GOD EATER 神となった少年と神をやめし少年 作:Jaeger
「今日の討伐任務はヴァジュラだ。」
ツバキによって集められた第一部隊にツバキはそう告げた。
「ヴァジュラ……」
アリサにとってヴァジュラはトラウマの一つであった。
――――あの時、アリサは取り返しのつかないことをしてしまい
ヴァジュラというアラガミがトラウマとなってしまった。さらに――――――
アリサの両親を喰い殺したアラガミもまたヴァジュラによく似ている。
そのせいかアリサは今ヴァジュラという存在と戦えなくなっていた。
(………それでも、私は…)
しかし、今のアリサは昔とは違う。
原隊復帰から一か月が経過してその間特訓に特訓を重ねてきた。
今の自分ならいける、そんな気がしていた。
「それでは討伐メンバーはお前たちが話し合って決めてくれ。」
そういってその場を去るツバキ。
「さてと…サクヤさん、どうします?」
「…そうね、極力戦力を集中させた方がいいわね。」
「……あの…」
「?どうした、アリサ。」
「…私を、討伐メンバーに入れてください!」
「………」
「私もあれからいっぱい特訓しました、それに……」
「それに?」
「…今の実力を試してみたいというか、やりたいんです、やらせてください!お願いします!」
「今回のはこの前と同じ個体だそうよ。それでも行く?」
「はい!」
ユウヤは今の覚悟にあふれた返事を聞いたのは数知れない。だから彼はアリサを行かせてやりたくなった。
「…いいんじゃないですか、いかせてやっても。」
「……ユウヤ…」
「アリサの言うとおり、たしかにアリサはこの一か月猛特訓してきました。
それは近くで見てきた俺が一番よく知ってます。だから、いかせてやってください、お願いします!」
そういってサクヤに頭を下げるユウヤ、それを見たアリサも頭を下げる。
そしてサクヤは少し考えて決断した。
「――――わかったわ、そこまで言うならいいわ行きましょう。」
「っ、ありがとうございます!サクヤさん!」
そういってもう一度頭を下げるアリサ。
「ありがとうございます、サクヤさん。」
「ただしユウヤ、言い出したのはあなたよ、あなたも一緒に行ってあげなさい。
その方がアリサも安心でしょ?」
「わかりました。」
「じゃあメンバーは私とアスカ、ユウヤにアリサで行きましょうか。」
「はい!」
そういって四人はヒバリの元へと向かっていった。
●
ここは旧市街地エリア。四人はヴァジュラの討伐に来ていた。が――――――
(……だめ…震えが…止まらない…)
今からトラウマでもあるヴァジュラの討伐に行くためか震えが止まらない。
このままではみんなの足を引っ張ってしまう、そんな不安が頭をよぎる。
「―――――大丈夫だ、アリサ。」
そんな彼女の手をやさしく握ってくれる少年がいた。
「…ユウヤ…」
「お前なら大丈夫だ、俺たちがついてる、お前今、自分が足引っ張って俺たちに迷惑をかけるとか
思ってるだろ?」
「!」
「大丈夫だ、お前がもしそんなへましても俺がフォローしてやる。だから安心して俺に背中を預けてくれ、な?」
そんな彼の言葉を聞いてアリサの震えは次第に治まってきた。
彼の、ユウヤの言葉を聞いた、ただそれだけなのに。
そんなやり取りを見ていたアスカは……やはりふてくされていた。
「…どうかした?アスカ、具合でも悪いの?」
「……そんなんじゃありません。」
「じゃあいったい……ああなるほどね。」
サクヤは後ろの二人を見てなぜアスカが不機嫌そうな顔をしているのかわかった。
(…あなたも年頃の女の子なのね)
そんな平和な時が訪れていたのだが―――――――
―――――突如それは崩れ去って行った。
「っ!ヴァジュラ!いつの間に!?」
突然のヴァジュラの出現、ユウヤはこれに対応できず不意打ちをくらって吹き飛ぶ。
「がっ!」
「っ!ユウヤ!」
吹き飛んだユウヤに駆け寄ろうとするアスカ、しかしその間にヴァジュラが立ちはだかる。
「―――――っ、邪魔、しないでよ!」
そういってヴァジュラに向かっていくアスカ。
高く飛んで上からの斬撃、しかしそんな単調な攻撃がヴァジュラに通用するはずもなくあっけなく
避けられてしまう。
そんな隙だらけなアスカに喰らいつこうとする。が失敗に終わる。
「アスカ!油断したら駄目よ!」
「っ、すいません、気を付けます!」
そうこうしているうちにヴァジュラが起き上る。
「ガアァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に活性化するヴァジュラ。
「アリサ!」
アリサの名前を呼ぶサクヤ、しかし答えがない。
ヴァジュラがそんなアリサに向かって喰らいつこうと走り出す。
「アリサ!!」
「!」
後ろの方から自分を呼ぶ怒号にもとれる声だった。
後ろを振り向くとそこには先ほど吹き飛ばされていたユウヤの姿があった。
「アリサ、今までの特訓を思い出せ!これまでの一か月はなんだったんだ!
そんなあっさり死んでいい命じゃねぇ!」
「……私は…」
そうだ、今までの特訓はなんだったんだ。それに一か月間付き合ってくれたユウヤのためにも。
「私は、逃げない!」
そう叫んで走り出すアリサ。
まず神機を剣形態に変形させ高く飛び上がる。その高さはヴァジュラの高さおも超える。
そして神機を振り下ろしヴァジュラの顔に縦に亀裂を与える。
「ガアァァァァァァァァ!」
「っ、きゃあ!」
すぐさま距離を取ろうとしたアリサだったがヴァジュラがすぐさま雷球を放ちアリサに命中、
アリサはスタン状態になってしまった。
(っ、お願い、動いて!)
しかし動かない、無防備なアリサにヴァジュラがゆっくり迫る。
その時ヴァジュラの身体が吹き飛んだ。
「アリサ、大丈夫!?」
「私たちだっているんだから!」
サクヤとアスカがフォローにまわってアリサを助けた。そしてスタン状態から回復、すぐさま
吹き飛んだヴァジュラに向かっていく。
そして、隙だらけのヴァジュラの身体に深い一撃を与える。
「ググゥ……」
ヴァジュラが苦しそうな声を上げる。
すぐさま追い打ちを仕掛けようとするが失敗に終わる。
突如、ヴァジュラが建物の上に飛び上がりその場から姿を消す。
「っ、まずい!逃げる!」
「あとを追いましょう!私とアスカは西側から行くわ!ユウヤとアリサは東からお願い!」
「わかりました!」
そういって言われた方に走っていく二人、それを確認したサクヤ達も急いでその場を後にする。
ゆっくりと歩きつつヴァジュラを探すユウヤとアリサ。ここでアリサが――――――
「二手に分かれましょう!」
「……いけるか?」
「はい!」
「…わかった、無茶だけはするな。」
「もちろんです!ユウヤも無理しないでください、怪我してるんですから。」
わかってるよ、そういって二人は別々に探し出す。
少ししてアリサは広いところに出る。そして先ほどまで消えていた恐怖がアリサに襲い掛かる。
(……だめ、足が、動かない…)
ついにはその場に座り込んでしまう。
その時後ろに何かがいる気がした。
振り向くとそこにはヴァジュラが腕を振り下ろし自分を吹き飛ばす。
「きゃあ!」
しかし、彼女に痛みは感じられず、誰かに抱きしめられている感触だった。
「大丈夫か!アリサ!」
「ユウヤ!」
吹き飛ぶぎりぎりに彼が現れて間一髪アリサを助けることができた。しかし、ユウヤは無傷ではなかった。
「っ、ユウヤ、あなた、今ので足をけがしてるじゃないですか!」
「大丈夫だ、戦えないわけじゃない、つっても神機放り投げたからな。」
そういってユウヤの視線の先に彼の二つの神機が落ちていた。そしてそれを見たアリサは決断した。
「なら私がヴァジュラの気を引きます、ユウヤはその間に神機を。」
「……大丈夫か?一人で。」
「はい!それに決めたんです。ユウヤは私が守るって!」
「……わかった、じゃあ頼む。」
それを聞いて頷きだけを返してアリサはヴァジュラに向かっていく。
その間にユウヤは自分の神機に向かう。
まずアリサはヴァジュラの懐に潜り込んで足に斬撃を与える。
見事狙い通り、ヴァジュラの体制を崩すことに成功する。
しかしそれはほんの一瞬の出来事でアリサに追撃の暇を与えなかった。
突然の行動に予想していなかったアリサはすぐさま後退しようとバックステップを取るがヴァジュラ
との距離が近かったためまだ射程内にいた。
そしてヴァジュラが腕を振り下ろそうとしてヴァジュラの身体が宙に浮く。
「させるかっ!」
ユウヤが神機を捕喰形態にして喰らいつきヴァジュラの身体を持ち上げ放り投げる。
「アリサ!今だ!」
「はい!」
かけ声と同時にアリサはヴァジュラの身体に神機を突き立てる。
今までのダメージと重なりかなりの致命傷を負ったヴァジュラはその場で絶命した。
アリサはそれを理解するまでその場で止まり少ししてからその場に座り込む。
「アリサ、大丈夫か?」
「……はい、何とか。」
しかしその声に元気はなく、しかし恐怖もなかった。
「ユウヤ、ありがとうございます。あなたがいてくれたから、私は。」
「俺は何もしてないって。それに頑張ったのはアリサ、間違いなくお前だ。」
そういってアリサの頭をなでるユウヤ。前のアリサなら顔を赤くして怒っていたが今は受け入れている。
「そうだ、ヴァジュラのコア、忘れてた。」
「ユウヤは休んでいてください、私がやっておきます。」
「…じゃ、お言葉に甘えて。」
そういって腰を下ろすユウヤ、それと同時にアリサは立ち上がりヴァジュラの方に向かっていった。
「ユウヤ、帰ったら私が手当します!」
「…わかった、頼むよ。」
しかし彼はまだ知らなかった。
アリサがとてつもなく不器用だということを……
続く……