バカと戦略と召喚獣   作:トッキ―

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第八話

 Cクラスに向かってる最中、隣を歩いている雄二にやってもらうことを簡単に説明する。

 今回雄二にやってもらうのは、Cクラスとの協定を結びに行くことだ。ただし、これにはFクラス全員で向かう。恐らく根本はCクラスにいて、彼女である小山とつながり、協定違反をなすりつけて攻撃してくるだろう。そうなる前に俺が阻止して、逆にBクラスの協定違反を証明して攻め込む。根本までの突破口をFFF団に切り開いてもらい、一気に突破して討ち取る。

 今回重要なのはFFF団だ。彼らには周りにいるBクラスの生徒を多く倒してもらわないといけない。今回の作戦は、倒した数によって勝敗に大きく影響するからだ。

 

「いくよ、雄二」

「了解だ」

 

 雄二がCクラスのドアを強めに開ける。それに反応してCクラスにいる生徒が一斉にこちらを向く。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。Cクラス代表はいるか?」

「私が代表だけど、何か用かしら?」

 

 雄二が小山と話している隙にこの教室にいるはずの根本を捜す。……いた!

 

「ああ、実は――」

「待って、雄二」

 

 雄二を止めて、俺はある男子の方を向いて声をかける。

 

「ねえ、なんで根本がここにいるの?」

「「!!」」

 

 俺の正面でその奥の方にいる根本と、先ほどまで雄二と話していた小山が大きく動揺していた。なるほど、これは当たりとみて間違いないな。

 

「しかも長谷川先生も一緒じゃないですか? どうしたんですか? こんなところで」

「いや、これはですね……」

「そ、そう。宿題を見てもらっていたんだ! ですよね、先生?」

「は、はい。そうです」

「それならCクラスじゃなくて、Bクラスでもいいよね?」

 

 嘘つくの下手だなぁー。

 

「そ、それはだな―」

「下手な嘘はやめなよ、根本。それに、お前は今、協定違反をしているんだぞ?」

「協定違反? 俺が何を違反したんだ?」

 

 根本が気持ち悪い笑みを浮かべながら聞いてくる。それに対して俺は冷たく返す。

 

「今はFクラスとBクラスはお互い休戦状態。しかもその間は試召戦争に関する一切の行動を禁ずる。これが協定の内容だったよな?」

「そうだ。それがどうした?」

「考えてもみなよ。休戦中とはいえ、FクラスとBクラスとの試召戦争は終わってないんだよ? それなのになんでCクラスと関わってるの?」

「それのなにが問題なんだ?」

「わかんないかなぁー。こっちからしたら、BクラスとCクラスが一緒にいたら、裏で何かあるんじゃないかって思うんだよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、根本と小山は露骨にまずいような反応をした。それを見ていた長谷川先生に俺は問いかける。

 

「長谷川先生は今回の協定の件、どうお思いですか?」

 

 長谷川先生はしばし考え、少ししてから顔を上げて答える。

 

「……確かに神崎君の言うことには一理あります。試召戦争に関係のないクラスと一緒にいるところを見かけたら、そう思うのも無理はないですね」

 

 長谷川先生の同意も得たことで、こちらが優位になった。その雰囲気をかき消すように根本が声を荒げる。

 

「お前らもCクラスと協定を結ぼうとしただろうが!」

 

 よし、苛立ってるせいでボロが出たな。これが決定打だ。

 

「ん? 俺らはただ長谷川先生がCクラスにいるって聞いて、会いに来ただけだけど? それよりもさ、根本。『お前らも』って、どういうことだ?」

 

 俺は思わずニヤついてしまう。根本も自分の失言に気づいたのか、やばいって顔をしていた。これでもう根本は隠し通すことはできない。

 

「今の聞きましたか、長谷川先生。根本が協定違反を自白しました」

「はい。しっかりと聞かせてもらいました」

『お、おい。どうすんだよ、これ』

『これなら勝てるって言ってたのに……』

 

 よし、絶対勝てるって言われているであろう作戦が失敗したことによって、Bクラス全体の根本の信頼と連帯感が失われつつある。あとは仕上げを残すのみだ。

 

「くそっ! お前ら、早く坂本を討ち取れ!」

「おっと、そうはさせないよ。FFF団、出番だ!」

『『『イエス! 総督!!』』』

 

 教室の外で待機していたFFF団が一斉に流れ込んでくる。最後尾には明久や秀吉、康太の姿もある。その集団に俺もついていく。

 

「竹内先生、召喚許可を!」

「あ、はい。承認します!」

 

 あらかじめ明久達に呼んでもらい、FFF団と一緒に待機してもらっていた竹内先生に召喚フィールドを展開してもらう。竹内先生の担当は現代国語。休戦前の戦闘で点数が減っている数学と英語Wだったらすぐにやられるだろうが、現代国語なら点数が減っていないから、まだ対抗できる!

 

『『『試獣召喚!!』』』

 

 現代国語

 Bクラス 芳野孝之  183点

          VS

 Fクラス 須川亮    82点

 

 

 Bクラス 工藤信二  176点

          VS

 Fクラス 横溝浩二   79点

 

 

 Bクラス 真田由香  187点

          VS

 Fクラス 近藤吉宗   89点

 

 左右に広がるように味方がBクラスとの戦闘を開始する。その真ん中を一気に突っ切る!

 

「ハハハ! バカだろ、お前。俺らが得意な文系で勝負を挑むなんて!」

 

 根本が高く笑いながらバカにしたように言い放つ。俺は根本に鋭い視線を向けながらも余裕たっぷりに答える。

 

「じゃあさ、そのバカに得意の文系で負けるとしたらどうする?」

「はっ! そんなことあるわけないだろ! あの点数差を見たか?」

「確かに点数差はダブルスコアだ。だがな――」

 

 俺は鋭く息を吸い込んでから、余裕たっぷりの笑みを浮かべている根本に告げる。

 

「嫉妬に狂っているあいつらに、点数は関係ない!」

 

 俺が言ったその瞬間、

 

 ドーン ボガーン 

 

 教室のあちこちから爆発音が聞こえてきた。爆発音が聞こえてきた場所に目を向けると、

 

 現代国語

 Bクラス 芳野孝之  0点

          VS

 Fクラス 須川亮   0点

 

 

 Bクラス 工藤信二  0点

          VS

 Fクラス 横溝浩二  0点

 

 

 Bクラス 真田由香  0点

          VS

 Fクラス 近藤吉宗  0点

 

 戦死しているBクラス生徒とFFF団の召喚獣が真っ黒に焦げていた。

 

「ば、バカな……。なんで……」

 

 その光景を見た根本は唖然としている。それもそうだ。俺の言ったことが現実になったんだから。

 FFF団は嫉妬が限界を超えることで組織され、我を忘れて攻撃してくる集団だ。目的のためなら手段は問わず、ある時は自分の身を差し出してでも実行する。それに、目的は違えど、協力体制にある俺は現在、FFF団の中では総督の地位に立っている。つまり――自爆特攻が可能になる。

 特攻による勢い、そして接触することで起きる爆発。手段を選ばないFFF団だからこそ出来る作戦だ。

 

「FFF団の犠牲を無駄にはしない! 試獣召喚!!」

 

 自爆して散ったFFF団に心の中で感謝しつつ、召喚を開始する。あとは代表を討ち取るのみだ。

 

「やらせるかよ!」

「「試獣召喚!!」」

 

 Bクラスが二人、俺の前に立ちはだかる。どうやら近衛部隊として近くにいたみたいだ。

 

「俺の邪魔を…するなぁー!!」

 

 俺の召喚獣が右腕を左にねじり、黒い剣に水色のライトエフェクトを纏わせ、ねじらせた右腕を一気に開放する。二人の召喚獣を広範囲の切り払いで一閃し、相手の召喚獣を切り捨てる。Bクラスの二人が戦死して、召喚獣が消滅した後に点数が表示される。

 

 現代国語

 Fクラス 神崎仁  407点

         VS

 Bクラス 加西真一   0点

      入江真美   0点

 

『嘘だろ……』

『なんなのよ、あの点数!?』

『あいつ、ほんとにFクラスなのか……?』

「あれが、仁の国語の成績!?」

「400点越えじゃと!?」

「……いつの間に」

 

 Bクラスと共に明久達も驚きの声を上げていた。本日だけで400点越えが二人出ていることにもだろうが、二人のうちの一人が、学年ランキングにも載っていない無名の生徒だってことを誰も予想していなかったのだろう。というか、普通は出来ない。

 

「ほら、どうした? 残るはお前だけだぞ」

「くっ…! 試獣召喚!」

 

 最後の一人になった根本が悔しそうにしながら召喚を開始する。

 

 現代国語

 Fクラス 神崎仁  387点

         VS

 Bクラス 根本恭二 231点

 

 さすが、代表というだけあって点数は高い。俺の点数は、近衛部隊の二人を相手にしたときに発動した技『ホリゾンタル』で消費しているが、差はまだ開いている。それに一度400点を超えれば、召喚している間は腕輪をずっと使うことができる。だが相手はクラスの代表。油断をしてはいけない。

 

「腕輪発動! チェンジ!」

 

 腕輪の条件ワードを唱えて効果を発動させる。俺の腕輪の能力は、自分が見たことのある装備を自分の装備として使うことができる。その範囲がとても広く、リアルはもちろん、アニメやライトノベル、ゲームのイラストに描かれている装備にも変更可能だ。

 俺が選んだ装備は見た目をそのままに、追加で左手に水色の剣を装備させる。その姿は、俺の読んでいる小説の主人公――黒の剣士の真の姿だ。

 

「俺が…俺が、Fクラスに負けるわけがないんだよぉーー!!」

 

 根本が叫びながら召喚獣を突撃させる。俺はそれをヒラリとかわし、根本の召喚獣を壁に向かって蹴る。根本の召喚獣が吹っ飛び、壁際に追い込まれる。俺はすぐに距離を詰めて技を発動させる。

 

「スターバースト・ストリーム!!」

 

 俺の召喚獣が持っている二本の剣に、さっきと同じ水色のライトエフェクトを纏わせる。そしてそのまま根本の召喚獣を怒涛の十六連撃で切り刻む。その姿はとても凄まじく、まわりの人たちはただ茫然としていた。

 最後の一撃を決めた瞬間、根本の召喚獣が消滅する。

 

 現代国語

 Fクラス 神崎仁  287点

         VS

 Bクラス 根本恭二   0点

 

「戦争終結! 勝者Fクラス!」

 

 竹内先生の号令でBクラス対Fクラスは、Fクラスの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 後方で待機していた雄二が教室に入ってきて戦後対談に移ろうとするが、俺がそれを制す。そして、床に座り込んでいる根本に向かって歩いていく。すぐ近くのところまで来ると、根本が見上げてくるが、すぐに俯いてしまう。

 

「……根本。盗ったものは返してもらうぞ」

 

 俺はなるべく怒りを抑えて根本に話しかける。

 

「……」

 

 根本は黙ったまま何も言おうとしない。それどころか、目も合わせようとしない。

 

「……黙ってないで、なんか言えよ」

「……」

 

 だんまりを決め込む根本。もう我慢ならねぇ!

 

「……いいからとっとと返せよ。脅迫材料として使おうとした瑞希の大切な物をよぉ!!」

 

 怒りを爆発させた俺の声に教室にいる全員がビクつく。もしかしたら教室外にも聞こえているかもしれないが、今はそんなこと気にしていられない。

 

「お前は、自分が何やったのかわかってんのか!? 人の物を勝手に持ち出して、あろうことかそれを脅迫に使うだと? ふざけんなよ!!」

 

 怒りに身を任せて言葉がどんどん出てくる。今の俺は自分の制御が出来ていない。勢いに任せて根本の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

 

「CクラスもCクラスだ! なんでこんな作戦に協力した!!」

 

 教室に響く俺の怒声にCクラスの生徒全員がビクッと反応する。

 

「直接関わっているわけじゃないみたいだが、こいつのやってることを誰も不審に思わなかったのか!? それとも、見て見ぬふりをしていたのか? どうなんだ、小山!!」

 

 Cクラス代表の小山は今回のことを根本から直接聞いているはずだ。根本がやろうとしていることを知らないはずがない。

 

「……」

 

 小山も俯いたまま話そうとしない。

 

「……彼氏が彼氏なら、彼女も彼女だな!!」

 

「「!!」」

 

 根本と小山が、なんでこいつが知っているんだって顔をしていたが完全無視。

 

「……ったく、BクラスもCクラスも、揃いも揃って――」

『何事だっ!?』

 

 教室の外から西村先生の声が聞こえてきた。俺の怒声が職員室まで聞こえて駆け付けたのだろう。

 

「……ちっ! 俺はBクラスとCクラスを許す気はないからな!!」

「あ、おい! 仁!」

 

 教室を出ようとする俺を雄二が止めようとするがそれを無視して、俺は教室のドアを乱暴に開き、乱暴に閉める。まだ少し残っていた理性で、どこか落ち着ける場所へ行こうと考え、歩き出す。

 

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 まったく仁のやつ……この空気の中で戦後対談しろとか、なに考えてるんだ。けど、あいつがあんなに激怒するとはな。仁とは一週間も過ごしたことはないが、あいつがここまで怒ったところは見たことがない。姫路が料理に化学薬品を入れたときも、島田が部隊を離れて勝手な行動をとったときも、注意はしていたらしいが怒ったとは聞いたことがない。それに、あいつの性格を考えると他人を怒ることはないだろうと思っていたが、その考えはついさっき覆された。もしかして、あいつ……過去になにかあったのか? 今回の件で甦ってくるほどのなにかが。

 

「おい、根本。戦後対談に入ってもいいか?」

 

 まずは目の前のことを片付けよう。それからあいつを捜して、話を聞くとするか。

 代表として……一人の友人として。

 




今回の話で、雄二がかなりかっこよくなりました。
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