バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第二十七話

 会場入りした瞬間、観客席からは盛大な歓声が巻き起こった。周りのそんな反応についにここまできたんだなと実感する。

 

「対戦相手は……まだ来てないみたいね」

「どんな相手なんだろうな。もしかしたら三年生と当たる可能性も……」

 

 優子と少しのやりとりをしていると、周りが騒がしくなった。どうやら対戦相手が来たようだ。

 

「あれって……」

 

 優子が驚きの表情を見せている。それもそうだろう。なにせ四回戦の相手がFクラスとAクラスで営業妨害をしていたモヒカンと坊主頭なのだから。

 

「誰かと思えば、Fクラスで雄二にプロレス技かけられてた坊主とAクラスで痴漢行為をしたモヒカンじゃないか」

「先輩に向かってその態度はなんだ!」

「あれは冤罪だ!」

 

 どうやら先輩だったらしい。坊主の方は俺の態度に怒ってるし、モヒカンの方は痴漢行為が冤罪だと主張している。まあ知ってるんだけどね。

 

「それよりも酷いじゃないですか先輩方。俺達のクラスの営業妨害するなんて」

「へっ! あれは生意気な後輩への先輩からの優しい忠告だ!」

「それはもしかして明久と雄二のことですか? それについては周りのお客様に迷惑をかけている人への制裁処置として当店では処理しています。それじゃあ言わせてもらいますが、先輩方の言う生意気な後輩はAクラスにいるんですか?」

 

 俺がそのことを告げてやると坊主とモヒカンは何も言い返せない様子で息を詰まらせていた。俺は構わず続ける。

 

「それに、先輩であるあなた方が後輩の営業妨害ってどうなんですかね? そんなことを他のお客様のいる場所でやるなんて。もしかして、誰かに頼まれてやってるんですか?」

 

 冗談交じりにそんなことを言うと、二人の顔が強張り、たちまち焦りの表情を浮かべる。あれ? これってもしかして当たり?

 

「じ、仁君。確かにアタシもさっきのことは許せないけど、そこまで……」

「大丈夫。これも作戦の内だから」

 

 小声で優子にその意を伝えると、納得した様子で二人と向き直る。

 

「そういえばAクラスでなにやら騒ぎがあったみたいですけど、あれって先輩方だったんですね。それならちょうどよかった。今ここで、Aクラスでの騒ぎに対する制裁処置が出来るんですから」

 

 まるで挑発をするかのような姿勢で坊主頭とモヒカンにはっきり言い放った。心なしか、その表情はとても活き活きとしていた。

 

「調子に乗るんじゃねぇ!」

「ここで叩きのめしてやる!」

 

 それによって二人は激しく怒り出した。向かってきたところで返り討ちですけどね。

 

『それでは、召喚大会の四回戦を始めます。科目は現代国語です。両チームは召喚を始めてください』

「「「「試獣召喚!!」」」」

 

 幾何学模様がフィールドに出現し、そこから召喚獣が姿を現す。向こうの装備は坊主頭が赤い鎧に幅広の片手剣。モヒカンが青い鎧に刀だ。

 

 現代国語

 Aクラス 夏川俊平  253点

 Aクラス 常村勇作  249点

 

 さすがは三年生。受験も控えているからか、勉強して点数が取れている。だが……

 

 現代国語

 Aクラス 木下優子  395点

 Fクラス 神崎仁   451点

 

 その点数では俺達には勝てない。

 

「なっ! なんだその点数は!」

「Fクラスの分際でそんな点数を取れるわけないだろ!」

「先輩方が言いたいことはわかりますが、まぎれもない真実ですよ。ですよね、竹内先生?」

『はい。確かに神崎君は私の目の前で試験を受けていますので、それに周りには誰もいませんからカンニングなんて出来ませんよ。無論、そんなことはさせませんけどね』

 

 今回の司会である竹内先生に確認をとってもらい、これ以上何も言えなくする。先生の権限は強いのだ。

 

「くそっ! とにかくやるぞ、常村!」

「おうよ!」

「仁君にコツを教えてもらったっていうのに、あと少し足りなかった……」

「優子。悔やむのは後にして、来るよ!」

 

 目の前の敵に向かって二刀の剣を構えさせ、モヒカンの方へと召喚獣を走らせる。少し遅れて優子も坊主頭の方へと突撃していく。

 

「くたばりやがれ!」

「そんなんじゃ当たりませんよ?」

 

 刀を振り回して突っ込んでくるモヒカンの攻撃を剣で受け流しながら避ける。それにイラついてきたのか、どんどん攻撃が単調になっていく。

 

「どうしたんですか、先輩。動きが単調ですよ?」

「黙りやがれぇぇ!!」

 

 ついに怒りが頂点に達し、真っ向から勝負を仕掛けてくる。そんな様子の先輩を見てニヤリと笑みを浮かべる。

 

「正面突破の勝負は俺も好きですし……受けて立ちましょう。チェンジ!」

 

 腕輪を起動させて召喚獣の装備を変更する。その装備は胸をはだけさせた黒の服に黒のズボンという少し和を連想させるもので、左手には黄色い鞘に納められた刀が握られている。これも俺の好きなテイルズのキャラである。

 向かってきたモヒカンの召喚獣を回し蹴りで吹き飛ばし、召喚獣に距離を詰め寄らせる。

 

「これで決める!」

 

 フィールドを駆けながら召喚獣が鞘から刀を抜き、すれ違い様に相手の召喚獣を一閃する。

そしてすかさず切り返して距離を詰めていく。

 

「閃け、鮮烈なる刃。無限の闇を鋭く斬り裂き、仇為す者を微塵に砕く!」

 

 縦横無尽に相手を斬りつけ、反撃の隙を与えない。それどころか召喚獣の操作すら許さない。

 最後の斬り抜けが終わり、斬りつけた状態で俺の召喚獣の動きが止まる。

 

「……へっ! 見た目の割にはたいしたことないじゃねぇか!」

 

 斬られていたモヒカンの召喚獣が俺の召喚獣に向かって斬りかかる。それを無視して、刀を鞘に納めようとする。

 

「漸毅狼影陣!」

 

 相手の刀が頭上に振り下ろされる瞬間、俺の召喚獣の刀が鞘に納められる。するとモヒカンの召喚獣の周りに再び斬撃が出現し、召喚獣を斬り刻んだ。

 

「一度やってみたかったんだよね、この技」

 

 最後の斬撃が斬り傷をつけたのと同時、モヒカンの召喚獣が消滅した。

 

 現代国語

 Aクラス 夏川俊平  201点

 Aクラス 常村勇作    0点

          VS

 Aクラス 木下優子  372点

 Fクラス 神崎仁   351点

 

 会場のディスプレイに点数が表示され、観客から歓声が上がる。ふと画面に目を向けるが、多少の点数の消費があれど、まだまだいけそうな点数だ。

 

「常村!」

「よそ見とは余裕ですね、先輩?」

 

 坊主頭が相棒の方へ目線を向けていたが、それで俺は勝利を確信した。

 なぜならその瞬間には、優子がランスを構えて背後をとったからだ。

 

「しまった!?」

「これで終わりです。先輩方」

 

 坊主頭が防御のために武器を構えようとするがもう遅く、優子のランスが深々と腹部に刺さった。

 

 現代国語

 Aクラス 夏川俊平    0点

 Aクラス 常村勇作    0点

          VS

 Aクラス 木下優子  372点

 Fクラス 神崎仁   351点

 

『勝者、木下・神崎ペア!』

 

 勝者を告げる竹内先生の掛け声を合図に、会場から歓声が巻き起こった。それに応えるように俺は周りに手を振ってみる。すると会場の最前列にある人物達を発見する。Fクラスの召喚喫茶で行われている写真撮影のお客様第一号の白井親子だ。麻美ちゃんが笑顔でブンブン手を振っている。

 それに軽く手を振り返して応じた後、パートナーである優子に向き直り手を振り上げる。

 

「お疲れさん」

「仁君もね」

 

 短いやりとりをしてから、ハイタッチで四回戦を締めくくった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、今回はあっさり勝っちゃったわね」

「ああいうタイプは挑発してやれば動きが単調になるからやりやすいんだよ」

 

 Aクラスまで送ることにした俺は、先程の四回戦の話をしながら優子と並んで廊下を歩いている。俺としてもここまであっさりと勝ってしまったことには拍子抜けである。

 

「一年も召喚獣の操作経験が多い三年生が、まさかあんなに操作が雑だとは思わなかった」

「そうね。動きを見て参考にしようかと思ったけど、あんなのを参考にするなら、仁君のを参考にした方がよっぽど役に立つわよ」

 

 三年生の操作をあんなのという優子の対応に苦笑いを浮かべる。Aクラスでの営業妨害がよっぽど頭にきているらしい。俺自身もまさかここまで言うとは思っていなかった。

 

「さて、Aクラスに到着っと」

「ありがとね仁君。なんなら寄ってかない? ごちそうするわよ」

「ごめんよ。気持ちは嬉しいけど、このあと店のシフトが入ってるんだ」

「そう……残念ね」

 

 本当に残念そうにしてる優子を見ていると、ものすごく申し訳ない気持ちになってくる。だが、これは仕事なんだ。割り切らなければならない。

 

「それじゃあ俺はここで。時間になったら迎えに行くよ」

 

 そう言い残して背中を向ける。そういえばあいつらは勝ったのだろうか。そのことも聞いてみようかな。

 俺は急ぎ足でFクラスへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「おかえりなさい仁君。召喚大会はどうでした?」

「もちろん勝ってきたよ」

 

 出迎えてくれた瑞希と話をしているとそれに気づいた明久達が駆け寄ってきた。

 

「おかえり仁。どうだった?」

「もちろん勝ってきた。お前らの方こそどうだったんだ?」

「そういえば、お主らはどちらが勝ったのじゃ?」

 

 俺と秀吉が単刀直入に聞いてみると、明久と瑞希、そして美波が苦い顔をする。まさか負けたのか? 明久達に至っては学園長との約束もあるっていうのに。

 

「……雄二、かな」

「そうね。坂本の一人勝ちね」

「ですね」

「お前らの試合では何が起こったんだ?」

「姫路達はともかく、明久は味方じゃろう。なぜ負けたのじゃ?」

 

 疑問符を浮かべている秀吉を見ていると、その後ろから雄二が出てきたので話を聞いてみることにする。

 

「なあ雄二。試合にはどうやって勝ったんだ?」

「明久で姫路を抑え込んで、それを二人まとめて蹴散らした後、よそ見していた島田に一発叩き込んだ」

「悪魔かお前は……」

 

 点数の高い瑞希をギリギリまで引きつけたいからって明久もろとも葬るとは……フィードバックがさぞ辛かっただろうに。

 

「んで、仁はもちろん勝ってきたんだろうな?」

「当たり前よ。相手が営業妨害の坊主とモヒカンだったから、点数も含めて木端微塵にしてきた」

「よくやってくれた。これで俺も自分の方に集中できる。さて……ウエイトレスが一か所に集まってちゃ客足が遠のくぞ。各所に散らばって愛想よく振る舞ってくれ」

 

 雄二の掛け声で一か所に固まっていたみんながそれぞれの作業へと戻っていく。俺は準決勝まで店の売り上げに貢献した。写真撮影の予約をしてくれていたお客さんの指名がすべて俺だったときは開いた口が塞がらなかった。

 




「神崎兄弟の」
「「ほのぼの談義~!!」」
「今回のゲストは佐藤美穂だ」
「やっと出番がきた……」
「第一声からメタな発言だな」
「だって、私の方が先に出てきたのに、今は新野さんの方が目立ってるじゃないですか!」
「恨むなら作者を恨んでくれ。俺に言われてもどうしようもないから。それよりも、この二人に自己紹介をしてくれ。妹と弟だ」
「あ、はい。えっと、佐藤美穂です。よろしくお願いします」
「神崎美香です。中学三年です」
「神崎隼人です! 中学二年で野球やってます!」
「ちなみに二人とも。この人もAクラスだぞ」
「ねえ兄さん。前から気になってたんだけど、兄さんの交友関係ってどうなってるの?」
「同じFクラスの明兄とか雄兄ならわかるけど、Aクラスの優子姉やこの前来た利兄とかとはどうやって知り合ったの?」
「最近ではCクラスの人達とも仲がいいですよ」
「Dクラスにも去年のクラスメイトもいるし、話ぐらいはするぞ」
「……兄さん、文月学園の顔になってない?」
「顔が広いね、仁兄は」
「話が脱線したな。Aクラスとはちょっといろいろあってな。そのときに知り合ったんだ」
「初めて神崎君がAクラスに来たとき、確かプリントを木下さんと一緒に持ってきてくれたんですよね」
「そのときに去年知り合った愛子とAクラス代表の翔子に会ったんだよな。あれ? 今話してはいけないようなワードがあったような……」
「優子さんと一緒にプリントを持ってきた!? 兄さん! 優子さんとはどういう経緯で出会ったの!?」
「やべ! しばらく見てないから忘れてた! 佐藤! 隼人! あとは任せた!」
「待ってよ兄さん! 優子さんとの出会いを聞かせてよ!」
「断る!」

 ダダダッ……

 

 シーン……






「最近美香姉のキャラがわからなくなってきた……」
「お姉さんは恋愛の話になるといつもああなるの?」
「そうなんです。その度に仁兄や他の人が追われてるんですよね……」
「神崎君も大変なんですね……」
「そうだ。さっき仁兄から伝言を預かってます」
「伝言?」
「はい。えっと……『あとで連絡先を教えてくれ』だそうです」
「それはいいけど、どうして急に……?」
「これにはまだ続きがありましてね。『佐藤とも友達になりたいのもそうだが、これでAクラスメインメンバーの連絡先が揃うから』と――」
「っ! 神崎君! 後でと言わず今すぐ交換しましょう! まずは神崎君を探さないと……どこにいるんですか、神崎君!」

 ダダダッ

「……またなの? また俺だけ残されるっていうパターンなの? ……まあいいや。今回は俺が締めくくります。読んでくださる全ての人に感謝を込めて……またねー!」
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