バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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一から作る小説の合間を縫って書き上げたのでちゃんとした話になってるかどうか……
それでは本編をどうぞ!


第二十三話

 葉月ちゃんから営業妨害の情報を聞いた俺はAクラスへ足を運ぼうと廊下を歩いている。明久達は短いスカートを穿いた綺麗なお姉さんと聞いた瞬間に走って行ってしまった。俺もその一人なのだが、さすがに廊下を走るのはどうかと思い、こうして歩いている。

 

『あ、あの、すいません……』

 

 後ろから声を掛けられてそちらに振り向く。そこにいたのは水色の髪を肩まで伸ばした女の子だった。

 

「ん? どうかした?」

「あの、人違いだったらごめんなさい。もしかして……あなたは神崎君ですか?」

「そうだけど」

 

 俺がそう言うと女の子は笑みを浮かべ、体が接触しそうな距離まで近づいてくる。

 

「やっぱり。私だよ神崎君。覚えてる?」

「えーっと……」

 

 女の子は俺のことを知っているらしい。だが俺はこの女の子のことが出てこない。でも不思議なことに、初めて会った感じがしない。この子から放たれる穏やかな雰囲気を俺は感じたことがある。それも高校ではないどこかで……。

 

「もしかして……白井さん?」

「そうだよ。覚えててくれたんだ」

 

 白井さんが俺から少し離れる。今思い出したなんて言えない。

 

「久しぶりだね白井さん。来てくれたんだ」

「来たもなにも、私もここの生徒だよ?」

 

 言われてから改めて白井さんを見る。白井さんが着ているのは見慣れた文月学園の制服だった。

 

「でも白井さん、俺とは違う高校行くって……」

「そうだったんだけど、私にとってもこっちの方が都合がよかったの。ほら、ここって成績でクラスが決まるでしょ? 私がどこまで出来るのかっていうのもわかっておきたかったし」

「そうなんだ。クラスはどこなの?」

「Cクラスだよ」

 

 それを聞いた俺の心臓が跳ね上がった。白井さんがCクラスってことはさ……。

 

「神崎君はFクラスだったんだね」

「……やっぱり聞いてた?」

「あんなに大きい声だと嫌でも聞こえるよ?」

 

 やっぱり聞かれてた。そりゃそうだよな。あのときは試召戦争中だったし、学校を休んでいない限りCクラスに所属している白井さんがあの場にいるのは当たり前だ。

 

「でも思ったよ。神崎君、中学のときから変わってないなって」

 

 白井さんが優しく微笑みながら言葉を続ける。

 

「中学の頃と同じで、誰かのために必死になって……そんな優しい神崎君のままだった」

「それは白井さんのおかげだよ」

 

 俺が発した言葉に白井さんはキョトンとしていた。俺は構わず続ける。

 

「今の俺がいるのは白井さんのおかげだよ。白井さんがあのとき言ってくれた言葉のおかげ」

 

 それは、俺が伝えたことに対して白井さんが言った言葉。

 

『神崎君らしい、優しい理由だよ』

 

 そう言ってくれた白井さんだから、俺は言えた。

 

『白井さんのように笑顔になる人がいるのなら、俺は優しい人になるよ!』

 

 あのとき玄関で白井さんに会っていなければ、もしかしたら俺も石井と一緒に白井さんや他の人をいじめていたのかもしれない。そうならなかったのは、間違いなく白井さんの影響だ。

 

「白井さんがいたから、人のために優しくなることが出来たんだ。だから……ありがとう」

 

 俺は真面目な顔でそう伝えると、白井さんは照れ臭いのか顔を背けて頬をかく。

 

「そんな大袈裟だよ。……でも、そう言ってくれるのは素直に嬉しい、かな」

 

 頬を赤く染めて俯く白井さんを微笑ましく眺めていると、なにかを忘れていることに気づく。そうだよ。営業妨害を止めに行くんだった。

 

「ごめん白井さん。このあとAクラスに行かないといけないんだ」

「そうなんだ。あ、ちょっと待って。その前に神崎君の連絡先教えて」

「いいよ。ちょっと待ってて……」

 

 ウエイター服の内ポケットに入れている携帯を取り出し、白井さんと連絡先を交換する。

 

「それじゃあね神崎君。時間があったらCクラスに顔を出してね」

「わかったよ。必ず行くから」

 

 懐かしい女の子との会話を名残惜しいと思いながらも、俺は白井さんに背を向けてAクラスへと向かった。

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 神崎君と別れて数分。私は携帯に登録された神崎君の連絡先を眺めていた。

 

「神崎君……あのときのことを思い出したから、怒鳴ったのかな」

 

 FクラスがBクラスと試召戦争をしてFクラスが勝った後の戦後対談。神崎君は代表の根本君……だったかな? 手紙を脅迫に使った根本君に詰め寄って怒鳴りながら胸ぐらを掴んだ。大事な手紙が送り先の人とは違う人の手に渡る。それは、あのときと状況が酷似していた。だから神崎君は学校中に響くくらいの叫び声を上げたのではないだろうか。

 

「でも、私は……」

 

 私は、そんな神崎君が中学の頃から好きだった。明るくて、いつも楽しそうで、私のことを怪我をしてまで助けてくれた神崎君のことが……。

 大好きな神崎君に会うため。

 それが、私がこの学園に入学した理由なのだから……。

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『明久、ここはやめよう』

『何言ってるのさ雄二。早く入ろうよ』

 

 白井さんとの話を終え、明久達を追いかけてきたのはいいのだが、扉の前で何かを言い合っているようだ。

 

『頼む! ここだけは……Aクラスだけは勘弁してくれ!』

 

 ああ、そういうことか。ここには雄二の大好きな翔子がいるんだったな。

 

「照れるなって雄二。早く入ろうぜ」

「仁の言うとおりだよ。行くよ雄二」

「離せー!!」

「お店の前で何をやってるのよ、アンタたちは……」

 

 美波が遅れてやってきては呆れた表情を見せる。その後ろから瑞希と葉月ちゃんもやってきた。

 

「雄二が照れてAクラスに入ろうとしないんだよ」

「仁! 何を言って―」

「ああ、そうか。ここには坂本の大好きな霧島さんがいるんだもんね」

「坂本君。女の子から逃げ回るのはだめですよ?」

 

 女子二人がいろいろ言っているが、俺にはもう一つ気になることがあった。

 

「……そこで何をしているんだ? 康太」

「……人違い」

 

 そこにはここにいるはずのない康太の姿があった。本人は必死に首を振って否定しているが、カメラを持っていて、しかもローアングルから撮影するやつといったら文月学園でこいつしかいないだろう。

 

「再度聞くが康太。ここで何をしているんだ?」

「……敵情視察」

「最近の敵情視察はローアングルからなんだな」

 

 今まで部活の関係で敵情視察をしてきた俺だが、ローアングルからの敵情視察は聞いたことがない。

 

「ダメじゃないか、ムッツリーニ。撮られている女の子が可哀想だと――」

「……一枚百円」

「2ダース貰うよ――可哀想だと思わないの?」

「おい明久。写真の注文をしておいてそれはないんじゃないか?」

 

 注意をしているやつが写真を購入したら説得力の欠片もない。

 康太は撮った写真をすぐにプリントアウトして明久に渡すと、店に戻ると言って去っていった。

 

「吉井君。その写真をどうするんですか?」

「やだな。もちろん処分するに決まってるじゃないか。早く店に入ろうよ――男の足ばっかりじゃないかっ!」

「やっぱり見てるんじゃないですかっ!」

 

 傍らでは明久が写真を見ては床に叩きつけ、瑞希が頬を、葉月ちゃんが頬を膨らませて太腿辺りをつねっていた。恋する乙女というのは可愛らしいものだ。

 

「ほら、早く入るわよ。お邪魔しまーす」

「……おかえりなさいませ、お嬢様」

 

 出迎えてくれたのはメイド服を身に纏った雄二のお嫁さんの翔子だった。

 

「誰が嫁だ!」

「人の心読むのやめてくれない!?」

 

 秀吉といい雄二といい、どうして俺の周りには心を読めるやつがいるのだろうか。そんなことを思いながら美波に続いて俺達も中に入っていく。

 

「……おかえりなさいませ、ご主人様にお嬢様」

 

 俺は店の中を見渡す。何度か入ったことのあるAクラスのシャンデリアはもちろん、下に敷いている絨毯もこのお店――『執事・メイド喫茶~ご主人様とお呼び!~』というネーミングはどうかと思ったが――にとてもマッチしていた。

 しぶしぶといった感じに雄二も遅れて入ってくる。すかさず翔子が出迎える。

 

「……おかえりなさいませ。今夜は帰らせません。ダーリン」

「今帰っていいか……?」

 

 どうやら翔子はこのお店を閉める気はないようだ。

 

「……席へご案内します」

 

 翔子の案内で俺達は席へと向かう。うん。さすがはAクラス設備。座り心地がとてもいい。

 

「……メニューをどうぞ」

 

 翔子がメニューを複数渡してくる。それを受け取って開くと、そこにはバリエーション豊かな料理の数々がイラスト付きで並んでいた。本格的である。

 

「それじゃあウチは……ふわふわシフォンケーキで」

「私もそれで」

「葉月もです!」

「俺はカルボナーラにしようかな」

「僕は水で。付け合わせに塩があると――」

「明久。俺が奢ってやるからそんな悲しい注文をするのはやめてくれ」

「ほんとに!? それじゃあ僕は仁と同じカルボナーラとコーンスープで」

 

 こいつ奢ってやることをいいことに二つも注文しやがった。まあ自分の言ったことを撤回するつもりはないが。

 

「それじゃあ俺は――」

「……ご注文を繰り返します」

 

 雄二の言葉を遮るように注文を繰り返そうとする翔子。雄二の注文はどうするつもりなのだろうか。

 

「……ふわふわシフォンケーキが三つ、カルボナーラが二つ、コーンスープが一つ、メイドとの婚姻届けが一つ。以上でよろしいですか?」

「全然よろしくねぇぞ!?」

 

 雄二には翔子との愛の結晶が提供されるらしい。

 

「……ではごゆっくりと」

 

 そう言って翔子はカウンターへと向かっていった。俺は参ったって顔をしている雄二に声をかけることにする。

 

「愛されてるな、雄二」

「あいつは何を考えているんだ……」

「何言ってるの雄二。あんな美人な霧島さんに好かれているなんて羨ましいって痛い! 誰さ僕の足蹴ったの!?三人はいたよ!?」

 

 突然足を蹴られたらしく、抗議する明久。付近には少しだが面白くなさそうな顔をしている女子が三人。なるほど、犯人はこの人達か。

 

「お待たせしました。こちらシフォンケーキになります」

「そしてこっちがカルボナーラ二つとコーンスープだよ!」

 

 みんなと雑談をすること数分。注文した料理が優子と愛子の手によって運ばれてきた。

 

「とっても美味しいですっ!」

「本当ね。クリームのほんのりとした甘さがちょうどいいわ」

「スポンジもふわふわしてます」

 

 葉月ちゃんがとてもいい笑顔でシフォンケーキを食べて、それに美波と瑞希が同調するかのようにそれぞれ感想を漏らす。

 

「久しぶりのカロリーだよ……」

 

 明久は涙を流しそうな顔をしながらすごい勢いで食べている。カロリーがほしいなら自分の生活を見直すとかしろよ……。

 そんなことを考えながらも俺はカルボナーラを口に運ぶ。普通に美味しい。

 

「おい翔子! どうやってうちの実印を手に入れたんだ!?」

 

 いつの間に雄二の近くに来ていた翔子が持っていたのは婚姻届と実印らしい雄二の家の判子。そして朱肉だ。本当にどうやって手に入れたのだろうか。

 

「葉月ちゃんが言ってた場所ってここでよかったのかな?」

「はいです。真ん中辺りの席で大きな声でお話ししてました」

 

 俺がそれを聞くと肯定の意を示すように頷く葉月ちゃん。そんなことをするのはどこの誰なのか。

 

『おかえりなさいませ、ご主人様』

「おう。中央付近の席は空いてるか?」

「あっ。あの人たちです!」

 

 葉月ちゃんの反応を見て俺らはそちらに振り向く。そこにいたのは、雄二にプロレス技を掛けられた坊主頭とその相方のモヒカンだった。

 




『神崎兄弟のほのぼの談義』は今回お休みです。
 その代わりに今回登場した新たなオリキャラ、そして十九話の白井親子を紹介したいと思います。


・白井雅美 Cクラス所属
 性格……穏やかで純粋。人に怒るのが苦手だが、良いこと悪いことの区別を曖昧にせずはっきりつけることが出来る。
 容姿……肩まで伸ばした水色の髪で、身長は母親と同じくらい。胸はBカップ(イメージはISの更識簪の髪飾り(?)と眼鏡なしバージョン)
 召喚獣設定……巫女服に槍
 腕輪能力……「獄炎」→槍に炎属性を追加する。
槍の切っ先に触れた相手は炎による追加ダメージを受ける。
効果は試召戦争が終結するまで続く。フィールドから出ると解除される。
・仁の過去編から登場。中学生の頃、博樹と一緒にいて明るくなった仁に一目惚れし、気持ちを伝えようと手紙を書くが無くしてしまう。それを博樹が目の前で破いたことで仁が激怒。自分のために怪我をしてまで手紙を取り返そうとしてくれた仁のことをもっと好きになり、進学予定だった学校を蹴って文月学園に入学する。仁はこの事実を知らなかった。仁が優しい人間を目指すようになった理由でもある。
 得意科目 数学 英語(全体的にバランスよく点数が取れているが、その中でも点数の高い科目) 苦手科目 保健体育 

・白井春海
 性格……おっとりしていて少し天然。
 容姿……ウェーブのかかった青い髪で童顔。身長は雄二の肩ぐらいまで。胸はDカップ
・雅美と麻美の母親。のんびりしていて掴みどころのない人物。仁とは清涼祭の召喚喫茶で知り合い、妹の麻美と一緒に写真を撮る。そのときの言動でFクラス男子の殺気を増幅させ、仁を困らせた。

・白井麻美
 性格……葉月みたいに天真爛漫で人懐っこい。
 容姿……雅美をサイドテールにして目をパッチリさせた感じ(イメージはロウきゅーぶ!の湊智花)
・雅美の妹で小学五年生。葉月とは同級生で最初クラスに馴染めなかったところを葉月に話しかけられ、そこから仲良くなる。仁のことをお兄ちゃんと慕うようになる。
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