バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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これからもこの作品と、その作者トッキ―をよろしくお願いします!
それでは本編をどうぞ!



第十八話

 手続きを終わらせて優子と別れた後Fクラスに戻ると、そこには真面目に作業しているクラスメイトの姿があった。このやる気を少しでも勉強に回せばいいのに……

 

「仁よ。戻ってきたばかりで悪いが、ちょっといいかの?」

 

 教室の端のほうで段ボールを囲んで座って何か話している集団の一人である秀吉に手招きされる。それに気づいた俺はすぐに向かう。

 

「どうした?」

「衣装なんじゃが、どういったのがいいのか迷っておっての……」

 

 そう言って秀吉が見せてくれたのは衣装のカタログだった。それを受け取ってパラパラとページをめくっていく。良さそうな衣装の候補はあったのだが、Fクラスにはあまり時間がない。手の込んだものは無理だ。

 

「召喚喫茶は名前の通り召喚獣がメインだ。衣装は喫茶店で着ているようなので問題ないと思うよ」

「なるほど。それなら演劇部で使っていたものがあるから、それを使うとするかの」

「それがいいよ」

 

 もともとあるやつを使えば他のところに予算を回せる。再利用は大事だ。

 

「神崎! ちょっときてくれる?」

 

 声のした方を振り向くと、美波が呼んでいた。俺は秀吉に一言いってその場を離れ、美波のところへ向かう。そこには瑞希、康太や亮などの厨房班の姿もあった。

 

「どうしたの、美波?」

「神崎が考えていたやつを参考にウチらで喫茶店に出すメニューを考えてたんだけど、神崎の意見も聞きたいのよ。これが候補なんだけど……」

 

 美波が差し出してきた紙を受け取り、目を通す。軽食やデザート、数種類の飲み物が書いてある。

 

「……うん。問題ないと思う。メニューは多いと作る側が大変だしね。それと、康太。やってほしいことがあるんだ」

「……なんだ?」

「さっき思いついたんだけど、喫茶店で……をやろうと思うから……の準備をしてくれないかな?」

「……了解した」

 

 康太は俺の言ったことの準備をするためにその場から席を外す。

 

「神崎、土屋になに頼んだの?」

「それは当日になってからのお楽しみ」

 

 そう言いながら俺も席を外す。俺は俺で学園長との交渉に行く前に考えていた候補から店名を決めておかないと。次は雄二と相談しながらタイムテーブルを決めてか……忙しいな。

 

「……っと、あまり時間もないし、さくっと終わらせますか」

 

 まずは店名だ。いくらか候補は上げたが、これは割り切ってパパッと決めた方がいいな。迷っていると余計な時間を使う。店名は……これだな。

 俺は候補の中の一つに赤で丸を付ける。これで店名は完了。次はタイムテーブルだ。雄二は……いた。

 

「雄二。相談したいことがあるんだけど」

「どうした、仁?」

「タイムテーブルのことなんだけどさ……」

 

 俺と雄二は卓袱台に向かい合って座り、タイムテーブルについての話し合いを開始する。一番忙しくなるだろう時間、そうでない時間を予測を交えて話し合い、時間はかかったがタイムテーブル表が完成した。

 

「助かったよ、雄二」

「なに、気にするな」

 

 そう言って雄二は元の作業場所に戻っていく。俺は教室を見渡す。他は問題なさそうだ。

 俺は雄二と同じところ――店のセット作りの手伝いをしに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……こんなところか」

 

 作業を始めてからかなりの時間が経っただろう。下校時間ぎりぎりまで使って教室の飾り付け、テーブルの配置、簡素なキッチンの配置などの店の準備を整えた。

 

「あとは店の内装を見直しと、食材の確保……だな」

「何とか間に合いそうだな。みんなよく頑張った!」

 

 その一言でみんなが疲れた顔をして座り込んでしまった。まあ、一日でここまで進めたんだ。疲れるのも当然だ。

 

「今日の作業はこれで終わりだ! それじゃあ、解散!」

 

 雄二の号令でそれぞれが帰る準備を始める。前から思っていたことだけど、雄二の発言力ってすごいと思う。

 

「俺らも帰るとするか。秀吉」

「そうじゃな」

「じゃあな、お前ら。お疲れ~」

 

 鞄を持ち、秀吉と教室を出ようとすると、教室の雰囲気が変わる。

 

「……仁。どさくさまぎれに何をしようとしているのかなぁ?」

「……美少女と二人きりで帰るなど、言語道断!」

『これより、異端審問会を開く』

 

 気づけば教室内が殺意を纏った紫の布を被った集団――FFF団でいっぱいになっていた。

 

「お主ら。何度も言っておるが、わしは男じゃぞ!? それに二人きりでではなく、今から姉上を迎えに行こうと――」

「秀吉! それはやばいって!」

『『『有罪。死刑!!』』』

 

 ほら、血の涙を流しながら死刑宣告されちゃったじゃないか。

 

「くそっ! 秀吉! 優子と一緒に玄関で待っててくれ!」

『待ちやがれー神崎!』

『美少女二人と帰るなんて羨ましいんじゃボケー!』

 

 俺は疲れている体にムチを打って走り出す。せっかく帰れると思っていたのに次は嫉妬集団と鬼ごっことか、どんだけ重労働だよ! 最近は襲われることがなかったから木刀は持ってきてないし、こうなったら逃げ切るしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『待てー神崎!』

『おとなしく処刑されろー!』

「断る!」

 

 走り続けること数分。全力疾走していたせいで足にも限界が来ていた。疲労がたまっている体にさらに疲労が蓄積されていく。ん? 少し先の教室から誰か出てきたな。

 

「これでよしっと……ん? お前ら、下校時刻はとっくに過ぎているぞ!」

 

 教室から出てきたのは西村先生だった。これは運がいい!

 

「西村先生、助けてください!」

 

 言っていることが理解できなかったのか首をかしげていたが、俺の後ろを走っているFFF団を見つけた瞬間、西村先生が納得したような顔をしてため息をつく。

 

「お前たち、何をしているんだ?」

『『『げっ鉄人!!』』』

 

 西村先生の姿を見たFFF団はまずそうな顔をしていた。

 

「気が変わった。お前らは下校時間が過ぎているが、俺が補修をしてやろう。ありがたく思うがいい」

『『『いやだぁぁーーー!!』』』

 

 FFF団が補修室に連行されていく。前から思ってたんだけど、西村先生ってあの人数をどうやって担いでるんだろうか? 

 

「西村先生、ありがとうございました!」

「気にするな。困っていたら助けるのが教師の仕事だ」

 

 遠くにいる西村先生に大きめの声でお礼を言うと、西村先生はそう言って立ち去っていった。今の西村先生、すごくかっこよかった。名言まで残していくなんて。

 

「おっと。俺も玄関に行かないと」

 

 俺はこの学園生活、西村先生に救われた命(かなり本気で)を大事に思いながら過ごしていこうと心に決めたのだった。そして今回の件から一つ学んだことがある。それは――

 

「明日からは絶対、木刀を忘れずに持っていこう……」

 

――護身用武器はどんな時も欠かさず持ち歩こう、と。

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「仁君、遅いわね……」

 

 アタシはいつまで待っても来ない人―仁君を弟の秀吉と玄関で待っていた。

 

「……姉上、仁が来るのが遅いのは、わしが原因なのじゃ」

「どういうことなの、秀吉?」

「実はの……」

 

 アタシは秀吉から事情を聞き出す。

 

「はぁ……さすがFクラスね」

 

 すべての話を聞いた後にアタシの中にあったのはFクラスに対する呆れだ。嫉妬で集団攻撃って……。

 

「そういう奴らだと知っていたのじゃが、口を滑らせてしまっての……」

「いや、アンタ一人のときですでにアウトでしょ」

 

 自分で言っといてあれだが、とても腹が立ってきた。

 

「あ、姉上。なぜわしの腕を掴もうとするのじゃ……?」

「特に理由はないわよ。ただ……」

 

 アタシは思っていることを秀吉にぶつける。

 

「男のアンタがなんでアタシよりモテてるのよー!!」

「理不尽なのじゃーー!!」

 

 アタシ達姉弟の声が玄関に響いた。

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「あ~疲れた……」

 

 FFF団との騒動があった後の俺はとても疲れていた。体がとても重い。

 やっとの思いで玄関にたどり着いた俺はここで待ってくれているはずの二人を捜す。

 

『男のアンタがなんでアタシよりモテてるのよー!!』

『理不尽なのじゃーー!!』

 

 俺が捜している二人の声が聞こえてきた。あそこにいるのか。てかどんな話をしてるんだ?

 

「おい~す……待たせてごめんな~」

「あ、仁君! 大丈夫だったの!?」

 

 俺の疲弊している様子に気づいたのか、優子が心配そうに駆け寄ってくる。

 

「ああ、今回は西村先生に救われたよ……。そういえば優子。さっきの会話は何だったんだ? 男のアンタがどうとかって」

「……もしかして、聞いてた?」

「聞いてたというか、聞こえた。結構大きい声だったし」

「あ、あれは忘れて!」

 

 そう言って優子は顔を真っ赤にしてさっさと歩いていってしまう。

 

「……なにがあったんだ? 秀吉」

「聞かないでほしいのじゃ……」

 

 秀吉が遠い目をして答える。本当に何があったんだ? 気になるけど、今は優子を追いかけないと。

 俺と秀吉は優子に追いつこうと走って向かうのだった。

 

 

 

 

 

 優子に追いつき、三人で帰路を歩く。雑談をしているといつの間にか家に到着。なんか最近、この二人と一緒に帰ると家に着くのが早く感じる。もっと話をしていたいというのが俺の心を駆け回っている。

 俺はそれを抑えつけて二人と別れる。明日話せばいいだろう。いざとなれば携帯で電話でもなんでもすればいい。

 

「ただいま~」

『『おかえり~』』

 

 ドアを開けてただいまと言うと、リビングから二人の声が聞こえてきた。リビングに向かうと、そこにはソファーに並んで座っている美香と隼人がいた。

 

「あれ? 二人とも今日は帰ってくるのが早いな」

「なんかね、最近熱中症が流行ってるらしくて、大事を取って部活も早めに終わったんだよ」

「右に同じく!」

 

 今の季節は夏。熱中症になっても不思議ではない。生徒想いのいい教師だと思った俺である。

 

「その様子だと、二人とも大丈夫そうだな」

「もちろん!」

「伊達に野球部やってないからね!」

 

 頼もしいな、と。俺は内心ほっとする。もし二人のどっちかでもなっていたら心配する。だって俺ら家族だし。

 

「あ、そうだ。二人ともこの日空いてる?」

 

 俺はカレンダーに手を伸ばし、ある日にちを指差す。その日はもちろん清涼祭当日だ。

 

「ん~学校終わったあと……まだ部活があるかわからないけど、どうしたの?」

「いや、この日学園祭があってな。よかったらどうかなと」

「マジで!? うわ~行きたい。学校休んででも行きたい!」

「それはダメだぞ、隼人」

 

 とても行きたいという気持ちは十二分に伝わってきたけどな。

 

「まだわからないということか……」

「そういうことになるね」

「それじゃあ行けるかどうかわかったら教えてくれ」

「「は~い」」

 

 返事からは清涼祭に行きたいという雰囲気がにじみ出ていた。わかりやすいな~二人とも。

 

「さて、晩飯作るか。二人とも、なんかリクエストあるか?」

「えっ? いいの、兄さん!?」

「それじゃあ俺はね……!」

 

 そんな何気ない会話を三人でしながら、俺は清涼祭を心から楽しみにしているのだった。

 




「神崎兄弟の」
「「ほのぼの談義~!!」
「今回のゲストは木下秀吉さんです」
「よろしく頼むぞい、三人とも」
「こちらこそ!」
「(秀吉。さっき話した通りに頼む)」
「(わかっておる)」
「どうしたの? 二人とも」
「なんでもないのじゃ。それより美香と隼人はわしに聞きたいことはないのかのう?」
「あ、じゃあ俺から! 秀兄は得意な事ってあるの?」
「得意なことかのう。わしは演劇をやっておるから、演技には自信があるぞ。例えば、相手の声を模倣するとかのう」
「すげ~!」
「やってみてください!」
「いいじゃろう。ちょっと待っておれ。あー、あー……」
「「「……(ゴクリッ)」」」
「わるいが一位の座は守らせてもらう!(仁の声)」
「うお! その声は俺か!?」
「みなさんが家に遊びに来たときのだね」
「すげ~! 他の人は!?」
「うむ。他には……ちょっとみんな早すぎない!?(隼人の声)」
「今度は俺の声だ!」
「私のも出来るんですか!?」
「もちろんじゃ。ちょっと待っておれ……秀吉さん、あとで兄さんと優子さんについて教えてください!(美香の声)」
「あ、秀吉さん! それは――」
「……なるほど。なんで今まで秀吉を前にしてその話をしなかったのか、今ので納得したわ」
「あ、あの……兄さん?」
「美香。ちょっとこっちでお話ししようか」
「あ、ちょっと待って兄さん。助けて隼人! 秀吉さーん!!」

 シーン……

「……またいなくなっちゃったよ。あの二人」
「またということは、これまで何回かあったのかのう?」
「前回康兄が来たときにね……ところで、どうして美香姉の声であんなことを?」
「仁に頼まれたのじゃ。『二人のどちらかが質問で得意なことを聞いてきたら声真似で三人のを披露してくれ』とな」
「それまたどうして?」
「なんでも、『今回はカマをかけて反応を見る。美香は嘘が下手だから、慌てるかきょとんとするかのどっちかだ。慌てる反応を見せれば黒だ』ということらしい」
「でも、そんなことするより秀兄に直接聞けばいいのに。あの反応を見る限り秀兄は知ってたんでしょ?」
「『秀吉はポーカーフェイスが上手いから本当なのか嘘なのかわからない。なら確実にわかる美香の反応で確かめる』と言っておったのう」
「……仁兄、よくそんなに頭が回るね」
「あやつは部活の情報戦略班として普段から頭を使っておるからのう。こういった作戦を立てるのが得意なのじゃろう」
「仁兄には頭脳戦で挑まないようにしないと……おっと、そろそろ時間みたい」
「それじゃあ、ここまでじゃな」
「読んでくださる全ての人に感謝を込めて……」
「「またね~!!」」
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