バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第二話

『そんなの無理だ』

『勝てるわけがない』

『姫路さんがいれば何もいらない』

 

 雄二の発言にそれぞれが反対の意思を示す。最後の奴、瑞希にラブコール送ってるし。

 

「そんなことはない。俺が絶対勝たせてみせる。それにこのクラスには勝てる戦力が揃っている。それを今から証明してやる」

 

 雄二が一人の男子に目を付ける。

 

「おい、康太。姫路のスカートの中を覗いてないで、こっちに来い」

「……!!(ブンブン)」

「はわっ!?」

 

 呼ばれた土屋康太は即座に顔を上げて否定し、瑞希は慌ててスカートを抑えている。

 

「土屋康太。こいつがあの有名な、ムッツリーニだ」

「……!!(ブンブン)」

 

 あ、そうだ。ムッツリーニだ。男子からは畏怖と畏敬を、女子からは軽蔑の意味を込められて呼ばれているあだ名だ。

 

『なんだと。あいつがそうだというのか』

『見ろ。まだ証拠を隠そうとしているぞ』

『ああ、ムッツリの名に恥じない姿だ』

 

 康太がまだ必死に否定している。今更否定しても遅いと思うんだけどな~。

 

「姫路の実力はみんなが知っている通りだ」

「私ですか?」

「ああ。うちの主戦力だ。期待している」

『そうだ! 俺達には姫路さんがいる!』

『彼女ならAクラスに引けを取らない!』

『姫路さん、愛してます!』

 

 さっきから誰だ、瑞希に愛の告白しているのは。正直うるさい。

 

「それに木下秀吉もいる」

「わしもか?」

『演劇部のホープ!』

『確かAクラスには姉の木下優子がいるよな』

 

 秀吉の姉はAクラスにいるのか。どんな人なのか見てみたいな。

 

「それに島田もいる」

「ウチも?」

「ああ。数学ならBクラス並みの学力をもつからな。当然、俺も全力を尽くす」

『坂本って小学の頃に神童って呼ばれてなかったか?』

『ということはAクラス並みが二人もいるのかよ』

『これなら勝てるんじゃないのか?』

『やってやるぜー!』

「それに、吉井明久と神崎仁もいる」

 

 シーン

 

 明久と俺の名前が出た瞬間、教室が一気に静まり返った。俺のことを知らないのはわかるけど、明久のことを知らないのはどうかと思うぞ。と言っても、俺もさっき名前を聞いて思い出したんだけど。

 

「そうか。知らないのなら教えてやる。まず明久は、観察処分者だ!」

 

 聞いた話だと、観察処分者の召喚獣は他の召喚獣と違って物理干渉が出来るらしい。だがその代わりに、召喚獣がダメージを受けると召喚者にも痛みがフィードバックされるという代償がついてくると聞いたことがある。他にも、観察処分者は教師の雑用を引き受けないといけないとか。

 

『それってバカの代名詞じゃなかったか?』

「違うよ! ちょっとお茶目な16歳の愛称で――」

「そうだ。バカの代名詞だ」

「肯定するな! バカ雄二!」

「けど、それって召喚獣の操作に慣れているってことでもあるよな?」

 

 何回も教師の雑用をやっていたら、いやでも召喚獣の操作に慣れるだろう。

 

「よく気づいたな、仁。そうだ。明久は教師の雑用で何度も召喚獣を召喚しているから、召喚獣の操作には長けている。操作技術は学年一だ」

 

 その言葉にクラス内から歓声が上がる。それを聞いた明久は照れくさそうにしている。

 

「そして神崎仁。こいつは文月学園が誇る情報戦略班だ!」

 

 情報戦略と聞いてもクラスの反応は薄い。そこに雄二が補足を入れる。

 

「お前ら、去年から文月学園の運動部の成績が格段に上がったのは知ってるよな?」

 

『それがどうかしたのか?』

「情報戦略によって、運動部の成績を上げた張本人こそ、この神崎仁だ!」

『『なんだってーー!!』』

 

 またまた野太い声の大合唱。なんか慣れてきたな。慣れって恐ろしい。

 その反応を好機と見たのか、雄二はさらに勢いを乗せに来た。

 

「こんなに戦力が揃っているんだ。このメンバーがいれば絶対に勝てる!」

『『うおぉーー!!』』

「まず手始めに、一つ上のDクラスを倒す! 俺たちに必要なのは畳や卓袱台じゃない。システムデスクだ!」

『『うおぉーー!!』』

「なら総員、ペンを取れ!作戦の準備だ!」

『『おおぉーー!!』』

「お、おー……!」

 

 周りの雰囲気に押されてか、瑞希も控えめに拳を上げる。そういうところがまた男子の目を引くんだろうな。

 

「明久にはFクラス大使としてDクラスに宣戦布告に行ってもらう! 無事大役を果たせ!」

 

 あれ? 下位勢力の使者って酷い目にあわなかったっけ?

 

「えっ、僕? 普通、下位勢力の使者って酷い目にあうよね?」

 

 明久も俺と同じことを思ったらしく、雄二に問いかける。

 

「大丈夫だ。俺を信じろ。俺は友人を騙すようなことは絶対しない」

 

 雄二はどこか爽やかな雰囲気で明久を説得する。俺だったら、何言われても絶対に行かない。だって酷い目にあうのは嫌だし。さすがの明久もこれは断るだろう。使者になったら最後、『死者』になるかもしれないんだから。

 

「わかったよ。Fクラスの使者は僕がやるよ」

 

 説得されちゃったよ。明久は本当の単純バカなのか?。

 

『頑張れよ!』

『お前なら出来る!』

「明久、頼んだぞ」

 

 クラスのみんなに見送られながら、明久はDクラスに宣戦布告しに行った。

 明久が教室の扉を完全に閉めたのを確認すると、雄二はニヤリと笑みを浮かべた。俺は雄二のいる教卓まで歩み寄って声をかける。

 

「雄二。下位勢力の使者が酷い目にあうのを知ってて、明久に行かせただろう」

「よくわかったな。その通りだ」

「その通りって……まあ、いいや。雄二。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「この試召戦争、明久もなにか関係してる?」

「どうしてそう思うんだ?」

「さっき明久が雄二と一緒に教室を出ていくのを見てね。もしかしたら、体調不良でFクラスになった瑞希に気を使って試召戦争を仕掛けようとしているのかなって思って」

「お前は勘が鋭いな。確かに明久から呼び出されて試召戦争をしないかって言われてな。理由を聞いても口籠るから、カマをかけてやったら、顔を赤くしてたぞ」

 

 雄二はそのときの状況を思い出しているのか、笑いをこらえている。

 明久が試召戦争をやろうとしているのは、瑞希が体調不良だからってだけじゃなさそうだな。もしかして明久は瑞希のことを……。

 

「なるほど。あ、そうだ。はい、俺の成績表」

 

 俺は雄二に点数の書いた紙を渡す。それを雄二は受け取って一通り目を通し、顔を上げて聞いてきた。

 

「なあ。この成績なら上のクラスに配属されてもおかしくないよな? 何でこのクラスになったんだ?」

「それはわからないな。この教科だけ高くて、あとのやつが極端に低いからじゃないかな?」

「確かに低いが、そんなでもないだろ。これを除いてもFクラスなら上位。この教科なんてCクラス並みの点数あるぞ?」

「その二つは得意だからね」

「ま、お前が来てくれたのは嬉しい誤算だったがな」

 

 雄二はニヤリと笑う。それに対して、俺もニヤリと笑みを浮かべる。

 しばらくして、廊下から誰かが走ってきて、教室のドア勢いよく開かれた。そこにいたのは、

 

「騙されたーー!!」

 

 ズタボロになって戻ってきた明久だった。

 

「やっぱりな」

「予想してたのかよ!」

 

 たぶん、このクラス全員が知ってたと思うぞ。知らないのは明久だけだと思う。

 

「吉井君。大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫だよ。ほとんどかすり傷だし」

 

 瑞希が心配そうに明久に声をかける。それに明久は問題ないことを伝える。

 

「吉井。本当に大丈夫?」

 

 島田さんも明久の元に駆け寄る。二人とも優しいな。

 

「島田さんまで……心配してくれてありがとう」

 

 明久は二人の優しさに触れてか、涙を流している。

 

「よかった……まだウチにも殴る余地があるんだ」

「ああ! もうダメ! 死にそう!!」

 

 訂正。一人危ない子がいました。明久が違う涙を流す前に、何とかしよう――

 

「そんなことより、今からミーティングに行くぞ」

 

 ――とする前に雄二が話を持ち出す。ナイス、雄二。ナイスなんだけど、ちょっと明久の扱いが雑じゃないかな……。

 

「あの、痛かったら言ってくださいね」

「大変じゃったのう」

 

 雄二に続いて、瑞希と秀吉が教室を出ていく。俺もそれについていく。

 

「……何色だった?」

「……水色」

 

 明久と康太が何か話しているが、気にしないことにした。

 

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