バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第四話

 優子の手伝いを終わらせた俺はFクラスに到着した。途中でDクラス二人に勝負を挑まれたときは焦ったが、学園長にもらった「オート」の腕輪で何とか乗り切った。

 

「ごめん、雄二。遅くなった」

「なにかあったのか」

「いや、実はな……」

 

 俺は放送で呼ばれた後のことを雄二に伝えた。もちろん優子とのあれは伏せている。

 

「なるほどな……けど、Dクラス五人を仕留めてくれたのは大きい。よくやった」

「複数人相手にするのに苦労したけどな」

 

 今までの戦闘を思い返して俺は息を吐く。初めての試召戦争で複数人を相手にするのは骨が折れる。あのときは一人ずつだったからなんとかなったけど、一斉に来られたら今頃補習室だと思う。

 

「雄二、今回の俺は何をすればいいの?」

「仁は俺の護衛として本陣で待機だ。それと、ムッツリーニがBクラスの情報収集から帰ってき次第、それをもとに戦略を考えてくれ」

「Bクラスの? Cクラスじゃなくてか?」

「ああ、次はBクラスを討ち取る」

 

 雄二はこの戦争が終わったらすぐにBクラスに試召戦争を仕掛けるつもりなのか。雄二の考えていることが分からなくなってきたから少し整理することにする。

 雄二はAクラスに挑むためにFクラスを設備への不満でやる気にさせ、そして今回Dクラスに試召戦争を仕掛けた。目的がAクラスなのになぜDクラスなのか。その次はBクラスときた。これらを踏まえて考えられるのは……

 

「雄二……Dクラスの試召戦争、設備の交換をしないつもりだろ」

「どうしてそう思う?」

「俺らの目的はAクラスだろ? 雄二がDクラスに満足するはずがない。それに、Dクラスと設備を交換したら、あいつらの不満のモチベーションが下がるだろう。それを利用して試召戦争を仕掛けているのに設備を交換したら意味がない。もちろんBクラスもだ」

「さすがだな。まさにその通りだ」

 

 やっぱりそうだったか。けれど、これはこれで問題がひとつある。

 

「あいつらにはどう説明するんだ?」

「問題ない。ちゃんと考えてある」

 

 Fクラスの連中に説明して納得してもらうには時間がかかると思うがな、と雄二は続けて言った。大変だとは思うが、これは試召戦争を仕掛けるように仕向けた張本人、もとい代表の役割だ。やってもらわないと困る。

 

「……ただいま戻った」

 

 Bクラスの情報収集から帰ってきた康太が天井裏から顔を出していた。なぜ天井裏からなのかはあえてツッコまない。

 

「戻ったか、ムッツリーニ。首尾はどうだ?」

「……上々」

 

 ムッツリーニが一枚の紙を取り出して雄二に渡す。それを横からのぞき込むと、そこにはBクラスの名簿や代表についての情報、科目の点数比率が書かれていた。いったいどうやって調べたのか気になるところだ。

 

「さすがだな。これだけあれば、お前も戦略を考えやすいだろ」

 

 雄二が紙を俺に手渡してくる。後ろから見ていたので内容はわかっているが、もう一度目を通す。内容を確認してから、康太にもうひとつお願いすることにする。

 

「康太。もうひとつお願いしたいことがある」

「……なんだ?」

「Bクラス代表の交友関係を調べてほしい。頼めるかな?」

「……わかった」

 

 そう言って康太は天井裏からFクラスを出ていった。

 

「交友関係なんて何に使うんだ?」

「まぁ、保険ってとこかな」

 

 雄二は不思議そうな顔をして聞いてくる。だが、これは今話すわけにはいかないのではぐらかす。これはよっぽどのことがないと使わない。使いたくない最終手段なので、味方にも教えるわけにはいかない。

 

「離して! 吉井を……殺してやるんだからぁーーー!!」

 

 急に開いたFクラスのドアの方を見ると、亮に引きずられている美波が恐ろしいことを叫んでいた。言葉から察するに明久が関係しているのは容易にわかる。

 

「美波、何があったの?」

 

 俺はおそるおそる聞いてみた。なんでおそるおそるなのかというと、美波が人を殺せそうなほどの殺気を放っているからである。

 

「聞いてよ神崎! 吉井が……」

 

 なるほど。美波の言った内容を整理すると……Dクラスとの戦闘中、美波のことをお姉さまと言って迫ってくる清水美春という同性愛者と戦闘になって、美波がやられそうになった。そこで明久に助けを求めたが、明久は見捨てようとしたと。そこで亮の助けが入って生き延び、九死に一生を得た。だが、見捨てた明久は何もなかったかのように振る舞ってくるため、美波が切れて明久に攻撃しようとしたところを亮が止めた。それを見た明久は指示を出して、ここに連れていくように言ったと。そして今に至る訳だ。

 俺がそれを聞いた瞬間に思ったことは……

 

「ナイスだ、亮。よくやってくれた」

「お、おう」

 

 亮のファインプレーで犠牲者が出なかったことへの感謝だった。それと同時に、明久に対する呆れが込み上げてくる。

 

「はぁ……あいつは何をやってるんだか」

 

 俺が溜め息を吐いていると、またまた天井裏から康太が降りてきた。美波は驚いていたが俺はさっきも見たので気にしない。

 

「早かったね。どうだった?」

「……こんな感じ」

 

 康太にもらった紙を見てみると、そこにはBクラス代表、根本恭二の交友関係が書かれていた。もしかしたらこれ以外の個人情報も調べられるんじゃないかと思うほどの実力を持つ康太は素直にすごいと思う。

 

「すごいな康太。完璧だよ」

「……この程度、自慢にもならない」

 

 いや、充分自慢になると思うよ。普通の人はここまでやらないよ? 

 少ししてまたドアが開いた。そこには秀吉率いる前線部隊が戻ってきた。おそらく点数を消費したから回復試験を受けに戻ってきたのだろう。

 

「秀吉か。前線はどうだ?」

「今は明久を先頭に維持しておる。だが時間の問題じゃ」

「そうか、わかった。前線部隊は試験を受けてくれ。本隊はこれより前線に向かう!」

 

 雄二と他四人は勢いよく教室を飛び出していった。さて、俺の仕事を始めますかな。

 

「仁よ、何をしておるのじゃ?」

「ん? 次の試召戦争の作戦を考えているんだよ」

「次の? 今度はどことやるのかの?」

「雄二はBクラスって言ってたよ」

「むう……雄二の考えてることがわからんのう……」

 

 それに関しては俺も同意である。なぜ雄二はすぐにAクラスに挑まないのか。勝てる要素が揃っているのなら勝負を挑んでもいいはずなのに。

 

「須川ーーーーー!!!」

 

 俺の考え事は明久の悲痛な叫びによって中断された。

 

「な、なんだ!?」

「明久の声じゃ。何かあったのかのう……」

 

 いや、何かあったからあんな叫びが聞こえるんだろうが。亮は雄二に何か言われてすぐ出ていったから、恐らく雄二がなにか吹き込んだんだろう。

 明久の叫びが聞こえてからしばらくして、雄二達が帰ってきた。そこには明久の姿もあったが、他の人の姿が見当たらない。どうやら明久以外の前線部隊はやられてしまったらしい。

 

「ねえ、雄二。須川君見なかった?」

「ん? 須川か。もうそろそろ戻ってくるんじゃないか?」

 

 明久が亮の行方を雄二に聞いていた。明久は亮に何かされていたので仕返しをしようとしているのだろう。その証拠に明久の目が笑っていない。

 

「殺れる、僕なら殺れる……」

「「殺るなっての」」

 

 俺と雄二が同じことを言った。明久はというと、どこから持ってきたのかは知らないが、左手には包丁、右手には靴下に何か詰めているものを持っている。

 

「あ~、ちなみにだな、明久。あの放送を指示したのは俺だ」

 

 雄二の言葉を聞いた瞬間、明久が雄二に襲い掛かった。こいつにはためらいというものはないのだろうか。

 

「あ、船越先生」

「ちぃっ!」

 

 明久が急カーブして掃除用具入れに飛び込んでいった。てか船越先生って、婚期を逃して単位を盾に生徒に交際を迫っているっていうあの人だよな? 雄二のやつ、明久をこの年で人生の墓場に送るつもりだったのか。なんて恐ろしいことを……。

 

「さて、あのバカもいなくなったことだし、そろそろ終わらせに行くか」

「そうじゃの。下校中の生徒もちらほら見えておるし、攻めるなら今じゃろうな」

 

 秀吉がそう言って雄二達と一緒に教室を出ていく。俺はBクラス戦の戦略を考えなければならないので、今教室にいるのは俺と、掃除用具入れに籠もった明久のみとなった。

 

「あ~、明久? 聞こえるか?」

 

 このままだと出てこないと思うので、真実を伝えることにする。

 

「雄二の言ってた船越先生がいるってのは嘘だ」

 

 その一言で明久がすごい速さで出ていった。雄二、気を付けろよ。

 俺はDクラス戦が終わるまで戦略を考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦争終結! 勝者Fクラス』

 

 しばらくしてDクラスとの戦争はFクラスの勝利で幕を閉じた。

 俺もちょうどその頃に戦略を組み終わったので、みんなには悪いが先に帰る準備をさせてもらう。荷物を詰め終わった鞄を担いで教室を出る。すると、目の前には、

 

「じ、仁君!? どうしてここに? Dクラスと試召戦争してるんじゃないの!?」

 

 俺の姿を見てかなり動揺している優子の姿があった。

 

「あれ、優子? なんでここに? 秀吉に用でもあった?」

 

 新校舎にあるAクラスの生徒である優子が旧校舎にあるFクラスに来る理由があるとすれば弟である秀吉に何か用があるとしか考えられない。けれど、俺の予想は

優子の次のひと言によってくつがえされる。

 

「ううん、違うの。今日は、その……あなたに用があって来たの」

 

 優子は顔を赤らめながら小さくつぶやくように言う。え、今、なんて言った?

 

「俺に用?」

「……うん」

 

 優子がさらに顔を赤らめて言う。聞き間違いじゃなかったようだ。

 

「それで、俺に何の用かな?」

「あのね、もしよかったらだけど……今日一緒に帰らない?」

 

 そう言って優子が恥ずかしがるように俯く。その様子を見た瞬間、俺の心臓の鼓動が早くなった。

 もちろん俺にとっては嬉しい申し出である。女子と――ましては優子のような可愛い女の子と帰れることを断る理由がない。

 なるべく照れを顔に出さないようにして、優子に自分の意思を伝える。

 

「いいよ。なら、ちょっと待っててくれるかな? Dクラスまで行って雄二に早めに帰ることを伝えてくるから」

「わかったわ。玄関で待ってるから」

 

 ここで優子とひとまず別れる。人を待たせてる以上、早く伝えに行かないとな。

 すぐにDクラスに向かおうとすると、ポケットに入ってる携帯が振動する。携帯を取り出して画面を確認する。雄二からメールだ。そこには、

 

『戦後対談は終了した。みんなはその場で解散させたから、仁も帰っていいぞ』

 

 どうやら向こうも無事に終わったらしい。ひとまず安心していると、文章にはまだ続きがあることに気づく。メールを下にずらしていくと、

 

『――Bクラス戦期待してるからな』

 

 ……やれやれ、こんなこと書かれたら失敗できないじゃないか。するつもりはないけど。

 雄二から期待の込められたメールを受け取った俺は、絶対Fクラスを勝たせてみせると、心の中で決意を固める。

 雄二から解散を告げられたので、俺は急ぎ玄関に向かった。

 

 

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 仁君と別れたアタシは、玄関に向かう途中で自分のやったことに恥ずかしさを覚えていた。

 

「ア、アタシ、初めて……秀吉以外の男子を……」

 

 今日の昼から何かがおかしかった。仁君のことが頭から離れなかったし、まるで自分が自分じゃないような感覚だった。今までなかった感覚。もしかしてアタシ……。

 

「もしかしてアタシ、仁君のこと……」

 

 そこまで口にして顔が熱くなるのを感じる。

 自分の中にある恥ずかしさを紛らわすように、アタシは足早に玄関へと向かった。

 

 




ここで「オート」の腕輪の説明を

・「オート」の腕輪……召喚獣の操作が自動で行われ、攻撃力や防御力といった各ステータスが上昇するが、機械的に動くので細かい動きが出来なくなる。

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