あれこれ質問攻めにあっている間に休み時間が終わった。そのうち飽きるだろうから今だけ我慢だ。
質問攻めにあった後は、体育館での集会で共学テスト生ということで紹介された。葉山が隣に立っていたせいか、俺の目が腐っていたせいか、生徒たちはかなり騒ついた。
「それでは二人とも、自己紹介をお願いします。」
先ほどとは違って丁寧な言葉遣いの理事長に隼人がマイクを渡された。
「はじめまして!二年B組にテスト生ということできました、葉山隼人です。この校舎の構造とかは詳しくないので声をかけた時は答えて欲しいし、逆に俺には質問とかあっても無くても気軽に話しかけてください。よろしくお願いします!」
言い終わると拍手の嵐だった。なに、ミュージカルなの?と思わなくもなかったが女子校にイケメンが来たのだ。無理もないのだろう。
隼人が俺にマイクを渡してくる。挨拶は一人でいいじゃないかと思ったが、ここで話さないのも悪目立ちするかもしれないと思ったので大人しく話す。
「葉山八幡です。二年D組でお世話になります。まぁ、俺はテスト生の間平和に暮らせたらいいと思ってます。よろしくお願いします。」
クラスの時とは違って今回は噛まずに話せた。隼人の時より若干拍手が小さい気がするが、それでもここまで拍手をもらえたのは初めてだった。少し気恥ずかしいが悪くないとも思う。
俺たちの話も終わって壇上から降りたあと、理事長の長い話を聞き、ようやく寒い体育館から解放された。夏は暑くて冬は寒い。最悪の場所だな。日本国内はどこでもそうだが、体育館は特に顕著な気がする。
集会が終わったあとは教室でロングホームルームだったのだが、特にすることがないので全員で自己紹介をすることになった。俺は最初にしたので免除だ。
隣の席の女子は日野森雫、桃髪女子は桃井愛莉というらしい。どこかで見た顔だと思ったが、小町がよく見ていた番組にレギュラーで出ていたアイドルだったらしい。ちらっと見た程度だったのであまりよくは覚えていないが。
ホームルーム終了後、下校のために全員が新しいクラスメイトと会話しながら教室を出ていく。
日野森と桃井も例外ではなく一緒に帰るのかと思ったが、教室を出て向かう方向は全員とは逆。朝に校内見取り図を見た時のうろ覚えだがあっちは屋上に繋がる階段があったはずだ。
あのアイドルとは思えないような重苦しい空気と関係があるのだろうか。今までの俺なら気にも止めずに帰宅するところだが、どうしても気になったので後をつけてみることにした。
桃井とすれ違ったのは、俺がちょうど屋上のドアを開けようとした時だった。いきなりドアが開いたので横に避けたが、桃井はこちらを認識もしていない様子で校舎を駆けていった。
勢いよく開かれ開きっぱなしになったドアを潜ると、そこには日野森が俯いて立ち尽くしていた。
「えっと…、日野森だっけ?なんかあったのか?」
声をかけるとビクッとしてからゆっくりこちらに顔を向けた。日野森もまた俺に気付いていなかったらしい。
「あら、葉山くん、何か用かしら?」
アイドルらしい完璧な…、完璧すぎる笑顔でこちらに応対する。アイドル業で身につけた営業スマイルだろうか。
「さっき、桃井が飛び出していったが、なんかあったのか?」
雑談から少しずつ悩みを聞く、と言うのが本来のセオリーなのだろうが、これっぽっちも関係のない赤の他人がそんなことをしても無駄なので単刀直入に聞く。
「…いえ、なんでもないわ。」
「そりゃ嘘だな。桃井は必死な顔で走っていった。何もないなら普通に別れるか一緒に帰るかだろ。」
「…それなら、貴方には関係ないって言ったら帰ってくれるかしら?」
俯いて言う。声音から怒りは一切感じない。ただ、全てを諦めたような感じがあるだけだ。
「関係なくはないな。事件は発見しただけで当事者になるんだぜ?」
「何を言っても帰ってくれそうにないわねぇ…。話せば楽になることもあると言うし、聞いてもらおうかしら…。」
聞いた話によると、日野森は最近になってアイドルを辞めたとの事だ。同じ事務所のアイドルに、顔がいいだけで仕事が入ってくる、努力なんてしていない、などとボロボロに言われたらしい。
「そんじゃあ、桃井は日野森の事務所まで行ったのか…。追いかけなくていいのか?」
「…追いかけたって、仕方がないもの。」
諦観したように言う。それでも俺は…、日野森が羨ましい。
「日野森、率直に言うと、俺はお前が羨ましいよ。」
「え?」
俺の急な発言に日野森は意味がわからないと言った顔をする。
「桃井は、日野森が困って諦めてしまったことを怒って、日野森を守るために後先考えずに走っていったんだ。日野森の努力を無駄にしないために、そして、ステージで輝く日野森をもう一度見るためにな。」
「どうして…、見ず知らずの貴方に私の努力がわかるの?」
「一人の人間を情動で動かせる奴が、何もせずにただ他人をこき下ろすような人間な訳ねぇだろ。」
「努力ってのは必ず報われるわけじゃねぇ。才能ある人間がなんの努力もせずに上に上がっていくこともザラにある。けどな…、」
「人の心を動かせるやつが常に楽して、なんも努力してねぇ訳がねえんだよ。」
「たまたまテレビを見てた時、日野森のデビュー番組がやってた。そのあとテレビで桃井を見かけたのは1、2年後だ。日野森の話を聞いて真っ先に飛び出していったってことは、きっとお前のことを目標にしてたんだと思うぞ。」
日野森はハッとする。自分もそうだったからだ。
最初はただスカウトを受けて流されるままに言われたメニューをこなしていただけだった。けど、愛莉ちゃんがアイドルとして上がってきてから、それは変わった。愛莉ちゃんのような、人を笑顔にできるアイドルになろうと必死で努力した。愛莉ちゃんに憧れた。それだけは絶対に変わらない私だ。
「わたし、行ってくるわ。愛莉ちゃんにどうしても伝えたいことがあるの。」
「おう、行ってこい。…自分を信じてくれる人は、大切にな。」
日野森は先程の桃井と変わりない様相で走っていき、あっという間に見えなくなった。
俺にも、困ったときに、挫けそうになったときに、すぐに必死になって動いてくれる友人がいたらよかったのになぁ。
今でこそ俺のために動いてくれた隼人、戸塚、川崎、材木座。ニーゴの仲間がいるが、総武にいた頃はただただ一人でいじめに耐えていた。
そんなイフストーリーを追い払って、一人帰路についた。
ヒロイン別でルート分けた方がいい?
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分けろ。色んな人との付き合いが見たい。
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分けるな。1本でいけ。
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その他。この質問にその他ってある?