漫画家と魔法少女は黄金楽土の夢を見ない   作:砂上八湖

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お待たせいたしました。

前話あとがき「次回はバトル!」

今話本編「バトルまで持っていけなかったよ……」

(即落ちではない2コマ)
 
 


第2話「怪盗を捕まえよう③」

 

◼️05◼️

 

「内部犯、ということは──やっぱり警備の人間ですか?」

 

 クジラの骨格標本が展示してあったエリアから移動を開始する露伴を追いかけながら、フェイトは一番あり得そうな犯人像を想定する。

 親友達の親族が雇っている人間を窃盗事件の犯人として疑わなければならない状況に、心苦しさを感じる。

 博物館や研究施設の職員とは殆ど直接的な面識はない。

 それでも親友達の顔を思い浮かべ、心にチクリとした痛みを覚えてしまうのは、司法に属する職に就きながらも子供のように純粋で、素直で心優しい性格を保っているからだろう。

 

 声の表面に浮き出た感情を(珍しく)敏感に察知した露伴は、そんな考えに至るものの……すぐにそれを改めた。

 

「(そもそもフェイト君は、まだ小学生じゃあないか。

 ()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()())」

 

 考えてみれば子供ながらに犯罪者を追うというのは、過酷な仕事なはずである。

 

「(どんな事情があって時空管理局に勤めることになったのかは今後『取材』するとして……

 この歳で執務官を目指そうとしているのも、生来の『優しさ』からきているのかもしれないな)」

 

 だが今はその「管理局員」として現場(ここ)に来ているのだ。彼女の内にある子供らしさを優先させるより、彼女の信念を尊重してやるべきだろう。

 

 そんな大人としての気配りを表情や動作に含ませることなく、露伴はフェイトの問い掛けに応える。

 

「いや、警備の人間じゃあないだろう」

 

 犯行の瞬間を捉えた映像はあったが、現場まで移動している姿を写した映像は存在しなかったのだ。

 つまり『何らかの方法』でカメラに映らぬよう細心の注意を払いながら移動したのだろう。

 

 そして初犯で勤め先の大物を狙うということは、その1回で職場から遁走するつもりであるのは簡単に推測できる。

 ならば監視カメラに映らないようコソコソせず、犯行後に録画データを消したり機材を破壊したりすれば良い。

 カメラの角度的に隠れようがなかったとはいえ、犯行の瞬間を映した証拠映像が残っているのだから尚更である。

 

 それが為されていないということは、全ての機材を破壊できるだけのパワーが本人やスタンドにないか──そもそも機材を管理している()()()()()()()()()()()()()()()()ではないか。

 

「しかし骨格標本が展示してあるエリアまでのカメラに姿を映すことなく移動できている。

 警備員と同レベルで監視カメラの位置を把握できていたからだろう」

 

「スタンド能力で姿を消して移動した……とかは?」

 

「特殊な例を除けば、基本的にスタンドは1人1能力だ」

 

 実は『標本も姿を消されただけで実際には盗まれていない』という可能性も考慮して確かめてみたが、支柱の上に骨の住人は存在していなかった。

 

「そもそも姿を消せるなら、肝心の盗むタイミングで姿を晒すのはおかしい」

 

「スタンド使いが『盗む役』と『姿を消させる役』の2人いる可能性は?」

 

 だとしたら厄介だが露伴は即座に否定した。

 

「それも『盗む役』の姿を晒させた意味が不明になるし、その能力を利用して証拠を隠滅した様子もないから複数犯の可能性もないんじゃあないかな」

 

 現場のエリアを抜ける。

 無駄に広い博物館な上に、展示物が多いので直線の最短距離を進めないのも移動にもどかしさを感じる要因のひとつだ。

 

「博物館の職員で、こんなに素早く動き回れないルートを迷うことなく最速で移動でき、その上で監視カメラの死角を警備員並みに熟知するほど館内を把握している人物、それは──」

 

 呼び掛けがあれば対応できる位置……館内の所々に設置してある休憩スペースで缶コーヒーを飲みながら(くつろ)いでいた人物を視界に収める。

 促される台詞と共にその姿をフェイトも確認し、納得よりも先に驚愕が胸の内を襲う。

 

 いきなりやって来た2人から視線を向けられ、その人物も動揺している。

 

「『博物館の案内人』だ」

 

 それは先程まで露伴達を案内し、何かあれば呼んでくれと言っていた案内人の男であった。

 

 

◼️06◼️

 

 

「ど、どうしたんです?

 何か必要なものがあるなら声を掛けてくれれば──」

 

 案内役の男は、ゲスト2人から向けられる厳しい視線に狼狽(うろた)えながらも、とりあえず用件を伺おうと言葉を繰り出す。

 だが露伴はワザとらしい溜め息と仕草を同時に披露してみせる。

 

「いやいやいや。そーゆーのは、もういーんだよ。

 キミが今回の事件の『犯人』だってのは、既にバレてるんだからなァ~~~」

 

 小馬鹿にしたような半笑いを浮かべながら、露伴は露骨に挑発してみせた。

 

「はあ? は、犯人? 何のことですか?」

 

「監視カメラの映像にもバッチリ映っていたじゃあないか。

 言い逃れはできないぜ?」

 

「い、い、言いがかりだッ!

 警備の人間から、影になっていて顔がわからなかったと聞いてる!

 なのに、いきなりオレを犯人扱いだとッ!

 ちゃんとした証拠はあるんだろうなッ!?」

 

 ある程度の事件情報は案内役の男も把握していたようで、露伴の安いカマ掛けには乗ってこなかった。

 

「スポンサー関係のゲストと聞いてたから我慢していたがッ、アンタは本当に失礼で不愉快なヤツだなッ!

 アンタが何モンだろーと名誉毀損で訴えてやるから覚悟しとけッ!」

 

 案内の道中、常に不愉快な言動を垂れ流していた相手から犯人呼ばわりされたのだから、激昂するのも当然だろう。

 しかし露伴は揺るがない。

 本来の彼であれば、問答無用で「ヘブンズ・ドアー」の能力を使い、片っ端から犯人かどうかを調べていただろう。

 しかし「執務官候補生」という肩書きを持ったフェイトが事件の正式な調査という名目で活動している以上、カマをかけて自白を引き出そうとしているのである。

 だから彼は揺るがず、逆に揺さぶっていくのだ。

 

『とぉぅるるるるるるる とぉぅるるるるるるる』

 

 そんな緊迫した空気の中、やけに大きな着信音が響きわたった。

 

「ああ、僕のスマホの着信音だ」

 

 飄々とした態度で「失礼」とスマホを取り出し耳に当てる。

 この傍若無人な振る舞いに、案内役の男も(まく)し立てたばかりの口をポカンと開けて固まってしまう。

 

「ああクロノか。なに、結果が出た?

 ……なるほどなるほど、やはりそうか。

 いやぁ~助かったよ、ドーモありがとう」

 

 短いやり取りの後に通話を切ってスマホを懐へと仕舞う。

 せっかく爆発させた怒りに水を差され居心地を悪くしている案内役の男に、露伴は通話内容を伝えてやることにした。

 

「知り合いからの連絡でね。

 頼んでいた画像のコンピュータ解析が完了したそうだ」

 

 フェイトが背後で「えっ?」と驚く無言の気配を感じたものの、些細なことなのでそれは無視する。

 問題は目の前にいる男の片眉が大きく跳ね上がったことだ。

 

「スゴいよなァ~、最近の映像処理技術!

 暗闇しか写っていない真っ黒な写真でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 他の誰でもないキミの顔が写っていたそうだぜ?と、(あざけ)てみせる。

 

「バ、バカなッ!

 あの角度ならハッキリと顔は映らなかったハズだぞッ!」

 

「そんなの依頼してたなんて聞いてないですよッ!?

 ウソですよね露伴先生!?」

 

 露伴の周囲が大いに揺れた。

 だから露伴は言ってやる。

 

()()()()()()

 さっきの着信はタイマー機能で鳴らしたメロディだし、クロノに依頼もしていない。

 ──けど、マヌケは見付かったみたいだな」

 

「ハッ!?」

 

 案内役の男は反射的に口許を右手で押さえた。

 何故あの映像では顔がハッキリと映らない角度だと確信して言えるのか。

 そう意識しながら動いていた犯人以外には出てこない台詞だった。

 

「ついでに言うならキミが『スタンド使い』ってこともバレてるからな」

 

 露伴が更に追い込みをかける。

 

「……クソッ、まさかこんな漫画みたいな方法でバレるとは……!」

 

 心の底から悔しそうに男が歯軋りする。

 それはそうだろうな、とフェイトは思わず男に同情してしまう。ちょうど案内中に彼女へ向けてきた同情の視線を返すような構図になってしまったが。

 

「まあ漫画家だからね」

 

「うるせぇー! せっかくこの能力(チカラ)で怪盗デビューして荒稼ぎしてやろうとしたのによォォォ~ッ!」

 

 案内役として最低限守ってきた紳士的な態度をかなぐり捨てて、男は怒気混じりの恨み節を吐き散らかした。

 自身を『怪盗』などと称するからには、金銭目的と同時に注目を浴びて承認欲求も満たしたかったのかもしれない。

 まあ露伴にとっては『どーでもいいこと』だったが。

 

「あ、貴方を窃盗容疑で逮捕します!

 大人しく投降してください!」

 

 待機状態のデバイス──斧槍(バルディッシュ)を素早く展開させ構えながら、フェイトは自分の職務を遂行しようと投降を呼び掛ける。

 どう見ても外国人の少女に逮捕する権限はなさそうなのだが、あまりにも洗練された動きと場の雰囲気が説得力を持たせていた。

 

「それとも抵抗するかい?」

 

 追い詰められた『怪盗』がどんな行動をとるのか興味あるなァ、という態度で露伴は確認を取った。

 ()(てい)にいえば『王手(チェック)』である。

 男は唸り声を上げながら逡巡したかと思うと、パッと身を翻した。

 

「いや、逃げる」

 

 潔い撤退宣言。

 陸上競技選手ばりの綺麗なフォームで走り出した。

 

「あっ」

 

 抵抗するならヘブンズ・ドアーで無力化してやろうと構えていた露伴だったのだが、これには意表を突かれ反応が遅れた。

 その一瞬の隙は、まんまとスタンドの射程距離外へと男を逃がす結果を生んでしまう。

 

「しまった!? ま、待てッ!」

 

「『待て』と言われて待つ怪盗がいるかタコッ!

 難敵や壁に『立ち向かう』より『逃げ』を選ぶ!

 これがオレの人生哲学だッ、文句あっか!?」

 

 それなりに鍛えていたのだろう、逃走する速度は大したものだった。あっという間に隣のエリアへ続く扉へ到達してしまう。

 

「バルディッシュ!」

 

《Yes,sir》

 

 少女の呼び掛けに愛機が応え、金色(こんじき)の魔力が波となって周囲に(ほとばし)った。

 

「ブギャァーッ!?」

 

 扉を押し開けようと体当たりした男だったが、黄金色の輝きを放つ障壁に「ドッグシャアッ!」と阻まれた。岩場にいた蛙を上から殴りつけた時のような悲鳴を上げ、顔を強打した男は鼻血を吹き出しながら床へ派手に倒れ込む。

 

「結界を張りました!

 もう何処にも逃げられません!」

 

 魔法少女としての姿にフォームチェンジしたフェイトの警告。

 それが淡い金色に包まれた空間内に、凛と鮮やかに響き渡った。

 

 

 




前回も書きましたが、推理パートはガバガバなので全力で見逃せ下さい!

次回こそバトルさせます。

……本当は今話で敵スタンドの名前も披露するはずだったんですが持ち越しで。
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