バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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今回は大胆にオリジナル展開にしてみました。


第七話

 勢いよく出ていったクラスメイトに続いて、俺も廊下を走っていた。今回の作戦は教室に追い込むことが重要になるので少しでも距離を詰めておきたいところだ。目線の先には待ち構えているBクラスの姿があった。もう何人かが戦闘に入っていて、点数が表示されていた。

 

 総合科目

 Bクラス 野中長男  1943点

          VS

 Fクラス 近藤吉宗   764点

 

 

 数学

 Bクラス 金田一裕子  159点

          VS

 Fクラス 武藤啓太    69点

 

 

 物理

 Bクラス 里井真由子  152点

          VS

 Fクラス 君島博     77点

 

 うん。まさに桁違いだ。普通に戦って勝てるわけがない。

 総合の高橋先生に数学の長谷川先生、物理の木村先生がフィールドを展開していた。Bクラスは文系が多いと聞いていたので理系を中心に編隊を組んで挑んだが、どうやら向こうは多数の科目を使って一気に勝負をつけるつもりみたいだ。

 

「お、遅れました……ごめんなさい……」

「瑞希、大丈夫か?」

「は、はい。なんとか……」

 

 そこにFクラスで唯一Bクラスともまともに渡り合える実力を持つ瑞希が激しく息を切らしてやってきた。瑞希は身体が弱いと聞いてるからちょっと心配だなぁ。

 

「姫路さん、来たばかりで悪いんだけど」

「はい。行ってきます……」

 

 明久に言われて瑞希がフラフラしながらも前線に向かっていく。俺としてはあまり無理させたくないのが本音なのだが、対抗できるのが瑞希だけなのでここは止めないで見守ることにする。

 

「来たぞ! 姫路瑞希だ!」

「長谷川先生、Bクラス岩下律子がFクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます!」

「律子、私も手伝う!」

「あ、姫路瑞希です」

 

 向こうは瑞希のことを相当警戒しているようだ。見たところBクラス側の人数は十人。そのうちの二人を瑞希に回してくるとなると一人では辛いかもしれない。俺はいつでも加勢できるように準備しておく。

 

「「「試獣召喚!!!」」」

 

 数学

 Fクラス 姫路瑞希  412点

          VS

 Bクラス 菊入真由美 151点

      岩下律子  189点

 

 わーお。点数差が歴然じゃないですか。しかも400点を越えてるってことは、腕輪を使えるじゃないか。

 

「そ、それって」

「私たちに勝てるわけないじゃない!」

「それじゃあ、いきますね」

 

 瑞希は召喚獣に指示を出し、それに応えるように召喚獣が左手を前にかざす。すると左手に力が凝縮されていく。

 

「り、律子、とにかく逃げないと!」

 

 Bクラスの女子がそう言うよりも先に瑞希の召喚獣の左手の力が解放され、熱線が放出された。

 

「きゃあーーー!!」

「り、律子!」

 

 一体の召喚獣が熱線に巻き込まれてこんがり焼けていた。あれ熱そうだなぁ~。観察処分者の明久がくらったらすごい事になりそうだ。

 

「ごめんなさい! これも勝負ですので!」

 

 謝りながらもう一体の方を大剣で真っ二つに切り裂いた。謝るならやらないでほしいと思う俺の本心。今回俺の出番はなさそうだな。

 

「えっと、みなさん、頑張ってください」

『やったるでぇーー!!』

『姫路さん最高ーー!!』

 

 信者が絶賛急増中です。士気が上がっていくのが見て取れるようだ。

 

「明久よ。わしらは一旦下がるぞ」

「えっ、どうして?」

「Bクラス代表があの根本だからだろう?」

 

 秀吉と明久の会話に俺も加わる。話によると根本はカンニングの常習犯で喧嘩にはナイフがデフォルト装備だとかなんとか。

 

「なるほど。戻っておいた方がよさそうだね」

「雄二に何かあるとは思えんが、念のためにの」

「俺も行こう」

 

 俺は部隊を美波に任せて、明久達と共に教室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

「うわぁー……」

「これはひどいのう……」

「なんでまたこんなことに……」

 

 教室に戻ってみると、設備が派手に壊されていた。これでは回復試験が受けられない。

 

「安心しろ。これはまだ予想の範囲内だ」

 

 後ろから雄二の声が聞こえてきたので振り向く。予想の範囲内か……まあ、相手の補給路を断つのは戦略として常套手段だけどな。

 

「てか雄二、どこに行ってたんだ?」

「Bクラスと協定を結んできたんだ。この協定はこっちに有利だからな」

 

 その協定の内容とは、四時までに決着がつかないときは戦況をそのままに、続きは明日の午前九時に持ち越して、その間は試召戦争に関する一切の行動を禁ずるというものだ。

 

「なるほど。瑞希のことを考えて、この協定を受けたってことか」

「そういうことだ」

 

 このBクラス戦では瑞希の成績が特に重要となる。彼女がいなくなったら間違いなく勝てないだろう。

 

「そんじゃ、俺らは前線に戻ろうか」

「そうじゃの」

「わかったよ」

「雄二、文房具の手配よろしく」

「おう、わかった」

 

 教室を雄二に任せて俺らは再び前線に向かう。そこにはかなりの劣勢に追い込まれているFクラスの姿があった。

 

「亮、なにがあった?」

「おお、神崎。まずいことになった」

「どうしたの?」

「島田が人質に取られた」

「「なっ!?」」

 

 美波が人質に取られただと。あいつに部隊を任せておいたのに部隊長がいなくなったらどうにもならないじゃないか。

 

「……状況を見たい」

「わかった。こっちだ」

 

 亮に連れられてその現場まで向かう。そこにはBクラス男子二人に捕まっている美波がいた。

 

「吉井! 神崎!」

「動くなよ。それ以上近づくと、この女を補習室送りにするぞ!」

 

 数少ない女子を人質にとってこっちの士気を下げるにくるとはBクラスもやってくれるな。助け出そうにもこちらからはうかつに手を出せないしなぁ。うーん、どうしようか。

 

「総員突撃ー!!」

「吉井、それでいいのか!?」

「どうしてよ!?」

 

 どうするかを考えていると、隣で明久が突撃命令を出していた。何考えてるんだ、こいつは!?

 

「あの島田さんは偽物だ! 変装している敵だぞ!」

 

 何をどう間違ったらそうなるんだ。どう見たって美波だろうが。

 

「ま、まて! こいつは本物の島田で――」

「ええーい! 往生際が悪いぞ!」

 

 ……なんか隙が出来たので亮に目で合図をして一斉に突撃した。不意を突いての攻撃なので相手の点数が一気に0点になった

 

 英語W

 Fクラス 神崎仁  75点

      須川亮  59点

        VS

 Bクラス 鈴木二郎  0点

      吉田卓夫  0点

 

「戦死者は補習ーー!!」

「「いやだぁーーー!!!」」

 

 西村先生に補習室に送られていくBクラス二人に心の中で無事を祈っていると明久達と他数名が美波を取り囲んでいた。いつになったら誤解が解けるんだろう。

 

「気を付けろ! 変装を解いて襲ってくるぞ!」

「よ、吉井酷い……ウチ、ほんとに心配してたのに……」

 

 ほら見ろ。なにがあったかは知らないが美波が涙目じゃないか。

 

「まだしらを切るか! 見破られた策に執着するなんて見苦しいぞ!」

「ほんとよ! あんたが瑞希のパンツ見て鼻血が止まらなくなったって聞いて心配したんだから!」

「包囲中止! これ本物の島田さんだ!」

 

 ……ほんとになにがあった? 話が全く読めないんだが……。まあそれはそれとして……

 

「美波、だめじゃないか。部隊長が部隊を放棄しちゃ」

「で、でもウチは吉井のことが心配で」

「明久のことが心配なのはわかるけど、それなら他の人に指揮権を譲ってからでも遅くなかったんじゃない?」

「うっ、それは……」

「まあ、大好きな明久に何かあったら気になるのも無理ないけどさ」

「なっ!? う、ウチは吉井のことなんて――」

「美波、顔赤いよ?」

 

 ついついニヤついてしまうこの状況。これはツンデレってやつですか。初めて見たわ。

 

「けど、もう今回みたいなことはしないでね? 部隊が全滅する可能性もあるんだからさ」

「……わかったわよ」

 

 美波はしぶしぶといった感じで納得してくれた。これで一旦落ち着けるな。

 

「えーと、島田さん?」

「……なによ」

「さっきのことなんだけどね」

「……」

「僕、最初から本物だって気づいてたんだよ?」

 

 美波が明久に蹴りを入れようとしている。まずい! このままだと死人が出る!

 

「落ち着いて美波! ここで死人を出してはいけない!」

「離して神崎! ウチは吉井を殺さないといけないんだから!」

「だから殺しちゃまずいんだって! おい、そこ! お前らも手伝ってくれー!」

 

 この場にいる明久以外の男子で美波の暴走を止める。試召戦争が一時休戦される四時までの間、俺たちは美波の暴走を止めるために時間を費やした。

 

 

 

 

 

 教室に到着した俺は美波の暴走を止めるのに体力を使ってとても疲れていた。他の男子も疲れきったような顔をしている。

 ちなみにどうやって美波の暴走を止めたのかというと、明久に何でも二つ言うことを聞いてもらうということで話は丸く収まった。(一つだと言ったらすごく不満そうな顔をしていたので)

 一つ目はラ・ペディスって喫茶店でクレープを奢ること。

 二つ目は呼び名をお互いに変えることだった。ちなみに明久は美波のことを『美波』と呼び、美波は明久のことを『アキ』と呼んでいる。傍から見たら仲の良いカップルに見える。畜生、なんか悔しいぞ。

 

「……随分仲が良くなったみたいですね?」

 

 瑞希が苦笑いをしている。内心では嫉妬してるんだろうなぁ。

 

「……ただいま」

「おう、帰ってきたかムッツリーニ。なんか収穫はあったか?」

 

 そういえば今回、康太は情報収集を担当していたな。なにか有力な情報を持ってきたのだろうか。

 

「Cクラスが試召戦争の準備をしている? それは本当か?」

「……(コクッ)」

「漁夫の利を狙うつもりか。いやらしい連中め」

 

 確かにBクラスとFクラスどちらが勝っても疲弊している相手になら楽に勝てるだろうな。

 

「Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラスを攻め込ませるぞと言えば、俺達に攻めてくることはなくなるだろう」

 

 けれど、気になることがひとつある。それはCクラスの攻めてくるタイミングだ。いくらなんでも都合が良すぎる。しかもFクラスは設備が酷く荒らされている。Dクラス戦の前にもらった根本の情報や素行、追加で調べてもらった交友関係を踏まえて考えると……まさかっ!

 

「みんな! 自分の荷物を調べて!」

『なんだ?』

『急にどうしたんだ?』

「いいから!」

 

 何を言っているのかわからないという顔をしつつも各それぞれが自分の鞄の中身を調べる。俺はその光景を目を凝らして見つめる。そこに一か所だけ反応が違うところがあった。その場所は―瑞希のいる席だった。これを見た瞬間、俺は確信した。あいつはこれを狙っていたんだ。

 

「瑞希、なんか無くなったものとかない!?」

「い、いえ、私は特に……」

「なにかは言わなくてもいい! 無くなってるものはない!?」

 

 俺は今、自分でも冷静ではないのはわかっている。けど、これだけは確認しなければならない。

 

「……ってます」

「なに?」

「……無くなってます。私の……とても、大事な、ものが」

 

 瑞希は張りつめた糸が切れたようにポロポロと涙を流していた。瑞希の口からも出たとおり、それはとても大事なものなのだろう。それをあいつは、根本は……!

 

「瑞希、よく話してくれたね」

 

 瑞希の反応はない。

 

「あとは……俺達に任せて」

 

 静かに告げる俺の言葉に瑞希は泣きながらも小さく頷く。さて……

 

「仁。教えてくれ。なんで鞄を調べさせた?」

「……無くなっているものがないか確かめてもらうためだ」

「そうじゃなくて、なんでこんなことをさせたのかを聞いてるんだ」

「……教室が荒らされていたのは回復試験の妨害。でも、それだけじゃなかった。あいつは……根本は、人の大切な物を脅迫材料として使って動きを封じようとしていたんだ」

「なんだと!」

「……主な狙いは瑞希。Fクラスでただ一人、Aクラス並みの学力を誇る戦力を封じる…それが根本の、もう一つの目的だ」

 

 卑怯汚いと言われているのは聞いていたが、まさかここまで外道だとは思っていなかった。少しは常識があって、クラスの代表としての自覚があると思っていたのに。

 

「……雄二、指揮権を俺にくれ」

「どうして――!?」

 

 雄二が俺を見てはひるみ、後ずさっていた。まわりのみんなも怯えた表情をしている。それもそうだ。

 

 今の俺は、ものすごくキレている。

 

 隼人と美香曰く『優しい人ほど怒るとこわい』の典型的な例らしく、キレている俺は目つきが鋭くなり、その目で睨まれると足がすくんでしまうほどで、普段優しいと言われているらしい俺とは思えない雰囲気を纏っているらしい。

 

「……みんな聞いてほしい」

 

 俺は教卓の前でクラスメイト全員に向き直る。少しビクつきながらもみんなの視線がこちらに集中する。俺は調べてもらった交友関係の紙を取り出し、それを見ながらある事実を告げる。

 

「Bクラス根本には彼女がいる」

『『『なにぃーーー!』』』

「相手はCクラス代表の小山優香だ」

『『『なにぃーーー!!』』』

「しかも、手作りの弁当を作ってもらっているらしい」

『『『なぁーにぃーーー!!!』』』

 

 よし、こいつらを焚きつけることに成功。その証拠にクラス男子のほとんどがFマークの付いた紫の布を被っている。

 

「俺も根本のことを憎んでいる! だが、俺一人では何も出来ない!」

 

 俺は鋭く息を吸い込み、力強く言い放つ。

 

「だが、お前らがいれば、この作戦は成功する! ここはお互いのために協力し合い、お互いの目的を果たす! だからお前ら、俺に力を貸してくれ!!」

 

『『『イエス! 総督!!』』』

 

 総督、か……悪い気はしない。さて根本。お前には勝利を確信した作戦が看破されたときの絶望と、謎の集団に襲われるという恐怖を味わってもらおうか。

 

「いくぞ、お前ら!」

『『『イエッサー!!!』』』

「仁って、すごいよね……」

「まったくだ。あいつらを自分の戦力として引き込みやがった」

「……まさしく総督」

「ほんとじゃの」

 

 近くにいた四人がそれぞれなにかを話していたが、怒りに満ちた俺には聞こえなかった。

 

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