しかし本編でも、神崎仁の休日でもありません。息抜きに書いたものです。
ニライカナイ編買いに行かないとな~
それではご覧ください!
ツバサクロニクルとのクロス(1)
次元を超えた俺達は次の世界に到着した。
「ここは?」
「今度はどんな世界なんだろうね~?」
「……ずいぶん静かだな」
俺達が降りてきたのは道の真ん中だった。その周りには家が所狭しと並んでいる。
「モコナ、羽の気配は?」
「うん。小さいけど、感じる」
羽の気配がある。つまりはこの世界に姫の――サクラの記憶がある。
「ねえねえ小狼。このボタンはなにかな?」
モコナが指をさすところにはなにかのボタンがあった。
「なんのボタンでしょうか?」
「ん~魔力は感じないねぇ~」
俺の隣にいる金髪で背の高い魔術師のファイさん。どうやらこのボタンは魔力では動いていないようだ。
「えいっ!」
「あ、モコナ!」
モコナが勝手にボタンを押してしまう。ピンポーンと音が鳴った。
「おい、白まんじゅう! なに勝手に押してるんだ!」
モコナを白まんじゅうと呼ぶこの人は黒鋼さん。背が高くて体つきもしっかりしていて、腰には刀を差している。そして額には月のマークがついている装備を身に着けている。
「ど、どうしよう、小狼君……」
そして俺の隣にいるのはサクラ姫。茶色い髪で笑顔が眩しい女の子だが、記憶を失っている。羽となって違う次元に飛び散ったサクラの記憶を捜すために俺達は次元を超えて旅をしている。
「はーい」
家の中から声が聞こえる。どうやらこっちに向かってきているようだ。俺はサクラ姫を後ろにかばう。少ししてから目の前のドアが開いた。
「……あの、どちら様でしょうか?」
出てきたのは一人の男だった。年齢は俺と同じくらいかそれより上。髪は黒で背は高く、眼鏡をかけている。
「俺は小狼といいます。この三人と一緒に旅をしています」
「モコナもいるよ!」
「ん? 召喚獣? でもここは召喚範囲外だしな……」
目の前の男はモコナの存在に驚くことはなく、なにかを呟いていた。
「……立ち話もあれですし、とりあえず中へどうぞ」
俺達は男に促されるまま家の中に入った。
--------------------------------------------
家のリビングには俺以外に四人(と一匹?)がいる。出身国が違うのだろうか。それぞれが雰囲気が明らかに違う服を身に着けている。俺は麦茶をコップに注ぎ、四人のところに持っていく。
「まず、あなた方のことを聞いてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。俺は小狼といいます」
「私はサクラです」
「……黒鋼だ」
「俺はファイ・D・フローライト。長いからファイって呼んでほしいな~」
「モコナはモコナ~!」
小狼一行の自己紹介が終わった。次は俺の番だな。
「俺は神崎仁。それで、なんで皆さんはここに?」
「仁くん堅~い。敬語はいらないよ~」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
敬語はいらないというファイさんの申し出を素直に受け取り、そのあと四人がしてきた旅の話を聞かせてもらった。
「……なるほど。記憶の羽を捜すために、時空を超えて旅をしていると」
「あれぇ? 仁くん意外とすんなり~」
ファイさんが軽いノリで答える。そりゃあこっちにはあの学園の存在があるからな。
「その羽はこの世界にあるの?」
「うん。小さいけど、サクラの羽の気配を感じる」
モコナのそのセリフに俺は顎に手を当てて考える。
「となると、この家からは遠いところにある訳だ」
「仁さん。最近、この世界で変わったことはありませんか?」
「仁でいいよ。小狼も敬語はいらないぞ」
小狼はそれじゃあ、と言ってお茶を口に含む。
「変わったこと、だったか? ……特にはないな。俺の通う学校はもともと変わってるところだし」
「そっか……」
「小狼君……」
小狼が顔を俯かせて小さい声で呟く。それを見た隣に座っているサクラが小狼の顔を覗き込んでいた。
「よし、俺も探すのを手伝おう。話を聞いておいて何もしないなんて出来ないからな」
それに記憶がこの世界にあるのなら、早く返してあげないと。
「そういえば、どこに泊まるのかは決めてるの?」
「実はまだなんだよねぇ~」
「なら、よかったらサクラの羽が見つかるまでここに泊まるといい。俺ももっと旅の話とか聞きたいし」
「ホントに! 仁っていい人!」
勢いよく飛びついてきたモコナを受け止めて感触を確かめるように撫でる。うむ。かなりのモフモフ感。
「それじゃあ父さん達の部屋を使うといいよ。そこの部屋」
俺が立ち上がると膝にいたモコナが肩に飛び乗る。後ろから他の四人もついてくる。リビングに繋がっているので、そんなに距離はそんなにない。
海外の仕事に行っているのでほとんど使われていない部屋。物もほとんどないのですごく広く感じる。
「さすがに四人は狭いかな……」
いくら何もないとはいえ、父さんと母さんが二人で使ってちょうどよかった部屋だ。四人となるとかなり狭くなってしまう。
この場にいる全員がリビングに戻り、もといた場所に座り直してから四人に問いかける。
「わるいんだけど、二人決めて、その人たちはリビングで寝てくれるかな?」
「それなら、小狼君とサクラちゃんで部屋使いなよ。俺と黒ぽんはリビングで寝るからさ」
「誰が黒ぽんだ!!」
からかうファイさんを追いかける黒鋼さん。あまりリビングで騒がないでほしいな。
「……二人っていつもあの調子なの?」
「次の世界に行くたびにやってるよ」
「黒鋼はね、照れ屋さんなのっ!」
小狼ははしゃいでいる二人を見て微笑み、俺は苦笑いを浮かべる。そういえばサクラが喋ってないな。視線を横にずらしてみると、
「……すぅ」
どうやら寝てしまったようだ。小狼の肩に力なく寄りかかっている。
「俺は部屋に布団を敷いてくるよ。小狼はサクラを連れてきて」
「モコナもお手伝いする!」
俺が立ち上がりながらそう言うと、小狼は頷いてサクラをお姫様抱っこする。そのまま俺と小狼は部屋へと向かった。
--------------------------------------------
仁くんと小狼くんはサクラちゃんを寝かせるために部屋に入っていったのを確認してから、黒ぽんに話しかける。
「仁くんってすごいよね」
「あっ? なんだ急に」
黒ぽんがこっちを見ながら答えてくる。
「俺たちが異世界から来たって言っても驚かなかったし、そのうえ宿まで提供してくれてさ。普通の人だったら少しは怪しむはずなのに、仁くんにはそれがなかった」
「それは最初の国でもそうだっただろうが」
「あの人たちは次元の魔女さんのことを知っていたでしょ? もし仁くんも知っていたなら、玄関で俺たちのことを聞かないでしょ?」
「……」
「黒たんも仁くんから何か感じたんじゃないの?」
黒たんは何かを考えるように俯き、そしてすぐに顔を上げる。
「……あいつからは剣の気配がする。それも強い意志がこもったな」
ニヤリと笑みを浮かべると、黒ぽんは肩にかけている刀を手で握り締めた。
「黒ぽんは嬉しいのかな? 久しぶりに剣を交えることが出来るのが」
「ああ。今から体が疼いてきたぜ」
そんな話を黒ぽんとしていると小狼くん達が戻ってきた。これからどうやって行動していくかも決めないと。
------------------------------------------
布団を敷いてサクラを寝かせた俺と小狼はリビングに戻ると、ファイさんがさわやか笑顔でお疲れ~と言って手を振っている。
「サクラちゃん、疲れちゃったんだね~」
「あの白まんじゅうはどうした?」
「モコナならサクラと一緒に寝ちゃいましたよ」
サクラを寝かせる際にモコナも手伝ってくれたのだが、布団を敷き終わった瞬間に潜り込み、そのまま寝てしまったのだ。白まんじゅうというのはたぶんモコナのことだろう。間違いない。
「何をやっているんだ、あのまんじゅうは……」
黒鋼さんは顔に手を当てて呆れたようにため息を吐いていた。
そんな黒鋼さんを見ていると、ある一点に目がいった。黒鋼さんが肩にかけている刀のようなものだ。それはなんなのか気になったので、俺は本人に聞いてみることにする。
「黒鋼さん。それって……刀ですか?」
「ん? ああ、そうだが。これがどうかしたか?」
「あの、よかったらでいいんですけど、ちょっと触らせてもらっていいですか?」
「かまわん」
そう言ってから黒鋼さんが刀を差し出してくる。実際に刀を見るのは初めてだったから、なんか妙に緊張してきた。
それを受け取ろうとして――危うく落としそうになった。
黒鋼さんの刀はそれはもうとても重い。今は鞘に納められている状態だが、触れると切れてしまうのではないかという錯覚を覚えてしまう。
「鞘から抜いても?」
「ああ」
黒鋼さんに軽く一礼してから慎重に刀の鞘を抜く。抜いた瞬間、刀身が蛍光灯の光に反射して思わず目を細める。さらに鞘を抜いていくと、ついに銀色の刀身の全貌が明らかになる。
全貌を見た瞬間、俺は言葉を失った。
刀は日本史の教科書に載っているようなものではなかった。刀身の細部にまで加工が施されていて、先端に向かえば向かうほど刀身が大きくなってく。常に手入れされているような鋭さと光沢。このようなものは世界中を旅していてもめぐり合うことはない。それを確信できるような代物だった。
「すごい……! あ、お返しします」
俺はなんとか声を絞り出すと質量のある刀を身体目一杯使って持ち上げ、慎重に黒鋼さんに返す。それを黒鋼さんは片手でいとも簡単に受け取り、肩にかけ直す。黒鋼さんの筋力数値は西村先生と同等か、それ以上であることが今の行動で証明された。
「お前、刀に触れたのは初めてか?」
「木刀なら家にありますが、真刀に触れたのは初めてです」
「……っ!」
黒鋼さんが俺の言ったことに驚いていた。どうしたのだろうか。
「あ、そうだ。先に言っておきますけど、刀は外に持ち出さないでくださいね。警察に見つかったらアウトですから」
次元を超えて世界を旅しているのに警察に捕まってしまったら、その時点で旅が終わってしまう。
「残念だね黒たん」
「その呼び方はやめろ!」
今まで話に加わってこなかったファイさんが再び黒鋼さんをからかう。このままだと埒が明かないので俺は話を切り上げ、別の話を持ち込む。
「ん。いい時間だし、そろそろ晩飯作るか。なにか苦手なものってある?」
「俺は特には」
「なんでも食える」
「生ものはちょっと無理かな~」
それぞれの好みを聞いてから晩飯の準備を始める。今日からしばらくは大人数での食事だから分量を気にしなければならない。メニューも普段より多く考えなければならないし……どうしようか。
「仁く~ん。こんな大人数だし、手伝おうか? 俺料理できるよ~」
さっそく今日のメニューを考えていると、ファイさんから手伝いの申し出がきた。メニューにも困っていたし、異世界を旅してきたファイさんなら俺の知らない料理を作ってくれるかもしれない。
「それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「りょーかーい!」
「小狼と黒鋼さんはテレビでも見てくつろいでてください」
ファイさんをキッチンに招き、さっそく準備に取り掛かる。今日はいつも以上に張り切って作らなければ。
「冷蔵庫の材料は自由に使っていいので」
「わかったよ~」
「あ、でもいままでの食材と違ったりしませんか?」
「ん~とね~。うん。見たことあるやつばかりだから大丈夫だよ」
「よかった。それじゃあファイさん。お願いします」
ファイさんは笑顔で首肯すると、さっそく調理に取り掛かった。俺も遅れをとらないように自分の料理を作り始めた。
「すごい量になっちゃいましたね」
「大丈夫だよ。黒ぽんはよく食べるから~」
料理すること数十分。俺とファイさんは出来た料理を順番にテーブルに並べていった。
ファイさんがパスタを取り出してるのを見て洋風だと判断し、俺は和風でいこうと決めた。メニューは白いご飯に豆腐の味噌汁。おかずには山のように盛られた唐揚げと栄養バランスを考えたサラダだ。もちろんドレッシングは数種類用意している。
ファイさんの方は予想した通りの洋風で、ペペロンチーノやグラタンといったメニューが並んでいる。あれだけの作業があってどうやって作ったのだろう――テーブルにはチーズフォンデュと、それ専用のパンの耳が用意されていた。
多く並んでいる料理を見て小狼は大きく目を見開いている。黒鋼さんも料理から目を離さない。
「さてと、小狼はサクラを起こしてきてくれ」
「わかった」
小狼にサクラを起こしてもらい、全員がテーブルに揃ったところでいただきますの音頭をとる。ちなみに美香と隼人は部活の遠征合宿に行っているため、しばらくは帰ってこない。
「……っ。美味い」
「……美味しい」
「モコナこの味大好き!」
「気に入ってくれたようでなによりだよ」
自分の作った料理がこんなに絶賛されるとは思ってなかったから、ちょっと照れくさい。黒鋼さんなんて無言で黙々と食べ進めている。
「仁くんの作った料理美味しいね~」
「ファイさんの洋風料理も舌をとろける絶品です」
お互いの料理の称賛をし合っている間にも目の前の料理が凄まじい勢いで無くなっていくのを見て、俺も負けじと箸を伸ばしていった。
すべての料理を平らげて片付けに入ろうとすると、四人とモコナが手伝いを申し出てくれたから早く終わった。今は最初と同じポジションに座って今後について話すところだ。
「さて、今後どうしようかって話だけど……」
「まずは街をまわっておきたいかな~。どんなところか知りたいし」
「モコナも見てみたーい!」
「俺も異論はないです」
「黒ぽんは?」
「……問題ない」
「サクラちゃんは?」
「わたしは……小狼君がいいなら」
サクラはおずおずといった感じで首を縦に振った。記憶を失っているといっても、心の奥に残っている想いは変わらない。サクラは小狼のことが好きなんだ。それが言葉に出来ないだなんて、そんなのつらすぎる。
「明日の方針も決まったことだし、そろそろ休もうか。黒鋼さんとファイさんは最後の仕事。テーブルを片付けてそこに布団敷きましょう」
「はいは~い」
「……」
ファイさんが元気良く返事をしながら、黒鋼さんは無言のまま布団を敷くのを手伝ってくれた。ファイさんには今日手伝ってもらってばっかりだなぁ。今度なにかお礼しないと。
布団を敷き終わると、俺の口から小さなあくびが漏れた。それが小狼、サクラ、モコナへと続いていき、少しの間を置いてみんなの口から笑みがこぼれた。
それを合図に、それぞれにおやすみと声を掛けてみんな眠りについた。
実はこのクロス、清涼祭に入る前から考えていたものなんです。
バカテスのある出来事を羽の影響にしたらどうなるかなという妄想から生まれました。
しばらく作者の息抜きにお付き合いいただけると幸いです