バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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 やっと更新できました……
 小説の企画が一段落して地道に書いていたものです。
 それでは本編をどうぞ!


第三十三話

 それぞれの想いを伝えあった俺と優子は手をつないだまま校庭へと足を運んだ。忙しい二日間から解放させたせいか、どのクラスもにぎやかだ。あの堅いイメージがあったAクラスやBクラスまでもがお祭り騒ぎとなっているのを見て、自分の偏見が薄れていくのを感じた。

 

「あいつらどこにいるんだろ?」

「代表達がうまくやっててくれれば、Aクラスの近くにFクラスがあるはずなんだけど……」

『優子~。こっちだよ~!』

 

 遠くから優子を呼ぶ声が聞こえてきたのでそちらに振り向くと、立ち上がってこちらに手を振っている愛子を見つけた。優子もそれを確認したらしく、俺の手をつないだままそちらへと頬を進めていく。Fクラスのみんなが見つかるまでここにいさせてもらおう。

 

「……優子、どこにいたの?」

「ホントだよ~。いくら探しても見つからなかったから……あれ?」

 

 腰に手を添えて出迎えてくれた愛子はある一点に視線を集中させてから俺と優子を交互に見やり、表情をコロリと変えてニヤニヤし始めた。

 

「あれ~? もしかして二人……」

「そうよ。今日からアタシと仁は付き合うことになりました」

 

 愛子がいじりだす前に先手を打ってやったと言わんばかりに胸を張って宣言し、つながれた手をギュッと強く握ってきた。今までだったら照れていた俺達だが、付き合った瞬間に気持ちが吹っ切れて堂々としていられるようになっている。

 

「そんなに堂々と宣言されたらいじりにくいじゃん。でもおめでとう、二人とも!」

「……おめでとう」

「ありがとう愛子、翔子」

「この状態で立ってるのもあれだし、とりあえず座りましょ」

 

 クラスのみんなを見つけるまでお邪魔するというお願いをするまでもなく俺はAクラスの打ち上げ会場に腰を下ろすことが出来た。あまり長居するのもあれだから早いとこ見つけなきゃな。

 

「なあ愛子。Fクラスがどこで打ち上げやってるか知ってるか?」

「Fクラスなら仁君の後ろだよ」

 

 愛子がそう言うので振り向いてみると、こっちをニヤニヤした表情で見つめているFクラスのいつものメンバーが座っていた。こいつら知ってて何も言わなかったな。

 

「仁なら気づくと思ったのじゃが、姉上と付き合い始めて注意力が薄れたんじゃの」

「もしかして、さっきの話聞いてたの?」

「聞いておったが、それを見れば一目瞭然じゃ」

 

 背を向けるようにして座っていた秀吉がつながれた俺と優子の手を見ながら言うのを見て、いまだ手をつないだままだったことに気づく。急に恥ずかしくなってきた俺は勢いよく手を離し、優子も顔を真っ赤にして動きをシンクロさせる。その光景を見て再びニヤニヤする面々と歯軋りしながらカッターを握る康太。こいつら……

 

「まあ、なにはともあれ、おめでとうなのじゃ」

「……おめでとう」

「お似合いよ。二人とも」

 

 散々からかってきた後に祝福の言葉を投げかけられる。そんなこと言われたら強く言えないじゃないか。康太は別として。

 

「そういえば雄二と明久は? 瑞希もいないみたいだし」

「瑞希はお父さんと話に行ったわ。アキと坂本は……あ、きた」

 

 美波が向けた視線の先に目を向けると、明久と雄二が苦痛に顔を歪め、頭を押さえながらこちらにやってきた。隣同士でどっかり座ると、長い溜息を二人同時に吐く。その二人に美波が飲み物を差し出すと、それをぐいっと傾ける。明久が少し表情を歪めたが、中身はなんなのだろうか。

 

「ったく、鉄人は手加減ってやつを知らねえのか……」

「まったくだよ……僕達が学園を救ったっていうのにさ」

「お前らはいままでなにをやってたんだ?」

 

 事情を知っている身としてはなにがあったのか心配だったので聞いてみることにする。雄二の口から出てきたのは別行動に出た後のことで、花火を使って常夏コンビの妨害を阻止しようとして見事に成功したのだが、鉄人こと西村先生に見つかって誤射してしまい学園の一室に直撃。そのまま鬼ごっこを繰り広げて最後には捕まってしまったと。それを聞いた俺は問答無用で二人の頭を殴りつけた。

 

「ぬわあー! 鉄人に殴られたところがー!」

「仁! てめえなにしやがる!」

「うるせえ! お前らのせいで俺は死ぬところだったんだぞ!」

 

 明久はごろごろと地面を転がり、雄二は恨めしそうに怒鳴ってくる。教頭室に打ち込まれた花火弾がこいつらのやったものだと知った瞬間に芽生えた衝動に抗えずに思うがままの行動に出た。後悔はしていない。死因が花火弾の直撃なんてごめんだ。

 

「生きてるってことは……終わったんだな」

「ああ。バッチリな」

 

 その表現はどうかと思うが、雄二の言っていることは間違っていないので素直に頷いておく。痛みをこらえていた明久もこちらを向いて安堵の笑みを浮かべている。

 

「島田。店の売り上げはどんなんだ?」

「二日間にしては上出来なんじゃないかしら」

「うーん。この金額だと難しいな。畳と卓袱台が精一杯だ」

「あ、瑞希が戻ってきた」

 

 美波に渡された二日間の売り上げを記した紙を見て雄二が唸っている。後ろから覗いてみると確かに普通の机を買うには足りない。このままだと瑞希の転校が……。

どうにか出来ないかと考えていると美波が瑞希の姿を確認したらしく、そちらを向いて手を振っている。瑞希は息を切らしながら走ってきて、自然に明久の隣にすとんと腰を落とした。

 

「お疲れ瑞希。どうだった?」

「はい。お父さんもわかってくれました! 良い友達を持ったなって!」

 

 とても嬉しそうに話す瑞希の表情は太陽そのもので思わず目を細める。さっきまで心配していた要素が払拭されたことにほっとして息を吐いた。周りにいるメンバーも転校を阻止できたと安堵の息を吐いている。そうだよな。学園の環境のせいで大事な友達の転校なんて死んでもごめんだ。

 

「よかったね、姫路さん」

「あ、吉井君……すいません、走ってきたから喉が乾いちゃって。よかったらもらえませんか?」

「あ、うん。もちろん」

 

 明久が差し出したコップを受け取って瑞希が飲み干す。それを見ていた美波が声を上げては悔しそうに唸っていたが、なにかあったのだろうか。

 

「これですべてが丸く収まったな」

「そうね。これで心置きなく打ち上げを楽しめるわ」

 

 隣に座る優子の滑らかな手が俺の手に重ねられる。心地よい微かな温もりが手を伝って俺の脳へと刺激を送る。そしてお互いの存在を確かめ合うようにして顔を合わせて微笑み合う。

 

「おいそこ。二人だけの空間に入るんじゃない」

「雄二ってどうしてそんなに空気読めないのかな?」

 

 雄二に指摘されて再びお互い反射的に手を離し、足元にあった飲み物を一気に飲み干す。それと明久、満面の笑みでカッターを構えているお前が一番空気読めてないぞ。

 

「こうなったらFFF団総動員で……」

「やめとけ明久。こいつがFFF団を一人で殲滅して無傷で生き延びていることを忘れたか?」

 

 狂気に満ちた明久を雄二がため息交じりに引き留める。正直助かった。FFF団だけならともかく、個人の身体能力が高い明久や近くでハサミとカッターを血涙を流しながら研いでいる康太には勝てる気がしない。怖いから。

 

「きゃっ」

 

 遠くから小さな女子の悲鳴が聞こえてきてそちらを向くと、瑞希が何かにつまづいたのか地面にへたり込んでいた。そこに明久が駆け寄っていって手を差し伸べる。うーん、美波には悪いんだけどすごく似合ってるんだよな、あの二人。今も瑞希が明久に抱き付いてるし……って、は?

 

「おいおい……瑞希のやつ顔が赤くないか?」

 

 明久に抱き付く瑞希の頬は赤く染まっていて、目もとろんとしている。それに正常に言葉を発することが出来ていない。明久が酷く戸惑っているし、もしかして体調でも崩したか!? だったらいますぐ行かないと!

 

「じ~ん~」

 

 瑞希の元へ駆け寄ろうと立ち上がると、足に優子がしがみついてきた。急いでいるというのに!

 

「どうしたんだ優子。瑞希のところに行かないといけないからその腕を離してくれ」

「な~してよ~。アタシより姫路さんの方が大事だっていうの~?」

「そんなこと言ってる場合じゃ……」

 

 優子までどうしたというのだ。いつもの凛とした姿勢はどこへいったというのだ。今の優子はまるで酔っ払い……酔っ払い?

 

「もしかして優子……酔ってる?」

「酔ってないわよ~。バカにしてるの~?」

 

 これは確実に酔っている。でもいったいなにで……? 

 そう思い優子の辺りを見渡す。周りには打ち上げ用に用意されたお菓子の袋や飲み物の缶が転がっていた。ある疑問を抱いた俺は缶を持ち上げてラベルを見る。そこにはアルコール成分という文字がしっかり刻まれていた。

 

「間違いない。優子はこれを飲んで酔っ払ってるんだ……」

 

 誰だよ学生の身分でこんなの買ってきたやつ。見つかったらただじゃ済まないだろうが。

 もしかしてと思い明久達がいる方を向くと、変わらず頬を紅潮させた瑞希が明久に詰め寄っている。なるほど。瑞希も酒を飲んでああなったんだなと一人納得していると、再び足に重力が掛けられて少しよろけてしまう。視線を下へと向けると足元にいる優子が不機嫌そうに頬を膨らませて見上げていた。

 

「じんはアタシよりひめじさんの方がいいっていうの~? それはまあアタシはひめじさんみたいに胸は大きくないけどさ~」

 

 酒がだいぶ回ってしまったらしく、ついには自分の身体的特徴の自虐を始めてしまった。そういうところだけを見て好きになったわけじゃないのにな……ええいままよ。

 俺はその場にしゃがみ込んで優子の方に振り向くと、背中に手を回して抱き寄せた。

 

「……じん?」

「そんなわけないだろ? どうであろうと俺は優子を愛し続ける。胸の大きさとか関係なしに、俺は優子だから惚れたんだ」

「……アタシも、じんを一生……」

 

 恥ずかしながらのやりとりを繰り広げると優子は安心したのか、俺にもたれかかった状態で眠ってしまった。空いてるスペースに優しく寝かせ、風邪をひいてしまうといけないので自分の着ているブレザーをかけてやる。これでやっと落ち着ける。

 

『『『じゃんけん、ぽん!!』』』

 

 少し離れたところでは友人達が白熱したじゃんけん勝負を繰り広げていた。結果が気になるので近くに行ってみることにする。

 

「むう……負けてしまったのう。お主らはなにが欲しいんじゃ?」

『『『ブラックコーヒーで』』』

「全員一緒なのは楽なのじゃが、なんだかのう……」

 

 秀吉が負けたらしく、全員分のブラックコーヒーを買いに立ち上がって校舎へと入っていった。でもなんでみんなブラックなんだ? 息もぴったりだったし。

 

「みんなしてブラックコーヒーなんて珍しいな。どうしたんだ?」

「あのセリフは無自覚だっていうの!?」

「……うらやましい」

 

 愛子は露骨に驚き、翔子はなにかを望んでいるかのように雄二の方を見つめていた。なんだ、俺がなにかしたか。

 こんなやりとりがあったが、その後も打ち上げは大盛り上がり。酒を飲んで酔っ払った男子を黙らせに行ったり、他のクラスをも巻き込んで大騒ぎになって大宴会状態となった。

 この楽しいひとときを、俺は一生忘れることはないだろう。

 なぜならこの瞬間、学園中のクラスが一体となり、一切の心残りのない表情で清涼祭の終わりを迎えたのだから。

 

 




 更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありません。
 これからも不定期な更新となりますが、この作品をよろしくお願いします。
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