出ていった。

 

「元気そうなひとだなぁ。」

 

グレンの居なくなった事務室で一人になったデュイはマグカップには言ったコーヒーを飲みながら、しみじみと呟いた。

 


 

~数時間後~

 

激務を一段落させたデュイは休憩するため、食堂にて食を楽しんでいた。食後のコーヒーを一服しようとカップを口に付けた瞬間、ある男子の声が食堂で響き渡った。

 

「おい!聞いたか!?二組のグレン・レーダス先生が生徒と魔術決闘して負けたらしいぞ!!」

 

「ブーーーーッ!......ケホケホ、ォェッ.........。」

 

デュイは内容が内容であったために口に含んでいたコーヒーを噴き出してしまい、咳き込んだ。二組の状況を見るべく、机にこぼれたコーヒーを拭き取って掃除すると早歩きで二組の教室に向かった。二組の教室に着いたデュイはこっそりと中身を覗いた。するとそこには「じしゅ~」とでかく黒板に書かれ、その前の教壇にはグレンの眠っている光景が広がっていた。

 

「....ア..ハハハ......。」

 

 

ひきつった笑いをしながら再度、慎重に生徒から気付かれないよう教室を出た。

 

二組の教室から離れた廊下の清掃をしているデュイにセリカが話し掛けてきた。

 

「おーい、デュイー!グレン見なかったか?」

「グレン君ですか?見てないですけど......」

「そうか......ありがとう。邪魔して悪かったな。作業に戻ってくれ。」

「...はぁ...?」

 

セリカが去った後、デュイは頭にはてなを浮かべながら清掃を再開した。それは掃除が終わった後も事務室に帰った後もデュイの頭のなかで残り続けた。

 

「...アルフォネア教授のあれ、何だったんだろう......?

まぁ、また今度に聞けばいいか。」

 

1日の業務を完了したので、身支度と警備員への挨拶をすませ、帰路に着いた。

 


 

 

翌日、普段と変わらない業務をこなしていると二組の教室に目が移った。

 

「...?何だろう?やけに人が集まってるけど...。」

 

また、グレンが何か事を起こしたのかと思いながら、恐る恐る教室を覗いてみると

 

「そもそも、魔術とは連想ゲームのようなものであり、連想さえできていれば詠唱は簡略化出来る!!」

「......へ......?」

 

怏々と魔術の授業をしていたグレンがいた。

 


 

 

 

「いやー、お見事としか言いようがないですなぁ!!」

「そうだろ!そうだろ!あいつは昔からやれば出来る子だったんだよ!」

 

学長室には学長から弟子を賞賛されて天狗になっているセリカがいた。そこへデュイが大急ぎで入ってきた。

 

「大変です!グレン君が真面目に授業をして...あれ?」

「すでに聞いとるよ。何でも基礎魔術の大切を生徒に教えて生徒もそれに熱心に応えているようだと聞いとるよ?」

「あれ?学長すでにお知りだったんですか?」

「そりゃ、私がいの一番に報告したからな!」

 

セリカが上機嫌でデュイに説明してきた。

 

「え?でも、昨日は彼...結構不真面目...だったような...気が、するんですけ、ど」

「デュイ君、それはね.........」

 

セリカに説明されても全く理解に追い付けないデュイに学長の丁寧な説明が飛ぶ。

 

「なるほど、フィーベル嬢とティンジェル嬢がきっかけと言うことですか。」

「うん、そういうことになるね。」

「......にしてもグレン君のあの教え上手、目を見張るものがありますね。少し覗いた僕でさえ、彼の授業は分かりやすかったですし。」

「お前もそう思うだろ!?あいつは昔からやれば出来る子なんだよ!」

「......あ、はい。それは分かりましたけど、解せません。あれだけの知識量に才覚があれば、以前の経歴に疑問が湧くのですが......。」

「それは彼が引きこもりじゃったからじゃろ。だから、最初はだらけておったとワシは思うんじゃがなぁ。」

「......そうなんですかね?まぁ、真面目に授業をすることは良いことですしね!じゃあ、作業に戻ります!」

 

自身の疑問にムリヤリ納得して、デュイは学長室から退出した。

 

「......フゥ、危ないとこじゃった。」

「すまないな、学長。少し浮かれすぎた。」

「デュイ君の有能さにも困ったもんだね。あの子、時々鋭くなるから。流石あの人の弟子だよ。」

「ああ、何処に行ったんだか。あの機械いじりめ。」

 

デュイが居なくなると部屋は静寂に包まれた。

 

「はぇー、あの二人がグレン君をねぇ。ティンジェル嬢は分かるけど、自他共に厳しいフィーベル嬢がグレン君をねぇ。......人生て何が起こるか分からないなぁ。」

 

学長室から出たデュイは作業しながら先ほど学長から言われた内容を頭のなかで反覆しながら独り言を呟いていた。

 

「まぁ、でもグレン君は授業ではあんな楽しいそうな顔をしているから結果オーライかな。」

 

疑問はあったが心中で区切りを付け、それ以後黙々と作業に没頭した。

 


 

一日の作業の終わりに屋上へ足を運んだ。時たまに一人で屋上で風を感じるのがデュイのささやかな楽しみであった。屋上へと続く階段を登り、ドアノブに手を掛けると複数人の話し声が聞こえてきた。内容は聞こえないが声からしてセリカとグレン、そしてフィーベル嬢とティンジェル嬢のようであるが和気あいあいとした雰囲気で中々ドアを引くことができずにいた。数分後、生徒の二人がグレンの手を引いてドアに近づいてきた。

 

 

「やばっ。」

 

とっさのことで気が動転していたのかデュイは近くの掃除用具いれのロッカーに急いで入って身を隠した。

 

グレンたちがデュイの存在に気づくこと無く、階段を降りていくのを見届けて、今度こそドアノブを引いた。残念なことにセリカは残っていて完全な一人ではなかったが、近づきながらセリカへと話し掛けた。

 

「お疲れ様です、アルフォネア教授。」

「ん?...ああ、お疲れ、デュイ。」

「......?どうしたんです?偉くしんみりとしてますけど。」

「いや....ちょっと、な?」

「....相談にのりましょうか?」

「さほど重要なものでもないし遠慮しておくよ。」

「...そうですか。」

「................。」

「................。」

「.....時間と言うのは残酷なものだな。」

 

少し二人に間が空いた後、セリカがポツリと呟いた。

 

「なんです?急に?」

「いや、悪ガキだった頃のグレンと今のグレンを見ているとつい、な。自分が一緒に身近なやつと年を取れないて吐露したくなるんだよ。」

「.....まぁ、時を永遠に生きるあなたにしてみれば人間の一生なんてあっという間でしょうね。」

「何度もこの身体の不自由さを嘆いたよ。」

「.............。」

「どうして私はみんなと死ねないんだってな。」

「.......だから、地下に潜ると?」

「ああ、彼処に何かあるからな。」

「あまり、無理は為さらないでください。貴女に何かあると学園全体に影響が出ます。ハーレイ教授だって内心では貴女の事、認めているんですよ?」

「ふふ、本当か?」

「学園の事務員の目を信じて下さい。人一倍人間関係には気を遣っているんですから。」

 

デュイはセリカを励まそうと、彼女がどのくらいこの学園で信頼されているかを説いた。

 

「......それに、お師匠様だって貴女を尊敬していたんですよ?みんな貴女の事が大好きなんですよ。」

「恥ずかしい事を言うんじゃない。顔がにやけてしまうじゃないか。.....そう言うお前はどうなんだ?」

 

顔をにやけさせながら意趣返しとしてデュイに問い直した。

 

「....まぁ......僕も......好きですよ」

「......驚いた、お前もそんな顔をするんだな」

「驚かないでくださいよ」

「いや、すまない。少し安心したよ。」

「やめてくださいよ、心臓に悪い。」

「謝っているだろ。......お、そうだ。デュイは明日の学会には出ないんだろ?」

「ええ、なので学園で寝泊まりをしようと思うのですが、何か?」

「明日、グレンも学園で授業なんだよ。」

「え?明日は休日じゃあ......」

「前任のヒューイが失踪したろ?だから後任のグレンが来るまでの期間の授業数の代替としてな。」

「ああ、なるほど。それはご愁傷さまなことで......」

「だから、お前に明日もグレンの補助を頼みたいんだが......頼めるか?」

「いいですよ。グレン君を補助する約束でしたからね」

「すまんな....じゃ頼むな」

「じゃ、自分はもう戻りますね。教授ももう学園の門限が近いんでお早めに出てくださいよ?」

「ああ、わかってるよ。」

 

話を切り替えたデュイは学園の戸締まりをするべく屋上を後にし、事務室に向かった。

 

 

「さてと、明日に備えて寝ますかね」

 

そう言ったデュイは事務室に置いてあるソファーの上で沈むように意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 




一度、ロクアカの二次小説やって見たかったんですよね。ダンまちを楽しみにしてくださっている方、申し訳ないです。ダンまちに関しては少し設定を練り直そうかなと思っているのでいつになるかはわかりませんが、再投稿させていただきます。
長くなってしまいましたが、よろしければ作品の評価とお気に入り登録をお願いします。
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