本物を求める青年と救いたい少女   作:ばやす

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第11話

 まふゆの一件で全員で本名を言い合ったが、ナイトコードでは今まで通りコードネームで呼び合うことになった。それと瑞希、絵名が企画した新曲完成記念のオフ会にも行った。奏は外に出たくないと言い張ったが、さすがに何日も引きこもっていると体に悪いので、いい機会だとばかりに俺が無理やり連れだした。ちなみにまふゆ、絵名、瑞希の本名呼びは強制されました。

 

 オフ会の会場はサイゼリヤとなんとも学生らしいものだったが、会って話すのは案外悪くないものだと思った。絵名と瑞希が騒ぎすぎてまふゆに絶対零度の目線を浴びせられていたときは二人ともガタガタと、どこかの館の金髪少年のように震えていた。あの一件以来、まふゆは俺たちに対して素の言葉を使うようになった。目も俺みたいに腐っているというわけではないが、この世の深淵を覗いたような目だ。初めて会った時よりかは目に輝きが戻っていたが、まだまだ人によっては悲鳴を上げるレベルだ。店員さんが来たときは完全に取り繕っていた。

 

 料理が届いたところで瑞希が乾杯の音頭をとる。絵名は元気に返すが、俺含む残り三人はどこか冷めていた。

 

「ちょっとそこのお三方~?元気なさすぎじゃないの?」

 

「いや、ボッチにこんなさもリア充みたいなノリを求められてもな…。」

 

「そもそも私は外に出たくなかったし…。」

 

「私、こういうのわからないから。」

 

 と、三者三様の供述をした。俺と奏はそもそも合わせ方を知らないし、まふゆは学校の友達といるときは無理して合わせるが、このメンツならば合わせる気もないといった感じだ。本当にこのグループは全員が個性の塊だなとつくづく思う。

 

 オフ会開催後、奏とまふゆはまた新しく作る新曲の打ち合わせをしていて、絵名と瑞希はスイーツの話をしていた。俺はもちろん一人で黙々と食事にいそしんでいた。

 

「ねぇ八幡、あんたはスイーツとか好き?」

 

 絵名がこちらに話を振ってきた。

 

「まぁ、好きだな。」

 

「それじゃあ今度のオフ会は喫茶店にしようかな。」

 

 と瑞希がつぶやく。が、それはやめておいた方がいいだろう。

 

「やめとけ。5人で食べに行くだけならまだしも、オフ会となると騒がしくなる。話したいならファミレスの方がいいだろ。」

 

 というと、二人は納得したらしい。

 

「それもそうだね!それじゃあオフ会とか抜きにしてスイーツを食べに行こう!」

 

 と瑞希が言うと絵名はそうだねと答える。プロのボッチになると、一人寂しく食事をしていた俺に同情して甘いものが好きかを聞いただけで、そのスイーツを食べに行く件に関しては俺を一切誘っていないことがわかr

 

「もちろん八幡も行くでしょ?」

 

 …そうだった。俺はもうボッチじゃない。仲間がいる。そんな少し前に理解した事実にまた胸が温かくなる。もちろんだと返した後、奏から新曲についての話が振られる。

 

 ニーゴの中で俺は伴奏を担当しているが、俺は一人しかいないので録音したものを奏に合成してもらっている。結成当時はそれぞれができることをするだけといった感じで、統一された目標はなかったが、あの日あのセカイで出会ったときにニーゴとして全員が共有する目標ができた。

 

【聞く人全員の心に残る音楽を作る】

 

 俺と奏からすれば何をいまさらといった目標だったが、全員の意思を統一できたことは大きい。もちろんこの聞く人全員というのはニーゴのメンバーのことも含まれている。出会って実際に彼女たちを見て分かった。まふゆはもちろんだが、絵名と瑞希も何かしらの闇を抱えている。とはいっても内容は一切わからないし、本人たちも話す気は無いみたいなので突っ込むようなことはしないようにする。まふゆの時はミクやセカイから大体の内容は分かったが今回は一切わからない。地雷もわからないからしばらくは静観することにする。とは言っても絵名の悩みはあらかた見当がついているのだが。

 

「それじゃあ次の曲の相談も終わったし、お開きにしようか。私この後塾あるし。」

 

 お開きには全員賛成したので会計は割り勘して店を出る。本来ならば男である俺が全部払うところなのだろうが、今日はオフ会なので割り勘ということになった。その代わりに今度個人的に出かけるときは全額よろしくと絵名と瑞希に釘を刺されてしまった。まぁ今では数百万の買い物でもない限りは大打撃は受けないのだが。

 

 ファミレスから出た時、空はすでにオレンジ色に染まっていた。総武にいたときは夕日が好きだった。夕方になれば家に帰れるから。部室から解放されるから。だけど今は夕日がみえても何も思わなくなった。朝日が昇ろうが月が昇ろうが、今は俺を罵倒するやつはもう俺のセカイにはいないから。朝日が昇ろうが月が昇ろうが、目の前にはいなくても心でつながっている仲間がいるから。だから俺は今前を向いていられる。

 

 かつての俺は、自分のことを人形…、ピノキオの生まれ変わりだと思っていた。平然と虐待を繰り返す親から作られ、奉仕部では部員の期待を裏切って、俺に関わるものすべてを不幸にする存在だと思った。そしていつか自分が不幸にした誰かにナイフで刺され、木に吊るされ、誰にも見つけてもらえぬままひっそりと腐っていくものだと思った。

 

 だけど、奏と出会ってから、奏の音楽を聴いてから、ニーゴのみんなと出会ってから。自分はただ誰かを不幸にする存在ではないと気づかされた。原作なんて知らない。ピノキオが歩んだ人生は俺には関係ない。俺は人を幸せにするという、自分自身の道を歩く。俺は、もう人形じゃない。

 

 俺は守りたいものを、自分自身の在り方をしかと目に、そして心に留め少女たちの隣を歩いた。

 

 

 

 

ヒロイン別でルート分けた方がいい?

  • 分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
  • 分けるな。1本でいけ。
  • その他。この質問にその他ってある?
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