バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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 本編に入る前にひと言。
 このお話を投稿してから活動報告にある重大(?)なお知らせがありますので、そちらもぜひ見てくれると嬉しいです。
それでは本編をどうぞ!



第三十話

「えっ? そんなこと出来たの?」

「うん。昨日の朝に担任の先生がそう言ってきてさ、クラス全員に聞いてきたんだよ。みんなが二つ返事で頷いたら、なんか嬉しそうに教室を出ていってさ」

「最初は意味わからなかったけど、帰りのHRでそれを聞いた時、クラスが一気に歓喜に包まれたね」

「あ、俺のところもそうなった」

 

 いつものように朝食をとっているなか、ダイニングテーブルを挟んで座っている美香と隼人の口から信じられない事を聞かされた。

 今日は平日。ましては祝日でもなんでもないこの日。二人の通う中学校が突如休みになったのだ。聞いてみたところ、普通ではありえない理由によって起こったことだった。

 

「今日が清涼際最後の日だから、今日は休みって……」

「その代わり土曜日に授業することになったけどね」

 

 クラスを受け持つ担任教師達が生徒全員に聞いて、満場一致だと知った瞬間、教師全員で校長室へ向かったらしい。それを校長先生が快く了承し、現在に至る。それでいいのか教育機関。

 

「となると、今日は三人で学園に行くことになるんだな」

「各クラスの出し物も気になるし、兄さんが出場する召喚大会の決勝も見に行きたいな~」

「明兄達とも会えるから楽しみだよ!」

 

 二人が清涼際のことで話が盛り上がっている中、俺はあることを考えていた。

 いよいよ召喚大会の決勝まで上り詰めた。相手はFクラスの問題児コンビと言われている明久と雄二。俺の親友とも呼べる奴らだ。明久の操作技術と雄二の指揮能力。どちらも強敵で、そう簡単に事が運ばないだろう。俺の作戦が通用するか。

 だが、それとは別に心配していることがある。俺達Fクラスに数々の妨害工作をしてきた黒幕の存在だ。昨日はそれで大変だったけど、今日も俺たちに対して何かをしてくる可能性だって充分にある。なにも起こらなければいいんだが……。

 

「どうしたの兄さん? 難しい顔して」

「ん……なんでもないよ。ちょっと緊張してるのかもな」

「緊張してるといつもの調子が出なくなるから、落ち着いたほうがいいかもね。というわけで、今日は美香姉と二人で食器洗っとくよ!」

「お、サンキュな」

「いいっていいって。兄さんは休んでて」

 

 優しい妹と弟の申し出を断る理由もなく、礼を言ってから食べ終わった朝食の食器を流し台まで持っていく。それに続いて美香と隼人も食器を持っていき、洗い物を始める。

 

「私が洗っていくから、隼人は拭いていってね」

「あいあいさ~」

 

 二人の仲睦まじいやりとりを背に受けながら洗面台へ向かって顔を洗い、それが終わって自室へとつながる階段を上っていった。

 自室に到着してすぐに文月学園の制服に着替え、荷物をまとめる。そんなに多くのものがないため、すぐに準備が整った。

 鞄を担いでリビングへと降りていくと、洗い物を終えてソファーでくつろいでいる二人の姿が目に入った。

 

「ありがとな二人とも。おかげで早めにいく準備が整った」

「たまには手伝わないとわるいしさ」

「召喚大会、面白くしてよ?」

「ああ、任せろ」

 

 心から楽しみにしてくれている二人のためにも、清涼祭を盛り上げたいと意気込んでいるところで玄関のチャイムが鳴った。おそらく秀吉と優子の二人だろう。

 

「俺が出るから、二人は準備してこいよ」

「「は~い!」」

 

 二人同時に返事を残し、それぞれの準備のために階段を駆け上がっていった。それを見届けてから玄関へ向かい、扉を開く。案の定、そこには木下姉弟が並んで立っていた。

 

「おはよう仁君」

「おはようじゃ」

「おはよう二人とも。少し待っててくれないか? 今美香と隼人が準備してるから」

 

 話をしながら待っていると、二人が階段から降りてくる音が聞こえた。美香はピンクのフリフリがついたワンピースに深紅のカーディガンを羽織り、黒のニーソックスを穿いている。隼人は紺のデニムに白いシャツと至ってシンプルな格好をして出てきた。

 

「あ、優子さんに秀吉さん。おはようございます」

「おはよう! 秀兄、優子姉!」

「おはようじゃ、二人とも」

「おはよう。でもどうしたの? 今日は平日で学校があるはずよね?」

「それは歩きながら説明するよ」

 

 午前中で静かな住宅街を並んで歩き、その道中で学校の制服を着ていない二人を見て疑問の顔を浮かべていた優子になるべく簡潔に説明した。俺の右隣を歩いている秀吉も耳を傾けている。だがすぐに美香と隼人に話しかけられてそっちを向く。

 

「……それでいいのかしら教育機関」

「俺も同じこと思った」

 

 俺と優子は呆れが混ざった溜め息を同時に吐いた。こんな事例は今まで聞いたことがない。なんというか……ちょっと自由すぎではないだろうか。

 普通はこんなことはありえない――もしあるとして、職員会議を開いて決めるならまだしも校長室に殴り込んで意見を述べ、それを校長が即決で許すというすごい展開が現実となったのだ。溜め息の一つや二つ出るってものだ。

 

「そういえば昨日、秀吉はすみれを送っていったよな。あの後どうしたんだ?」

「それなんだけど、帰ってきてからあの子の様子が変なのよ。声をかけるたびに肩を震わせて」

「確かにそれは変だな……あとで聞いてみるか」

「とか言いながら仁君、顔がにやけてるわよ?」

「そういう優子だってなんだか嬉しそうだぞ」

 

 どうやらお互い確信があるようだ。チラッと秀吉の方を見ると、同じタイミングでこちらを向いてきた秀吉と目が合った。これといっておかしいところはない。今のところは。

 

「どうしたのじゃ二人とも。さっきからこちらを見てはニヤニヤしておるようじゃが……」

「「べっつに~」」

「う、うむ。ならよいのだが……」

「「?」」

 

 なんだか歯切れの悪い返事をする秀吉に美香と隼人は首をかしげていたが、こちら二人は確信した。こいつは黒だと。

 その後もニヤニヤ顔を崩さぬまま、五人は文月学園へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 玄関で優子と別れ、自分のクラスであるFクラスに到着した俺達兄弟と秀吉はすぐには入ろうとせず、その場で立ち止まった。

 

「最初に言っておくが、教室に入るときは覚悟しておけよ、隼人」

「なんで?」

「論より証拠だ。隼人。秀吉と一緒に教室に入ってみろ」

 

 怪しげに見返してきた隼人だったが、秀吉と並び立ち、深呼吸をしてから一気に開け放った。そしてすぐにドアを閉めては俺の制服を掴んでガタガタと身を震わせてきた。それを俺の隣で見ていた美香が慌てた表情を見せる。

 

「仁兄! 仁兄はこんなところで勉強してるの!?」

「えっ、なに!? 隼人は一体何を見たの!?」

 

 妹と弟が狼狽しているのを微笑ましく眺めてから隼人を優しく引き剥がす。おそらく隼人はFFF団を見たのだろう。秀吉と一緒にどこの誰かも知らない男がやってきたのを嫉妬という鋭い勘で感知し、数秒で戦闘態勢を整えたといったところか。恐るべき連携である。

 

「よし。今度は美香が入ってみろ」

「嫌だよ! 隼人がこんなになるところになんて!」

「安心しろ。美香なら何も起きないはずだ」

「俺が入ったら何が起きてたの!?」

 

 隼人が少し涙目で叫んでいるのを宥めながら美香の方を見やる。扉の前でごくりと喉を鳴らして立ち尽くしていた。そして意を決したと言わんばかりに頷いてから、隼人同じく一気にドアを開いた。

 

「……あれ?」

 

 ドアを開けてからも美香は立ち尽くしていた。その後ろからのぞき込んでみると、昨日も見ているFクラスの喫茶店の風景だった。テーブルを直しているやつもいれば、床を掃いているやつもいる。清涼祭最終日のやる気は十分といったところである。

 

「……ねえ隼人。そんなに怯えるようなところってある?」

「あるよ! 紫の布を被った怪しい連中が……ってあれ?」

 

 美香の反応がおかしいと叫びながら入っていった隼人の表情が次第に疑問符へと変わっていく。先程見た光景とだいぶ違うのだろう。あちこちをキョロキョロしては目をこすっていた。

 遅れて教室に入っていくと、全員の視線が俺に注がれた。続いて秀吉も教室に入ってくる。

 

「おいっす。お前らやる気十分だな」

「それより神崎。そこにいる美少女は誰なんだ」

「答えによっては……」

 

 そう言って美香と隼人には見えない角度でカッターナイフをチラつかせ、教室にいる秀吉以外のFクラス男子全員が殺気を放ってきた。みんな仲がいい事で。

 

「紹介するよ。俺の妹と弟だ」

『『お義兄さん、妹さんを僕にください』』

 

 カッターナイフを構えて殺気を放っていた連中がさっきのことをなかったことにするかのように素早く俺の前に正座で座り、一斉に土下座を決めてみせた。

 俺はそんな必死に頭を下げている連中を見下ろしながら笑顔をつくり、優しく諭すように告げてやる。

 

「だめだ。お前らに美香はやれん」

『『ちくしょぉぉぉっ!!』』

 

 心からの叫び声を上げながら涙を流すFクラス男子に美香と隼人は若干引いている。その気持ちは十二分に理解出来るぞ。俺も無意識に後ずさってたから。

 

「ふわぁ~。おはよう、みんな……」

「んで、なんでうちのクラス連中は朝から泣き叫んでいるんだ……?」

 

 後ろから聞き慣れた声が聞こえてきたので振り返ってみると、そこにはあくびを漏らしている明久と眠たそうな顔をしている雄二がいた。その姿を見つけた美香と隼人がそちらに駆け寄っていった。

 

「おはよう明兄! 雄兄!」

「おはようございます」

「あ、おはよう隼人、美香ちゃん……」

「二人とも来てたのか……」

 

 二人の挨拶にも反応が薄い明久と雄二に声をかけようとすると、もう一方の教室のドアが開け放たれた。瑞希と美波が入ってきてこちらにやってくる。

 

「おはようございます。みなさん」

「あれ、神崎兄弟が勢ぞろいね」

「あ! 瑞希姉と美波姉だ!」

「おはようございます。瑞希さん、美波さん」

 

 二人を見つけてはそちらに駆け寄っていく。それを眺めていると、一人足りないことに気づく。どこにいったのかと首をかしげたが、そのうち出会うだろうと割り切った。

 教室の奥にある即席で作った裏方へと入り、ウェイターの服に着替えていると、先程探していた康太がフラフラとやってきた。顔が青く変色している。なにがあった。

 

「おはよう康太。朝から青ざめてなにがあった?」

「……工藤愛子に嵌められた」

 

 愛子と何かあったらしい。普段の出血している量を見ていると、昨日だけでこうなるとは考えにくい。

 

「もしかして、朝も一緒だったのか?」

「……!!(ブンブン)」

 

 どうやら朝も一緒に登校してきたらしい。愛子の家まで迎えに行って、その道中でいろいろあったようだ。

 

「しかし、そこまでの関係にまで進展していたとはな~。でもよかったじゃないか。愛子のこと気にしてただろ。試召戦争の時から」

「……断じて違う!」

「康太の否定は俺にとって肯定を示すから無駄だぞ。安心しろ。誰にも言わないからさ」

 

 愛子の件については他のみんなも勘付いていると思うけど。

 

「……助かる」

「いいってことよ。俺は二人の仲を応援してるよ」

 

 着替え終わった俺はそう言い残して裏方を出ると、ちょうど教室から明久と雄二が出ていくところだった。詳しい事を知らない俺は入り口周辺にいる瑞希と美波の方に向かい、話しかける。

 

「あいつらどこにいったの?」

「吉井君達なら屋上で寝てくるって言ってましたよ」

「きっと坂本の腕枕で……」

 

 なんだかよからぬ想像をしている二人の女子を置いといて、二人と少し離れたところで話している妹と弟の方へと歩を進める。こっちに気づいた二人は、わあと歓声を上げて近づいてきた。

 

「兄さんすごい似合ってるよ!」

「普通に喫茶店にいそうな人だよ!」

「ありがとな、二人とも」

 

 二人から素直な感想を述べられたことで照れ臭くなり頬をかく。他の人からは褒められてもなんともないのに、弟と妹に褒められると照れ臭くなるのはどうしてなのだろうか。

 

「神崎。坂本が俺達のいない間、店を頼んだって言ってたわよ~!」

 

 遠くから美波がそんなことを伝えてきた。店の責任を全部押し付けてきやがった。断るつもりはないが、なんか釈然としない。

 

「まあ……本調子じゃないあいつらに勝っても嬉しくないし……」

 

 召喚大会はどういう作戦で挑もうかなと考えるのと同時、この学園の裏で動いている存在が気になっていた。倉庫で不良から聞いた犯人の正体を知った今、すぐにでも何とかしたいが迂闊な行動も出来ない。

 

「どうしたの? 兄さん」

「何でもないよ。さて……話をしているところ悪いが、そろそろ準備始めるぞ~!」

 

 手を叩いてみんなの視線をこっちに向ける。一斉に向けられた数多の双眸にも臆さず、すうと息を吸って告げる。

 

「代表が席をはずしているから、代わりに俺がやらせてもらう。清涼祭最終日、気合入れていくぞ!」

『『『うおぉぉぉ!!』』』

 

 教室内に雄叫びが響き渡り、それぞれが持ち場に入っていく。叫びが収まった瞬間に学園のチャイムが鳴った。

 清涼祭最終日の喫茶店が、開店した。

 




「神崎兄弟の」
「「ほのぼの談義~!!」
「今回のゲストは白井春海さんと麻美ちゃんだ」
「こんにちは、神崎君」
「おにーちゃん! こんにちはー!」
「こんにちは。麻美ちゃんはいつも元気だね」
「えへへ~」
「この子ったら本当に神崎君に懐いちゃって」
「構いませんよ。俺も子供の相手するの好きですから」
「あの~、仁兄?」
「二人だけで話を進められるとこっちの立場がなくなるんだけど……」
「わるいわるい。紹介します。俺の妹と弟です」
「神崎美香です。中学三年です」
「神崎隼人。中学一年です!」
「これはご丁寧に。私は白井春海といいます。二児の母です」
「白井麻美です! 小学五年生です!」
「二児の母ってことはもう一人いるってことですよね?」
「ええ。雅美といって、神崎君と同学年なのよ」
「前回来てただろ。あの人だよ」
「そうなんですか」
「言われてみれば名字も一緒だしね……」
「いや気づいてなかったのかよお前ら」
「ふふ。そういえば神崎君。あのとき一緒に撮った写真、大事にしてもらえてる?」
「はい。それはもちろん」
「写真って?」
「喫茶店サービスのときに撮った写真だよ」
「撮ってもらった写真を見たときに、写っている光景がまるで夫婦そのものだったわよね~」
「えっ?」
「夫婦……?」
「ちょ、ちょっと春海さん。そういう発言は――」
「そういえば、心なしか麻美ちゃんが兄さんに似ているような……」
「落ち着け美香。俺の話を聞いてくれ」
「春海さんがお義母さんになって……前回来てくれた雅美さんがお義姉さんってことになるのかな……」
「隼人はまず自分が何を言っているのか冷静になって考え直せ!」
「それじゃあここにいる麻美ちゃんは私達の義妹ってこと!?」
「お前ら戻ってこーーい!!」
「おにーちゃん達、楽しそうだね!」
「そうね麻美」
「春海さんも誤解を解くのを手伝ってくださーい!」
「神崎君もああ言ってるし、行きましょうか」
「は~い! でもそのまえに~」
「読んでくださる全ての人に感謝を込めて……」
「またね~!」
「締めのセリフ取られたぁぁ!!」
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