バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第二十五話

「はぁ……疲れた」

「ほんとね……」

 

 Aクラスを後にした俺と優子はこれから召喚大会に向かうというのに、先程の愛子を交えた三人によるいじり合いによってかなり疲弊していた。

 

「けど、あれがあったおかげであまり緊張してないな」

「言われてみればそうね。そこのところは愛子に感謝かしら」

 

 召喚大会は次で三回戦。自分たちの戦いが一般公開されるというのに、心は自然と落ち着いていた。

 

「優子。三回戦での作戦なんだが――」

 

 俺は先程考えた作戦を優子に伝える。三回戦からは個人戦で戦っていくのはきつくなってくると思うので、連携を重視した戦術をたてた。あとはそれを実戦で出来るかどうかだ。

 

「――以上が今回の作戦だ。いけそうか?」

「……正直に言うと不安だわ。でも、なんとかやってみせる!」

「大丈夫だ。俺もそこはフォローするし、もし出来なかったらそれは召喚システムのせいだと割り切ればいい」

 

 正直この作戦を考えた俺が不安なのだ。

 二回戦のときに源二にやったあのカウンターだってダメもとでやったようなものだ。もしあそこでシステムが俺の意図を理解せず、あのスキルを発動させていなければ、俺は完全に負けていたのだから。

 

「運も実力のうちってことね。わかったわ。その作戦でいきましょ」

「決定だな。頃合いだと思ったところでさっき言った合図を出すから」

 

 作戦についての確認をしていると召喚大会会場の入り口目の前まで来ていた。俺は一度深呼吸をして、気持ちを引き締める。そして一気に扉を開け放つ。

 会場入りした俺達を待っていたのは、四方八方に広がる会場の席を埋め尽くすほどの観客だった。世にも珍しい召喚獣を目にしようと集まってきたのだろう。

 そして、観客に囲まれながら俺達が戦う対戦相手は……

 

「あれ? 白井さん?」

 

 少し前に廊下で話をしていた白井さんともう一人の女子がいた。白井さんも俺と同じことを思ったのだろうか、驚いた顔をしていた。

 

「あれ? 神崎君、召喚大会出てたんだ?」

「そういう白井さんこそ」

『それでは、召喚大会のルールを確認したいと思います。まず試験召喚獣とは――』

 

 白井さんと話をしていると、一般公開で来てくれた観客たちのための大会ルールの説明が始まった。その説明をしているのが竹中先生だ。竹中先生が司会ということは科目は古典。このことを知っていたのもあって、三回戦での作戦を連携重視にしたのだ。

 

『――説明は以上です。科目は古典です。それでは選手の皆さんは召喚を開始してください』

『『試獣召喚!!』』

 

 古典

 Aクラス 木下優子  384点

 Fクラス 神崎仁   423点

         VS

 Cクラス 白井雅美  407点

 Cクラス 新野すみれ 201点

 

 召喚獣が姿を現した瞬間、歓声が沸き上がった。はじめて召喚獣を見たことはもちろん、点数が高いハイレベルな勝負を期待しているようにも聞こえる。

 

「やった! 四百点越えたよ!」

「すごいじゃない雅美!」

 

 反対側にいる対戦相手の二人は召喚獣の点数を見ては嬉しそうに声を上げている。

 

「すごいね白井さん。四百点を超えるなんて」

「神崎君こそFクラスなのにすごい点数だね」

 

 お互いを称賛し合っている二人のやりとりを隣にいる優子が面白くなさそうに見ていた。そしてすぐに本日何度目かわからないジト目を向けてくる。

 

「仁君。勝負に集中しましょ」

「ごめん優子。古典の四百点越えは珍しいから、つい……」

 

 背中の剣を引き抜き、召喚獣を構えさせる。優子の召喚獣もランスを引き絞った状態で構える。

 相手の召喚獣の特徴を探るために目線を召喚者から下へと向ける。白井さんの召喚獣は巫女服に槍。もう一人が水色を基調としたカンフーの衣装で両手にトンファーを持っている。

 

「俺がカンフーの方を受け持つから、それまで優子は巫女服の方を食い止めて!」

「わかったわ!」

 

 すぐに優子が白井さんの方へ向かって突撃していく。点数でいえば優子の方が不利だから早くしなければ。

 

「チェンジ!」

 

 ワードを唱えて腕輪を発動させる。光に包まれた俺の召喚獣の装備が形を変えていく。

 光の中から出てきた俺の召喚獣は全体的に紫色で統一されていて、肩を露出している服装になった。腰辺りには白いポーチのようなものがあり、その少し上には焦げ茶色の鞘に納められたロングソードが装備されている。

 

「……ずいぶんラフな装備になったわね」

「これの方が早く動けるんだ」

 

 この装備を付けているキャラは高い攻撃力と素早い動きが特徴で、相手を翻弄するのにちょうどいい装備なのだ。

 

「わるいけど、捕まってもらうよ!」

 

 俺は作戦を決行するための準備として、遠くでトンファーを構えている召喚獣へ向けて地面を蹴った。

------------------------------------------

「腕輪発動! 獄炎!」

 

 突撃したのと同時、相手が腕輪の起動ワードを唱える。その瞬間、相手の持っている槍の刃に炎が纏う。その炎はアタシ達が一般として認識している赤色ではなく、それよりも熱温度が高いときに見ることが出来る――しかしそれとはまた違う、見惚れてしまう青色をしていた。

 直感で危険だと判断したアタシは召喚獣にストップをかけて下がらせる。そして、これまで感じたことのない緊張が体を強張らせる。

 

「腕輪持ち相手に、アタシが通用するか……」

 

 思わず呟いてしまった自分の言葉を否定するようにかぶりを振る。

 アタシは何を言っているのだ。

 アタシは春に行われた試召戦争で腕輪持ちで自分より点数の高い生徒を倒したではないか。それも同級生で最底辺のクラスに所属していて――召喚大会のパートナーとして現在別の召喚獣を相手にしている神崎仁を打ち破ったではないか。

 それに、俯いているアタシはアタシらしくないと、さっき言われたばかりだ。それこそ、仁君に顔向けできなくなってしまう。

 アタシは内に溜まっている空気を吐き出し、新たに外の空気を取り入れる。まるで、気持ちを入れ替えるかのように。

 そして、意志の籠もった目で相手を見据える。それを見た目の前の女子――白井さんが驚いた顔をしていたものの、すぐに落ち着いた表情を浮かべる。

 

「あなた、すごく良い目をしてる。思わず後ずさりしてしまいそうな」

「あら。だったらこのまま負けを認めてくれてもいいのよ?」

「それは出来ないよ。私にも、負けられない理由がある」

 

 向かいに立っている白井さんの目にも強い思いが宿っているように見える。

 

「それに、あなたと私は同じだと思うから……」

 

 その言葉がなにを意味するのかを、アタシには理解できた。この子も、仁君のことが……

 

「なるほど。それぞれ譲れない想いがあるのね」

「そういうことみたいだね」

 

 相手が青い炎に包まれた槍を構えるのと同じタイミングでアタシもランスを構え、集中する。

 

『エイビングヒート!』

「「っ!」」

 

 遠くから聞こえたその声を合図に、アタシと白井さんの召喚獣は同時に地面を蹴った。

------------------------------------------

「エイビングヒート!」

「っ!」

 

 詠唱を唱え終えた召喚獣から複数の炎の球体がすごい速さで飛んでくる。それを避けようと召喚獣を動かすが、球体ひとつひとつにホーミングがついているのか、避けた方向にいくつもの球体が迫る。それも避け続けるが、何個か肩を掠め、点数を削られる。

 あの召喚獣の装備、そして唱えられた術。どこかで見たことがあると思ったら、俺の好きなシリーズの一つで登場する遠距離キャラだ。あの子もこのシリーズが好きなのかもしれない。

 そう思うと目の前で召喚獣を操作している紫色の髪の女の子に声をかけていた。

 

「キミ! 好きなシリーズは!?」

「リバースだよ!」

「そうか! 俺はシンフォニアだ!」

 

 好きなものが一緒だとこういう話がしたくなるよね。

 会話をしながらも俺は距離を詰めていく。だが相手も攻撃を避けたり、ガードをしてはその反動を利用して距離を離す。なのでなかなかダメージも与えられていない。

 それにこのままだと作戦が実行できないうえに、こうしている今も白井さんを受け持ってくれている優子にも限界が来てしまう。

 

「……やってみるか」

 

 これをやるのはあまり得意じゃないんだが……今は選り好みをしている場合じゃない。

 確実に成功させる。それしか道はない!

 俺が攻撃を続け、相手がガードの反動を利用したそのとき――

 

「魔神剣!」

 

 距離を置いた召喚獣に向かって斬撃を飛ばす。それを避けようと相手は横にステップをして距離を空けようとする。

 

「砕覇双撃衝!」

 

 ステップで着地したところを二つの衝撃波で迎撃する。それも同じようにかわそうとする相手の召喚獣。その瞬間を目にしたとき、俺は思わずニヤついてしまう。なぜなら、避けた先にいるのは……

 

「えっ!?」

「なっ!?」

 

 優子と戦闘を繰り広げている白井さんの召喚獣だからだ。

 目の前の敵に集中していて周りに気を配れなかったのか、白井さんの存在に気がついていなかった。俺が放った斬撃は攻撃のためではなく、一か所に集めるための誘導として使ったのだ。

 優子には作戦として『ステージの中央に誘導し、連携攻撃で一気に叩く』と伝えている。だから最初はあまり攻めようとせずに防御に徹し、頃合いになったところでステージ中央へと導くように攻撃していたのだ。

 最初で最後のこのチャンス。見逃すわけにはいかない!

 

「チェンジ!」

 

 二回目の起動ワードを唱えて装備を変更を開始する。これは優子への合図の役割も果たしている。

 先程のラフな装備とは打って変わり、全体的に赤を基調とした装備へと変化させる。後ろでは白い帯のようなものがヒラヒラと風になびかせ、左手には赤、右手には青に光り輝く剣を装備している。俺の好きなシリーズの二刀流主人公である。

 装備の変更が終わるまでの間、優子はいつでも追撃できるように待機している。それを横目に見てから、中央にいる二人の召喚獣に向かって突撃を開始する。それを見ていた優子も召喚獣を走らせる。

 

「いくぞ、優子!」

「ええ!」

 

 逆方向からお互いの武器を引き絞り、敵が目の前に迫ったところで一気に解き放つ。

 

「「衝破十文字!!」」

 

 俺と優子の鋭い突きがCクラス二人に襲い掛かる。優子のが白井さん、俺のがもう一人の召喚獣に突き刺さる。

 俺の剣に刺さっている召喚獣はそのままの体勢で消滅していった。優子の方はというと、

 

「嘘!?」

 

 焦りの表情を浮かべていた。その視線の先には――

 

「せいやっ!」

「っ!」

 

 ランスに刺されながらも優子に迫っている白井さんの召喚獣の姿があった。

 槍を引き絞って優子の召喚獣に突き出そうとするのを俺が滑り込むようにして間に入って庇ったことで、槍が肩に深く突き刺さる。

 

 古典

 Aクラス 木下優子  84点

 Fクラス 神崎仁  116点

         VS

 Cクラス 白井雅美 181点

 Cクラス 新野すみれ  0点

 

 刺されたことで大幅に消費してしまった俺の点数は、あと少しで百点を切るところまで迫っていた。それに対して白井さんは二百点近く残っている。点数が表示されたことであることに気づく。

 

「点数が減ってる?」

 

 時間が経つごとに自分の点数が減っていることに気づいた。優子の点数も同様に減っている。

 

「それは私の腕輪の能力。その青い炎は斬られた相手の点数を秒ごとに削っていくんだよ」

 

 白井さんが能力を説明してくれる。なんとも厄介な能力である。

 

「それなら!」

 

 俺は召喚獣を白井さんの召喚獣に向けて突撃させる。それを避けようと地面を蹴ったところを先回りして羽交い絞めにする。

 

「優子! 今のうちに俺の召喚獣ごと貫け!」

 

 優子は一瞬だけ驚いた顔をしながらも、俺の意図をくみ取ったかのように頷き、ランスを引き絞りながら突っ込んでくる。白井さんもその意図に気づいたのか、必死に拘束を抜け出そうとする。だがそれを俺は許さない。

 

「やれー! 優子ー!」

「やあぁーー!!」

 

 その一言を言い終わると同時に、ランスは優子の気合の掛け声とともに突き出され、二体の召喚獣の喉元を貫いた。

 

 古典

 Aクラス 木下優子  61点

 Fクラス 神崎仁    0点

         VS

 Cクラス 白井雅美   0点

 Cクラス 新野すみれ  0点

 

「し、勝者、木下・神崎ペア!」

 

 司会の竹中先生が興奮気味に勝者宣言すると、周りから大歓声が沸き上がった。なかには『次も期待してるからな!』のような勝者を称える声や、『Cクラスもナイスファイトだったぞ!』といった気持ちのいい声が聞こえてくる。

 

「勝てたのね……」

「ああ。なんとかな……」

 

 激戦に勝利した俺達は安堵の息を吐く。こんなに焦った戦闘は初めてだ。

 

「二人とも強いんだね」

「そういう白井さん達もいい動きしてたじゃないか」

「今回は負けちゃったけど、次は負けないから。特にあなたには!」

 

 ビシッ! と音がしそうな勢いで優子のことを指差す白井さん。戦っているうちにライバル意識が芽生えたのだろうか。

 

「点数では負けたけど、そっちは負ける気ないわよ?」

 

 二人はバチバチと音がしそうな視線で睨み合っている。なんか置いていかれている気分だ。

 

「ねえねえ神崎君」

 

 突然制服の裾が引っ張られる。その方向を見ると、白井さんのパートナーである新野すみれさんがいた。

 

「もしよかったら、連絡先教えてよ。時間のあるときにテイルズについて語り合おうよ」

「もちろんいいよ。君とは一度話をしてみたいと思ってたんだ」

 

 会場の中だというのに平然と連絡先を交換する俺達。好きなものが同じだとわかったから気持ちが昂っているんだね。

 

「えっと……新野すみれさん、だね」

「そう。すみれでいいよ」

「なら俺のことも仁でいいよ。よろしくね、すみれ」

「こちらこそ!」

 

 固く握手を交わす俺とすみれ。この子とは良い友達になれそうだ!

 

「「(敵はここにもいた!)」」

 

 このとき、先程まで睨み合っていた二人の考えが一致したことを、俺はもちろん、他の誰も知らない。

 




今回は「神崎兄弟のほのぼの談義」はお休みし、今回登場した原作キャラのオリジナル部分を紹介したいと思います。

 新野すみれ Cクラス所属
 容姿……原作と同じ。
 性格……仲良くなった人には人懐っこく接するが、それ以外の人には少し冷たくなる。
 召喚獣設定……水色基調のカンフー衣装で武器はトンファー(イメージはテイルズオブリバースのマオ)腕輪はなし。
・召喚大会で仁と仲良くなった放送委員の女の子で、雅美の親友。テイルズが大好きで、同じくテイルズが好きな仁と仲良くなれたことをとても嬉しく思っている。仁を恋愛対象としては見ておらず、純粋な友達として接する。『面白い放送』を目標にしている。
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