GOD EATER 神となった少年と神をやめし少年 作:Jaeger
今回はある少女の弱点が……
「お前たちにはボルグ・カムランの討伐任務に行ってもらう。」
『ボルグ・カムラン?』
「…なんで知らないんだよ…」
そう言い放つツバキの前には三人の少年少女がいる。
少年はユウヤとコウタ、少女はアスカであった。
三人はボルグ・カムランの名を聞いてユウヤは理解してアスカとコウタはまったくわかっていない顔をしている。
「あとは、クロナも連れて行け、ちょうどいいだろう。」
『?』
今のツバキの一言に疑問を感じる三人。たしかにボルグ・カムランは自分たちにはちょうどいい強さのアラガミだ、しかしやはり疑問に思う。
「なんでクロナはちょうどいいんだろうな。」
「さあ、俺は知らんぞ。」
「私も知らないよ。」
三人は今、クロナの部屋に向かっている。さっき覚えた疑問について話し合っていた。
そうこうしてるうちに部屋の前についたのでクロナを呼ぶ。
「おーい、クロナー、任務行くぞー。」
「……」
返事がない。部屋にいないのかと思ったら中から声が聞こえた。
「……嫌…」
いつもの彼女からは考えれないほど低く暗い声だった。
恐かったのかコウタとアスカはユウヤの後ろに隠れてしまう。
「なんで嫌なんだ?具合でも悪いのか?」
ユウヤがクロナに質問する、しかしまたも答えがない。しばらくして帰ってくる。
「……アラガミが嫌なの。」
「アラガミ?ああ、たしかボルグ・カムランだったな、あのサソリみたいな。」
「……それが嫌なの。」
「なんで?」
「……笑わない?」
涙ぐんだ声で質問するクロナ、というかもう泣いてしまっている。
「ああ、笑わない。」
「絶対に?」
「絶対に。」
そのあと、少しの沈黙が続く。そして口にを開く。
「………サソリが苦手なの。」
そのあと、かなり沈黙が続く。
「…え?」
「ぷっ、あははははははははははは!」
「クロナ、サソリ苦手なの!?」
「……やっぱり笑った。」
さらに落ち込むクロナ。
「お前ら、少し黙れ!」
「ふごっ!」
「痛っ!」
ユウヤが笑っている二人の頭をつかんで額と額をぶつける。
「ユウヤ!これ私二回目!」
「なあ、クロナお前がサソリ苦手なのはよくわかったよ。」
「スルーしないで!」
「でもさ、苦手だからってさ、いつまでも逃げてたらいい理由にはならないぞ。」
「…それは、そうだけど。」
「それに、コウタやアスカだってツバキ教官が苦手だろ?でもちゃんとあって話聞いてるだろ?」
「……それは、教官は上官だし命令を聞くのは当たり前だし…」
「ならお前はその上官の命令を自分の苦手っていう理由で任務に行かないのか?」
「っ!、…それは、…」
少し怒りが混じったユウヤの声が廊下に響く。それを聞いてコウタとアスカはユウヤから少し距離をとりクロナは押し黙る。
「お前はなぜゴッドイーターになったんだ。少し考えろ、考えがまとまったらエントランスに来い。すこしだけなら待つ。
おい、お前ら、いつまでひるんでる、いくぞ。」
「あのなぁ!もとはといえばお前が悪いんだろうが!」
大きな声で口論しながらエントランスに向かっていったユウヤ達。
「なんでゴッドイーターになったか、か…」
クロナは一人考える。
●
「なあ、ほんとに来るのか?クロナのやつ。」
「いいから黙って待ってろ。」
「でもさぁ、もうあれから十分は経ってるよ、もうさすがに来ないんじゃ……」
クロナを説得してから十分が経過した。早くいかないとツバキに怒鳴られる。
それが嫌なのか、コウタとアスカは早くいきたい様子。しかしユウヤは待つ。
「ユウヤーーーーーー!!」
「…来たか…」
「マジで!?クロナ、お前サソリ苦手なんじゃ。」
「……ユウヤに言われて気が変わったというかなんというか……ごめんなさい!」
「それじゃ行くか。」
「はーい。」
「おう。」
「…うん!」
●
ここは廃寺エリア。ユウヤ達はボルグ・カムランの討伐任務に来ているのだが…
(…やっぱり、まだ手が震えてる……)
クロナは内心おびえていた。彼女は大のサソリ嫌いである。
このままじゃみんなの足を引っ張ってしまう、しかしここまで来て引き返すわけにはいかない。
クロナは自分の中で一人戦っていた。
「大丈夫か?クロナ、ああいう風に言ったが無理はするな。」
ユウヤがクロナに話しかけながら彼女の手を握る。
「ユウヤ……でもここまで来たんだし最後までやり遂げてみせるよ。」
そういって覚悟を決めるクロナ。ユウヤに励まされたのか、さっきより気持ちがかなり楽になっていた。
これならいける、そう思っていたクロナの視界の先に世界で一番嫌いな生物が食事をしていた。
「あれがボルグ・カムランか、ほんとにサソリみたいなやつだな。」
「…嫌…」
「作戦は俺が前衛、コウタとアスカは後衛、クロナは」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アラガミを見て発狂するクロナ、その声に気付くボルグ・カムラン。
そしてすぐにユウヤ達の方に走ってくる。
「っ、まずい!気づかれた!作戦はさっき言った通りだ!」
「…嫌…嫌…」
「おい!クロナ、動けるか!?」
「……」
答えが返ってこない、どうやら相当気が動転しているようだ。
「っ、二人とも!クロナにこいつを近づけさせるな!」
「任せろ!」
「やってみる!」
「なあクロナ、お前はなんでゴッドイーターになったんだ?」
「……」
「たしか言ってたよな、守れない人も守れるように強くなるって。」
「っ…!」
「あれはウソか?それとも本気か?」
「…嘘じゃないよ、守りたいっていう気持ちは今も変わらないよ。」
「ならこんなところであんな奴にビビってていいのか?」
「…それはそうだけど……」
「…わかった、決心がついたら来い。」
そういってボルグ・カムランに向かっていったユウヤ。その後ろ姿にクロナは
「……ユウヤはすごいね…」
そう呟いた。
「にしてもこいつ!図体の割には相当速いな!」
「慌てるな!相手の動きをよく見て確実に攻撃を当てろ!」
「おう!」
ユウヤがボルグ・カムランに向かっていく。
ユウヤに気付き尻尾を回転させユウヤに向かっていく。
これは通称「スピンテイル」と呼ばれる攻撃方法である。
しかしユウヤはそれを回避してボルグ・カムランの側面に移る。
「くらえ!」
ユウヤの神速のごとし斬撃がボルグ・カムランの足に命中、体制を崩した。
すぐさまアスカとコウタの追撃がやってくる。
「やあ!」
「当たれ!」
アスカは上空からの斬撃、コウタの正面からの銃撃、これにはさすがのボルグ・カムランは悲鳴を上げる。
「キシャアァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に活性化して俊敏性が増す。
まずはアスカに向かって突進をかます。アスカはぎりぎりのところで装甲を展開するがそのまま吹き飛び壁に叩きつけられる。
「きゃあ!」
「アスカ!」
アスカに駆け寄るコウタ、しかしすぐさま横からボルグ・カムランの突きが襲い掛かる。
何とかかわすものの風圧に吹き飛ばされる。
「ぐえっ!」
「っ、コウタ!」
そして今度はユウヤではなくまだ地面に座り込んでいるクロナに向かう。
彼女は今動けない。
ボルグ・カムランが尻尾を振り上げクロナに突きを放つ。
死ぬ、彼女の頭によぎるのはその一言。
しかし針の先端はクロナの目の前で止まる。
まえを見てクロナは驚愕する。
「っ、がはっ!」
「……ユウヤ…?」
ユウヤがクロナの前に立って彼女をかばった。
針は彼の身体を貫き先端からはユウヤの血がポタポタと落ちている。
「はぁ…はぁ…この野郎!」
ユウヤは尻尾を掴み身体から抜く、そしてあの巨体を持ち上げてぶん投げた。
いくら強靭な肉体を持つゴッドイーターといえどアラガミを持ち上げるなどあり得ない。
ましてや、それを投げるなど前代未聞であった。それを見た三人はあ然とする。
「クロナ。」
「……」
怒られる、そう思っていたクロナであったが衝撃の一言が飛んでくる。
「怪我ないか?」
「…え?」
一瞬理解に遅れる。そして言葉を理解するとつい間抜けな声を出してしまう。
当たり前だ、ユウヤが怪我を負ったのは自分が悪いというのに、彼女を責めることはなく心配してくれたのだ。
そして、彼女は思い出した。彼はこういう人だったのだと。
自分がどれだけ危ない状況でも他人を見捨てることはなく優先してくれる。
それが神狩ユウヤという人物なのだと。
「……うん、大丈夫、おかげさまで。」
「そうか。」
「…あのね、ユウヤ、……ごめんなさい、私のせいで怪我負わせちゃって。
「?それがどうかしたか?」
「……え?」
「それよりとっとと終わらせるぞ。」
「…うん。」
この人はバカだ、そう思うのに十分だった。しかしそんな人に任せてみたい。この人にかけてみたいそう思えた。
「なんだ、もう怖くないのか?」
「恐いよ、でも、私がおびえてる間にもいろんな人が食べられてる、そう考えると恐さが自然となくなっちゃった。」
「…そうか、おーい、お前ら立てるか?」
「…当たり前だろ、あれ程度でやられるかよ。」
「そうよ、私だってまだやれるんだから。」
「よし、いくぞ!」
ユウヤは神機をバスタータイプに合体させチャージクラッシュの体制に入る。
ボルグ・カムランが阻止するためにユウヤに迫る。しかしそれを許す三人ではない。
まずはコウタが足元に銃撃を放つ、その次にアスカが尻尾に銃弾を浴びせる。
さらに先ほどまでおびえて動けなかったクロナが上空高くから神機を振り下ろす。
「……キ、キシャ…」
そして最後にユウヤのチャージクラッシュがたまる。
「終わりだ!」
叫ぶと同時に神機を振り下ろしボルグ・カムランの身体を真っ二つにして絶命させた。
「お疲れ、クロナ。」
「うん、お疲れ様、ありがとう、ユウヤ。」
「?何が。」
「ユウヤのおかげで少し克服できた気がする、サソリ。」
「そうか、そりゃよかったな、そんじゃ、これ。」
そういってユウヤはクロナにあるものを投げ渡す。なんなのか確認するとクロナは驚きのあまり逃げ出す。
なぜならユウヤがそこらへんにいた小さなサソリを投げたからだ。
「こりゃまだ、改善の余地ありだな。」
そんなやり取りを見ていたコウタは笑い、アスカはまたもふてくされたような顔をしていた。
(……ずるい…)
そう思っているアスカなのであった。
そこには束の間の平和があった。
しかしそう長くは続かなかった。
その日リンドウの神機が発見されたとの報告がアナグラに舞い込んだ。
続く……