テストが終わり次第、更新を再開しますのでこれからもこの作品をよろしくお願いします。
「これより、召喚大会の第一回戦を行います。一般公開は三回戦からなので気楽に戦ってください」
木内先生が丁寧に司会をしてくれる。一般公開は三回戦からか。今のうちに二人ペアでの戦い方に慣れておかなければならない。
「頑張ろうな、優子!」
「ええ!」
優子と挑む召喚大会初戦。ここで勢いに乗って一気に勝ち上がっていきたいところだ。
「あ、神崎君だ!」
「お手柔らかにね~!」
向こうにはどこのクラスかは分からない女子二人組がいた。俺の名前を呼んでは手を振っている。とりあえず手を振り返してみると、二人は顔を赤くして喜んでいた。
「……優子さん? なぜに俺を睨むのですか?」
「ふんっ」
隣の優子が急に不機嫌になったご様子。う~ん。なぜ不機嫌なのか俺にはさっぱりわからない。
「対戦科目は数学です。それでは召喚を開始してください」
『『試獣召喚!!』』
数学
Aクラス 木下優子 352点
Fクラス 神崎仁 73点
VS
Dクラス 森内春香 115点
Dクラス 新井山加奈 127点
「……仁君。本当に点数低かったのね」
「あそこで嘘をついて誰が得するんだよ」
俺の点数を見た優子が溜め息をついていた。前のAクラス戦で言ったはずなんだけどな。
向こうのDクラス女子二人の装備は一人が武闘家の格好で籠手を、もう一人は皮のフードを被っている。手に持っているのは……チャクラムか? 珍しい武器を使うんだな。
対する俺達の召喚獣は、優子が西洋鎧にランスというAクラス戦の時と変わらない装備だ。そして俺の召喚獣は……
「あれ? 仁君の召喚獣、剣が二本になってる」
「学園長が部活の件で世話になってるからってつけてくれたんだ」
俺の召喚獣は変わらず黒いコートを着ているが、以前と違うのは背中に刺さっている剣の本数だ。黒い片手剣だけだったのが今ではもう一本、氷雪のように白く輝く片手剣を装備している。
「さて、ここからは一対一で戦うわけだけど……大丈夫か?」
「あら、誰に向かって言っているのかしら、仁君?」
「頼もしいな。いくぞ!」
背中の剣を引き抜き、召喚獣を相手に突撃させる。狙うのは……チャクラムを持っている方だ。優子の方も武闘家の方を相手にしている。
「負けないよ、神崎君!」
相手の召喚獣がチャクラムを俺に向かって投げてきた。それをサイドステップでかわして距離を詰めようとするがチャクラムの特性で手元に戻ってくるため、なかなか近づけない。
「どうするかなぁ……そうだ」
俺は続けてチャクラムをかわし続け、あるタイミングを計る。よし、タイミングがだいぶ掴めてきた。もう少し……
「当たって!」
……ここだ!
俺は剣を逆手に持ち、計っていたタイミングで飛び上がって地面に突き刺す。すると刺した剣と何かがぶつかって金属音を鳴らしている。音が小さくなっていくにつれて金属音の正体が明らかになる。
「えっ!? 私のチャクラムが……」
回転が止まって地面に落ちたのは相手が投げたチャクラムだった。相手はチャクラムを同時に投げてくるため、二つが重なるタイミングがある。そこを狙って剣を地面に刺すと逃げ道がなくなって金属音を鳴らして回るというわけだ。
「わるいけど、これで終わりだよ」
俺はもう一本の白い剣で武器を持っていない相手を斬る。防御が出来ない相手はそのまま斬られて消滅した。
数学
Fクラス 神崎仁 73点
VS
Dクラス 森内春香 0点
さて、こっちは終わったし、優子の方にいくとするかな。そう思って召喚獣を向かわせようとするが、
数学
Aクラス 木下優子 325点
VS
Dクラス 新井山加奈 0点
どうやらその必要はないようだ。
「勝者 木下・神崎ペア!」
木内先生が号令をかけて締めくくる。とりあえず一回戦は突破だ。
「お疲れ優子。いい動きしてたじゃん」
「そういう仁君も、普通だったらあんなこと出来ないわよ」
お互いに言い合いながら手を上に持っていき、ハイタッチをかわす。ていうか見てたのかよ。他に視線を移しながら操作してるということは、かなり慣れてるってことだな。
「あ~あ、負けちゃった」
「次も頑張ってね、神崎君!」
「ありがとう、二人の分も頑張るよ」
そう言うと二人はまたまた顔を赤くしてしまった。そして隣では……
「……ふーん」
優子が横目で睨んできていた。この光景さっきも見たような……
「そ、そろそろ戻ろうか。お店の方も混んでくるだろうし」
「……そうね。戻りましょうか」
声色が納得いってないような気がするが口には出さない。これはどこか時間を作らないとな……。
そんなことを考えながら俺は優子と一緒に会場を後にした。
優子と別れた俺は少し急ぎ目にFクラスへと向かっていた。
「そういえば、あいつら勝ったのかな? 俺より先に教室を出ていったけど……」
俺と同じく召喚大会に出ている雄二と明久のことが気になっていた。あいつらのことだから勝っているだろうが、それでも結果が気になる。教室に着いたら聞いてみるとしよう。
考え事をしながら歩いていると、いつの間にかFクラスに着いていた。急いで店の方を手伝わなきゃなと思いながら飾りつけされたドアをくぐると、
『げぶるぁっ!』
『これにて交渉は終了だ』
教室の中央で坊主頭の男を相手にバックドロップを決めているFクラス代表の姿があった。
状況が読めない俺は呆然と立っていることしか出来なかった。喫茶店でプロレスってシュールすぎるだろ。
『お、覚えてろよ!』
プロレス技をかけられた坊主頭の男を抱えてモヒカン頭の男がこちらに向かって走ってきた。俺は道を譲るように避けると、モヒカン頭の男はそのまま教室を出ていった。
『これは酷いな……』
『料理もおいしかったのにね』
周りを見てみると、お客さんが次々と席を立っていた。本当に何があったんだ?
「お客様、大変失礼いたしました。テーブルの到着が遅れていたので、このようなものを使ってしまいましたが、たった今本物のテーブルが届きましたのでご安心ください」
雄二が深々と頭を下げてお客さんにお詫びをしていた。テーブルの交換ということは、なんらかの理由で使っていたテーブルの正体がばれたのか。それを何とかするために、雄二はどこからかテーブルを搬送してきたということか。こういうところまで頭が回るというのは正直羨ましい。
「なあ。これはどういうことなんだ?」
「おお、仁か。実はのう……」
テーブルの搬送が終わって近くにいた秀吉に事情を聞いてみると、どうやらこの店に営業妨害が出たらしい。それがさっき教室を出ていった坊主頭の男とモヒカン頭の男だと言う。それを雄二が交渉術(?)を使って黙らせて今に至るというわけだ。
「なんでこの店に営業妨害なんか……」
事情を聞いた俺はどうしてこうなったのかを考える。そもそもFクラスに営業妨害をする理由がわからない。
「あれ? テーブル入れ替えてるの?」
反対側のドアから美波と瑞希が入ってきた。二人も召喚大会に出ているので、途中から店を抜けたのだろう。
「お帰り、美波に姫路さん。その様子だと一回戦は勝ったみたいだね」
「はい。何とか勝てました」
出迎える明久に瑞希がVサインをして答えている。その表情はどこか安心しているようだった。きっと初戦を勝ち進んでほっとしているのだろう。
「他のテーブルも届き次第順次入れ替えますので、ひとまずこちらのテーブルでごゆっくりとおくつろぎ下さい」
そう言って雄二はこちらにやってきた。
「お疲れ、雄二」
「お疲れさん」
「何があったかは知らないけど、お疲れ様」
「お疲れ様です」
「姫路に島田か。その様子だと勝ったみたいだな。仁はどうだったんだ?」
「もちろん勝ってきたさ」
「まあ、負けてくるとは思ってなかったがな」
その様子だと勝利を確信していたみたいだな。俺だって負ける気はないし。
「……仁。写真の指名。2番札から17番札のお客さん」
近くに来ていた康太が指名があったことを知らせてくれた。って多すぎない!? 十六人から指名されてるの俺!?
「早くいって来い。この人気者」
「そうさせてもらうよ」
「仁が羨ましいよ……」
明久が何かを言っていたが無視して、俺は待ってくれているお客さんのもとへ急いで向かった。
「明久、いくぞ」
「いくってどこへさ?」
「テーブル調達だ」
後ろでは明久と雄二がテーブルをどこからか持ってくるようなことを言っていた。まさか盗んでくるわけじゃないよな……?
俺は不安に思いながらも写真撮影に身を投じたのだった。
それからというもの、ウエイターの仕事だったり写真撮影だったりと喫茶店内をあちらこちらと回っていた。途中で立派なテーブルが届いたりしたが、どこから持ってきたのかは分からない。でもこれのおかげでお客さんの反応も良くなったのでひと安心だ。
明久達はテーブル調達に行ってから喫茶店に姿を見せてはいない。そのまま召喚大会に行ったのだろう。
「おっ、そろそろ時間だ。行ってくるよ、秀吉」
「うむ。頑張るのじゃぞ」
秀吉の声援を受けて俺はAクラスへ優子を迎えに――
「仁君いるかしら?」
――行こうとしたら本人が入ってきた。
「わざわざ来てくれたの?」
「さっきは来てもらったからと思ってね」
「そっか。それじゃあ行こうか」
迎えに来てくれた優子と一緒に会場へと歩を進める。背中に殺気のようなものを感じたけど気のせいだろう。そうだと信じたい。
「どうしたの仁君? 顔が引きつってるわよ?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
優子は首をかしげていたが、そのあとは何も言わずについてきてくれた。二回戦が終わったら次は一般公開のある三回戦なんだなと思いながら、会場へと向かったのだった。
「神崎兄弟の」
「「ほのぼの談義~!!」」
「今回のゲストは工藤愛子さんです」
「やっほー! 工藤愛子です。スリーサイズは上から――」
「言わせねーよ!?」
「むう」
「愛子姉はいつも元気だよね」
「なにか運動とかしてるんですか?」
「主に水泳かな。運動は好きだから他のこともやってるよ」
「俺が愛子と知り合ったのも水泳部に顔を出したときだよな」
「えっ? 兄さんと愛子さんって知り合いだったの?」
「そうだよ。一年の時に顧問の先生と一緒に来てね。その時に知り合ったの」
「知らなかった……」
「言ってないからな」
「そのときは仁君にすごく気持ちよくしてもらったんだ~」
「「えっ」」
「ボクだけじゃなくて他の女子にもやってたんだけど、みんな気持ちよさそうな顔をしてたよ」
「に、兄さん……」
「なにやってたの、仁兄……?」
「おい愛子! 主語を抜かすんじゃない! まるで俺が変態みたいじゃないか!」
「ねぇ仁君。最近してもらってないからさ。今度お願いしてもいいかな? もちろん二人きりで」
「さらっと無視して意味深な言葉を付けるんじゃない! 二人とも、誤解するなよ。俺が愛子や他の女子にやっていたのは「保健体育の実技」ってこらー!」
「兄さん……兄さんがそんな人だったなんて……」
「仁兄はもう大人の階段を登っていたんだね」
「誤解だぁーー!!」
「さて、仁君はあんな感じだし、そろそろ終わろうか」
「あ、ホントだ。もうそんな時間だったんだ」
「それじゃあ締めようか」
「読んでくださる全ての人に感謝を込めて…」
「「「またね~!!」」」
「ちなみに二人とも。仁君がやってくれてたのって、ただのマッサージだよ?」
「「……え?」」