本物を求める青年と救いたい少女   作:ばやす

18 / 26
第17話

 月曜日。今日から待ちに待っていたわけでもない学校生活が幕を開ける。2年の12月に転校なんて普通なら変な話だが、総武が潰れたのは大々的にメディアに取り上げられたので今回は異常が普通である。

 

「新しい学校生活、楽しみだね。」

 

「バッカお前、まず教室に入って俺の目を見ての悲鳴、自己紹介で噛んで嘲笑、侮蔑の眼差しを向けられるに決まってんのに楽しみなわけねぇだろうが。」

 

「決まってるのか…、なんというか、八幡らしいね。」

 

 隼人とくだらないやりとりをしながら宮益坂女子学院に向かう。共学校でも初っ端から変な目で見られたのに女子校となると目があったら通報されるまである。いや、通報されちゃうのかよ…。

 

 馬鹿なことを考えながら歩いていると、ようやく見えてきた。理事長に挨拶したりしないといけないという理由で他の生徒よりも早めにきているので、辺りに生徒はいない。下駄箱に着いたが置く場所がわからないため念のために持ってきていたビニール袋に靴を入れ、スリッパを履いて理事長室に向かう。近くに校内の地図があったのは有り難かった。

 

 部屋の前に着いたのでノックを4回して返事を待つ。入室の許可が出たので隼人と共に入室する。

 

「よく来てくれたね、八幡くん、隼人くん。私が宮益坂の理事長だ。」

 

 予定の時間よりも早めに着いたのが運の尽きか、説明の後、理事長から延々と愚痴を聞かされた。これには俺も隼人もぐったりである。

 

「あの、理事長、そろそろ始業時間ですので…。」

 

 隼人が止めにかかった。時計を見るとかなりギリギリだ。

 

「あ、すまないね。それじゃあ最後に。この学校は総武とは違っていじめの類は一切ない。だから、後一年と少ししかないけど、いい学生生活を送ってくれたまえ。」

 

 退室して走って職員室に向かう。始業ギリギリなので生徒は全員教室に入っているらしく、生徒と出くわすことはなかった。

 

 スリッパで走りにくかったこともあって、職員室にたどり着く頃には息も絶え絶えだった。なんだよ、この間取り。普通理事長室って職員室の隣にあるもんじゃないの?しかし息を整える時間もないためすぐにノックして職員室に入る。

 

「失礼します。今日から編入になった葉山隼人と葉山八幡です。」

 

 中に声をかけると教師たちに一瞬だけ怪訝な表情をされたがその後すぐに納得した表情で業務に戻っていった。おそらく俺たちが来る日だと分かっていても慣れないから顔に出たのだろう。

 

「あぁ、二人とも!こっちこっち!」

 

 女性教師がこちらを手招きしていたのでそちらに向かった。

 

「おはよう!二人とも結構ギリギリだったね?」

 

 理事長に延々と愚痴を聞かされたことを説明すると同情の眼差しを向けられた。

 

「理事長、暇さえあれば誰かに愚痴るからねぇ…。朝から災難だったね。それじゃあクラスに案内するけど、二人は別々のクラスだからね。」

 

「なにそれ初耳なんですけど…。」

 

「まぁ、テスト生だし同じクラスに入れたら男子だけで話しちゃうかもしれないでしょ?それを避けるためにも我慢してね!」

 

 まぁ、それなりに筋は通っている。仕方がない。上手くやっていけるかはわからないというか十中八九出だしから滑るだろうが…、俺だし。ぼっちでいることぐらい造作はない。

 

 先生に連れられて教室に向かう。自分の足で向かっているのにドナドナと頭の中に流れているのは俺の心の持ち方ゆえだろうか。

 

 正直言って怖い。またあんな視線を向けられるかもしれないと思うと怖くて仕方がない。だが俺にはニーゴの仲間がいる。総武の数少ない仲間がいる。それに理事長はここにいじめはないと言った。人を救おうとするものが人を端から疑ってかかってどうする。裏切られるまでは信じると決めた。だから俺はこの不安をまやかしであると思い込む。

 

「隼人くんはB組だからここね担任は私。八幡くんはD組だからこっちの諸星先生に着いていってね。」

 

「じゃあね八幡、また後で。」

 

「おう。」

 

 隼人にしばしの別れを告げ、一つ教室を超えてD組に着いた。

 

 先生が中に入って行って転入生がいると伝える。それだけでも騒つくのにテスト生の男子だと分かるとさらにどよめく。このどよめき様からして、理事長たち生徒にテスト生のこと伝えてなかったのかよ…。

 

「それじゃあ入ってきて!」

 

 呼ばれてしまったので教室に入る。

 

(わ、目が腐ってる…。)

 

(え?でも結構イケメンじゃない?)

 

(私結構タイプかも。)

 

 入った途端にヒソヒソ声が聞こえた。悪口を言われていないか不安になる。

 

「それじゃあ、自己紹介よろしく!」

 

「あっ、はい。葉山はちみゃ…、ウッウン、葉山八幡です。」

 

 噛んだ。それはもう盛大に、誤魔化しが効かないぐらいに。こういうところは成長していないなとつくづく思う。

 

(噛んだ!ちょっと可愛くない?)

 

(うん、人前に慣れてないのかな?というか…、)

 

(((((それだけ⁉︎)))))

 

「は、八幡くん…もうちょっとなんかない?」

 

 自己紹介とは文字通り己を紹介することだ。名前さえ言えればいいんじゃないのかと思う。しかし俺は目立ちたくないので好きなものでも紹介することにする。

 

「あっ、ええと…、好きな飲み物はMAXコーヒーです。」

 

 俺が見つけ出した法則。ボッチは大体しゃべる前にあっという。

 

「え、ええと…、それじゃあ拍手!」

 

 先生の苦し紛れの機転のお陰でクラス全員が拍手してくれた。よし、なんとか自己紹介は乗り切った。あとは寝たふりで時間を稼ぐだけだ。

 

「それじゃあ八幡くんはあそこの日野森さんの横にすわってね。」

 

 そう言って指を刺された方向に空席があったのでそこに座る。

 

 さて、あとは寝たふりをして時間を稼ぐだけだ、と意気込んだが、そう上手くはいかなかった。ホームルームを終えた瞬間に周りの生徒がガタッと立ち上がり、ちょっと尻込みをした瞬間に周りの生徒はこちらに突撃。机に突っ伏す暇もなく囲まれてしまった。その後に待ち構えているのは地獄の質問タイム。はぁ、憂鬱だ…。

 

 ただ、隣に座っている日野森さんと、女子の隙間から見えた少し離れた席のピンクの髪の女子のどこか上の空な様子が気がかりだった。

 

 

 

ヒロイン別でルート分けた方がいい?

  • 分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
  • 分けるな。1本でいけ。
  • その他。この質問にその他ってある?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。