バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第十五話 神崎仁の休日②

 翌日、約束をしている俺は着替えを済ませて家を出ようとすると、

 

「あれ? 兄さん、今日も出かけるの?」

「ああ、ちょっと行ってくる」

 

 美香の質問に軽く返すと、俺は優子を迎えに行くために秀吉の家に向かった。

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 兄さんがいなくなったリビングは私と隼人の二人になった。

 

「ねぇ。今日の仁兄、なんか様子変じゃなかった?」

 

 ソファーに座ってる隼人がそんなことを言ってくる。

 

「隼人も思った? なんか忙しなかったというか、落ち着きがなかった感じだったよね」

「美香姉との会話も素っ気なかったしね」

 

 二人で兄さんの態度について話していると、電話が鳴り響いた。私は受話器を手に取り、応対する。

 

「はい、神崎です」

『その声は美香かのう? わしじゃ。秀吉じゃ』

「あ、秀吉さんでしたか。おはようございます」

 

 電話の主は秀吉さんだった。私は挨拶してからあることに気づく。

 

「秀吉さん。なんで家の番号を知っているんですか?」

『仁に教えてもらったのじゃ。携帯が出なかったときはこっちにかけてくれと』

 

 どうやら兄さんが教えたようだ。まあ、秀吉さんだったら問題ないよね。

 

「それで秀吉さん。今日はどうしたんですか?」

『そうじゃった。仁のことなんじゃが……』

 

 兄さんに用があったのかな。

 

「兄さんだったら、ついさっきどこか出かけちゃいましたよ?」

『それは分かっておる。わしの家に来たからのう』

 

 兄さんが秀吉さんの家に? なんでだろう?

 

「どうしてですか?」

 

 私は気になったことを素直に口にしてみる。すると秀吉さんから返ってきた答えは、

 

『仁は、姉上と出かけるために迎えに来たのじゃ』

 

 ……えっ? 秀吉さんは今なんと言っただろうか。兄さんが優子さんと出かける? それってつまり……

 

「……それって、デートですよね?」

『そうなるのう』

 

 さらっと言う秀吉さん。兄さんが密かにモテていることは知っていたが、その誰もがデートに誘ったことがないという。つまりは兄さんもデートをしたことがないということだ。兄さんにとってはこれが初めて……

 

『それで、そっちの仁の様子はどうじゃった?』

 

 秀吉さんの声で我にかえる。兄さんの様子……さっき隼人と話していたことを思い出す。

 

「落ち着かない感じでした」

『なるほど。そっちもじゃったか……』

「そっちも?」

『実はのう。さっきまで姉上もそうじゃったんじゃ。ずっとそわそわしててのう』

 

 あのしっかりしてる優子さんも? ということは……

 

「もしかして兄さんと優子さんって……」

『美香が考えていることで間違いないじゃろ』

 

 なるほど。これでさっきの兄さんの行動に納得がいく。

 

『というわけで、仁の様子が気になって電話したんじゃ。すまんのう』

「い、いえ。大丈夫です」

『そう言ってもらえると助かるのじゃ。それじゃ、またのう』

 

 その言葉を最後に電話が切れる。持っていた受話器をもとの場所に置き、リビングに戻る。

 

「美香姉、ずいぶん長かったね。誰だったの?」

「……秀吉さんだよ」

「秀兄が? 仁兄に用事だったの?」

「……そのことなんだけど、隼人、よく聞いて。兄さんは――」

 

 秀吉さんとの会話を振り返りながら告げる。

 

「――デートに行きました」

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「へくしょん!」

 

 今回の目的地であるデパートに向かう途中、俺は盛大にくしゃみする。

 

「どうしたの? 大丈夫?」

 

 隣を歩いている優子が心配そうに声をかけてくる。ちなみに優子の服装は、丈がやや膝上のふんわりとした水色のワンピースで、白のカーディガンを羽織っている。

 

「大丈夫だ。どこかで噂されてるのかね……」

「仁君ならされてそうね……くしゅん!」

 

 今度は優子が可愛らしいくしゃみをする。

 

「優子も噂されてるのかな」

「アタシは噂されることしてないわよ?」

 

 少しの間が空いて、俺と優子はクスッと笑った。そのやりとりだけで、俺は楽しい気分になった。

 デパートに到着した俺達は店内を見て回る。

 

「そういえば優子。今回の目的は?」

「あそこよ」

 

 そう言って優子が指差したところは――

 

「優子、ここはハードルが高すぎる……」

 

――下着売り場だった。

 

「なっ! 誰も一緒になんて言ってないでしょ! そこで待ってて!」

 

 顔を赤くして近くにあるベンチを指差す優子。よかった~。ここで入ってしまったら社会的に抹殺されてしまう。

 優子が下着売り場に入ったのを確認し、俺は指定されたベンチに座る。そういえば、女子とこうして出かけたのは初めてだ。なんか落ち着かない。

 優子が戻ってくるまでの間、俺はポーチに入れていた小説を読んで待っていることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

 待つこと数分。優子が買い物から戻ってきた。俺は小説を閉じて立ち上がる。

 

「なに読んでたの?」

「ライトノベルだよ。前に話してたやつ」

 

 初めて優子と一緒に帰った時のことを思い出す。あの時どうして優子が一緒に帰ることを申し出てきたのかは未だに分かっていない。

 

「そうだ。この後ちょっといいかな? 寄りたいところがあるんだ」

「いいわよ。行きましょ」

 

 優子から了解をもらったので、俺はデパートにある本屋へと足を運んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 昼が近くなってきたということで俺たちはデパート近くのファミレスに行き昼食をとった(荷物はもちろん俺が持っている)

 そのあとは昨日行った商店街の公園に行こうと歩いている途中に、それは起きた。

 

「ん? あれって……」

 

 俺は目を疑った。こちらに走ってくるのは明久と瑞希、美波の三人だった。何かから逃げているようだが、この際どうでもいい。問題なのは……明久の服装がメイド服だということだ……って!

 

「こっち来るんじゃねぇ―!」

 

 優子の右手を取って、走ってくる三人から逃げる。そのときにチラッと後ろを見ると、ドリル状のツインテールの女子がフォークを持って追ってきていた。

 

「あれ? 仁に木下さん。どうしてここに?」

「今はそれどころじゃないだろ!」

「仕方ないわ。五手に分かれて逃げましょ!」

「それって僕だけ標的になるよね!?」

 

 美波、俺もそれ考えてた。

 

「そうだ! いい考えがあります。文月学園に逃げましょう!」

「「学園に!?」」

「ナイスだ、瑞希!」

 

 学園なら先生がいれば召喚獣で対抗できる!

 

「優子、大丈夫か?」

「ええ、なんとか……」

 

 そう言う優子の顔色はあまりよろしくない。息も上がっている。

 

「学園まで持ちこたえてくれ!」

 

 俺達は後ろの追っ手から逃げるために学園まで全速力で走った。

 

 

 

 

 

 

 学園に入った俺達は先生方がいる確率の高い職員室に向かって走っていた。先生は……いた!

 

「竹内先生は現国よ。ウチは全然戦力にならないんだけど!」

「今は贅沢を言っている場合じゃない!」

「明久の言うとおりだ!」

 

 竹内先生のもとへ向かい、呼び止める。こっちにはAクラスのレベルを持つ奴が俺を含め三人いるんだ。負ける気がしない。だが、その一人が膝に手を置いたまま動かない。

 

「優子、無理はするな。後ろで休んでて」

「え、ええ。そうさせてもらうわ……」

 

 優子の体力が限界だったので下がるように言うと、素直に俺の後ろに下がる。

 

「竹内先生! 模擬試召戦争をやりたいんですけど」

「あ、はい! 承認します!」

『『試獣召喚!!』』

 

 召喚ワードを唱えたことで、俺らの足元にお馴染みの召喚獣が姿を現す。

 

「私の愛の邪魔をする気ですか。試獣召喚!」

 

 向こうも召喚を開始する。召喚獣の装備は軽装備の鎧で、右手にはグラディウスが握られていた。

 

 現代国語

 Fクラス 吉井明久  68点

 Fクラス 島田美波  16点

 Fクラス 姫路瑞希  345点

 Fクラス 神崎仁   411点

          VS

 Dクラス 清水美春  132点

 

 遅れて点数が表示される。Dクラスならそこそこの点数なのだろうが、今の俺らには勝てない!

 

「清水さん、ごめんなさい!」

 

 瑞希が大剣で斬りかかるが、

 

「そうはいきません!」

 

 大剣をジャンプでかわして斬りかかる。その先には美波の召喚獣がいて、一気に点数が持っていかれた。

 そのときに向けられた背中を俺は斜めに斬り伏せる。

 

 現代国語

 Fクラス 吉井明久   68点

 Fクラス 島田美波    0点

 Fクラス 姫路瑞希  345点

 Fクラス 神崎仁   411点

          VS

 Dクラス 清水美春    0点

 

「0点になった戦死者は補習ー!!」

「ええー! 今日はお休みなのにー!」

 

 西村先生に連れていかれる女子二名。美波、どんまいだ。

 

「美春はお姉様と一緒なら、鬼の補習も天国です」

 

 ……なるほど、あれがDクラス戦で言ってた同性愛者か。美波、ほんとにどんまいです。

 

「吉井」

 

 俺が心の中で美波が無事に帰ってくるように祈っていると、背を向けたままの西村先生が明久の名前を呼ぶ。

 

「……お前、目覚めたのか?」

「誤解ですっ!!」

 

 明久、今回はフォロー出来そうにない。

 西村先生はそのまま女子二人を連行していった。それを見届けて、俺は後ろにいる優子の方を向く。

 

「大丈夫か? 優子」

「ええ、あなた達のおかげでだいぶ楽になったわ」

 

 息も整っていて顔色もいい。問題なさそうだ。

 

「さて、事も落ち着いたことだし、俺らは行くわ。またな」

「あ、待ってよ」

 

 背を向けて歩き出す俺に遅れて優子がついてくる。玄関に着いたところで、

 

「ねえ、なんですぐに出ようとしたの?」

「休日にまで学校に長居はしたくないからな」

「……本音は?」

「明久と瑞希を二人きりにしたかったから」

 

 あの二人はお互いに両想いみたいだし、そういうのもあっていいかなと思ったのが本音だ。

 

「そうなんだ」

 

 納得の意を示す優子だが、少し拗ねているように見えるのは俺の気のせいだろうか。

 

「このあとはどうする……と言っても、もう夕方なんだよな」

 

 学校を出た俺は夕焼けがまぶしくて思わず目を細めてしまう。

 

「……初めて仁君と一緒に帰ったときもこんな景色だったよね」

 

 優子が夕日を見ながら呟いた。あの日の優子はとても絵になってて見惚れてたっけか。

 

「……帰ろっか」

「そうね」

 

 俺と優子は横に並んで歩く。ときどき優子が自分の右手にそっと触れては顔を赤くしていたが、なんだったのだろう? 

 そのあとも道中いろんな話をしたが、お互い常に笑顔だった。家の前に着いて別れる時も、

 

「今日は楽しかったわ。また一緒に出掛けましょ」

 

 満面の笑顔で返してくる優子に少しドキッとしてしまった。別れた後、俺も自分の家のドアを開ける。

 

「ただいま~」

「おかえり、仁兄」

「さっそく聞きたいことがあるんだけど……」

 

 そのあと、先に部活から帰ってきていた美香と隼人に今日のことについて迫られた。捌くのにかなり時間がかかった。なんで美香と隼人が今日のことを知っているのかは、あとで聞くことにしよう。

 




「神崎兄弟の」
「「ほのぼの談義~!!」」
「今回のゲストは、吉井明久さんです」
「よろしくね、三人とも」
「こちらこそよろしく、明兄!」
「さっそく質問なんですが、学校での兄さんはどんな感じなんですか?」
「あ、それは俺も気になる!」
「う~ん、そうだな~。部活動やってる人達や学園の先生、一部女子からの支持をよく聞くかな」
「……兄さん、この学校でもモテてるんだ」
「あ、女子と言えばさ、仁。今日は木下さんとなにしてたの?」
「お前、その話は――」
「兄さんと優子さんを見たんですか! どうでした、二人の雰囲気は!?」
「ん? とても――」
「言ったら今日のお前の服装を学園中に言いふらすぞ」
「――じゃないけど言えないかな」
「わかってくれて何よりだ」
「え~。どうだったんですか!? 教えてください!」
「ごめんね。僕はまだ死にたくないんだ」
「そろそろ時間か。美香、終わるぞ」
「……う~」
「読んでくださる全ての人に感謝を込めて……」
「「「またね~!!」」」
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