「宮益坂女子学院ですか?名前にもあるように、女子校ですよね?」
父さんはうなづく。真面目な雰囲気なのでどうやら冗談ではないらしい。
「ああ、女子校なんだがな…、宮女の理事長が知り合いで耳にしたんだが、近々共学化する計画が立っているからそのテスト生を募ろうと考えているらしい。だけど一般に募ったら邪な連中が入ってこないとも限らないだろう?そこで俺の方に話が回ってきたってわけだ。ちょうど総武も廃校になったしな。」
「なんで何十年と女子校だったのに急に共学化しようってことになったんです?」
「宮益坂って学力的には全国レベルだろう?だけど男子がそこに入れないということで学力の高い息子を持つ親御さん方がかなりボヤいた結果らしい。」
なるほど、そういう理由ならまぁ納得がいく。親も自分の子が勉強できるならいい学校に入れさせてやりたいもんだろうからな。
「ところで、俺と隼人で宮女に行くんですよね。戸塚たちはどこに行くんですか?」
「ああ、戸塚くんたちなら近くの神山高校に編入するらしいよ。あと、三浦さんも一緒だと言っていたね。」
三浦か。彼女も今回の件は被害者だと言えるだろう。グループ崩壊の危機にあったのに彼女だけが何も知らされていなかったのだから。
彼女が法廷で由比ヶ浜の口から修学旅行の全てを聞いた時、自分のグループに対して、総武に対して、そして自分に対して失望したかのような顔をしていた。
助けてもらっておいて平然とその立役者の悪口を広めていた戸部と海老名に。
何も知らずに、何も見ずに、何も考えずに二人に同調し平然と立役者を馬鹿にしていた総武の生徒たちに。
人を正しい道へと導く義務のある教師が、生徒の根も歯もない悪口を聞いても注意することなく、それが当たり前であるかのように平然としていたこと。
由比ヶ浜に押されて流されるままにクラスも違うくせに依頼を受け、比企谷と由比ヶ浜に任せきりにしたくせに最後には文句をつけた雪ノ下に。
海老名が誰とも付き合う気がないことを忘れ、誰の気持ちも考えず平然とその依頼を受けて、失敗したら人の気持ちを考えろと言って退けた由比ヶ浜に。
そして、いざと言うときには何も聞かせてもらえない薄っぺらいグループのリーダーである、哀れで滑稽な自分に。
彼女は中学の時、総武に受かるほどの学力はなかった。しかし、並々ならぬ努力をしてようやく名門の狭き門をくぐり抜けた。
しかし、どうだ?彼女のくぐり抜けた門の中には、生徒の半数どころか九割強が、考えることを放棄し、ただ噂になっている人間の悪口を言うだけの無能の集団だった。
幸いなことに、検察と弁護士、そして証人グループのお陰で、彼女はお咎めなしということになった。しかし、彼女の心の傷は相当な大きさであった。
「そうですか。戸塚たちと離れ離れになるのは少し残念ですね。」
彼女には裁判が終わった後に謝罪を受けた。他の生徒みたいに彼女から何かされた覚えもなかったので困惑したのだが、それで少し気が楽になるのならと受け取った。
「まぁ、隼人と仲良くやってくれ。明日土曜日に理事長に挨拶に行って、月曜日から登校だよ。」
わかりましたと返して帰路につく。先ほど話したように住む場所は今まで同様奏の家でいいらしい。ニーゴのメンバーにも学校の件も報告しないとな。
時刻は午後八時。ニーゴとしての集合完了時刻は二十五時だが、今日は金曜日ということもあってすでに全員ナイトコードにログインしていた。
「というわけで、明日から宮女に通うことになった。」
というと絵名と瑞希はいい反応をしてくれた。
「え!?あんた男でしょ?なんで女子校に入んのよ!」
ことの経緯を説明すると納得してくれたらしい。
「はぁ、八幡が宮女に行くんだったらそっちにしとけばよかったかなぁ…。夜間定時制だから普段遊ぶ友達もいないし…。」
とボヤいていた。
その後もみんなと雑談しながら作業をしていたが、いつもよりも口数の少ない瑞希のことが気になった。
ナイトコードのメール機能を使って個人チャットでセカイに呼び出す。ニーゴの方にはコンビニに行くと適当に誤魔化して俺はセカイに入った。
セカイに入ってから数分とたたずに瑞希がやってきた。ミクはその場にはおらず、どうやら散歩に出かけているようだ。
「どうしたの?急にセカイに呼び出して。」
瑞希はいつもの調子で話しかけてくるが、その声はどこかぎこちない。
「それはこっちのセリフだ。今日、かなり口数少なかっただろ。いつもは喧しいくらいなのに、何かあったのか?」
聞くと、瑞希は驚いたような顔をしてから俺に質問を投げかける。
「…八幡はさ、可愛いものが好きな男子ってどう思う?」
…なるほど、そういうことか。女子校の話をしてからこうなったことで違和感を覚えたが、今の質問で理解した。つまるところ、瑞希は恐らく女子校に通いたかったのであろう。しかし、それは叶わなかったという事だ。
「可愛い物好きの男子?そんなの普通のことだろ。」
そこで瑞希はまた驚いた。なんでこんな事で驚くのか?そんなの考えればすぐにわかる。恐らく瑞希は、今までの自分が誰からも受け入れられなかったのであろう。
男子はかっこいいものが好きである。黒や青が似合う。短髪で長髪だとしてもポニーテールなどにはしない。
そんなくだらない他人の価値観や常識に押しつぶされてきたのであろう。
「極論を言ってしまえば、男子が可愛いものが好きなのはおかしいというのなら男子は猫を好きになってはいけない、と言ってるようなものだからな。」
というと瑞希は少しだけ吹き出す。
「フフッ、そんなの屁理屈じゃん。」
「屁理屈も理屈のうちなんだよ。とにかく、男子が可愛いものを好きになってはいけない理由なんてどこにもない。関心のないものを好きになるよりも好きなものをもっと好きになる方がいいだろ。楽だし。」
好きこそ物の上手なれ、という諺がある。好きでやっていることは自然と上達するものだ、という意味だ。可愛いに上達するという概念はないと思うが、好きなものを追いかけ続けてもっと好きになれたら、それはより楽しいだろう。
「好きなものを追いかけ続けるのって楽しいだろ?俺の場合は音楽だな。聴くだけでも好きだった音楽が演奏できるようになってより好きになった。瑞希の場合は可愛いものが好きなんだろ?いいじゃないか、追いかけたら。瑞希の人生は瑞希だけのものだ。誰にも口を挟む権利はない。」
言いたいことを言い切った後、瑞希は吹っ切れたような顔をしていた。
「そっか、そうだよね!ボクが可愛いものを集めて誰かに何か言われても何も関係ないもんね!こんな事でクヨクヨするなんて、らしくないなぁ。」
「まぁ、誰だってそんな時はある。なんなら俺はどんなことでもとことんまで悩むめんどくさい性格をしてるまである。」
ここでようやく、彼女の本物の笑顔を見ることができた。
「それと最後に。月曜日、瑞希が素っ頓狂な声をあげるような転校生が来るから楽しみにしとけ。」
月曜日に転校生の戸塚を見て、八幡の予想通り瑞希が素っ頓狂な声を上げたのは別のお話である。
ヒロイン別でルート分けた方がいい?
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分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
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分けるな。1本でいけ。
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その他。この質問にその他ってある?