GOD EATER 神となった少年と神をやめし少年 作:Jaeger
しかし、この日はいつもと違うようだ………
―――――――――――――――朝
ユウヤはベッドから起き上がり、顔を洗い歯を磨き、いつもの服に着替え食堂に行こうとした時だった。
「おーい、ユウヤー、起きてるかー?」
それは女性の声だった。
扉を開けるとそこにはよく見る女性が一人立っていた。
「…なんだヨシノか…朝からうるさい」
「あたしだって来たくてここに来たわけじゃないわよ!」
女性はヨシノ、クロナの姉に当たる人物だ。
こういう風にユウヤの部屋に彼女が来ることは今まで一度もなかった。
「で、なんかようでもあるのか?」
「だったらアンタのとこなんかに来るか。
一緒に任務に来てほしい。」
「……は?」
それは意外な一言だった。
ヨシノは基本、クロナに好かれているユウヤのことが嫌いだった。
そして、事の発端は十分前に遡る……
―――――クロナの部屋
「どうしたの?朝お姉ちゃんがいきなりここに来るなんて」
「……クロナ、あんた今でもユウヤのことが好き?」
それは唐突な質問だった。
これにはさすがのクロナも少々たじろぐ。
「え!?い、いきなり何言いだすの、お姉ちゃん」
「どうなの!?」
この時、クロナはヨシノの様子が少しおかしいことに気付く。
「……お姉ちゃん、やっぱり何か変だよ、朝から私の部屋に来るのも変だし、そもそもそんな質問してくるなんて余計変だよ」
「……あたし考えたんだけどさ、もしクロナが本当にユウヤのことが好きならそれで構わない。
でもね、あたしはあんたのお姉ちゃんとして一つだけどうしても確認したいことがあるの」
「……何?」
「それは………」
そこまで言ってヨシノは一度大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。
それからしばらく沈黙が続いた。そしてヨシノが口を開く。
「――――――あいつが本当に強くて、クロナに相応しい相手かどうかを!」
―――――そしてこういう状況になったのである。
「で、どうなの、来てくれるの?それとも来ないの?」
「…なんで俺なんだ?」
「なんでって……そりゃあ…」
意外な反撃にさすがのヨシノも想定外。
「え~と、それは、つまり………」
「………まあいいか、別に俺今日やることないし、それに非番だし」
「え…?」
それは意外だった。
ヨシノは今回、クロナに相応しいための五箇条を考えてきていた。
1、クロナより強いゴッドイーターであるべし
2、いざという時にクロナを守れるべし
3、クロナに一途であるべし
4、クロナのためなら大切な時間を割いてでも約束を守るべし
5、クロナのためならたとえ火の中水の中
そして今の一言で四か条目をクリアした。
(まずは四か条目と……)
「おい、お前今何かメモっただろ」
「べっつに~」
彼女はとっさに後ろを向きメモ帳にメモした。
余談であるが彼女のメモ帳には「クロナの成長記録!」と書かれていたため中はクロナの写真で
いっぱいだった。
「そんじゃ、善は急げだ、いくぞー!」
「…おー」
やる気満々なヨシノの声と、いろんな意味でめんどくさそうにかけ声をあげたユウヤ。
そんなやり取りを影から見ていたクロナ、それを途中から発見し一緒に観戦していたアリサとアスカの姿があった。
よく見るとクロナの顔が真っ赤になっていた。
どうやら先ほどのメモ帳が恥ずかしかったらしい。
「……も~、お姉ちゃん、まだあのメモ帳使ってるの……もう恥ずかしい…」
「…クロナの成長記録…みてみたい…」
「見なくていいから!!」
「あの~、そんなこと言ってますけどよかったんですか?ヨシノさんにあんなことさせておいて」
「…うん、最初はやめてほしかったんだけど、もしそれでお姉ちゃんがもう何も言わなくなるなら
いいかなって思って」
「…なるほど……」
●
ここは鉄塔エリア。
ユウヤとヨシノの二人はボルグ・カムランとハガンコンゴウ二体の討伐に来ていた。
「くっそ~、相変わらず鉄くさいな、ここ」
「あんたそんなに嗅覚よかったっけ?」
もうほとんどアラガミだから、などとは言えずとりあえず笑ってごまかした。
「つーかさ、あんた神機二つも持って重くないわけ?」
「ん?ああ、これか、もう慣れたよ」
確かに疑問に思うはずだ。
本来、神機は一つと決まっているのに、彼の場合少々特別な偏食因子を用いているため二刀流に
なったのだ。
それにユウヤの神機はロングブレードが二刀流となっているため合体したときはバスターブレード、
つまり通常の二倍の重さだ、なのに彼はそれを軽々と振り回し自分のものとしている、疑問に思っても仕方のないことだった。
「まあ……慣れだ、慣れ」
「…そういうもんかねぇ…」
「多分」
「……………」
「……………」
その後永遠と言っていいほどの沈黙が続いた。
しかし、その沈黙を破ったのはユウヤだった。
「そういやぁ、お前と任務に行くのってこれが初めてだよな」
「…言われてみればそうね、ってなんで今それを――――――――」
そこまで言ってヨシノの言葉はユウヤの手によって静止される。
「……いた?」
「ああ、いたぞ、あれだ」
そういってユウヤの視線の先には獲物を探してうろつきまわるボルグ・カムランとそこより少し離れたところに二体のハガンコンゴウが食事をしていた。
「作戦は……わかるよな?」
「当たり前でしょ、どっちが先輩よ!」
「…だな…」
そういってユウヤは二体のハガンコンゴウに向かって走り出す。
(ちょっ、何あいつ、めっちゃ速いじゃん!人間か!?)
ユウヤは神速のごとしスピードで近くにいたハガンコンゴウに詰め寄ると下からの切り上げを放つ。
「――――――――らぁ!!」
「ゴアァァ!?」
不意打ちが成功しハガンコンゴウの一体は大きくのけぞる。
その隙を見逃さなかったヨシノはアサルトタイプの神機をハガンコンゴウに向け銃弾を放つ。
「くらえ!!」
彼女が放った数十弾の弾はユウヤをかわし標的のアラガミに全弾命中。
さらなる追撃でユウヤは神機をバスターブレードに合体させ大きく飛んでハガンコンゴウの頭部に
斬撃を放ち真っ二つに切り裂いた。
「ナイスユウヤ!!」
「っ!ヨシノ!!後ろ!!」
振り向くとそこにはボルグ・カムランが自分の真後ろまで迫ってきていた。
「やば――――――――――」
その瞬間、尻尾がヨシノの心臓めがけて放たれる。
ヨシノは目をつぶり死を覚悟した。
しかし、尻尾の針が彼女の心臓を貫くことはなかった。
なぜなら―――――――――――――
「―――――っと、あぶねえ」
「………え?」
目を開くとそこには左手を盾にし自分のことをかばったユウヤの姿があった。
先ほどユウヤがいたところを見ると彼の神機が地面に突き立てられておりその距離約五百メートル。
彼はあの後一瞬で自分とボルグ・カムランの間に立ちヨシノをかばったのだ。
「こ……の…野郎!!」
叫ぶと同時にボルグ・カムランの尻尾を両手でつかみ背負い投げのごとし投げ飛ばした。
馬鹿でかい落下音とともにボルグ・カムランがひっくり返る。
「ふぅ……大丈夫か?」
「……うん…ありがと…」
その言葉を聞いたユウヤは急いで自分の神機のもとへ走った。
「よし……やるぞ!!」
「わかってるわよ!命令すんな!!」
●
「――――――――――何とか、終わったわね……」
「そうだな……まあコアも抜き取ったことだし、帰るか」
そういって二人はアナグラの方に向かって歩き出す。
「……あのさ、ユウヤ…」
「ん?なんだ」
突然ヨシノが口を開いた。
ユウヤは少し驚きながらも反応を返す。
「――――――――ありがとう…」
「…へ?」
「…だから、ありがとうって。
…・・・何回も言わせんな、バカ…」
そんなヨシノの顔は今まで見たことがないくらい赤かった。
「…で、何が?」
「………あんたに言ったあたしが馬鹿だった……
要するに、あの時助けてくれたお礼、わかった?」
「……ああ、あんなことか、いいって別に、礼なんて。
それに仲間を助けるなんて当たり前だろ?」
「だったらもう少し安全な助け方を見つけなさいよ……」
「ははっ、だな」
そのあとまた歩き出す。
すると少し歩いたところでヨシノの先を歩いていたユウヤが突然振り返る。
「なあ、ヨシノ」
「な、何よ……」
「怪我ないか?」
その一言、たったその一言でヨシノは今まで自分のやってきたことがばかばかしく思えてきた。
ユウヤは相手がだれであろうと平等に接し、そして守ってくれる。
(……あたしは馬鹿だなあ……もう十分だよ…ごめんね、クロナ)
内心、クロナに謝罪しつつユウヤに答える。
「おかげさまでね」
「ならよかった」
そして二人はまた歩き出す。
(なるほど……こりゃあの子が惚れるのもわかる気がする…)
続く………