(6/14追記)
誤字報告ありがとうございます。
助けられております。
◼️03◼️
本人にその自覚はないが、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは『巻き込まれ体質』だと言われることがある。
親友である高町なのはも大概な『巻き込まれ体質』であるのだが、あちらは主人公的な突破力……というかダイヤモンドのように砕けない固い意思で(それこそ四肢を
一方のフェイトは
「止めたって、どうせ『取材』と言って動き回るだろう。
それならいっそ岸辺露伴を助手にしつつ、この事件を調査してくれ」
だから隣で頭を抱えていた義兄に(本来はアースラの別スタッフが担当するはずだったけれど)依頼されたのも『巻き込まれ体質』のせいかもしれないし、きっとまた『痛い目』に遭うのだろう。
本人はそんな自覚などしてはいないが、呼吸をするかのように自然と人を煽る岸辺露伴の言動に胃がキリキリと痛み始めているのを感じ、なんとなく未来を
パシャリパシャリと館内を撮影する漫画家の背中が視界に入る。
天才的な漫画家だと評される人。
親友である、なのはの命を救ってくれた人。
スタンド能力という魔法とは別系統の異能を使う人。
親友が「(いろんな意味で)スゴい人だ」と評する男の人。
「凄いぞ!
見ろよフェイト君!
ホログラフィックだぜ!?
実物の魚を水槽で飼う方が安上がりだろうに……余るほど財産を持ってるヤツってのは、なんでこうも無駄なことにカネを遣いたがるんだろうなァ~?」
そして現在進行形で自分の胃を破壊しようとしてくる人。
ああ、案内役の人の視線が痛い。
引率者として、フェイトは必死に無言で何度も頭を下げる。
「本当に事件を調査できるのかな……」
早くも涙目になりながら、そんな何度目になるのかも分からない不安を吐露するのであった。
◼️04◼️
「ここがマッコウクジラの全身骨格標本が展示してあった場所です」
ややひきつった感じの声になりながら、案内役の職員が目的地への到着を告げた。
このエリアだけ照明が全体的なものとなっており、とても明るい。
そのため、エリア中央部分にある「何もない空間を支えている細い鉄製の支柱群」が、酷く浮いた存在に思えてしまう。
「出資者である月村氏やバニングス氏からの指示通り、今回の件は警察ではなく『
必要なものがあれば、その都度おっしゃってください」
どうやらフェイト達の事情を、ある程度の範囲までは聞かされている人物のようである。
さすがに時空管理局云々までは把握している様子ではないが……
ともあれ必要事項だけ述べると、調査の邪魔にならぬようエリアから遠ざかっていった。
……露伴から離れたかっただけかもしれないけれど。
「けっこう広い場所だな」
ゆるりと周りを見渡しながら、平凡な感想を露伴は口にした。
呑気とも思えるその発言に、少しだけイラッとしながらもフェイトは事件について質問を投げ掛けた。
「露伴先生は……どうやって巨大な標本を盗んだと考えてますか?」
「それを今から調べるんじゃあないか」
至極当然な反応を示す漫画家に、なんとなく漠然と求めていた答が返ってこなかったので「それはそうなんですけど!」とフェイトは頬を膨らませた。
女の子はよく分からないなァ……みたいな表情を浮かべた露伴だったが、特に気持ちを引っ張ることなく再び周囲を見渡し始める。
「逆にフェイト君は専門家……『執務官候補生』として、どうやったと見ているんだ?」
「質問を質問で返したらテストでは0点だって学校の先生が言ってましたよ……」
専門家として問われた質問返しに、フェイトの表情が不満げに歪むものの、それも一瞬。すぐに思考回路を時空管理局執務官候補生のものへとスイッチさせ、考えを組み立てていく。
「監視カメラの映像ではデバイスのようなものを使っていたので、やはり魔法なんじゃないかと思います
つまり、犯人は別の次元世界から地球に渡ってきた人物かと」
空間操作系の魔法──使い手は非常に稀な収納魔法など──ならば、あの動画も説明できる。
「犯人が
これまで撮影した写真をフォルダから読み込んで再確認しつつ、フェイトの推理に言葉を添える。
「使ったのは魔法じゃあないと僕は思うね」
「……ッ!
根拠はなんですか?」
「君達が『魔法』と呼ぶものを幾つか記録映像で見せてもらったし、実際なのは君が攻撃魔法を使う所を見たことがある」
標本を支えていた細い鉄の支柱を触ったり眺めたりしながら、露伴は少女に求められた根拠を並べ始めていく。
「そのどれもが足元や周囲に『魔法陣』を展開していた。
リンカーコアとやらを通じて魔力を消費し、独自の理論……たしかミッド式とかベルカ式とかだっけ?
そういうのに従い魔法を使う場合、その形式に
特殊な例外もあるのだが、概ね間違っていなかったのでフェイトは小さく頷いた。
「動画を見る限り、魔法陣が展開している様子はなかった。
だからアレは
スタンド能力。
露伴が有している『ビジョンを持った超能力』。
魔法とは別の法則性を持った異能力。
フェイトにとって全く未知な領域の世界である。
魔法というものに慣れ親しんでいるせいと、巨大な標本を一瞬で消したインパクトに「魔法を使ったのだろう」という先入観で意識が囚われていた。
しかしそれでも疑問は残る。
「あの使用していた棒状のものが『スタンド能力』だったと?
デバイスの固有能力や、ロストロギアである可能性もあるんじゃあないですか?」
「フェイト君、あの馬鹿デカい標本を盗む動機はなんだと思う?」
人工大理石で敷かれたピカピカの床をジロジロと観察しながら、露伴が再び問いを問いで返す。
問われてフェイトは考え込んだ。
収集しての独占、政治的なメッセージ、環境テロ、愉快犯──様々な動機が思い浮かぶが、盗難後の声明的なものがないことから、ひとつに絞り込む。
「……裏ルートで売って大金を得るため?」
「僕ならデバイスやロストロギアとやらを売るけどね」
その方が犯罪なんてリスクを背負わず安全に億単位のカネを得ることができる……という漫画家の言葉を耳にして、フェイトは「あっ」と声を上げる。
漫画家が並べた根拠に、それなりの説得力はあったらしい。
「レイジング・ハートみたいなインテリジェンス型のデバイスなら数を揃えやすいだろうし、飛ぶように売れると思うなァ」
僕も欲しいなあ、とか言い始めたのでフェイトは軌道修正を図る。
「……スタンド能力というのは、動画に映っていたようなことも可能なんですか?」
「さてね。
スタンド能力というのは似た能力のものはあれど、基本的に個人によってバラバラらしいからなァ~~」
露伴は親友の少年を通じて知り合ったスタンド使いを思い出す。
彼は「時間を数秒だけ止める」という破格の能力の持ち主だが、過去に似たような能力のスタンド使いと戦ったことがあると聞く。
その戦いへ至るまでの冒険譚を聞かせてもらったが、先の例を除けば多種多彩なスタンド能力ばかりだったのだ。
世の中には窃盗に適した能力のスタンドがいてもおかしくはない。
エリアとエリアを区切る扉を閉じたり開いたりしながら、そんなことを推測する。
「ところで……さっきから何をしてるんですか」
「『調査取材』に決まってるだろ」
「扉を開けたり閉めたりするのが?」
「……なんか言い方にトゲがあるんじゃあないか?」
ムッとした表情で露伴はフェイトの顔を見た。
やっとこちらに視線を向けてくれた気がすると、フェイトは少しズレた感想を浮かべる。
「そんなことはないです」
「……まあいい。
ここでああだこうだと言うよりも、窃盗の具体的な方法は犯人を捕まえて『取材』すればいいしな」
フンッと鼻を鳴らしながら、露伴は事も無げにそんなことを言う。
「え?
あの、スタンド使いだと目星をつけても、それが誰か分からないと捕まえようが──」
「大体の目星はついてるぜ?」
「ええっ!?」
さも当然のように露伴が口にしたので、フェイトは館内に大きく響くような驚嘆の声を上げてしまう。
「犯人が特定できたんですか!?」
「特定じゃあなくて目星といっただろう」
露伴は手にしていたカメラの、撮影者側の液晶画面をフェイトに向ける。
「ホラ、入口や裏にある荷物の搬入口、館内の様々な所に監視カメラが設置してあるだろ?」
操作ボタンを押しながら、次々と撮影した写真を切り替えていく。
フェイトが覗き込むと、様々な場所に設置してある監視カメラの数々が確かに写されていた。
「え、あのパシャパシャ撮影してたのは監視カメラの位置を確認してたんですか!?」
単に取材にはしゃいで撮影してたものと思っていた。
「ここは海洋資源なんかの研究をしてる施設でもあるから、情報や研究物資の外部流出を防ぐために厳重な監視体制が敷かれているんだろう。
なら犯人は盗んだ方法以前に、どうやって監視カメラ網を突破したと思う?」
露伴は腕を組ながら、先ほどまで開閉を試していた扉へ視線を向ける。
「そもそも……外部の人間が、出入口やエリアを区切る扉の鍵を無理矢理に解錠したり壊したりせず、ピカピカの床に何の痕跡も残さず侵入できたりするものなのか?」
ここに到着してからしてきた露伴の行動を思い出しながら、フェイトは畳み掛けられる質問に必死で思考を巡らせる。
「念のために尋ねるんだが……こういう特殊な盗難事件は、今回が初めてなんだな?」
ところが、ここで変化球を投げてくる。
慌ててフェイトは寄越された
「え、あ、ハイ」
「じゃあフェイト君、初犯でカネになるような物を盗む場合……キミなら何処を真っ先に狙う?」
「……そうですね、大金で売れるものが何処にあるか確実に知っていて、忍び込むのも逃げるのも容易な土地勘のある地元で──」
監視カメラの位置。
こじ開けられた形跡のない扉。
躊躇いもなく目的地へ向かい、痕跡も残されていない床。
露伴が挙げていた根拠の数々が、フェイトの中で朧気な人の形へと組み立てられていく。
露伴が『特定』ではなく『目星』と表現した理由が理解できた。
「そうか、犯人は……!」
ハッと顔を上げて、不思議な能力を持つ漫画家に視線を送る。
その視線を受けて、幼い管理局執務官候補生に頷きを返した。
「
組んだままの腕を頭上へと掲げ、少しだけ腰を右に傾けるポーズで露伴は断言した。
推理はガバガバですが、その辺は大目に見ていただけると……
(そこまで本格的なミステリをやりたい訳ではないので……(言い訳))
次でバトルをやってエピローグになる予定(希望的観測)