火のないところに煙は立たない。ということわざがあるが、果たしてこれを考えたのは誰なのだろうか。ただ単に思った事を口にしただけなのか、はたまた自分で実感した事として発したのだろうか。後者の場合、それは他人事だったのだろうか。それとも……
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修学旅行が終わったあと、待っていたのは地獄だった。
片や告白の成功、片や告白の阻止、もう片やグループの存続。という相反する依頼を、俺は嘘告白という形で依頼を解決…いや、解消した。
信頼していた部員たちとの関係と、家族と、自分自身の居場所を犠牲にして…。
「あなたのやり方…嫌いだわ。」
なんだよ…、やり方は俺に任せるって言ってくれたじゃないか…。
「ヒッキー…、もっと人の気持ち、考えてよ…!」
人の気持ちを考えられないのはお前もだろうが…。俺はこんなクソみたいな依頼なんて、最初から受けたくなかったのに…、お前が勝手に受けたんだろう?俺の気持ちを無視して…。
「ごみいちゃん!雪乃さんと結衣さんから聞いたよ!謝ってくるまで家に上げないから!あと、この事はお父さんにも言ってるからね!」
小町、お前は家族である俺の事より、精々1年位の付き合いのアイツらのことを信じるのか?こうなってしまっても、小町だけは話を聞いてくれると思っていたのに…。
「八幡!お前、なんてことをしたんだ!嘘告白なんて、そんなことをする奴は息子とは認めん!勘当だ!早くこの家から出ていけ!」
息子とは認めない?ハッ!笑わせてくれる。小町が生まれた時からずっと俺の事なんて見てこなかったくせに。俺もハナからお前のことを親父だなんて認めていない。
「八幡、あなた、また人様に迷惑かけて!小町から聞いたよ!早く謝罪に行ってきなさい!」
また?一体俺はいつ人に迷惑をかけた?こっちは散々お前たちに迷惑してきたのに…。謝罪になんて絶対に行かない。死んでもゴメンだ。
はぁ。今更になって思うけど、俺はよくこんなクソみたいな家族がいる中で17年も生活出来たよな…。
けど、勘当されて、ようやく自由を手に入れた。学校にだって行かなくていい。家族や部員、俺の噂しか知らない総武校の生徒に罵声を浴びせられることもない。殴られることも、カツアゲに会うことも、もう無い。それと同時に、本物の関係なんて無いということも悟った…。
金はこっそりと株で稼いだ物がある。俺の学歴は高校中退ということになるだろうから、今後も株中心の生活になるだろう。いつか追い出されるだろうとは思っていたが、一人で暮らすための術を身につけておいて本当に良かった。
さて、これから何をして暮らそうか。今の俺の年齢は17歳。法律改正で18歳から成人ということになったが、あと約半年はアパートの契約等は1人で出来ない。仕方ないからしばらくはネカフェで過ごすか…。
暗い夜道を歩きながら 今後の人生設計を考えていると、
「ねぇ、ちょっといい?」
と、後ろから不意に声をかけられた。昼間なら人通りもあるしシカト一択なのだが、あいにく今は深夜2時。周りには誰もいない。よって話しかけている相手は俺しかいない。この時間帯なら警察の方かと思ったが、声音からして大人でないことは分かるため違うだろう。
「なんだ、こんな時間に出歩いて。親が心配すんじゃねぇの?」
振り返って相手の姿を確認すると、ロングストレートで白髪の女子高生?が立っていた。
「今、家に親はいないから…。そっちこそ、こんな時間に何してるの?」
家に親がいない?仕事か入院か、はたまた…。まぁ、相手の家庭事情を考えても仕方がないと思いなおし相手に返す言葉を探す。
「こっちはさっき親に勘当されたばかりでな。これからについて考えながら歩いていた。」
そう返すと、少女はバツの悪そうな顔をする。軽い質問をしただけでかなりヘヴィーな返答が来たから仕方がないと言えばそうなのだが。
「そう、悪いこと聞いたね…。」
「そんで、なんか用でもあんのか?ないならもう行くけど。」
そう言うと、少女は待ってと踵を返そうとした俺を引き留めた。
「もしよかったら、うちに泊まっていかない?」
「……は?」
おもわずに聞き返してしまった。それもそうだろう。お互いに名前も知らない相手から家に誘われた上に、泊まっていくかと聞かれたのだ。驚かない方がおかしい。
「いくら何でも不用心すぎるだろ…。それに、そっちに俺を泊めるメリットがないだろ。」
しかし少女は即座に返答した。
「メリットならあるよ。私は家事ができないからしてもらいたいし、作った音楽の感想が聞きたい。あと、外にはなるべく出たくないから買い出しとかも頼みたい。」
なるほど、彼女からすると俺を泊めることには十分なメリットがあるらしい。しかし…
「…それってほぼ同棲じゃねぇか…。」
「うん…、できるなら住み込みでお願いしたい。その方がお互いにいいでしょ?」
目の前の少女は俺に襲われる事とかは考えないのだろうか。あったばかりでお互いの人間性がわからないのに、どうしてこんな提案ができるのだろうか。
「俺がお前を襲うとか、そういうことは考えないのか?俺だって男だぞ?」
しかし少女は平然と返す。
「考えてないわけじゃないけど、路頭に迷っている人は見過ごせないし、私の目標は私の作った音楽で困った人々を救うことだから。私はあなたを救いたいし、救う手伝いをしてほしい。」
襲われることも視野に入っているが、それでもなお困っている人を救いたい…か。まるで、修学旅行前の自分を見ているようだ。自分を犠牲にしてでも他人を救う。彼女の目標を聞いて、俺は目の前の少女に、俺みたいにはなってほしくないと思った。もう他人なんて信用しないと思っていたが、やはり人の本質はそう簡単には変えられないらしい。少なくとも、俺を救いたいという彼女の目に嘘はなかった。
もう一度だけ、信じてみよう。彼女を通して、俺が求めてきた本物が見つかれば万々歳。見つからなければもう一度道を探すだけだ。
「……わかった。しばらくお邪魔させてもらう。俺の名前は、比企谷八幡だ。」
「ありがとう。私は宵崎奏。これからよろしくね、八幡。」
彼女がその時浮かべた、綺麗で、それでいて夜空に吸い込まれてしまいそうなくらい儚い笑みに、つい見入ってしまった。
「どうしたの?帰るよ?」
「お、おう、悪い。」
先に歩く宵崎の缶詰とカップラーメンが大量に入った買い物袋を彼女の代わりに持ち、何を話すわけでもなく帰路についた。
人気があれば続きます。
ヒロイン別でルート分けた方がいい?
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分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
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分けるな。1本でいけ。
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その他。この質問にその他ってある?